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社会が求めるクリーンな電気をサステナブルに供給する――国内外で再生可能エネルギー事業を進める東京電力リニューアブルパワー

東京電力リニューアブルパワー株式会社

※このインタビューは2024年3月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
永澤 昌氏
東京電力リニューアブルパワー株式会社 代表取締役社長 永澤 昌 氏

温室効果ガス削減を目指すパリ協定の発効以降、日本国内でも化石エネルギーから再生可能エネルギーへのシフトを促す動きが加速しています。再生可能エネルギーの普及はエネルギー自給率改善にも寄与し、サステナブルな企業経営にも貢献することから、官民一体による取り組みが進んでいます。

東京電力リニューアブルパワー(以下、東電RP)は、東京電力ホールディングスから再生可能エネルギー事業を引き継ぐ形で2020に事業を開始。国内では2023年に長崎県西海市の江島(えのしま)周辺海域の大規模洋上風力発電事業を落札したほか、アジアや欧州など海外での発電事業にも進出するなど、日本の再生可能エネルギー普及の中核を担う企業として注目されています。

「風通しの良い文化を重視し、異なる意見を尊重する」と語る代表取締役社長の永澤昌氏に、同社の事業と求める人物像についてうかがいました。

再生可能エネルギー事業で国内外に事業を拡大

――東京電力が貴社を設立した経緯についてお聞かせください

東京電力は2016年にホールディングカンパニー制に移行し、発電・送配電・小売ごとに分社化しました。この背景には電力・ガス小売市場の全面自由化が予定されていたことが関係しています。多くの企業が小売市場に参入するにあたって、各社が独自に送配電網を設置すると無駄が生じます。そのため、発電事業者と小売電気事業者が配送電設備を公平に利用できる仕組み作りの一環として、2015年に電気事業法が改正されました。

東京電力では2016年以前から再生可能エネルギーの開発に取り組んでいましたが、企業経営がグローバルでESG重視にシフトするなかで、再生可能エネルギーに対する意識が国内でも高まったことから、2019年に新たに再エネ専門の子会社を立ち上げました。それが東電RPです。1892年から開始した水力発電は、現在国内163カ所の発電所で約980万kW(キロワット)の電力を国内に供給しています。

水力では国内トップのポジションを維持しながら、風力や地熱、太陽光発電も加えて、2030年までには全体で1600万kWの電力を再生可能エネルギーで供給する計画です。

――2023年12月には政府が進める長崎県江島沖洋上風力発電事業を貴社が落札しました。洋上風力発電に対する取り組みについてもお聞かせください。

銚子洋上風力発電所既に国内で運用している銚子洋上風力発電所

2009年には千葉県銚子沖で国内初の着床式洋上風力発電の実証試験を開始するなど、洋上風力発電の研究は長年進めていました。2021年に政府が実施した洋上風力発電事業者の事業者選定(第一ラウンド)では落札できませんでしたが、2023年までの2年に渡って組織が一丸となって準備を進めました。その努力の甲斐もあり、2023年の第二ラウンドでは住友商事とのコンソーシアムで江島沖海域の発電事業を落札でき、社内の士気も大きく高まりました。

洋上風力発電は漁業区域とも重なることから、地域との共生が欠かせません。当社では今回の入札に際して離島振興、地域振興、漁業振興を軸に継続的に地域産業が発展していく取り組みを打ち出しています。そうした経緯もあり地元からの期待の大きさも感じています。

一方で国内と並行して海外の洋上風力発電にも視野を広げています。2022年には英国を中心に洋上風力事業を行うFlotation Energyを買収し、現在は海外4カ所で合計300万kW規模の事業を進めているところです。海外事業は非常にチャレンジングな取り組みですが、日系の再生可能エネルギー企業といえば東電RPと世界中で認識されるような立ち位置を目指しています。

――資材の価格高騰や世界情勢の影響など、収益性を左右する外的要因も多いと思われますが、現在の市場環境をどのように捉えていますか。

ロシア・ウクライナ間の問題や円安などの影響もあり、数年前に想定していた状況と異なる部分はありますが、着実な収益が見込める状況に変わりはありません。

「RE100」※の取り組みを受けて、ITなどの非製造業でも再生可能エネルギーで消費電力を全てまかなう需要が高まっています。しかし、現在の主軸である水力や太陽光だけでは必要なエネルギーを十分にまかなえず、多少費用は上がっても再生可能エネルギーから電力を調達したいという状況が続いています。この需給関係がどこまで続くかは不透明です。
そこで発電所の建設費などのコストダウンを図りながら、段階的に価格を下げることで低価格化と利益率の維持を両立させて、持続可能性のある事業モデルの確立を目指しているところです。

※RE100…企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的なイニシアティブ。全世界で400社以上の大企業が参画し、日本では環境省が中心となって普及活動を進めている。

――その他の再生可能エネルギー事業についての進捗はいかがでしょうか。

地熱発電では国内1カ所で建設工事、4カ所で採掘調査等を進めています。地熱発電部門は専門の知見を持った方を積極的に中途採用した経緯もあり、洋上風力発電と並んで活気のある組織です。また、太陽光発電では国内に3カ所のメガソーラー施設を保有しています。現在は市場動向を注視しながら洋上風力発電に力を注いでいる状況です。

また、グループ会社の東京発電ではマイクロ水力発電※や木質バイオマス発電にも取り組んでいます。

※マイクロ水力発電…河川水や上下水道、農工業用水などの既存インフラ設備に後から発電機を取り付ける形の水力発電

――貴社では年間328万世帯分に相当する電力を再生可能エネルギーで発電しているとうかがいました。今後はどのように発電所を拡充していく計画でしょうか。

世界でもトップクラスの電力を供給する水力発電で得られた収益を、新しい発電事業に投資しています。当社では「自然の恵みをエネルギーに、そして社会に」という理念があります。より多くのクリーンな電気を供給できるよう、今後は洋上風力発電を第2の柱に据えながら、国内外のプロジェクトを拡大していく計画です。水力発電以外のクリーン電力でも、グローバルで東電RPが認知されることを目指しています。

東電RPが運用する発電所
東電RPが運用する発電所。左上から群馬県丸沼ダム、静岡県東伊豆風力発電所、地熱資源調査を進める栃木県川俣地域、山梨県米倉山太陽光発電所(時計回り)

異なる意見が集まる、風通しの良い組織を守る

――永澤様は新卒での入社以来30年以上に渡って、東京電力グループにいらっしゃいますが、東電RPの人材育成と組織風土の醸成で重視していることはありますか?

最終的な意思決定は私が担う立場ではありますが、上意下達のような組織文化ではうまく機能しません。ですから、自分と異なる意見が周りから自然と出てくることが、組織にとっても健全な状態だと思いますし、そういった意見が出やすい雰囲気作りを心がけています。トップの意見に対して誰も何も反応しないのは異常だと思いますし、「ちょっとそれは違うと思います」という意見が出てきたらしめたものです。

全社員との接点を持つために週に1回、社員とランチに行くようにしているのですが、当社はキャリア入社の社員が多いこともあり、バックグラウンドの多様性には驚かされます。
プロフィールを聞くだけでも面白く、あっという間に時間が過ぎます。ランチでは私自身はフランクに接しているつもりですが、緊張している様子の社員もいる一方で、若くても前のめりに話す社員もいて、時間が合えば終業後に飲みに行くこともあります。

私が若かった頃を振り返ると、社長に対して遠慮無く物申すのは相当勇気が要ることです。私だったら、恐らく無理でした。それでも東電RPは若い社員が新しい技術で世の中を牽引する組織でありたいし、ベテランも若手も関係なくバイタリティのある人が活躍して欲しいと常々考えています。そのためには立場や年齢に関係なく、自分の意見を言える組織風土が重要です。

ランチでは社員に必ず入社を決めた理由について聞いているのですが、ある社員が「複数の企業から内定を獲得し、各社の社員と話した上で一番風通しの良い組織だったのが東電RPだった」と言ったことがありました。私が目指していた組織像が、そのような形で評価されて非常に嬉しく思いました。

――組織の多様性というお話がありましたが、キャリア採用で入社される方が東京電力グループの中でも比較的多いのでしょうか

東京電力グループのみならず他の電力会社を見渡してみても、ここまで多様なバックグラウンドを持った社員が集まった組織は珍しいと思います。さまざまな技術や経験、価値観を持った社員が多国籍で集まっています。技術職で言えば電気だけでなく土木や地熱など、さまざまなバックグラウンドを持った社員がいます。また、異業界で新規事業に携わっていた方やDXに長けた方など、電力業界以外から入社した社員も多数います。

当社の発電事業は100年続く水力発電を受け継ぐ部門もあれば、海外の洋上風力発電に携わる部門やIT技術を活用したスマート発電を進める部門もあります。ですから、限られたバックグラウンドを持った人だけを採用するのではなく、適材適所で活躍できる方を積極的に業界を問わず採用しています。

2030年までに純利益1000億円、日本屈指の再エネ企業を目指す

――2030年までに国内外で600万~700万kW分の洋上風力発電を開発する計画を既に発表されていますが、今後の目標についてお聞かせください。

2030年までの限られた期間の中で、まずは長崎県江島などのプロジェクトを確実に立ち上げることが重要だと思います。現状では純利益が連結で約370億円ですが、2030年には1000億円を目指しています。この目標を達成するためには水力発電の国内トップシェアを維持しつつ、洋上風力発電を第2の柱として成長させていくことが鍵になります。

また、「東京電力」と社名にはありますが、東北や九州、東南アジア、欧州に発電所を立ち上げているように、関東圏以外の幅広い地域で事業展開を進めています。グローバルでは外資の競合が1兆円規模の投資を進めるなど、激しい競争がある中で日系企業としてグローバルで存在感を示せる企業を目指しています。その一つの指標として純利益1000億円を掲げています。


――約6年間で現状から3倍の規模へ成長するにあたって、キャリア採用で入社する方の貢献も欠かせないかと思います。貴社で働く魅力についてお聞かせください。

私は1990年に新卒で東京電力に入社以来、経営企画畑を歩みながら日本のエネルギー業界の変遷を見てきましたが、色も形も無く差別化しにくい電気に初めて「グリーンな電気」という色がついたことに時代の変化を感じています。

ESG経営の観点から再生可能エネルギーによる電力は、あらゆる産業で注目されています。世の中が求める電気を生み出すことで、社会に貢献している実感が得られることが東電RPで働く魅力だと思います。現状では約328万世帯分にクリーンな電気を提供できる体制ではありますが、日本全国の消費電力の5〜6%にも満たない状況であり、未だ化石燃料による発電に大多数を依存しています。

そういった市場環境の中で、2030年に向けて大きく成長していくためには、さまざまな経験を持った方の力が欠かせません。「自分の力が再生可能エネルギー事業でも活かせるのではないか」と思った方には、まずは当社のドアを叩いてほしいと思います。

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