採用企業インタビュー
江崎グリコを牽引するデジタル人財~創立100周年を迎えて取り組むデジタル改革~
江崎グリコ株式会社
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- 江崎グリコ株式会社 デジタル推進部長 武子 弘司氏
- 「ポッキー」や「ビスコ」などで知られる老舗食品メーカー「江崎グリコ」が2022年2月に創立100年を迎えました。同年に発表した中期経営計画では新たな戦略を発表すると同時に、全社員を対象としたリスキリングの実施や、デジタルを活用した製品開発やマーケティング施策に注力することを掲げています。
異業種からのデジタル人財を積極的に採用し、次世代の食品メーカーとして変革を推し進める江崎グリコの現状と求める人財像について、デジタル推進部長の武子弘司氏に伺いました。
創立100周年の今、原点に立ち返るためのデジタル化
―2022年に創立100周年を迎え、パーパス・ビジョンを新たに制定されていますね。
新たにパーパスを「すこやかな毎⽇、ゆたかな人生」、ビジョンを「Glico グループは人々の良質なくらしのため、⾼品質な素材を創意工夫することにより、『おいしさと健康』を価値として提供し続けます」と定めました。
また、中期経営計画においては科学的エビデンスに基づく製品開発や、顧客起点でのバリューチェーンの構築、生活者ニーズに対応した事業単位でのマネジメントなど、大きな変革を促す計画を打ち出しています。
江崎グリコは創業者の江崎利一が牡蠣の煮汁からグリコーゲンを発見し、キャラメル菓子として製品化した経緯があります。私が入社した2019年の時点で、既に「創業の精神に立ち返り、健康を意識した方針に舵を切る」という気運はありました。
その象徴的な取り組みとして、当社が運営するファンサイト「グリコクラブ」を刷新し、「with Glico」というコミュニティサイトが2020年6月に誕生しました。2022年2月に発表した中期経営計画でも、お客様と共に社員が共創することで江崎グリコを変革していくという方針を掲げていますが、with Glicoはそういった意志を体現する重要なサイトとして位置付けています。
2022年12月にデジタル推進部を立ち上げました。この背景にあるのも、お客様起点による価値創出です。特に昨今はチャットGPTに代表されるような生成系AIが台頭しています。こうした技術に次世代の高速通信が交わることにより、AIが更に世の中に浸透していく未来を強く意識しています。その中でもお客様と共にあるデジタルこそがGlicoの使命と感じております。
一方で社内に視点を向けると、Glicoグループが持つデータ・デジタルのスキルや資産がサイロ化していて、シナジーが生まれにくい現状がありました。グループ内にあるデータ・デジタル関連の組織を集約することで、新しい施策につなげる目的でデジタル推進部は始動しました。
―デジタル推進部の取り組みについて教えてください
デジタル推進部は3つの組織に分かれております。当社サイトやオウンドメディア、SNSなどをデータ解析から内製化して運営するデジタルコミュニケーショングループ、データ・デジタルを活用した新規事業創出を担うデータサイエンスグループ、そして当社の直販サイトや大手ECサイトとのビジネスを推進するD2Cグループがあります。
各グループに共通している点が2つあります。
一つ目は先ほどからお話している通り、お客様起点ですね。
お客様と共創することによって、世の中の変化にも対応していくという考えです。with Glicoでは製品や運動・睡眠・栄養等の課題に合わせたコミュニティがあり、お客様と直接コミュニケーションをとるファンミーティングやオンラインセミナーも開催しています。そういった場で直接お客様と対話することから学ぶ点は非常に多く、時代の変化を感じられる場でもあります。
そして二つ目はデータ戦略です。
GlicoグループがグローバルでD2Cを展開する戦略において、データ戦略は最優先課題の一つと認識しています。CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を通じたマーケティング活動においては、データベースの中に闇雲にデータを入れるのではなく、「お客様にどういったサービスを提供するために、どのようなデータが必要であり、それをどのように整備するのか」という発想と1st Party Data活用・戦略が非常に重要です。
データは活用されて、はじめてお客様に貢献できるものであり、D2Cを進める上で欠かせないものですので、グループ全体で注力しています。
部署横断でデジタルを推進し、社員の意識を改革する
―社内のデジタル化をGlicoグループではどのような体制で進めているのでしょうか。
デジタル推進部の若手社員をプロジェクトリーダーに起用し、部門を横断したプロジェクトを進めています。具体的なケースを紹介すると、with Glico内に書き込みされたり、直接寄せられた約2万件のVOC(Voice of Customer)や、当社が運営する通販サイト「グリコダイレクトショップ」のレビュー欄などお客様の声を分析し、さまざまな施策に反映しようとしています。
―デジタル化を進める上で、課題はあるのでしょうか?
社員のマインドを変革させることが一番大変だと思います。
会社では多くの人が働いている反面。どこか他人任せにしてしまう部分があります。
また、最初から失敗を恐れるがあまり、アジャイルですべき開発も要件定義前の段階で大量な文書と多くの時間を費やし、万全を期して進める慣習が根付いています。デジタルの文脈で言うとすべてが「ウォーターフォール型」なんですね。
良い習慣だとは思いますが丁寧に時間をかけ過ぎるがゆえ、変化の激しい今の時代に即しておらず見直しや取りやめになるケースも多くなりがきです。数ヶ月でプロトタイプを作っていき、高速でPDCAを回すような「アジャイル型」の進め方が今の時代には求められます。今はそれを推進できる人財・マインド変革が課題だと捉えております。
―アジャイル型にシフトする上で、どのような資質やスキルが必要なのでしょうか
俗な言い方かもしれませんが、「人間力」ですね。
デジタル推進部では読書会や異業種の方との合同研修を通じてマインドを変えていく取組を進めています。一方でプロジェクトを推進していく立場からリーダーシップも必要です。とりわけ傾聴能力/ファシリテーション/プレゼンテーション能力/ネゴシエーションといったリーダーシップを構成するスキルは欠かせません。
加えてAIの時代が来ていますので、生産性改善をAIに任せつつ、クリエイティビティや前例のないものを生み出すスキルや勘(気づく力・タイミングを読む力)も醸成していく必要があります。こうした能力はすぐ身につくものではなく訓練が必要ですので、さまざまな形で育成する機会を設けています。
Glicoグループのデジタル人財の育成は22年度から開始していて、2024年度までに全社員がデジタル教育を受講している状態を目指しています。全社的な教育プログラムと並行して、各部門でプロフェッショナル人財を育成する体制も検討しております。
―リスキリングにかなり力を入れているのですね。具体的にどのような内容なのでしょうか。
デジタル教育プログラムは大きくは4段階に分かれています。初級レベルではeラーニングを活用したオンライン研修を実施。中級・上級者向けにはデジタル推進部の講師担当によるレクチャーや個別プログラムも進めています。
社内人財だけではカバーできない領域については、外部の企業と連携したプログラムの開発も進めております。中級レベルまで進むとExcelでの多様な関数を駆使するレベルでしょうか。上級は非常に難易度が高い領域ですので、全社員がそこに到達するとは考えていません。具体的にはデータサイエンティストやデータエンジニアと言われるレベルに相当します。アプリケーションなどを自ら開発できるレベルになります。
Glicoグループが求めるデジタル人財と未来像
―全社員のデジタルスキルの底上げを図りつつ、その中からデジタル領域のプロフェッショナル人財を育成していくプランということですね。一方で外部から採用する即戦力のデジタル人財には、どういったスキルを求めていますか?
これまでお話ししたGlicoグループの戦略にも密接に関わることですが、データサイエンスの領域は非常に重要です。さまざまなデータを目利きしながら選別し、あらゆる分析手法により、事業(ビジネス)に対する提案まで落とし込める人財がキープレイヤーになると考えています。デジタル推進部の中にデータサイエンスグループという組織を設けたのは、そういった意図があります。
―Glicoグループの今後のデジタル改革に、データサイエンティストが貢献できることを教えてください。
部門ごとに課題が異なりますので、貢献できることや必要なスキルも異なります。
たとえば、セールス部門であればエリア需要予測が挙げられます。A商圏と類似したB商圏があれば、同様な品揃えや売場づくりをB商圏で行った際にどうなるのかを多変量解析を用いて予測し実行・検証する、といった活動です。人時生産性の観点から、自ら分析ツールを作り、活用、すぐに取引先に提案するといったアクションが理想です。
また、商品開発に関わるマーケティング部門で言えば、あらゆるお客様のVOCをデータマイニングし、ワードクラウドや共起ネットワークを自動生成し、次なる商品やサービスに活かすなどといったことが日常業務として行われるようになるでしょう。
―お話を伺っていると、異業界の方が活躍できるような印象を持ちました。
私自身も前職は非食品メーカーですが、キャリア採用で入社する社員の多くは異業界出身です。「食」という健康に直接貢献する業界でもあること、また「食」そのものは楽しい領域ですからそれに対して新しい価値創造ができることに魅力を感じて入社される方が多いと私は感じています。
食品メーカーに入社する方は「食」が好きだという方が大半を占めますが、デジタルの文脈からキャリア採用で入社する方の多くは社会を自分たちで変えることや未来を想像することが好きな方が多いですね。江崎グリコとしても、そういった志の高い方に是非入社いただきたいと思っています。
―御社のデジタル・マーケティングにおけるユニークな活動として、「GLICODE(グリコード)®」がありますね。子供向けのデジタル教育にも目を向けるのはどういった狙いからでしょうか?
GLICODE®は小学校低学年からプログラミングの考え方を身に着けることで理論的思考力や問題解決能力が育つと考えられるのではという思いから開発しました。元々は「ポッキー」を担当している部署が開発したもので、ポッキーをルールに従って並べるだけで、誰でも手軽に食べながら、遊びながらプログラミングの基礎的な考え方を学べるといったアプリケーションとなっております。
現在ではそこから発展した「GLICODE MAKER」もリリースしております。お菓子を使わずにプログラミングが学べ、GLICODE®で登場するステージを自ら作ることもできます。現在は全国多数の小学校や大手ショッピングモール様のイベント等でも採用いただいており、私たちも手応えを感じています。
こういった取組みを進める背景には小・中学生や高校生といった次世代の方々にデジタルに関心を持つきっかけを提供すること、そしてデジタル人財育成に貢献するという社会使命があります。
―最後に、江崎グリコへの応募を検討されている方に対してメッセージをお願いします。
江崎グリコは「すこやかな毎日、ゆたかな人生」をパーパスに、食を通じて健康寿命の延伸を目指す会社です。
デジタル推進部もこのパーパスに貢献する業務に携わっています。私は「寄り添うデジタル」という言葉を多用するのですが、お客様の心に寄り添うデジタル活用を通じて満足度を高めることで、社会に貢献すること――そういった思いが私たちの提供する食品に反映できると思っています。
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