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NECが語る 超大規模案件プロジェクトマネジメントの本質――高めるのは技術力かマネジメント力か

日本電気株式会社

イベントレポート

日本国民全体を対象とするサービスの提供が求められることもある行政DX。大規模なプロジェクトとして成功させるには、どのようなスキルが必要なのでしょうか? 

今回は、日本電気株式会社(以下、NEC)で行政DXに従事する山上元太氏と稲葉和也氏をゲストに迎え、澤円氏のファシリテーションで、プロジェクトマネージャーとしての心構えやDX推進のポイントなどをテーマにお話いただきました。大規模案件の実例から、プロジェクトマネジメントの本質を紐解きます。

*本記事は2024年5月17日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。また、文章表現を統一するため言い回しも変更しておりますのでご留意ください。

<登壇者・登壇企業紹介>

  • 山上 元太氏
    山上 元太氏
    日本電気株式会社
    デジタル・ガバメント推進統括部
    AI・データ活用サービス開発
    ビジネスコンダクタ
    山上 元太氏
    官公庁向けの営業、行政機関への出向、民間航空会社のIT部門を経験し、官民でのさまざまなプロジェクトを推進。
    現在はNECで行政機関向けのAIサービス開発に従事し、児童相談所へのAI導入やAIを活用した政策立案支援サービスの事業化に取り組んでいる。また、2016年から慶應義塾大学SFC研究所の研究員として農業高校・大学校向けキャリア支援の企画運営に参画し、多様な働き方を実践している。
  • 稲葉 和也氏
    稲葉 和也氏
    日本電気株式会社
    国土交通ソリューション統括部
    第三システムグループ マネージャー
    稲葉 和也氏
    情報系の大学院を修了後、新卒でNECに入社。 高速道路の維持管理会社向けに、システム化構想から業務システムの開発・運用・保守を経験Webアプリケーションの開発を中心に、iOS・Androidアプリケーション開発といった様々なプラットフォームでの新規開発を実施。
    現在は、新規システム開発等のプロジェクトマネージャーをやりつつ、橋梁点検等の社会インフラ保全業務のDXに取り組んでいる。
  • 澤 円氏
    澤 円氏
    株式会社圓窓
    澤 円氏
    元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。2021年4月22日よりJAC Digital アドバイザー就任。

    現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界、自動車業界の第一人者たちとのコラボも、業界の枠を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。 

1.NECで担当してきた大規模案件の概要

山上氏:私がこれまで経験した中で最も大きなプロジェクトは、各省庁の業務系システムを共通基盤に統合するシステムの担当でした。この共通基盤は、コンソーシアム形式で運営し、常時100〜150人のメンバーが関わる大規模なものでした。
既存の業務システムを移行しながらの作業で、多くのステークホルダーが関与し、とても苦労しました。しかし、その中でお客様と良い関係を築くことができ、今でも交流が続いています。私にとって思い出深いプロジェクトの一つです。

稲葉氏:現在私は100人を超えるチームを率いており、年間1200人月(にんげつ)規模のプロジェクトを担当しています。プログラムのライン数は50万ラインで、なかなか大規模な開発です。立ち上がってまだ6年ほどですが、年月とともに規模が大きくなっているプロジェクトです。

澤氏:結構長いプロジェクトですね。

稲葉氏:大規模プロジェクトとしては長いという印象はありません。例えば行政などからご依頼を受けた高速道路に関わるシステムになると、道路がある地域によって天候や環境が変わります。このように、条件によって求められるパラメーターが異なると要求事項も高くなり、案件が長期化する傾向にあります。

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2.大規模案件の遂行に必要な要素

山上氏:大規模案件をやり遂げるにはいくつか必要な要素があると思います。
まず、「有事の際にその真価を発揮できるかどうか」が一つのポイントです。例えば、東日本大震災の際、私は即日お客様とおもに福島まで飛んでいき、壊滅状態だったネットワークを復旧すべく、社内関係者を集め現地調査や物資の調達などを担当していました。このような緊急事態でどれだけ馬力を出せるかは、重要な要素だと思います。
また、プロジェクトが10年、20年と長きにわたる覚悟をもつことも必要です。NECは、長期プロジェクトにも耐えうる体力とアセットをもっており、会社の歴史に裏付けされた知見や経験も蓄積しています。私はNECに出戻ってきた立場ですが、一度別の会社を経験しているからこそ、あらゆる課題に対応できる豊かなアセットや信頼感をNECがもっていると自負しています。

稲葉氏:組織体制は必要な要素の一つだと思います。多くの大企業にも共通する要素ですが、NECでは特にコンサルタント、研究開発部門、そして私が所属するシステム開発部門など、さまざまな分野の専門家が最先端の技術と業界知識を共有しながらコラボレーションできる体制が整っています。これにより、異なる専門知識をもつチームが連携し、大規模なプロジェクトでも迅速かつ効果的に対応することが可能です。

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3.プロジェクトを上手く動かすための人との接し方

稲葉氏:行政の職員の方は、長くても3年程度で異動するので、このような環境でプロジェクトを円滑に進めるためにコミュニケーションの面でも工夫をしています。
まずプロジェクト1年目の職員の方には、業務をしっかり覚えてもらうことが重要です。2年目では、その方が成果を上げられるように支援し、躍進を後押しできるように努めます。最後の3年目には、次の担当者への引き継ぎがスムーズに行えるよう、マニュアルなどを分かりやすい形で整備。そして、3年を通して、参画したプロジェクトがその職員の方の実績につながるような接し方を意識しています。

澤氏:なるほど。3年をフェーズに区切って、その時期に応じたお付き合いをするのですね。山上さんはいかがですか。

山上氏:大規模なプロジェクトでは、ITの技術だけでなく、行政特有のルールや予算の取り方、負担の仕方についても深く理解しなければなりません。例えば、行政機関の特性上、「どの省庁がどのくらい予算を負担するのか」「誰が最終的な責任をもつのか」といった話が頻繁に発生します。その時、「それは私たちには分かりません」と一歩離れるのではなく、クラウド技術の詳細をはじめOSやミドルウェアの考え方など、業務量に応じた費用負担の見積もりまで、細部に至るまでしっかりと説明します。そうすることで、よりスムーズにDXやIT導入がしやすくなると思います。

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4.大規模案件でないと味わえない醍醐味

山上氏:自分のキャリアは、国の歴史と密接に絡み合ってきたと実感しています。これはNECで大規模案件に携わってきたからこそ感じられたものだと思います。
教科書に掲載されるような歴史的な出来事やイベントにITの側面から関わってきたというのは、とても貴重な経験です。
NECは、そのような時に大規模なプロジェクトを支える体力と技術力をもっている会社です。これにより、歴史に名を刻むようなプロジェクトに携わることができ、結果として自身のキャリアにも大きな足跡を残すことができました。これは大規模案件でしか味わえない醍醐味だと思います。

澤氏:IT業界にいると、自分の仕事の成果を肌で実感できる経験はそう多くはありません。山上さんの体験は、唯一無二かもしれませんね。稲葉さんはどうでしょう。

稲葉氏:私は、やりがいとスリルです。
まずやりがいですが、私が最近手がけた案件の一つに、ある大手企業による現場点検用のiOSアプリの開発があります。このアプリは橋やトンネルの点検を紙からタブレットに移行するもので、利用者数は1000人ほどです。しかし万が一システムに障害が発生すると、交通規制などで何万人、何十万人に影響が出てしまう可能性があるため、責任も大きいです。
さらにこのアプリ開発に対し、初めは高齢の利用者からは反発がありました。しかし全国の拠点を回り、地道に説明を重ね、システムの利点を納得してもらうことで、最終的にはお客様に喜んでいただきました。やはりその時の達成感は格別で、大規模案件ならではのやりがいだと感じました。
また大規模案件にはスリルもともないます。システムに障害が発生し、2日間停止してしまいました。これは大きな問題でお客様にご迷惑をおかけしましたが、2日間でリカバリーするために最善を尽くし、システムを復旧させることができました。トラブルが起きた時のプレッシャーは大きいですが、それと同時にスリルもある。これも大規模案件ならではだと思います。

澤氏:絶対に止まらないシステムは存在しないですから、短期間で状況を把握しリカバリーする力や経験は、とても大事ですよね。

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5. 大規模案件のPMに必要なスキルや習得できる能力

稲葉氏:大規模案件のプロジェクトマネージャー(PM)として活躍するためには、マネジメント力と技術力のどちらか一方が重要というわけではなく、案件や状況に応じてバランスよく発揮することが必要です。
マネジメントにおいては、プロジェクト全体を見渡し、適材適所の人員配置をすることが重要です。プロジェクトの各フェーズにおいて、どのリーダーがどの役割を担うかを適切に決定し、その指示を実行させるための統率力が求められます。例えれば戦国時代の武将のように、トップに立つ者が全体を見通して戦略を立て、指揮を執ることがプロジェクトの成功につながると考えています。
一方で、技術力もとても重要です。システム障害を例に挙げると、どこに障害があるかを素早く見極め、最短で解決策を提供するスキルが求められます。そのためにも、ソフトスキルとハードスキルの両方をバランスよく習得し、迅速に問題を解決する深い技術的知識も不可欠でしょう。

澤氏:やはり問題が起きた時こそ、知見は武器になりますよね。山上さんは、PMの役割に重要なスキルは何だと思いますか?

山上氏:プロジェクトを通じて若手の技術力とキャリアを育成することが、PMとしての大きな役割だと考えています。
大規模なプロジェクトや官公庁の案件に携わる中で、プロジェクトの開始から終了までの間に若手が大きく成長する姿を何度も目にしてきました。それにはPMの存在も大きいと思います。私もプロジェクトの進行に合わせ、少しずつ技術レベルやマネジメントの範囲を広げて、若手の育成をフォローしていくことも考えています。

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6. 行政特有のルールを打破する方法やメソッド

山上氏:行政や官公庁などのご依頼主からは、プロジェクトでの先行事例を求められることが多くあります。「これは他で実施されたことがありますか?」「どの省庁でしましたか?」といった質問は、これまでもよくされ、事例を先に作る重要性を学びました。
もし適当な事例が見つからない場合は、自社で実証することもあります。私たち自身が「ゼロクライアント」となり、実際に試験運用を行うのです。
最近では、地域課題に根差した地方公共団体で先行事例を作ろう、という動きもあります。全国どこかで事例を作り、その成功事例を省庁に提示することが一つのメソッドだと考えています。

澤氏:全国民が顧客であると考えると、突飛なチャレンジもしづらいし、一方でチャレンジしなければならない領域もありますから、そこは重要かもしれないですね。稲葉さんは?

稲葉氏:私はプロジェクトを進める上で、特に2つのポイントを心がけています。
1つ目は、担当した職員さんが評価されるような提案をすることです。先ほども話した通り、3年で異動する職員さんが多いため、失敗を避けたいと考える方が多いのです。このため、お客様の業務改善につながり、その結果として担当した職員さんが評価されるようなソリューションを提案するよう心がけています。「その職員さんの出世の貢献を目指す」という、ある意味内向きなアプローチかもしれませんが、重要なポイントだと思っています。

2つ目は、賛成派を増やすことです。基本的に大規模プロジェクトとなるとお客様側も大人数になり、中には反対派の方も出てくるものです。その時私は参画される職員さんの反応をうかがい、誰が興味をもってくださっているか確認しています。興味をもってくれる方がいれば、その方とコミュニケーションを取り、ベクトルを合わせるよう努め、そこを起点に賛成派を増やすことでプロジェクトを円滑に前に進めることができると思います。

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7. NECで築けるキャリアの魅力

山上氏:私はNECを一度離れた経験がありますが、再入社した理由の一つに、仕事を通じて築いた信頼関係があります。
NECを離れた時、「もう一度一緒に仕事をしたい」と言ってくださるお客様がいたことがとても嬉しかったのです。これは私個人だけでなく、NECという組織全体への信頼があったからだと感じました。特に、私が担当した官公庁向けの仕事は丁寧で、品質も高く、対応範囲も広い。そういった点が評価されていたと思います。

また、NECには若手に多くのチャンスを与える環境が整っています。手を挙げればその意欲を評価され、若い時期から大規模な案件やプロジェクトマネジメントに携わることができます。実際に、20代後半から30代前半の若手が大規模なプロジェクトのマネージャーとして活躍している例も多数あります。中途入社の社員も増えていて、多様なバックグラウンドをもつ社員が集まっていますし、働きやすい環境が整っていると思います。

稲葉氏:山上さんの考えに補足すると、手を自ら挙げた人に対して否定することはまずありません。若手やシニアに関係なく、挑戦したいという意欲をもつ人には、積極的にチャンスを提供してくれます。私自身も、入社3、4年目の時に、年間3億円から4億円規模の案件を担当する機会を与えられました。その経験を積み重ね、現在では担当から主任、マネージャーへとキャリアを築くことができました。
そうした雰囲気の会社にもかかわらず、実は手を挙げる社員が少ない。だからこそ、積極的な姿勢の社員は大切にされますし、会社側もバックアップします。活躍したい、チャレンジしたいという思いをもつ方には、チャンスが巡ってきやすいと思います。
現在、私の部署でもメンバーを募集しています。もしこの話を聞いて少しでも興味をもった方がいれば、ぜひ応募してください。   

  
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8.質疑応答

Q. 大規模開発といえば旧来のウォーターフォール型開発をイメージしがちですが、近年のトレンドはアジャイル開発に移行しています。現在の開発スタイルは、ウォーターフォール型を継続していますか? それとも、アジャイル型を取り入れたハイブリッド型ですか?

A.山上氏:私が扱っているAIやデータ分析の案件は、ハイブリッド型に近いです。
官公庁との契約は請負が基本になっているので、部分的にはウォーターフォール型で成果を出すことも必要ですが、その中でもアジャイル型を取り入れて、事前に組み込む箇所を説明していく方法を試行しています。

A.稲葉氏:私の案件は、8割くらいはウォーターフォール型で実施しています。とはいえハイブリッド型とは少し異なりますが、進め方も工夫していまして、例えば「Figma」のようなツールを使い、ドキュメントを作成するだけでなくモックアップ以上の体感できるプロトタイプをお客様に提供し、それを元に設計に反映するのが現在のスタンダードとなっています。

Q.メンバーのメンタルケアは行っているものの、トラブルが起きてしまうこともあります。クライアントやベンダーに左右されず、トラブルなくプロジェクトを遂行するためには何が必要でしょうか?

A.稲葉氏:トラブルを防ぐためにはマネジメント力と技術力を高めることが重要です。しかし、不確実な状況で100%の成功は難しいです。その中で私が大事にしているマインドがあって、それは「他人と自分を許すこと」です。精一杯努力してもうまくいかない場合もあり、その時は運命だと受け入れる。そうした心構えをもつ方がいいと思います。

A.山上氏:クライアントやベンダーに左右されないプロジェクト運営は難しいですが、トラブルが発生した時に共に戦える体制と関係性を構築することが重要です。トラブルをチャンスと捉え、お客様と一緒に乗り越えることで次のステップへ進むことができます。この姿勢でメンバーをモチベートすることが大切です。また、トラブル時には内向きになりがちですが、目線を先に向かせる工夫も大事です。

Q.長期にわたる大規模プロジェクトでは、進捗、コスト、工数、体制の変化などの管理が難しいと思います。どのような工夫をされていますか?

A.山上氏:プロジェクトマネージャーの負荷を軽減し、長期の大規模プロジェクトを効率的に管理するために、PMOのような専門の管理チームを設置することが重要です。官公庁案件では担当者が変わることが多いため、ドキュメントや体制の管理を徹底し、プロジェクトの歴史を引き継ぐ体制を整えます。この取り組みをお客様に理解してもらい、予算を確保することも必要です。

Q.稲葉さんが若手の中で100名もの部署を率いるマネージャーに昇格した背景を教えてください。

A.稲葉氏:私は、良くも悪くもストレートに発言していたので目立っていたと思いますし、アピールもしていました。ただそれは単に地位を得たいからではなく、より大きな仕事に挑戦したいという気持ちがあったからです。責任はともないますが、権限を得ることで動かせるものも大きくなりますから。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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