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【イベントレポート】トヨタが挑むソフトウェアファースト〜開発現場が語る現在と未来〜

トヨタ自動車株式会社

イベントレポート

100年に一度の大変革期を迎える自動車業界。巨大IT企業や先端テクノロジー企業といった異業界からの参画が進み、これまでになかったサービスやビジネスが次々と世の中に生み出されています。そのような変革の時代において、トヨタ自動車はソフトウェアファーストを掲げ、自動車会社から「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジに本気で挑戦しています。

本セミナーでは、トヨタ自動車におけるコネクティッド先行開発現場のリアルに迫ります。情報処理やAI技術、通信などを活用したトヨタ独自の「つなぐ」技術の研究・開発を担うトヨタ大手町オフィスのコネクティッド先行開発部より、基盤システム戦略グループ長 長冨 朝子氏と、同部システムソフトウェア開発グループ主幹 沖野 直人氏の2名が登壇。元日本マイクロソフト業務執行役員でJAC Digitalアドバイザーである澤 円氏との対談形式でお送りいたします。

※本記事は2022年6月22日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋・再構成したものです。

<講師紹介>

長冨 朝子氏
長冨 朝子氏
  • 長冨 朝子氏
    トヨタ自動車株式会社
    コネクティッド先行開発部 InfoTech グループ長
    外資系IT企業に新卒入社。メインフレームエンジニアとしてシステム開発・運用、プリセールス技術支援に従事。退社後は急成長企業にてグローバル戦略・ソフトウェア開発の品質・生産性向上に寄与する業務改善、社内業務プロセス設計、戦略人事等を担当。数社を経て2020年にトヨタ自動車に入社。現在はリサーチャーとエンジニア混成のITプロジェクトの立ち上げ支援、エンジニアが働きやすい環境づくりを目指した組織開発、人材育成プログラムの企画運営を推進中。
沖野 直人氏
沖野 直人氏
  • 沖野 直人氏
    トヨタ自動車株式会社
    コネクティッド先行開発部InfoTech 主幹 兼 SU推進室 主幹 兼
    Woven Alpha, Inc. Executive Advisor
    2020年キャリア入社。前職は大手家電メーカーのソフトウェア開発。専門はオペレーティングシステム(OS)。ゲーム機や犬型ロボット、セットトップボックスのOS開発に携わる。トヨタ入社後は、モビリティ/IoT向けソフトウェアプラットフォームやソフトウェアアップデートシステムの2つのプロジェクトを立ち上げ、主にアーキテクトとして開発を主導しつつ、Woven AlphaにてAreneの開発にも携わる。
澤 円氏
澤 円氏
  • 澤 円氏
    株式会社圓窓
    株式会社圓窓 代表取締役。元日本マイクロソフト業務執行役員。現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。
    2021年4月より株式会社JAC Recruitment デジタル領域アドバイザーに就任。

―1.ソフトウェアがモビリティに提供する価値

長冨氏:トヨタでは量産体制に入った後の開発や運用を「号口(ごうぐち)」と呼びますが、私たちの部署はその前段階での要素技術研究と先行開発を担当しています。自動運転やカーボンニュートラルなど、いろいろなテーマに必要とされる技術をコンポーネント化して、号口に引き渡すようなかたちで貢献しています。

沖野氏:トヨタに入る前はソニーでOSを中心としたシステムアーキテクト業に20年ほど従事していました。トヨタではコネクティッドOSやIoTデバイス向けのプラットフォーム、ソフトウェアアップデートの仕組みのシステム開発などを、システムアーキテクトやプロジェクトマネージャーとして主導しています。

長冨氏:トヨタは自動車の生産だけではなく、ヒト・モノ・コトの移動に対してお客様に価値を提供する、「幸せの量産」を目標にしています。そのなかで、多くの付加価値はソフトウェアによって実現されています。たとえばコックピットでのナビゲーション表示や、ほかの車や道路インフラとのデータ通信・蓄積・解析といった処理。MaaS車両とそのサービス開発や情報セキュリティなど、ソフトが担う領域は多岐に渡っており、トヨタは「ソフトウェアファースト」という言葉を掲げ、お客様への価値あるサービス提供を目指しています。

イベントレポート

澤氏:車載のソフトウェアならではの特徴はありますか?

沖野氏:機能安全を満たすため、実装は要件定義まで含めてトレーサビリティを担保しながら行わなければいけません。

長冨氏:スケジュールは一つの特徴です。前提となる車の販売計画があるので、ハードの開発日程にソフトウェアも合わせていく必要があります。

―2.体制づくりから始める環境構築

澤氏:ソフトウェアを開発する、社内の環境についてはいかがでしょうか?

沖野氏:私が入社したときには、外部に開発を委託していたので驚きました。外部への委託では、少しの変更でも多額の開発費を取られ、見積もりの依頼などで時間もかかってしまいます。そのような開発速度やコストの問題を考慮し、体制自体を変えていきました。
今では私の立ち上げたプロジェクトはすべて内製開発で、開発プロセスやワークフローもソニー時代のものにあわせてカスタマイズしました。仕様書をかっちり書くよりも、早い段階で動作させてフィードバックをかけるようにしています。スキルのある人がストレスなく働けるよう、煩雑なルールは作らないなどの工夫も行いました。

澤氏:スピードを重視するなら、内製は絶対条件です。ITがわかる経営者は希少なので、わからないから丸投げするという図式になりやすいのですが、体制の変化はハードルが高かったのではないでしょうか?

沖野氏:私の場合は「好きなようにやってください」という具合で、ほとんどハードルがありませんでした。組み込みでもアプリケーションでも、モダンな環境を導入して問題なく使えています。

長冨氏:私たちが働くトヨタ大手町という場所は、新しいことにチャレンジするために作られた出島のような存在で、やりたいことを自由にやらせてもらえています。ツール周りなどの開発環境を整えることもそうですし、私のグループでは、社内の決裁プロセスなど業務を支える仕組みをソフトウェアで効率化していくことを担っています。

澤氏:昔は会社ごとに専用の開発ツールを使う時代もありました。トヨタのような大きな会社でも、すでにあるものを使って結果に素早くつなげていく体制に変わってきているのですね。

―3.今求められる「ソフトウェア人材」とは

沖野氏:まだ部署内のすべてで内製開発はできておらず、仕様書を書いて委託開発で調達するような部分も残っています。とはいえ、他社と共同で開発するときにも、それぞれが独立した疎の状態で進めるのではなく、開発環境を共通にしたり、同じ場所に集まったりしながら進めるように変化しています。

長冨氏:ハードウェアとしての車が数万個の部品で作られているように、ソフトウェアでも内製と外部調達、それぞれの得意領域を合わせた開発スタイルも選択肢の一つだと思います。

沖野氏:トヨタとして、自社でソフトウェアの開発人材を集めることにはハードルがあります。短期的には業務委託でまかないつつ、中長期的にはキャリア採用を増やし、もっと長い目線では、新卒の選択肢として考えてもらうため、学生インターンを呼び込んだりしています。

長冨氏:積極的な採用を進めつつ、社内の若手の育成やキャリアパスについても考えており、ほかの部署も含めて、トヨタとして「ソフトウェア人材」を育てていくような仕組みを作ろうとしています。ソフトウェア人材の職域は幅広く、エンジニアの方をはじめ、リサーチャー(研究職)に近い方も働いています。

沖野氏:私はコードを書ける「だけ」の人は採用しないようにしています。なぜかというと、単に仕様を受け取って書くだけでは、デザインやインプリメンテーションができず、実装時のバランスが取れないからです。デザインと技術、両方の目利きができないといけません。

澤氏:ただ単にコードが書ける、タスクをこなせるというレベルではなく、プロジェクト全体を俯瞰できるようなスキルが求められているのですね。

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―4.トヨタで歩むキャリアパスのおもしろさ

澤氏:お二人とも転職組ですが、トヨタに入るというキャリアは想定していましたか? 一般的に、中途で入る会社というイメージは持たれていないように思います。

沖野氏:ソニーに20年間勤めてキャリアの棚卸をしたときに、一定周期で世代が変わっていくゲームコンソール分野での経験を繰り返すよりも、新しいことにチャレンジしたいという気持ちが湧いてきました。身につけた技術や経験を社会問題の解決に生かしたいと思ったとき、トヨタは「100年に一度の大改革」や「ソフトウェアファースト」を掲げていました。トヨタの自動車製造とソフトウェアが組み合わさることで生まれる、今後のモビリティ領域での発展を直感し、「よいタイミングでよい場所にいることが重要だ」と思いトヨタへの転職を決めました。

長冨氏:私は最初の会社で9年ほどシステムエンジニアを勤めたのち、いったん会社勤め自体を辞めています。語学を鍛えるために海外でも就労経験を積み、帰国後は数名から1,000名くらいの会社、急拡大した会社などいろいろなタイプの会社を渡りました。トヨタを選んだのは、業界とともに大きく変化する会社を、内側から変えるような役割を担いたいと思ったからです。

組織開発のような仕事をしたかったのですが、募集要項にはなかったので、今の上司にあたる担当者とカジュアル面談のなかで相談しました。自分と会社の認識に齟齬がないか、「システム」や「プロジェクト」といった言葉の指す意味から業務内容まで、細かくすり合わせるように聞いていきました。

澤氏:日本でも最大規模の会社であるトヨタが、内側から変えるぞというマインドの人を受け入れてくれる。その心意気は素晴らしいですね。トヨタでキャリアを作っていくことの面白さはどこにありますか?

長冨氏:日本発の世界企業で働くことが魅力の一つです。異業界からの転職だったので、業界知識のキャッチアップは大変で、今でも勉強中です。自動車以外にも、なぜか会話に野球用語がよく出てきますね。

沖野氏:私の場合、あまりトヨタという会社でのキャリアにはこだわっていません。システムアーキテクトとして、解決すべきシステムや、新たに作らなければいけないシステムがあれば、そのプロジェクトに関わるように動いてきました。今回はモビリティ業界が大きく変革するなかでトヨタを選びましたが、ソフトウェアに寄せられる要望は想像以上でした。ゲーム業界とはまた違い、命を預かるための機能安全や、国や地域のレギュレーションを守りながら開発する必要があります。そうした新しさも身につけつつ、ソフトウェアエンジニアとしての市場価値を高めていくことを意識しています。

―5.変革中のトヨタで活躍できる人物像

澤氏:トヨタでは今どのような方が活躍されているのでしょうか。また、どのような人と働いてみたいと思いますか?

長冨氏:トヨタは大企業ですが、入ってみるとトップダウンではないことに気がつきました。ほとんどのことがボトムアップで行われるので、自分の意思を持って実行し、やり抜ける方が活躍しているように見えます。自分で発案し、実行計画を立てて、課題を設定する。そこから筋道を立てて関係者に話をして、仲間を増やしていくという意味では、むしろスタートアップ的な働き方と言えるかもしれません。

今後もトヨタは社会課題の解決や基盤づくりを担い、グループ会社とともに業界自体の変革を進めていきます。転職者はスタートアップからの方もいますし、大企業からの方もいて、バラエティに富んでいます。また全社的にデジタルでトップを目指すという号令もかかっていますので、私個人としてはそれをけん引するとともに、そこに追いつこうとする人とのギャップを埋め、底上げしていこうとしています。

沖野氏:トヨタのビジョンは「幸せの量産」です。移動の効率を上げ、無駄をなくして幸せを作っていく長いビジョンがあります。その過程で交通事故がなくなれば社会的な問題も解決できるので、私の専門性や技術で実現したいこととマッチしていました。会社の進む方向性と社会的な要請、自分のやりたいことの3つが一致していると感じています。

ただし、こうした取り組みを継続するためには、やはりソフトウェアの内製化が必要です。社内でも仕組みづくりに取り組んでいる最中ですが、われこそはと思う方にはぜひ加わっていただきたいです。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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