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変革期を迎えデジタル戦略を推進するみずほFG
―CDO梅宮真氏が語るDX組織の全貌

株式会社みずほフィナンシャルグループ

※このインタビューは2023年8月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
梅宮 真氏

株式会社みずほフィナンシャルグループ
取締役 兼 執行役副社長(代表執行役) グループCDO
梅宮 真氏

2017年にグループCFOに就任し、財務戦略、財務・税務、IRを統括。2022年にはCFOに加え、デジタル・イノベーション分野も統括し、2023年からはCDOとしてデジタル戦略を担当。新規事業開発やインキュベーション強化を担う株式会社Blue Labの代表取締役社長も務める。他にみずほ銀行 副頭取執行役員 / みずほ信託銀行 副社長執行役員を兼務。



2023年に新たな中期経営計画を発表したみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)では社内外のDX戦略を担う専門組織を新たに立ち上げ、デジタル改革を本格的に進めています。

中期経営計画に込められた変革への意欲は、2023年以前から既にありました。2017年に新規事業に特化した株式会社Blue Labを立ち上げるなど、金融業界において先進的な取組を進めてきています。

同社の組込み型金融サービスである「ハウスコインサービス」は、ヤマト運輸やパナソニックが導入。加えて米GoogleとDXにおける戦略的提携を締結するなど、さまざまなDX関連の取り組みが進んでいます。この背景にはさまざまなバックグラウンドを持ったデジタル人材の活躍があります。グループ全体のDX戦略を担う梅宮真CDOに、JAC Digitalのコンサルタントがインタビューしました。

1. DX抜きには語れない、〈みずほ〉新戦略

―貴社が2023年5月に発表した新中期経営計画の策定経緯について教えてください。

梅宮 真氏

今回の発表にあたって、企業理念をシンプルにし、“ともに挑む。ともに実る。”というパーパスを新たに策定しました。「なぜ、〈みずほ〉が社会に必要なのか」という存在意義について経営層だけでなく、社員も交えて長期間に渡って議論した末にできたものです。
このパーパスの背景にあるのは、変化が激しい時代において30年後の世界はどうなっているのか、そこから逆算した際に10年後にはどういう世界をめざしたいのかという議論の蓄積です。そのプロセスを踏まえた上で、直近の3年間で私たちの目標を定めたものが今回の中期経営計画、という位置づけになっています。

計画の中ではビジネス面における注力テーマと、経営基盤の強化をそれぞれ5つ掲げていますが、全てにDXが関わっています。例えば注力テーマの中に「顧客利便性の徹底追及」と「サステナビリティ&イノベーション」という項目がありますが、いずれもデジタル抜きでは語れません。
たとえば法人のお客さまに向けては、大企業から中小企業、スタートアップに至るまで、事業を拡大する上での課題に対して、〈みずほ〉がデジタル領域で支援していくことをめざしています。

2. 特化型組織でイノベーションを起こす

―今後のDX推進について社内向け・社外向けそれぞれの取り組みがあるかと思います。それぞれの現状について教えてください。

まず、社外に向けた取り組みからお話します。2017年に新規事業に特化した組織として、「Blue Lab」という合弁会社を設立しています。これまでにJ-Coin Payなどスケール化が見込める事業が生まれており、現在も20〜30件のプロジェクトが進行中です。大手メーカーでCDOの経験を持つ田中豊人さんを副社長に招聘しています。

また、デジタルイノベーション部という部を中心に、法人のお客さまと一緒に新規事業を創出する取り組みも進んでいます。企業や自治体向けにキャッシュレス決済サービスを提供する「ハウスコイン」サービスや「電子地域振興券」サービスのローンチに加え、「ヘルスケアデータビジネス」プロジェクトの検討が進んでいます。

―新規事業に特化した組織を設けるのは、大手金融機関の中でも珍しい取り組みだと思います。どのようなポリシーで運営されているのでしょうか。

2023年4月にBlue Labの社長に就任した際に最初に社員に話したのは、「〈みずほ〉という枠組にとらわれず、自由な発想で取り組んで欲しい」ということです。新しいビジネスアイデアや社会課題の解決につながるアイデアに対して、「それは、〈みずほ〉がやる仕事ですか?」と指摘されて、動きが止まることはあってはならないと思ったからです。

新しいアイデアが、〈みずほ〉の強みが活かせるものであり、〈みずほ〉が取り組むビジネスとして適切なものであれば、Blue Lab発の事業として立ち上げた後に、〈みずほ〉内の適切な部署に引き継ぐという流れもあるでしょう。一方で法人のお客さまと共創している案件で、〈みずほ〉で進めることが難しい内容であれば、合弁会社を設立して、Blue Labの社員が経営者となって事業化を進める選択肢も考えられます。

「自由な発想で新しいビジネスアイデアを出してPoCを行い、ダメだったら別の新しいアイデアに進む」というサイクルを高速で回すためにも、より多様なバックグラウンドを持った優秀な人材を採用し、組織力を強化したいと考えています。そのために現在はキャリア採用を強化しています。

―外部に向けた取り組みと並行して、〈みずほ〉内部に向けたDX推進の動向についてもお聞かせください。

2023年に〈みずほ〉内部のデジタル戦略全般を牽引する部門として、デジタル企画部を立ち上げました。それまでは、さまざまな部署にデジタル基盤を整備する機能が点在していたのですが、それらを集約したものがデジタル企画部です。

過去の事例を挙げると、オフィス環境や社員のPC端末を選定する際に社内の情報は集まる一方で、働く環境のトレンドや先行事例などを外部から収集する力に欠けている部分がありました。そういった課題を踏まえ、外部に対する感度が高く、デジタルの知見を持った人材を集約させる狙いがあります。

加えて、データの利活用を推進するにあたって、セキュリティ&データマネジメント部の中にあったチームをデジタル企画部に集約しています。これまでは課題や機能ごとにチームが点在していましたが、現在はデジタル企画部が社内のあらゆるデジタル基盤を整備、推進する旗振り役となり、社内のDX人材育成にも携わっています。

―ChatGPTの導入に向けた取り組みも始動していると伺いました。

金融機関の中では比較的早い段階から、生成系AIの導入検討を進めてきました。2023年6月末から〈みずほ〉版ChatGPTを導入し、全社員に向けて生成系AIに関するアイデアソンも実施しました。結果2000件超のアイデアが集まり、〈みずほ〉の中でChatGPTをはじめとする新しい技術への関心の高まりを実感しています。

ただ、現時点の取り組みはあくまでも第一フェーズだと捉えています。金融機関の大きな課題としては、数千件を超える手続き集やマニュアルの存在です。これらの膨大な情報をAIに学習させることで、「わからないことがあればAIに尋ねる」という仕組を早期に導入したいと考えています。

3. 〈みずほ〉が求めるのは、未来志向人材

―新規事業創出に特化したBlue Lab、既存顧客とのコラボレーションに注力するデジタルイノベーション部、そしてグループ全体のデジタル推進をリードするデジタル企画部が貴社のDX戦略の鍵を握ることは理解できました。各組織でキャリア採用を進める中で、どういった人材を求めているのでしょうか。

梅宮 真氏

5年後10年後を見据えて、想像力を働かせながら楽しく仕事に取り組める方と一緒に働きたいと思っています。ちょうど今、デジタル企画部と「テクノロジーがもたらす10年後の世界、金融のあり方」について議論をしていたところですが、未来を想像することを楽しめる方に来ていただきたいですね。

―2023年6月にみずほFGの執行理事として、元Microsoft業務執行役員の藤井達人さんが入社されていますね。

藤井さんは即戦力として大活躍しています。生成系AI関連のプロジェクトをはじめ、これまで社内に無かった知見を持ち込んでくれるので非常に感謝しています。藤井さんに限らず金融業界以外の方が入社後に多数活躍しています。例えば、ヘルスケア業界出身の方が、〈みずほ〉が新しい取り組みを始めていると知って、ヘルスケア領域のポジションに入社した例があります。

―金融業界外から優秀な方々が集まっている背景には、どういった採用戦略があるのでしょうか。

この1年、キャリア採用にはかなり本腰を入れて取り組んできました。一人でも多くの優秀な人材を採用したいという思いがありながら、以前のキャリア採用では旧態依然とした銀行目線の選考を進めていました。しかし、そのような選考をしていたのでは、これからの時代のキャリア採用はうまく進みません。そこから、「とにかく気になったら会ってみて、良いと思ったら経営陣を引っ張り出してでもオファーする」という方向に舵を切りました。

採用方針が変わったことで、「以前の〈みずほ〉とは違うらしい」という話が人づてに伝わり、優秀な方がエントリーしてくださるという好循環が生まれつつあるのだと思います。

―デジタル人材が今の〈みずほ〉に入社するメリットについて教えてください

意外と知られていないことなのですが、みずほFG傘下のみずほリサーチ&テクノロジーズやみずほ第一フィナンシャルテクノロジーには、量子力学や人工知能に関する幅広い知見をもった人材が集まっています。日本政府の国家戦略に関連するプロジェクトに従事する、博士号を持つ優秀な人材が組織内に充実しているのが、〈みずほ〉の強みでもあります。彼らとディスカッションをすることで、〈みずほ〉には新規事業につながるシーズが山のようにあることに気づかれるはずです。

また、〈みずほ〉が築いてきたネットワークと信用力も大きなアドバンテージになります。事業アイデアに関するディスカッションを外部の企業と行う際にも、〈みずほ〉のお取引先企業の経営者層にもスムーズに会えます。新規事業を立ち上げる際のスピードを損なわないという点でも、非常に魅力的な環境だと思います。

―ハウスコイン事業など成功事例が生まれた背景にも、そういった優秀な人材の活用やネットワークの強みがあったのでしょうか。

そういった強みに加えて、ハウスコイン事業を例に挙げると、事業を立ち上げてから、お客さまのもとに足しげく通い、課題やニーズの抽出・解決に大きなエネルギーを注いでいました。その結果、お客さまと深くディスカッションできる関係を築くことができ、課題に深く入り込んだソリューションを提供できるようになりました。一方でデジタル基盤の面では他の金融機関に出遅れていることは否めません。遅れている部分はキャッチアップして前に進めながら、先に述べたような〈みずほ〉の強みはさらに磨いていく――。この2つを前提にキャリア採用を進めています。

―2022年11月にグループ5社共通で新たな人事の枠組みを採用することを発表されています。キャリア採用で入社する方には、どういった影響があるのでしょうか。

2024年4月からの実運用を目指して準備中ですが、資格やミッション、個々のスキルがどのように業務で生かされるのかといった観点で処遇を決めるコンセプトに移行しています。これまで以上に柔軟な受け入れが可能になりますので、金融業界以外の領域から転職される方に対しても、実態に即した待遇で迎え入れることが可能になりました。

4. システム障害を経て、変革期に突入

―最後に2021年から2022年までの間に起きたシステム障害について伺います。今回、採用を進めているデジタル領域の取り組みには、何かしら影響はあるのでしょうか。

IT領域とDX領域は密接な関係にありますが、現在の業務改善計画がDX領域の足かせになるようなことはありません。むしろ、業務改善命令を受けて安定稼働などの守りをしっかりと固めたことにより、安心して攻めのDXにも注力できる態勢になりました。

―〈みずほ〉への応募を検討されている方にメッセージをお願いします。

現在、〈みずほ〉では経営層も含めてカルチャー改革に真剣に取り組んでいます。実はパーパスの制定も、社員の声をくみ上げながら実現したものであり、役員にリバースメンターをアサインする制度など双方向コミュニケーションを前提とした企業文化ができつつあります。

中期経営計画の中ではエンゲージメントスコア※1とインクルージョンスコア※2を、2025年までにそれぞれ65%とする目標を立てています。足下ではみずほ銀行では頭取と副頭取が全支店と各スコアを高めるための施策のディスカッションや、優秀な支店のベストプラクティスを共有する取り組みを進めています。

Blue Labやデジタルイノベーション部、デジタル企画部では、フラットな組織カルチャーの元、新しいビジネスの創造や価値創出に取り組んでいます。こうした取り組みを継続し、そのスキルを磨き続けることで日本経済を前進させていきたいという思いがあります。変革期にある〈みずほ〉で、5年後・10年後の日本を一緒に作る方からの応募をお待ちしています。


※1社員と企業の愛着心や信頼関係を数値化したもの。
※2多様性や公平性、帰属意識などの浸透度を数値化したもの。



  • 齋藤 康仁
    担当コンサルタント
    齋藤 康仁
    Fintech Division 部長/シニアプリンシパル
    2005年に中途入社でJACに参画し、以来IT領域を中心として消費財、流通・小売、サービス、製造分野を担当。
    その後、同社内でエグゼクティブサーチに従事し、経営層のポジションを担当。
    現在はFintech Divisionの部長として、金融機関のお客様のIT、DX人材の採用支援を担当。
  • 黒﨑 友弘
    担当コンサルタント
    黒﨑 友弘
    Fintech Division プリンシパルコンサルタント リーダー
    新卒でメガバンクに入行し営業店での法人営業に従事した後、2019年にJAC Recruitmentへ中途入社。現在は金融業界のIT・DX領域に特化したキャリア支援に従事。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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