採用企業インタビュー
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「ものづくり」する金融機関・ウェルスナビが求めるエンジニア像
ウェルスナビ株式会社
- ウェルスナビ株式会社
執行役員CTO 岡本 健氏 - 株式会社シンプレクス・テクノロジー(現シンプレクス株式会社)にて、大手証券会社への債券向けフロントシステムの導入、大手銀行へのデリバティブ商品向けミドルシステムの導入をプロジェクトマネージャとして推進。その後、2015年12月にウェルスナビに入社。リードエンジニアとして、サービスの設計・開発・運用を推進。2018年12月に執行役員、2020年7月にCTOに就任。主にロボアドバイザー「WealthNavi」のシステム開発、セキュリティを統括。
資産運用サービスを提供するウェルスナビ株式会社では、2021年4月に開発部門の組織を再編しました。急成長を遂げる事業の背景に、プロダクトやエンジニア組織に対してどのような思いがあるのか。CTOの岡本 健氏に、JACリクルートメントのFintech領域専門コンサルタント 穂満健志 がインタビューしました。
日本に新しい金融インフラをつくる
―最初にウェルスナビの事業内容について教えてください。
お客様から資産をお預かりし、「ロボアドバイザー」が資産運用を自動で行うサービス「WealthNavi」が主軸のプロダクトです。「WealthNavi」は、2016年1月に招待制ベータ版からサービス提供を開始し、同年7月に正式版をリリースしました。2017年1月にSBI証券との提携サービス「WealthNavi for SBI証券」の提供を始めて以降、さまざまな金融機関・事業会社と提携してきました。
そのほかに、2017年5月にはおつりを資産運用に回すアプリ「マメタス」を提供開始、2021年2月にはWealthNaviの新機能「おまかせNISA」をリリースし、WealthNaviを軸にさまざまなサービスを展開しています。
―現在の開発組織の体制について教えていただけますか。
会社全体でいうと、開発部門は50名規模になりました。
現在は、年当たり4〜5社のペースで提携先が増えているため、提携先との連携部分のシステム面の作り込みや、口座を開設いただいたお客様の体験の質を向上させるための開発が主なものとなっています。それに合わせて、2021年4月に開発組織を再編してWealthNaviのサービス開発では3つのチームからなる開発組織になりました。
主に顧客獲得・口座開設手続きの部分を担当する金融システム開発チームと、口座開設されたお客様の満足度・LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるミッションを担うカスタマーエンゲージメント開発チーム、証券会社としてのコア業務である取引や入出金などを取り扱う取引管理チームという形で、事業を支える3つのチームがあります。
加えて、インフラやリリース作業などの運用面についてはシステム基盤チーム、セキュリティやコーポレートIT面ではセキュリティチーム、データ分析等のデータ基盤を支えるAI・分析基盤チームがあります。開発部門の半数近くがJavaエンジニアで主にサーバーサイドの開発をしており、それ以外に、デザイナー・アプリエンジニア・フロントエンドエンジニア・インフラエンジニア・セキュリティエンジニア・データエンジニアが数名ずついます。
―会社として「働く世代に豊かさを」というミッションを掲げられていますが、開発部門としてのミッションやビジョンなどはありますか?
「働く世代に豊かさを」というミッションは、会社全体で掲げているものです。開発部門については、もう一歩踏み込んで、「『ものづくり』する金融機関」というビジョンを開発組織やメンバーの成長の方向性にしています。
―「『ものづくり』する金融機関」にはどういった意味が込められているのでしょうか。
他社では、業務要件を企画するチームと、それを実装するチームを分けるのが一般的だと思います。開発が実装にフォーカスしたほうが開発効率がよいからです。でも、ウェルスナビはそれとは少し違っていて、エンジニア一人一人が「考えて」実装することを意識しています。
もちろん、企画や業務要件を定義する部門は別にありますが、エンジニアは他の人が決めたものを言われるままに実装するのではなく、エンジニアはエンジニアとして、考え、意見を言い、コミュニケーションをとりながらよりよいものを作りましょうという考え方です。もしかしたら、実装だけにフォーカスするよりも効率が落ちるのかもしれません。でも、金融インフラを標榜するウェルスナビとしては、それを実現するためにはどうすればよいのか、そこの部分をエンジニアが主体となって創っていく組織にしたいと思っています。それが、「『ものづくり』する金融機関」の意味するところです。
「金融はもういい」と思ったはずが再び金融の世界へ
―岡本さんのこれまでのご経歴を教えていただけますか。
ウェルスナビは3社目になります。大学時代、プログラミングを少しだけやっていましたが、当時は特にエンジニアになろうと思っていたわけではありませんでした。でもたまたま新卒で入社したのがSIerで、エンジニアの道に進みました。その後、金融系SIerへ転職し、そこで初めて金融に出会いました。10年の在籍期間中に証券会社と銀行を担当し、業務知識とエンジニアリングを学びながらマネジメントも身につけました。その後、2015年12月にウェルスナビに転職して、今に至ります。
―どうしてウェルスナビに転職しようと思われたのですか?
当時は金融系SIerで10年間仕事をし、証券会社や銀行がどういうビジネスで、どんな仕組みで業務を回しているかが一通り見えたところでした。それで、「金融はもういいかな」と思ったのが転職のきっかけです。
スタートアップを中心に自分の力を試せるところはないかと転職先を探していた時に、たまたま金融系SIerで一緒に働いていた同僚の2人が、ウェルスナビに転職していました。うち1人は元上司だったのですが、彼らに「転職したから遊びに来ないか」と言われて顔を出したら、ほとんど空っぽのオフィスで机を組み立てていましたね。
―2015年だと、まさに立ち上げの時期ですよね。
そうです。本当に立ち上げたばかりで。オフィスに行った時に元上司が、一緒に働いていた時よりも明るい顔で仕事をしているのを見て、「ああ、ここは楽しいのかな」と思って。それがすごく印象に残りました。
一度は離れようと思ったはずの金融の世界でしたが、ウェルスナビが既存の銀行や証券会社ではできないことをやろうとしていること、日本の新しい金融インフラになるというビジョンに惹かれて、結局また金融の世界に身を投じることを決めました。
開発メンバーが互いに何をしているかが分かる組織づくり
―4月に組織を再編したとのことでしたが、以前とはどのように変わったのでしょうか。
以前は、サービスサイドとバックオフィスサイドの2つのチームに分かれていました。そのチーム分けは、私が入社した頃、最初のプロダクト「WealthNavi」のリリースに向けて開発していたときに既にできていたものです。当時は小さいチームでしたから、周りのことなど考える余裕もないくらいのスピードで開発を進めていた割には、メンバーのやっていることが自然と共有できている状態でした。
その後、私の前任のCTOが入社し、2017年にSBI証券と提携しサービスが始まった頃、当時はマメタスの開発もあり、エンジニアが一気に30人くらいにまで増えました。そうして規模が変わっても、当初のサービスサイドとバックオフィスサイドという大きなチーム分けのままでやってきました。そこからメンバーもさらに増え、今後プロダクトを拡張する上で開発メンバー間の共有・連携が十分に取れなくなる懸念が出てきたことから、組織を再編することにしました。
3月までは、サービスサイドのチームの中で、顧客とのチャネルごと、つまり、「WealthNavi」担当と「WealthNavi for ○○」担当といった形で、さらに小さいチームに分けていました。この場合、1個のプロダクトを1つのチームで抱えているため、プロダクトごとのスケジューリングがしやすい、コミュニケーションロスが少ないというメリットはありました。半面、全プロダクトに共通するような業務の変更があると、サービスサイドとバックオフィスサイドもそれに合わせて変わりますし、その度にチームを超えてコミュニケーションをとる必要があり、コミュニケーションのコストが大きくなっていました。そこで、4月からは業務ごとにグループを編成した形です。
お客様とのコミュニケーションの変化に伴うUI/UX改善が課題
―現状で、開発部門の課題としてどのようなものがありますか。
新しい組織の形にプロダクトと開発プロセスを合わせていくことが喫緊の課題です。今は、前の組織でメリットだったことが、逆にデメリットになっている状態です。このままだと、チームごとのスケジュールがコンフリクトを起こす場面が出てくるので、リリースの単位や開発の単位を、組織が動く単位に合わせられるようなプロダクト構成にしていく必要があります。
ここが解決されないと開発スピードを最大化できず、せっかくの組織変更があまり意味のないものになってしまいます。とはいえ、組織を変えたばかりなので、プロダクトと開発プロセスをどう変えていくかはメンバー間で今後イメージのすり合わせが必要ですし、そこまでの道のりをどうロードマップに落とし込むかも計画中です。組織変更の成果が出るかどうかは、これからにかかっています。
―他に、事業やサービスに関連する部分での課題感はありますか。
お客様とのコミュニケーションが変わってきたことは1つ大きな課題だと思っています。2016年にサービスインした頃はお客様もまだ少なく、投資・資産運用経験が一定程度あるアーリーアダプターの方たちでしたので、WealthNaviに多少の違和感があっても好意的に使ってくださるお客様ばかりでした。
しかし現在は、お客様が26.9万人(2021年3月末時点) という規模になってきていて、投資・資産運用経験もあまりない方の割合が増えてきています。そのような中で、Webサイト上やアプリの画面上で、どのような説明を書けばよいのか、どのような言葉遣いや操作感がお客様にとって分かりやすく、ストレスなくお使いいただけるのかを模索しているところです。いわゆるUXの部分ですね。
組織の成長に伴いマネジメントの必要性が高まる
―エンジニアの皆さまは中途採用で入られたと思いますが、前職での経験・バックグラウンドはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。
割合としてはWeb系・ゲーム開発の会社にいた人が8割くらいで、あとは金融系SIerにいた人が中心です
―入社時に金融の業界知識がなくても、キャッチアップできるということですか。
金融の知識が必要なプロジェクトもありますが、プロジェクトの数としてはそれほど多くないので、全体としては対応できているというところだと思います。どちらかというと、やはりお客様の体験を最優先に考えるということで、Webサービスやゲーム等の開発経験者が多くなっているのだと思います。
―実際に活躍されているのはどのような資質、あるいはマインドをお持ちの方ですか。
チームとして周りを見ながら動けることだと思います。例えば、開発に集中したい人は開発に集中してもらいたいので、その分手薄になる企画の部分は、それが得意な人がカバーし、プロジェクトマネジメントが必要だと感じた場合は、得意な人が自律的に動いてカバーする。得意分野を最大限生かせるように、それぞれが考えて動くことで、「WealthNavi」の開発は上手く回っていると思います。
―今後一緒に働いていきたいのはどんな人でしょうか。
私個人としては、人を巻き込んで前に進める人が好きです。スキル面でも性格の面でも、いろんな方と働いてみたいと思っています。CTOとして言うと、今まさに必要としているのはマネジャーです。いわゆるピープルマネジメントができる方ですね。
組織変更する前は、大きくサービスサイドとバックオフィスサイドの2つしかチームがなかったので、得意な人が必要となったタイミングで頑張ってどうにかするというような体制でしたが、組織を業務で分けたため、今後はそれぞれのチームに複数のマネジメントが必要になります。ただ、ピープルマネジメントだけをするイメージではなく、プレイングマネジャーとして手を動かすこととピープルマネジメントをバランスよくできる方が望ましいです。「マネジャーとしてメンバーから信頼される上で、プレイヤーとしてしっかり仕事ができる部分を見せられる」そのような方に、ぜひ参画いただいて、一緒に働きたいと思っています。
組目線は常にユーザー視点、「働く世代を豊かに」を追求していく
―事業についても少しお伺いできればと思います。求職者の方からWealthNaviの将来性について聞かれることがあるのですが、岡本様から見てどのようにお考えでしょうか。
おかげさまでお客様も提携先も増えて「WealthNavi」は順調に成長してきていますし、「長期・分散・積立」の資産運用プラットフォームとして、このまま継続していくことは当たり前の前提として考えています。
ただ、将来性という点で言うと、目線は日本の新しい金融インフラをつくることを目指しており、「WealthNavi」事業はあくまでその手段の1つという位置づけです。日本ではこれまで、広い意味での投資について教育を受ける機会がほとんどなく、将来に備えるための長期投資も広がっていません。しかし一方で、以前のように給料が右肩上がりには上がっていかず、年金支給開始年齢も上がり、退職金も減る傾向にあります。
少子化の影響で年金にも不安があり、「老後2000万円問題」が社会的に注目されている今、資産形成・資産運用に目を向ける「入り口」としての「WealthNavi」の貢献度は決して小さくないものです。私たちのサービスの出発点には、今、現役で働いている世代が将来も豊かな暮らしを送れるようにしたいという思いがあります。そのミッションを成功させるための事業・プロダクトづくりを、「WealthNavi」だけにとらわれず継続的に考えていきたいと思っています。
インタビュアー
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- 穂満 健志
- 2014年に中途でJACに入社。WEB系プラットフォーム企業担当を経て、2020年にFintech部門の立ち上げに参画。WEB系Fintech企業担当チームのリーダー。
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