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【イベントレポート】技術力が強みの日産が描く、コネクティドカーとエンジニアの未来

イベントレポート

変革のスピードが著しい自動車業界では、「モノづくり」の枠を飛び越えて、ソフトウェア領域への進出が顕著になっています。なかでも、カーオブザイヤーを2年連続で受賞した日産自動車株式会社(以下、日産自動車)が現在力を入れているのが、車と人・モノをつなげる「コネクティド分野」です。
※コネクティドとは、本来「接続された状態」を意味する言葉であり、コネクティドカーとは総務省の定義では「ICT端末としての機能を有した自動車」のことを指します。

本セミナーでは、日産自動車の持つ高い技術力とソフトウェアを掛け合わせることで開発対象が広がるコネクティドカーならではの面白さ、またデジタルの世界を飛び出したユニークな取り組みについて伺います。

ご登壇いただくのは、総合家電メーカーから中途で日産自動車に入社後、新規サービス開発に従事するコネクティドカー&サービス技術開発本部 岡 尚弥氏と、新卒で日産自動車に入社、いろいろな部署を経験したのち現在はコネクティドに関わる部品・システム開発に従事するコネクティドカー&サービス技術開発本部 奥村 弥夢氏のお二人。JAC Digitalアドバイザーでもある澤円氏が質問者となって、ソフトウェア×自動車という観点から新たな価値やサービス創造に挑戦する日産自動車のコネクティドカーサービスの開発現場に迫ります。

*本記事は2023年11月30日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。

<登壇者・登壇企業紹介>

  • 岡 尚弥氏
    岡 尚弥氏
    日産自動車株式会社
    コネクティドカー&サービス技術開発本部
    岡 尚弥氏
    前職ではコンシューマエレクトロニクスの市場にてソフトウェア&システムアーキテクチャ開発に従事。
    二年半前に日産自動車に入社し、現在は、コネクティドカー&サービス技術開発本部にてNissanConnectサービスに関するアプリ開発/UI/UXデザイン/システムアーキテクチャ開発などを担当しオフボード側の新規サービス開発に従事。
  • 奥村 弥夢氏
    奥村 弥夢氏
    日産自動車株式会社
    コネクティドカー&サービス技術開発本部
    奥村 弥夢氏
    新卒で日産自動車 シャシー開発部に入社後、10年以上に渡りブレーキ開発に従事。ブレーキ開発担当者として北米日産への出向経験を経て、会社への投資提案などを行うプログラムダイレクターオフィスに異動。産休&育休取得後、コネクティドカー&サービス技術開発本部でアジア圏のプロジェクト管理を担当し、今年度からコネクティドに関わる部品/システム開発(テレマティクスコントロールユニットやオーディオなど)を担当中。
  • 澤 円氏
    澤 円氏
    株式会社圓窓
    澤 円氏
    元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。

    現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。

―1. カーオブザイヤー2年連続受賞の日産自動車が目指すコネクティドカーへの挑戦

澤氏:本日は「技術力が強みの日産自動車が描くコネクティドカーとエンジニアの未来」と題し、日産自動車株式会社コネクティドカー&サービス技術開発本部 岡尚弥様と奥村弥夢様にお越しいただきました。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

岡氏:私はコネクティドカー&サービス技術開発本部でアプリケーションやクラウドシステムのオフボードと呼ばれる部分の開発を担当しています。その中でもタッチポイントのデザインやクラウドのアーキテクチャーの設計、車以外のネットワーク関連部分の環境構築を行っています。

奥村氏:私も岡さん同様、コネクティドカーの開発技術本部に在籍しています。新卒で日産に入ったのち、車種設計を10年ほどやっていました。過去にはブレーキ設計のエクスパートとしてアメリカに3年間出向していたこともあります。その後、投資決定する業務に2年間携わり、産休・育休を挟んでコネクティドカーの部門に配属になりました。現在はテレマティックスコントロールユニットといって、車中から外界と繋がる通信部分の部品やオーディオ設計を担当するなど、オンボード部品の開発をしています。

澤氏:2022年には軽電気自動車「サクラ」にて、日本カーオブザイヤーを2年連続受賞された日産自動車ですが、お二人から見て自動車業界は現在どういった状態で、どの方面に向いているとお感じですか?

岡氏:今の自動車には「電動化」「知能化」「コネクティド」といった3つのテーマがあると思っていて、競合他社もこの3つに力を入れているのを感じます。それぞれのオリジナリティをどう出していくかが腕の見せどころです。

私は「サクラ」のコネクティドのサービス部分に関わっていますが、お客様の嬉しい声をたくさんいただいています。それを聞くと励みになり、さらにサービスを拡大したいという思いは強くあります。今までだとコネクティドで軽自動車といえば、限られたサービスしか入れられませんでしたが、「サクラ」には普通車と同じレベルのサービスや安全技術がしっかり取り込まれています。数十年前には存在すらしていなかったコネクティドなどの技術によって、大きく軽自動車の位置付けが変わったのを感じます。

奥村氏:私はもともとシャシー開発やブレーキ開発といったハードを扱う部門にいましたので、ソフトウェア開発を行っている人を見ながら「ソフトで車が動くのだろうか?」と思っているよう人間でした。その人間からしても、コネクティドカーはまさにスマホを使うような感覚で、自動車の技術やITが分からなくても誰でも簡単に使えるようなものになってきているのを感じます。

澤氏:これまでは製品ごとに解決しなければならない課題が明確化されていて、それを専業のメーカーが解決していくスタイルでした。最近は課題がすごく大きな課題か小さい課題かに二極化してきており、なかでも小さな課題は個人レベルに小さくなっていると感じます。とはいえ、1人1人にオーダーメイドで作るわけにはいかないため、ある程度抽象化・汎用化し、テクノロジーの力でそれをカバーしていく時代だと思います。そういう取り組みをお二人ともなさっているわけなんですね。

そんな中、福島県の波江町で取り組まれているオンデマンド配車サービス「なみえスマートモビリティ」や法人車両管理システム「Nissan Biz Connect」にお二人は関わっていらっしゃるのですか?

奥村氏:なみえスマートモビリティに関してはサービス設計という意味で参加しています。実証実験に対しては、これからの我々の未来を作る上で重要なアクティビティだと思いますので、社内でいろいろな部署が携わりながら行っている活動となります。

岡氏:Nissan Biz Connectには我々のデータをどうクラウドに上げてどう使っていただくかを考えながら、いろいろな業種に合わせた形でデータを渡さなければならないのですが、私はその設計部分に関わっています。

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―2. 内製化が進んでいる日産自動車

澤氏:現在の日産自動車では内製化がかなり進んでいる印象を受けます。一般的には、効率化を図るなら外注化するほうがよいと思うのですが、内製化についてはどう思われますか?

岡氏:日産コネクトアプリは毎月1回必ずアップデートをかけるのですが、チーム内にはアプリケーション、クラウドエンジニア、バックエンジニアと内製部隊がスタンバイしています。アジャイル開発するにあたり、みんなで何を作ればよいかを考え、青写真を作っていくためには、みんながアイデアを出し合えるフランクな場が必要です。これが外注化した場合、仕様書を作って委託業者に提出し、確認・回答をもらうまでに時間がかかってしまいます。その点からして、内製部隊が近くにいるのは心強いですし、そこが世の中にデリバリーできるための原動力であると考えます。

奥村氏:オフボード側の話としては、外注化していたらスピード感を持って対応できないので、内製化が進んでいくのは必然だと思います。一方でオンボード側の話でいうと、たとえばナビゲーション画面において、配色・アイコンの配置・押下した際の微妙な遅れなど、デザイン的な細かなニュアンスを仕様書で伝えるのは非常に難しい作業です。このような部分は、社内で聞いてもらえればすぐに伝わる部分なので、表面的な部分ではかなり内製化が進んでいます。ただし、ミドルウェアといった仕様書にまとめやすく表に見えない部分は外注化しましょうといった具合に、階層によって使い分けをしています。

岡氏:最初の幹を作る部分はウォーターフォール型の開発でないとできません。しかし、枝葉の部分を作っていくのはアジャイル開発で回すのがよく、我々コネクティドチームはハイブリッド型開発を行えるのが強みです。

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―3. 日産自動車社内におけるキャリア形成

澤氏:日産自動車では、自分でキャリアを選べる文化があると伺っているのですが、どのようなイメージのものなのでしょうか?

岡氏:自分のやってきた足跡として残すことは大事で、その経験が自分の幹になっていくと思います。ですから、「これをやりたい」と自ら手を挙げることができますし、手を挙げた時に「今がそのタイミングだな」と上司に認められれば、どんどん自己成長を促すことができるのが当社の文化です。たとえば「短期的に外国に行きたい」「2~3年ごとにジョブローテーション的な働き方をしてみたい」といったことも若い社員を中心に行われています。

奥村氏:私は自ら異動を希望したことはないのですが、「この人はこの分野に行かせてみると面白いことをしてくれるに違いない」と上司や人事の方がよく見てくれていると感じます。過去には「エンジニアなので、投資は嫌です」と言ったこともありますが、異動してみたらそれは面白いと感じられる部署でした。どの部署に誰が合いそうかまでしっかり見ていて、その人がどう成長するかも考えてくれている、そんな文化がある会社だと思います。

澤氏:無意味な異動やキャリアに直結しないキャリアチェンジを強いることはなく、しっかりマネジメントされている、またそれを受け入れられる土壌がきちんとあるんですね。

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―4. 日産自動車の強い技術力を支える組織の作り方

澤氏:岡さんは新しい人材の必要性に伴い2年前に参画されています。一方奥村さんは、新しい人材がどんどん採用され社内組織が変容していくのを見てこられたと思います。お二人から見る日産自動車の組織はどのようなイメージですか?

岡氏:私はもともと家電の業界でIoTを扱っており、衛星通信を使いながらソフトウェアをダウンロードさせるようなことをやっていました。転職を考えたのは、当時日産はいろいろな視点を持つ人材を集めながらイノベーションを興こそうとしていて、自分のコネクト技術に関する知見が活かせる場があったのがポイントでした。

入社当初はいろいろな意味で違いを感じましたが、その違いをきちんと意識しながら自分の特徴を出していきたいという思いがあり今に至りますし、それを許容できる文化が今のコネクティドチームにはあると感じます。コネクティドは新しい分野ですので、新人もたくさん入社していますし、中途採用が非常に多い部門でダイバーシティ化も進んでいます。私の部署では約4割が女性で、男性・女性といった垣根はありません。昔からある会社ですので「男性社会なのかな?」と思いがちですが、非常に女性が多いですし、女性が活躍しやすい会社であることを強く感じます。

奥村氏:もともと日産自動車は、かなりダイバーシティが進んでいる会社で、私が入社した頃ですら、他の会社に比べると女性や外国人の方は多かったと思います。先日ある会議をしている時に、喋っているのが全員女性の管理職だったのを見て、他の会社ではあまりない光景では?と思ったものです。また、年齢や立場によらず発言できる文化もあり、部長クラスの方とも普通に喋ることができるのも当社ならではと感じます。

澤氏:育成制度についても伺います。育成プロセスに関して、ご自身が体験した感想やもっとこういうものがあればよいのに、といったことがあれば教えてください。

奥村氏:たとえばコネクテッドに配属されようとそれ以外であっても、車の全体像についてわからなければ、「どこに何の部品がついているのか?」という基本的なことを把握できず開発も困難を極めます。その点、当社では教育プログラムが備わっており、「車はこういうものだ」と理解するための技術講座がすべての技術において用意されています。ほかにも、ソフトウェアを自分でコーディングできるようにするための集中プログラムもあります。

また、多くの社員が短期あるいは何年にもわたって海外出向しているのも特徴です。上司や人事の方々が本当によく社員を見ていて、「この人は何年後にこのポジションでこういう仕事をしてもらう、そして戻ってきたときにこの部署に行ってもらおう」といった計画がしっかりされているように感じます。私もアメリカに行った経験は今でも非常に役立っています。

岡氏:私はマネージャーとして入社しましたが、車のことを知るための技術講座は中途採用の社員全員が必ず受けさせられます。社員に中途採用が多いということもありOJTといった形で日産の文化をみんなで教え合う風潮もありますので、早く馴染むことができるのも転職のしやすさにつながっているかもしれません。

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―5. 一緒に働きたい人物像について

澤氏:たとえば「こんな人と働きたい」「こういう人と一緒に働けると非常に楽しい」といった人物像があれば教えてください。

岡氏:私は採用時に、自分と同じタイプの人間を採用しないようにしています。違う目線を持つ方のほうが、会話に参加するのも楽しいです。また、「これを自分はやりたい」と強く思っている方、そういう方にとても魅力を感じますので、一緒に仕事して楽しいのではないかと思います。

奥村氏:私は2つありまして、1つ目は「一般的なお客様の気持ちになれる人」です。何十年も同じ会社で働いています、という方は少々片寄った見方をしてしまいます。もちろん、それがダメだというわけではありませんが、お客様の感覚で語れるような幅広い経験をしてきた人と働きたいという気持ちはあります。

もう1つは「自分がアップデートされていく感覚を楽しめる人」です。当社は学ぶことに貪欲な人が多い会社です。採用面接で大学生と話す際に「今の歳になっても成長を感じますか」といった質問をされることがあるのですが、私自身毎週いろんなことがアップデートされている感じですので、自ら学びアップデートしたい意志のある人には非常に働きやすい職場といえます。

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―6.質疑応答

Q.部門間の風通しは良いのでしょうか?

A.風通しは非常に良いと感じます。みんながお互いを信頼して関わり合いながら話をしていけますし、なかには「〇〇さんに聞いてみたら?」と、社内で人のつながりがないとできない組織内コミュニケーションもかなり活発に行われます。困った時に頼れる人を知ってるのは強みになりますし、そんなネットワークを広げていけるのが当社の強みかもしれません。

Q.激しいグローバル競争や大きな変革の中にある自動車業界で、どのように日産自動車としてのアイデンティティを保ち、どのような着眼点で日頃開発されているのでしょうか?

A.当社はいい意味で八方美人であって、いろいろなものを取り入れることに抵抗のない会社です。組織自体もいろいろな国の人が働いていますし、日本だけに固執しない多様性を受け入れる土壌もありますので、「この市場に対してはこうしよう」「パーソナライズされた課題に対してもこう対処しよう」といった柔軟性を持った開発を行っています。

Q.VUCAの時代、今後自動車のあり方はどのように変化していくと思いますか?

A.現在はライフスタイルの変化から、モビリティを取り巻く環境が変わってきている時代です。そんな中、一社だけでできることには限界があるとも感じていますので、他社を巻き込み、それぞれの強みを活かしながら連携することを今後はより強く推進していきたいと思っています。

Q.競合他社と比較してコネクティド領域で勝っている、負けていない点について教えてください。

A.「お客様のために」という部分に常にこだわりを持ってやっている点は他社に負けません。毎月ソフトウェアやアプリケーションのアップデート作業など、どれをとってもエンジニアが熱い思いでこだわりを持ちながら作業しています。また、スマホから車と連携して行える機能・サービス数については他社と比較してかなり多いです。数がすべてではありませんが、チーム内で「これがやりたい」と決定してすぐ実装できるのは我々の強みと言えます。他には、日本のマーケットだけでなくグローバルマーケットもありますので、いろいろな視点を持ちながらアジャストしていくことも強みです。

Q.組織内における新旧比率はどのくらいですか?

A.部門によって異なりますが、開発部門での新旧比率は8:2もしくは9:1程度です。もともといる社員の知見や受け継いできた文化の継承は必要と考え、1~2割はキーとなるメンバーがしっかり残っています。なお、コネクティッド開発に関わる課の中には新旧比率が半々というところもあります。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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