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パナソニックが考えるDX時代における必要なキャリア形成とは

パナソニックグループ

※本記事は2022年1月26日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋・再構成したものです。
イベントフォト

私たちの身近な生活や働き方は、コロナ禍で大きく変化しました。
リモートワークの普及や業務のDX推進は、物理的なオフィスやプロダクトの在り方にも変化を及ぼしています。
家電メーカーとして成長を続けたパナソニックも、事業再編を伴いながら、ハードウェアありきではない価値創造に軸足を移しつつあります。

そんなパナソニックでデジタルプラットフォーム領域を担当し、企業変革をミッションとする井之川裕一氏は、外資系コンサルを経て入社しました。
自身を会社における「異物」と称する井之川氏から見たパナソニックの特徴や、DX時代のキャリア形成に必要な考え方、求める人材像について紹介します。

井之川 裕一氏
講師
パナソニック株式会社 空室空調社 常務(兼) エレクトリックワークス社常務
デジタルプラットフォーム/IT担当 井之川 裕一氏

大阪大学卒業後、コンサルティング会社において製造業・ハイテク・ITサービス業界向けにSCM・CRM・BPOなどのグローバルオペレーション確立とビジネスパフォーマンス向上・価値創造のためのコンサルティングに従事。 その後、外資系ソフトウェア企業にて金融業・エンタメ業界において新しい顧客との関わり方や社員の働き方を中心にした企業変革支援を行う。 2019年にパナソニックに入社、空質空調社ならびにエレクトリックワークス社においてデジタルプラットフォーム・IT領域で企業変革を担当。
澤 円氏
講師
株式会社圓窓 澤 円氏
元日本マイクロソフト業務執行役員。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。
2021年4月より株式会社JAC Recruitment デジタル領域アドバイザーに就任。

1.キャリアの形成は転職エージェントと共に

井之川氏:理系の大学を卒業して、新卒でアクセンチュアに入りました。入社式では社長から「経験を積むために、3年でやめてください」と言われましたが、結果として20年近く在籍していました。そろそろ転職を考えようというタイミングで、転職エージェントの方とお話をすると、自分の知らない世界や、分かること・分からないことの区別など、多くの発見がありました。

転職エージェントの紹介で転職したSAPでは、デザインシンキングの考え方などを学びました。その力をさらに活かしたいと思い、2年後にはまた別の転職エージェントの紹介でSalesforce(現:セールスフォース・ジャパン)に転職しました。金融やエンタメ、製造などさまざまな業種の仕事に取り組み、3〜6ヶ月ごとのペースでプロジェクトを作り上げ、さらにそれらを広げてつないでいくのが楽しかったですね。その後、Salesforceの仕事で付き合いのあったパナソニックに転職して今に至ります。

外資系でよくあるジョブホッピングをした、という意識はあまりありません。アクセンチュアからの転職も、SAPからSalesforceへの転職も、一般的なイメージからはやや遠くても、自分の中では非常に納得感のあるタイミングでした。どちらも転職エージェントの方と一緒に話したことで、いろいろなネットワークを多面的に考えることができたと感じています。今では自社の採用を転職エージェントの方に手伝ってもらう立場になりましたが、単なる依頼先ではなく、同じ目線を持つチームのような認識で取り組んでいます。

2.パナソニックへの転職

丸山氏

井之川氏:Salesforceで働いているころ、プロジェクトで出会ったのがパナソニックでした。最初はクライアントとしての付き合いでしたが、いろいろ話したり、悩みを共感したりするうちに、だんだん波長があってきました。自分から雇ってほしいと言おうと思っていたら、向こうからお声がけいただいたので、即決して働き始めたのが2019年のことです。

実はアクセンチュア時代にも、パナソニックと仕事をしたことがありました。企業文化やプロトコルは、ネガティブサイドも含めてある程度分かっていましたが、それも承知の上での転職でした。外から見るのと中で働くのでは全く違うでしょうし、これまでのキャリアで自分が学んだこともたくさんあります。ただ、当時と同じではないという前提のもとで、働く選択に至りました。

澤氏:ここまで人のキャリアについて丁寧に聞ける機会は珍しいと感じます。井之川さんは常務というポジションですが、そうした高い職位の方々の過去はブラックボックス化されていることが多く、いきなり「偉い人」として存在しているようにも見えがちですよね。

井之川氏:私もパナソニックで働き始めた頃、初めてお目にかかる人と話すときには、できるだけ相手のことを深く聞こうとしました。キャリアの変遷が似ていたとしても、個人個人の考え方は違います。それを一緒に理解しようとする機会や姿勢の有無で、その後の仕事のやりやすさやスタンスが変わってきます。大きな会社なので、「パナソニックの人」と括れるほどシンプルな、結論めいたカテゴリやステレオタイプは本来存在しないんです。

澤氏:井之川さんはご自身がパナソニックの常務になると思っていましたか?

井之川氏:まったく思っていなかったし、今でもやっているという感覚がありません(笑)。このポジションは目指してなるものではなく、結果としてなったものでしかありません。経営会議のメンバーを見ていると、驚嘆するくらいの奥深さや胆力、人を動かす力を感じ、私は全然力が足りていないと毎日のように思わされます。自分のユニークさは外部から来た異物ということにあるので、守りに入って存在価値が失われないよう意識しています。

澤氏:キャリア形成を考えた時に、決めうちで一つの答えに縛られるより、もっと柔軟であることが重要ですよね。

3. ハードウェアありきでない価値創造へ

澤氏:井之川さんのパナソニックでの役割を、もう少し詳しく聞かせてください。

井之川氏:パナソニックはBtoCの家電メーカーというイメージが強く、実態も間違いありません。ただ、創業者の松下幸之助が手掛けた二股ソケットやプラグは、家電というより配線器具などのインフラに近い領域にありました。家電かそうでないかに依らず、パナソニックの存在価値は、お客さんの暮らしにある潜在的な困りごとを、顕在的に良くしていくことにあります。このビジョンを上流に置いて、それをプロダクトやサービス、ソリューションとして提供していく会社です。

そして現在、パナソニックでは事業再編が進行し、ホールディングスのなかで分社化が行われています。私はエアコンディショニングなどに関わる「空質空調社」と、創業から続く電材を源流とする「エレクトリックスワークス社」の常務として、広くBtoBのデジタルプラットフォーム領域担当を兼務しています。

家電はもともと生活の一部ですが、最近では設備や電材といったインフラにも結合し、さらにはネットワークを通じてつながっていくことも当たり前になりました。この流れを受け、私たちは単なるプロダクトではない「空間ソリューション」という提案をしています。ワークスペースの生産性やオフィスの文脈で言えば、人の働き方やコミュニケーションの在り方を可視化して、ウェルビーイングの改善などにつなげることができます。ハードウェアは、こうしたソリューションを提供するための手段として利用する、という順番で考えています。

澤氏:コロナ禍やDXというムーブメントの中では、行動変容や意識変容が重要なキーワードになっています。井之川さんはそこに「空間」という観点で切り込んでいるのですね。

井之川氏:デザインという言葉が表す領域も、綺麗で格好良い工業製品を作るという過去のイメージから、既成概念を壊して体験価値を再構築する意味合いに変わっています。オフィスという空間が何のためにあり、どういう位置にあるのかまで立ち返って考えて事業を作っていくことが私のミッションです。

4.大企業ゆえのカルチャーをどう捉えるか

澤氏:パナソニック全社としては、何を目指しているのでしょうか。

井之川氏:全社的にはグリーン・エコノミーやゼロカーボンの実現を目指しています。他方で、経営陣それぞれに聞くと、答えることがバラバラになると思います。たくさんの事業体があり、それぞれミッションや付加価値が違うので、その掛け合わせがうむ価値を模索している最中です。わかりやすく筋が通っているようには見えづらいでしょうが、「人に貢献して価値を生む」という軸はずれていません。

澤氏:井之川さんから見た、パナソニックという会社の特徴を教えてください。

井之川氏:まだ私は入ってから日が浅く、フレッシュな目で客観的に見ている立場という自覚があります。その上で面白いと感じるのは、会社がプラットフォームとして機能していることです。「何かをやりたい」「こういうことを話したい」と思った時に、不思議なくらい、受け止める方や投げる先が必ず存在しています。これは、奥の深いところでソリューショニングに対するDNAが共通しているパナソニックならではの特徴だと思います。

また伝統的に、かたちある物をつくることも、会社のカルチャーとして基本的に備わっています。これも疑いようのなく優秀なケイパビリティです。

澤氏:他方で、パナソニックはものづくりから脱却できていないのではないか、という指摘もあります。

井之川氏:脱却できているか否かのゼロイチで聞かれたら、答えはNOになります。ここで重要なのは、抜け出せているかどうかを常に認識し続けることです。私たちはその道をずっと模索していますが、それはただビジネスとして生き残るためではなく、お客さまに対して価値を提供し続ける会社の生業として当然のことだと思っています。

5. よいチーミングに必要なのは自己開示

澤氏

澤氏:パナソニックにはどのような人に来てほしいですか? ここでは取り替えがきくスキルではなく、マインドセットについてのアドバイスを伺いたいです。

井之川氏:オープンなマインドを持ち、物事を新しく変えていこうとする人です。変わらないことを前提にせず、既成の物事にも意味を見いだし、そこから学びを得て少しでも自分を変えていける人がよいですね。

個人的には、弱みを見せてくれる人と一緒に働きたいですね。組織は階層化されてしまっていますが、その中でもお互いにインクルーシブなコミュニケーションができたり、思いを伝えようとしたりする姿勢を持っているかどうかが重要だと思います。

澤氏:「オーセンティック・リーダーシップ」(ダイヤモンド社)という書籍で、自己開示のありかたについて興味深い言及がありました。リーダーが自分の強さだけを必死にアピールしても、部下はついてきてくれなかったり、共感してくれなかったりする。逆に、弱みや苦手なことを開示するのが重要だと指摘していました。「オーセンティック・リーダーシップ」(ダイヤモンド社)という書籍で、自己開示のありかたについて興味深い言及がありました。リーダーが自分の強さだけを必死にアピールしても、部下はついてきてくれなかったり、共感してくれなかったりする。逆に、弱みや苦手なことを開示するのが重要だと指摘していました。

井之川氏:自己開示しないことには、お互いの正しい理解のもとに仕事ができません。会社の中でも仕事の人脈を作るという感覚ではなく、人としてのつながりやお互いのよさ・弱みを認識して、初めてよいチーミングができます。このようによいチームを作るという観点でないと、プロジェクトをやるにせよ、組織として存在するにせよ、楽しく能動的に動くのは難しいでしょう。

6. 自分自身のコンサルティングから始めるステップアップ

澤氏:ここからはオンラインで参加している方からの質問に答えたいと思います。まず一つ目ですが、「個人のキャリアのステップアップとして、コンサルタント的な視点を持つにはどうすればよいか」という質問がきています。

井之川氏:コンサルタントは回答を出すだけの職能ではありません。ソリューションの幅を広げたり、精度を上げたりという役割もありますが、課題をどのように定義するかが重要です。レベル感を見誤らず、いかに面白く、あるいは新しい定義にするか。そういった再定義の能力が一番大切です。潜在的な困りごとを顕在化するために、課題をうまく定義できるようになれば、キャリアのステップアップにもつながります。

澤氏:まずやるべきことは、目の前の仕事に本当の意味で集中して、その仕事がマーケットの中でどう評価されるかを俯瞰することだと思います。まずコンサルすべきは自分自身であって、目の前の仕事がどう価値を生み出しているか、そのつながりを俯瞰して言語化できるか重要だと思いました。

澤氏:「ハードウェアという立ち位置に限界を感じている」という質問もありました。

井之川氏:ハードウェアからのアプローチに限界を感じるのは私も同感です。他方、限界を感じているということは、逆にそこに可能性があるともいえます。無力感を感じていても、焦る必要はありませんし、そうした感情がない方が不健全な発展を遂げると思うので、大切にしていただきたいです。そのうえでたくさんコミュニケーションをとればよいので、自分のキャリアで損をしていると思う必要は全くありません。

キャリアのステップアップへのシンプルな答えはありませんが、自分の結果から導かれる示唆としては、休むことです。10年でも5年でも良いので、ある程度フェーズを切って、きちんとサバティカルを作って、意識的に忘れるフェーズを作るのはすごく大切だと思います。毎日の仕事であっても、煮詰まった時も、乗っている時もあえて止まってみると、客観的にいろいろなことが見えてきます。



この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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