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抜本的な構造改革を推進するオムロン。
4つの基幹事業に加え、データ活用ビジネスも展開へ

オムロン株式会社

※このインタビューは2024年9月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
新村 輔 氏
  • オムロン株式会社 グローバル人財総務本部 人財開発部
    リクルーティングセンタ長 新村 輔 氏

一般的には体温計をはじめとする医療機器のイメージが強いオムロン。実際には、工場の自動化や再生可能エネルギー関連事業など、多様な領域の事業を展開しています。主力事業の業績悪化を機に抜本的な構造改革に取り組み、V字回復のストーリー実現、および変革と持続的な成長を推進する「人財」を求めています。

今後の事業展開、オムロンの組織風土の魅力、必要とする人財像、活躍支援の取り組みについて、国内グループ採用責任者の新村 輔さんにお話を伺いました。

構造改革を進め、次の成長に向けて新事業を展開

―今回の人財募集の背景と経緯をお聞かせください。

オムロンでは2024年2月、2,000名の人員削減を発表し、国内で1,000名の希望退職を募りました。事業状況の悪化を踏まえ、構造改革の一環として実施したものです。

今回の業績悪化は、オムロンにとって自らを見つめ直す契機となりました。これまで成果が出ていたため見えづらかった課題が、業績悪化によって鮮明になったのです。この気付きと学びを成長につなげるバネとすべく、現在、抜本的な構造改革を進めています。その先にはV字回復のストーリーを描いており、それらを実現するために、新たな推進力をもたらす「人財」を求めています。社内に新たな風を吹き込んでもらえればと期待しています。

ありがたいことに「V字回復をリードしたい」「構造改革でより良い会社に進化したオムロンで活躍したい」と、新たな仲間が集まってきてくれています。現状をチャンスと捉えてくださっていて、非常に頼もしく感じています。

―事業の展望を、どのように描いているのでしょうか。

新村 輔 氏

オムロンといえば一般的に体温計などを思い浮かべる方が多いでしょう。そのため、医療機器の会社と思われる方もいらっしゃるのですが、実は多岐にわたる事業を展開する、コングロマリット企業です。
基幹事業は4つあり、大黒柱となっているのは、工場の制御機器等を手掛ける「インダストリアルオートメーション」事業です。
先ほど触れた業績悪化とは、この事業の主に中国エリアでの低迷によるものです。
現在は、インダストリアルオートメーション事業の収益基盤の強化を進めており、25年度には全社で営業利益を700億円程度まで回復させる予定です。更にその先、26年度には営業利益を900億円程度にするなど、過去最高業績に近づけていきたいと目論んでいます。

もちろんこのV字回復を達成するためには、他の事業の更なる躍進も欠かせません。医療機器を手掛ける「ヘルスケアソリューション」事業では新たなデバイスの創出や予防医療サービスの開発に取り組んでいます。また、「ソーシャルソリューション」事業では、発電を安定化させる制御システムなど、再生可能エネルギーの普及・効率化利用に貢献しています。いずれも堅調な事業環境が続く見通しです。4つ目の「デバイス&モジュールソリューション」事業では、新エネルギーと高速通信の普及に向けて各種デバイスの創出を進めており、需要が見込まれます。

そして、2023年には、新たにグループに加わったJMDC社と連携し、「データソリューション事業本部」を立ち上げました。既存の各事業領域で得られるデータを活用して、ソリューションビジネスを創造し、現場課題の解決や顧客の売上拡大に貢献する事業になります。

私たちオムロンは、インダストリアルオートメーション事業で、部品単体の供給ではなく工場のラインをセットで提供しているため、工場での生産工程全般のデータを蓄積しています。有している多様かつ膨大なデータを活用して、お客さまの課題解決や新たな価値創出に貢献できるよう取り組んでいます。他にもヘルスケア領域では、遠隔診療システムから得られるバイタルデータを医療活動に生かすことが可能です。

近年、「モノ売りからコト売りへ」という流れがありますが、オムロンはかなり前からその方向性を意識したソリューションにこだわりを持っていると思います。データを活用して「お客さまにより高い価値を提供できないか」と、模索を続けてきました。これまでは事業部ごとに取り組んでいましたが、社内の横串を通すデータソリューション事業本部の発足を契機に、さらに発展させていく計画です。

草創期から根付く「社会への価値提供」の理念

―V字回復を実現する原動力となるのは何だと思われますか。

冒頭でお話ししたとおり、オムロンは今苦境に立たされています。しかし、社員たちは必要以上に揺らぐことなく、前を向いているように思います。それは、拠りどころとする「企業理念」が確かなものだからではないでしょうか。業績低迷を招いてしまった「変えなければならないもの」もありますが、理念が間違っているわけではなく、向かうべき方向性も変える必要はないと考えています。

私たちが大切にする価値観として掲げるのは「ソーシャルニーズの創造」です。時代の流れで今やどの企業も社会への価値提供をうたうようになりました。しかし、オムロンは草創期から「事業を通して社会にいかに価値を生むか」「いかに社会をより良く変えていくか」にこだわり、追求し続けています。生意気を言わせてもらえれば「積み重ねが違う」というのが正直な思いです(笑)。

私は、約20年前にオムロングループにキャリア入社しました。入社前は正直「理念といっても建前だろう」と思っていましたが、間もなくして「この会社は本気だ」と感じました。というのも、開発部門の会議に参加したとき、技術や商品について議論が交わされるなかで、「これってちゃんとソーシャルニーズの創造につながるの?」という問いかけが、当たり前のように出てきたからです。通常なら利益やコストの話題に終始してしまいがちなところ、それだけでなく「社会的価値」が常に念頭にあり、文化として根付いていることを確信しました。

―社内でも日々「社会課題の解決」の事例が生まれているのでしょうか。

はい。それらを証明する象徴的な取り組みとして「TOGA(The OMRON Global Awards)」が挙げられます。「社会的課題の解決に向けた個々の取り組みを全社員で共有し、称え合おう」と、2012年にスタートしました。

例えば、TOGAで称えられたものの一つに、「Perfect Sealing(パーフェクトシーリング)」があります。海洋プラスチックごみの一因であるプラスチック包材の削減を目指し、ペットボトルなどの包装不良を大幅に改善する温度調節器の開発を成功させた事例です。

TOGAは現在、次のフェーズへ進むため運営の仕組みのリニューアルに向けて休止中なのですが、例年、社員の人数よりエントリー件数が大きく上回っており、社員たちの「社会的課題の解決」への意欲の高さが表れていると思います。

また、余談ですが、あるプロジェクトマネジャーは開発が一段落した段階で、担当エンジニアをお客さまのところへ連れて行くそうです。そこには、「自分が作ったものが工場内でどのように役立っているか」を自身の目で見て、貢献を実感できるように、という意図がありました。そんなエピソードにも、事業を通した顧客や社会への価値提供にこだわる風土が表れていると思います。

求めるのはオムロンにない専門性を持つ人や、経営・事業戦略の観点で価値創出できる人

―今のオムロンが必要とする人財像をお聞かせください。

オムロンはこれまで一貫して「ソリューション」にこだわってきましたが、今後はますます顧客の現場に入り込んで一緒に課題を解決するような場面が増えると考えています。AI関連の半導体や自動車の電動化など、製造現場で求められる技術が飛躍的に進化するなか、お客さま自身にも答えがなく、手探りの状態にあると思います。そこで、新たな価値を顧客に、ひいては社会に提供していける仲間を必要としています。またデータソリューションビジネスでは、既存事業をベースに、これまでにない価値を生み出していく人財も不可欠です。

担当領域・職種にかかわらず、経営視点で「いかに価値を創出するか」という高い視座を持つ方に期待を寄せています。例えば理財部門は、一般的には「オペレーション」のイメージを強く持たれていますが、当社の理財メンバーは、それだけにとどまらない価値創出に取り組んでいます。数字を正しく算出・処理するだけでなく、数字を分析し、数字の観点から経営に提言(キャッシュアロケート・M&Aなど)を行うといったイメージです。経理担当だった社員が経営企画へ移り、全社の経営戦略に携わっている事例もあります。

理財部門を一例に挙げましたが、全部門に共通して、与えられた役割をこなすだけでなく、経営戦略や事業戦略の観点で価値を創出すべく自律的にチャレンジしていただきたいと思っています。人事としても、そうしたアクションが制限されない風土の醸成に注力していく所存です。

―入社後の活躍支援にも力を入れていると伺いました。

新村 輔 氏

縁あってご入社いただいた方に、能力や個性を最大限発揮してもらえるよう、さまざまな施策を講じています。例えば、オンボーディングの状況をタイムリーに把握・対応できる仕組みの導入や、育成責任者及び伴走者の設定、育成計画策定の徹底などが挙げられます。

何か困ったことがあれば、育成責任者や伴走者にいつでも相談してほしいと考えていますが、実際には直接話しにくいこともあるかもしれません。そこで、人事が「入社後にギャップを感じていることはないか」「支援を必要としてないか」を把握し、問題があれば事業部人事にも働きかけて、横から支援を行う仕組みを構築しています。なお、上司側にも「期待と違うことはないか」など確認をし、お互いが納得して働けるように、早期の問題解決を大切にしています。

また入社後は、中長期的にオーナーシップを持ってキャリアを描いてもらえるように、定期的に上司と面談をして自身のキャリアイメージと上司の考える育成計画をすり合わせたりもします。年齢や職位・職種を問わず、「オムロンに入社したら持てる力を発揮でき、さらなる成長のスパイラルに乗ることができる」――そう言ってもらえるように、私たち採用部門も「入社」ではなく「活躍」にコミットしています。

―入社後のキャリアステップについてもお聞かせください。

エンジニアについては、まず縦のキャリアアップが挙げられます。専門性を高め、「スペシャリスト」や「マイスター」といった認定制度に則って、その領域の第一人者として社内外に影響力を発揮していただくパターンです。

また、海外に活躍の場を移す可能性もあります。プロジェクトのリードといった役割を担い、出張ベースで欧州や中国などに行くエンジニアも一定数います。レイヤーが上がれば、駐在して海外の開発を統括する道もあります。

そして、エンジニアに限らず、オムロンには社内公募・応募制度があります。例えば開発者が人事や事業企画など、まったく異なる業務に自ら手を挙げてジョブチェンジをするケースもあります。オムロンはJOB型人事制度の導入など、早くから社員のキャリア自立を大切にしてきました。年齢を問わない抜擢もますます進んでいます。ぜひ入社後は、ご自身のキャリアビジョンの実現を目指し、上司とも相談しながらステップを踏んでいってもらいたいと思います。

強い覚悟を持って、変革を支える人財の活躍を支援する

―人事のお立場から、現状と今後に対し、どのような思いを抱いているのでしょうか。

今回の構造改革に際しては様々な思いがあります。社会的課題の解決と同様に「人を大切にする」ことにこだわってきたオムロンがここまで踏み込むというのは、相当に強い覚悟での決断でした。

振り返ると、変わらなければならないと、皆以前から感じていたと思います。ですが、業績が好調だったため、なかなか変わることができなかった。しかし事ここに至って、危機感や覚悟のレベルが格段に上がったと感じています。
「今が、変わるための最後のチャンスだ」というくらいに個人的には思っています。

現在オムロンは、変革に向けての提言や行動が歓迎されるフェーズにあります。「自分の手で価値を生み出したい」という思いがある方は、ぜひオムロンでそれを実現してください。

オムロンには、事業を通して社会に価値提供するという理念が根付いているとお伝えしました。それは人事・採用部門においても同じです。私も人事として、自身の仕事でどのような価値を生み出したいかを常に見つめ直し、「事業に貢献している」と胸を張って言えるよう、アップデートしていきたいと考えています。その実践として、これから入社いただく方が活躍できるための支援に、強い覚悟を持って取り組んでいきます。

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