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- 星野 友彦氏
- ReGACY Innovation Group株式会社
執行役員/CTO
星野 友彦氏 - 小学校4年生からプログラミングを始め、エンジニア歴30年。外資系ITコンサルでテクノロジーとイノベーションの責任者を5年従事、大企業のDX構想からシステムの実現まで幅広く、深く支援。
エンジニアだからこそできる社会貢献、日本を良くしたい気持ちから、技術コミュニティ発の新規ビジネス創造イベントを開催。さらなる世界を目指し、17年従事した前職より、スタートアップ企業のCTOとして2023年9月に就任。
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- 澤 円氏
- 株式会社圓窓
澤 円氏 - 元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。
ウェビナー開催レポート
VUCA時代組織に依存しない「スペシャリスト」のキャリア~CTOのキャリアからひも解くAI時代に求められること~
ReGACY Innovation Group株式会社
メンバーシップ型雇用制度からジョブ型雇用制度への転換が進む中、マネジメントロールだけではなくスペシャリストロールを取り入れる企業は増加しています。そのような中でIT分野では続々と新しい職種が誕生し、ビジネスの選択肢が広がっています。
このような時代に「自分はどのようなキャリア選択するのがベストなのだろうか」と悩む方もいるのではないでしょうか。
今回は、ReGACY Innovation Group株式会社でCTOを務める星野友彦氏にご登壇いただき、これまでスペシャリストとしてどのようなキャリアを築き上げてきたのか?エンジニアとしていくつものキャリアを経験したからこそわかる、時代の流れに応じて変化していくキャリアについてお話しいただきます。そんな星野氏のキャリアについてJAC Digitalアドバイザーの澤円氏が深くその核心に迫っていきます。
*本記事は2024年2月21日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。
<登壇者・登壇企業紹介>
1.星野氏のこれまでのキャリアやターニングポイント
澤氏:今回のゲストはReGACY Innovation Group株式会社でCTOを務める星野さんです。スペシャリスト対談ということで、「いかにしてエンジニアあるいはスペシャリストとして生きていくのか」という話を中心にしていこうと思いますが、早速簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
星野氏:私は1970年代の生まれで、小学4年の時に親戚からパソコンをもらってゲームプログラミングを始めました。当時ファミコンが大流行していたのですが、家ではテレビの占有が禁止されていたために長時間ゲームで遊べませんでした。振り返ってみるとファミコンをしていない時間に紙とペンでボードゲームのようなものを作っていて、それがエンジニアのスタートだったのではないかと思います。
パソコンでゲームプログラミングにのめり込んでいった結果、気がついたらIT業界にどっぷりつかり、業界経験はかなり長い方です。これまでにプログラマーやシステムエンジニアを経験し、前職は外資系ITコンサルティング会社のコンサル担当としてシステム開発を行っていました。
2012年には、当時スマートフォンでビジネスすることは到底考えられなかった時代にデジタル部門を担当しました。モバイルからIoT、AI、XRと数々の領域をまたがりながらデジタル部門を先導していきました。
その後、CTIOという立場で社内イノベーション促進活動を経験し、社内で次世代の人間を育成していく観点で活動を行っていたのですが、その際には社内だけにとどまらず世の中のいろいろな人たちと手を組みプロジェクトを実行したいと考え、いくつかの企業とともに「IDEACTIVE JAPAN PROJECT(アイデアクティブ ジャパン プロジェクト)」というイベントを発起しました。
「IDEACTIVE JAPAN PROJECT」について少し紹介しますと、私たちは誰もが才能を持っており、1人ひとりのひらめきがとんでもないものを生み出すかもしれないと考えていまして、アイデアで世界を変えていくことを目指し、社会実装することを試みたプロジェクトです。
現在、日本の将来がよくなると思っている若者はほとんどいないのが現状です。その理由として、環境として非常に悪い状態に今の日本があるわけではないのに、出る杭を打ち続けているからよくないのではないかと思っています。
そこで、私は出る杭をたくさん作りたいと考えました。ただ出る杭の出し方がとても重要で、「これならできるかも」というアイデアは、現実的に既にほとんどが社会実装されています。ですから、いろいろなことを学び、そのうえでしっかり考えることしよう、といった活動が「IDEACTIVE JAPAN PROJECT」でした。
この活動を通じて私自身がエンジニアとして次のステップに上がりたいと考えた時に、日本を変えていく原動力の一員になりたいと思い、それを実現できる新たな道としてビジョンやミッションに共感したReGACY Innovation Group株式会社に参画することを決めました。
2023年の9月に転職したばかりですが、エンジニアとして日本をもう一度明るくすべくイノベーションを量産することをミッションとして活躍していきたい、と自らを奮い立たせている途中です。
2.エンジニアとマネージャーの経験から学んだこと
澤氏:星野さんがエンジニアになる原体験としてはゲーム作りがスタートだったと思いますが、実際スムーズにキャリアスタートはできたのですか?
星野氏:私が就職したころは、ゲーム業界はブラック企業が多い時代でした。そのような背景もあり、ゲーム関連の会社ではなく、ビジネス系アプリケーションを作る会社に入社しています。当時の社長に「私はビジネスをゲームにして楽しみたい」という話をしたところ「20年~30年後くらいに実現できるのではないか?」と後押しをしてもらう言葉をかけてもらいました。今となっては、ゲームのようなビジネスアプリは多く誕生しているので、あながち間違ってなかったなと感じています。
私はキャリアを考える際、「仕事はゲームだ」という点を意識しています。つまりゲームと思えば仕事の中に面白い要素を探せると考えます。仕事を苦役と思っている人は多いと感じるので、仕事を楽しくするうえでゲーム的要素を探すのは重要だと思います。
澤氏:星野さんはマネージャーもご経験されていますね?
星野氏:もともとテクニカルアーキテクトのような立場でドットネットフレームワークでの開発に携わっていた時期もあったのですが、前職でモバイルのリーダーになってからは、営業先を探してきて、売上計画を立て、実際にセールスしてデリバリーする、といった今まで聞き慣れない言葉が飛び交う環境が主戦場となりました。
そのような環境で働いていましたので、私の中でマネージャーとは「領域を支配していく人」「自分が軸になり何を売っていくことでどうお客さまに価値を提供するかを考える人」であり、マネージャー職に就いた最初からその考えで行動していました。
3.マネジメントとスペシャリストの違い
澤氏:スペシャリストとマネジメントは対立軸となるものと言われがちですが、私はそうではないと思っています。ただし両者とも「社会貢献するために何ができるのか」というマインドセットが求められると思うのですが、そこはどのようにお考えですか?
星野氏:私も「マネジメントとスペシャリストのどこに差があるのだろうか」とよく考えるのですが、これはおそらく捉え方の違いだと思います。たとえば、プロジェクトやタスク管理をするようなマネジメントワークを行う側をマネジメント、またテクニカルなエンジニアをスペシャリストと考えるならば、お互い持っていないものを支えてくれる貴重な相棒ではないかと考えています。単に役割の違いや上下関係ではない対等の関係であると感じます。
澤氏:管理業務に関しては今後AIに移っていくでしょう。ムラなく数値化したり、閾値を分析したりすることで、さらに良くなるのではないかというアイデアを自動的に出してくれるとなれば、断然AIの方が人間より賢いので、より一層スペシャリストマインドを持って仕事に臨むことが求められるのではと思います。
星野さん自身、スペシャリストがキャリアを積んで現在CTOとして活躍されているわけですが、ここもつながりがあるわけですよね。
星野氏:私の場合はずっとデジタルという軸があり、新しい技術を使って世の中の仕事内容を変えていくことをデジタルで行っていきながら、少しずつレベルアップしてできる領域を拡げていきました。そして気がついたら最先端なことに携わっており、さらにテクノロジーの次世代を考えて進めてきたために、いつの間にかテクノロジーとイノベーションの責任者という肩書きを社内でもらう形となりました。
澤氏:それはポジションを獲得しようと思って行動してきたというよりは、キャリアを積んでいく中の延長線上に存在していたポジションだった、そのような考えですよね。最近はCTOブームみたいなものがあり、そのポジションを目標にしている人は多い印象です。
星野氏:私の中では誰もがCTOのようなこともありかと思っています。CTO of AIとか、AIのCTO、AI領域のテクノロジーの専門性を持って進めていく方が、AI専門家の最終形のような気がします。また、このような肩書きは結構モチベーションを上げると思います。
澤氏:肩書きでモチベーションが上がるのであれば安いものですからね。階層型でポジションが上がるのを求めている人は、仕事の本質を忘れがちです。権限を持って何か人をこき使えるようなことを求めるのであれば、よいマネージャーになることはないでしょう。キャリアを積んでいく中で、より大きなことをやりたいと思っている時にたまたまそのポジションが空いていた、くらいに考えるのが健全ですね。
星野氏:そうですね、私はCTOが一番偉いと思ったことは一回もないです。ただ一番わがままを言える立場ではあるので、みんなのわがままを集めることが重要なポジションなのかなと思っています。
そもそも上下の関係はあまり好きではなくて、指示命令系統としての上下の関係性はありだと思うのですが、あくまで情報の流れであって、偉い・偉くないことを判断する関係にはしたくはありません。
4.これからの時代に活躍できるITエンジニア像とは?
澤氏:これからの時代、星野さんはITエンジニアのキャリアとしてどのように振る舞えば良いと思いますか?
星野氏:この質問に明確な答えはないと思っていますが、まず積極的にいろいろなことにチャレンジしていけるプレイヤーになることだと思います。よく「自分は初心者なので遠慮します」という人を見かけますが、それではいつまでたっても成長しません。「自分は初心者ですが、楽しみたいのでぜひ仲間にいれてください」と、まず外に出て人とつながることがこれからの時代、非常に大事だと思います。
私の原体験の話で、自分では大したことはないと思っていた技術や経験が、周りの人にとっては「すごい」と思われるものだと気付く瞬間があります。反対に自分からしてみるとその人の経験の方がすごいのに、その人にとっては全然すごくないと思っているものもあります。自分と他人とを測る物差しをそれぞれ持って活動していくことは重要です。
澤氏:これは避けては通れないテーマだと思うのですが、エンジニアはこれからAIとどのように向き合っていけばよいと星野さんはお考えですか?
星野氏:私にとってAIは疲れを知らない友達のように考えています。自分のもとで働かせる奴隷ではなく、一緒に何か実行してくれる相談相手という感覚です。AIはまるで同僚や仲間であるような意識の方が強く、現在もReGACY Innovation GroupでSaaSプロダクトを作っている最中ですが、AIを友達感覚に仕立てたいという気持ちを持ちながら、日々の業務のデジタル化を生成AIならではのコード化のようなパターンで行っています。
澤氏:AIは何回同じことを聞こうと何回繰り返し問いを立てようと、同じようにきちんと返してくれます。さらに答えの精度はどんどん良くなりますからね。AIに恋心を抱くとか愛情を抱くといったSF映画もありますが、あながち嘘じゃないなと思います。
星野氏:ITエンジニアであれば今起きている新しいムーブメントを徹底的に楽しむマインドは非常に重要で、これがないとエンジニアおよびスペシャリストとして成長することは難しいと思います。
5. 星野氏が考えるエンジニアのキャリアについて
澤氏:星野さんご自身は、理想とするエンジニア像に向かって今でも成長しようとされているのでしょうか?
星野氏:もちろんです。ReGACY Innovation Groupって世の中にイノベーションを量産していく会社であるという話をしましたが、そこではAI、その先にはバーチャルリアリティ(=VR)などが来ると考えています。なぜかというと、VRは壊してもいい世界をたくさん作れるものだと思うからです。
私自身VRのさまざまなイベントをやったり、VRでアバターを楽しんだりすることもあるのですが、これからはさらに進化していくのではないかと感じています。生成AIでVRのワールドを作り出せるようになってきたり、データから自動的にアップデートをかけられるようになったりしたらいいなと思いつつ、自らはそれらを実現する世界を作っていきたいと考えています。
もしAIやVRを使ってイノベーションを量産できる仕組みができたのであれば、特に貧困の若い人たちに使ってもらって、自分自身を切り開く武器として活用していただきたいですね。その結果、プロダクトに興味を持った人が「自分はITエンジニアになろう」と思ってくれるような活動をしていきたいです。
澤氏:そのような原体験って大事ですよね。今、貧困というキーワードがありましたが、そういう人はきっかけがなく、そこからどうしても抜けだすことができない、抜け方を知らないというのが、社会課題としてあると思っています。そういったところにもテクノジーの力を使って手を差し伸べるという、その原体験からくるパワーはすごいと感じます。
澤氏:最後に、星野さんが考えるエンジニアのキャリアの先にあるものは何だと思いますか?
星野氏:エンジニアは好きなことや得意なことをすると情熱が生まれてくるという話をしましたが、好きなことや得意なことをただお金にするだけではなく、世の中のために貢献してほしいです。その際に「これが自分の生きがいだ」といえるものを見つけることが、仕事に対するスタンスとなればいいのではないかと考えます。
澤氏:キャリアの中で「成長する」「うまくいく」ことは、ほとんどの場合それを測るための単位は「お金」であり、お金が多いことこそが成功であると思われてしまいます。しかし、これは資本主義的なものの考え方に寄り過ぎているのではないかと少々危惧しています。
星野氏:そうですね、お金を稼ぐことに注力したことで得たものがなんだろうかとふと考えた時に、多分生きがいではなく虚しさのではないかと思います。
澤氏:チャップリンの言葉の中に「人生を恐れてはいけない。勇気と想像力とほんの少しのお金さえあれば生きていけるんだ」というのがありますが、勇気と想像力を掻き立てるのが何なのか?といったら本人のパッションですからね。想像力は非常に重要ですし、子供のころはみんな持っていたはずなのですが、大人になってそれを表に出すことがはばかられるようになってしまうのは非常にもったいなく感じます。さらに想像力を掻き立てて暴走していくぐらいがちょうどいいのではないかなと思いますね。
6.質疑応答
Q. 最近はAIやIT業界の移り変わりがとても早いように感じていますが、スペシャリストとして最新の情報をキャッチアップするために工夫されていること、またおすすめのサイトなどあれば教えてください。
A.星野氏:多いのはYouTubeでAI系の最新情報を語っているチャンネルを1.5倍速で聞きながら、面白いキーワードがあったら実際にサービス登録して試してみています。またアナログですが勉強会にも行きます。
最近のおすすめは「テックミーム(Techmeme)」というサイトです。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスク、サティア・ナデラなどの著名人もチェックしているらしく、非常におすすめです。
Q.自分のスキルを活かしてスペシャリスト的な働き方をするのであれば、一社でフルタイムという雇用形態がそぐわないこともあると思います。しかし、いまだに多くの日本企業ではプロジェクトをフルタイムの正社員がメインで仕切っていることも多く、ピボットするのは難しいと思うのですが、そのあたりはどのように考えますか?
A.澤氏:「こういう条件だからこれしかできない」という考え方はよくない気がします。よいプロジェクトは、正社員がメインで仕切っていたとしても能力でねじ伏せられるのがスペシャリストのいいところだと思います。そこで雇用形態は関係ないと思います。
Q.技術系のマネージャーはどこまで技術を知る必要があるのでしょうか?私はエンジニアですがマネージャーの技術背景が乏しいため、たまに議論が噛み合わないことがあります。
A.星野氏:議論が噛み合わない技術系のマネージャーの方は、実は技術系ではない気がします。マネジメントをどのように考えるかによって答えも変わるのですが、工数や作業ボリュームを仕切っていくようなマネージャーのイメージで物事を考えるのであれば、モノは作れなくてもいいので、「作業工数はこれくらいかかるはずだ」という当たりは付けてほしいと思います。
Q.新しい技術にチャレンジをしたいという思いがあり、社内でもいろいろと要望を出してはいるのですが、今保有しているスキルを活かす職場が優先されてしまいます。転職など、新しい技術を経験できる環境に移るにはどうしたらよいでしょうか?
A.澤氏:何か新しい技術は会社から与えられるものだと思っていませんか?新しい技術にチャレンジするのは自分であって環境ではありません。新しい技術を身に付けたいのであれば、リスクを取って動いてみましょう。たとえば、何か気になる技術を習得するために課金してみる、勉強会に参加する、その際できれば喋る側を経験してみるなどです。そのようにすれば、あっという間にいろいろな技術を吸収しようという考えに変わります。
Q.30後半未経験でのキャリアチェンジ転職は現実的でしょうか?
A.澤氏:何が未経験かという内容にもよりますが、雇う側の立場からしてみたら今持っている経験が会社や仕事にどう貢献できるかをアピールできる方が重要です。現実的かどうかは自ら考えていかないといけない問題であり、誰かに与えられるものではないと思います。現実にできるかどうかは自分の意志であって、夢は必死になれば現実に変わっていくものです。
この記事の筆者
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