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- 清水 誠氏
- 横河デジタル株式会社
DX/ITコンサルティング事業本部 執行役員
清水 誠氏 - 日本IBMにてハードディスクの生産ロボット開発からキャリアをスタートし、その後システム開発のPM、アウトソーシングのプリセールス等に計17年間従事。2014年よりアビームコンサルティングの執行役員プリンシパルとしてIT戦略やアウトソーシング、ITデューデリジェンス等を専門として様々な企業をサポート。グローバルビジネス経験も豊富で、上海、シンガポール、ミャンマーに駐在しグローバル案件を多数リード。
2023年より横河デジタルの創業メンバーとして参画。センサーから経営までをサポートするDXコンサルティング事業責任者。
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- 澤 円氏
- 株式会社圓窓
澤 円氏 - 元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。2021年4月22日よりJAC Digital アドバイザー就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界、自動車業界の第一人者たちとのコラボも、業界の枠を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。
ウェビナー開催レポート
【澤円氏×横河デジタル清水氏】キャリアの集大成の描き方~攻めのキャリア選択~
横河デジタル株式会社
皆さんは「キャリア」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
「有名企業での出世競争に勝ち抜くこと」や「定年まで同じ会社で勤め上げること」を考える方も多いかもしれません。しかし、時代が変わり、キャリアの形も多様化しています。
今回のセミナーでは、定年70歳時代を迎える中で、自分自身のキャリアをどのように描くべきかをテーマに、今できること、そしてこれからのキャリアデザインのヒントをお届けします。
元日本マイクロソフト株式会社の澤円氏と、大企業から一転して「横河デジタル株式会社(以下、横河デジタル)」をゼロから立ち上げた清水氏を迎え、それぞれの豊富な経験から、これからの時代に必要なキャリア戦略を考えます。
*本記事は2024年9月12日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。また、文章表現を統一するため言い回しも変更しておりますのでご留意ください。
<登壇者・登壇企業紹介>
1.清水氏のキャリア紹介
澤氏:まず清水さんのご経歴を教えてください。
清水氏:大学卒業後、最初に日本IBMに入社し、17年間勤務しました。最初はハードディスクを作るロボットの開発に携わり、その後、システム開発のプロジェクトマネージャーやアウトソーシングのプリセールス業務など、幅広い役割に関わってきました。その間、上海やシンガポールでの海外駐在も経験しました。
40歳の時、アビームコンサルティング(以下、アビーム)に転職し、IT戦略を中心に9年間コンサルティング業務に従事しました。そして50歳で横河デジタルに転職し、現在は新しい分野での挑戦を楽しんでいます。IBM時代の研究開発からコンサルティング業務、そして現在のデジタル分野に至るまで、多様な領域を渡り歩いてきました。
澤氏:アビームに転職したきっかけは何でしたか?
清水氏:IBMは安定しているとても良い会社でしたが、そんな恵まれた環境に面白みを感じなくなっていました。そんな時に声をかけてもらいアビームに転職したのです。外資系企業のIBMから日本企業のアビームに転職したことで、あまりのカルチャーの違いに驚愕もしましたが、環境の変化も楽しみながら働いていました。
2.0→1を作り上げる横河デジタルに惹かれ転職を決意
澤氏:横河デジタルへの転職の経緯も教えてください。
清水氏:アビームでは役員を務め、定年を迎える62歳まで安定したキャリアパスが見えていました。しかし、コロナ禍で仕事が一時停止したとき、自分の生き方や存在意義について深く考え、見つめ直しました。
その中で、ヘッドハンターから横河デジタルへの転職の話が舞い込みました。そして驚いたことに、募集要項に書かれていた必要条件が、私の経験と完璧にマッチしていたのです。OTとIT両方の知識、コンサルティング経験、パートナークラスの経験、会社立ち上げの経験。これらすべてを兼ね備えた人材はなかなかいないですし、自分にぴったりだと感じました。その場ですぐに電話をして、トントン拍子で面接が決まっていきました。
横河デジタルでは、私が最も好む0から1を作り上げる挑戦が可能な環境です。知名度は低いものの、それさえもワクワクする要因でした。アビームが安定期に入っていたのに対し、横河デジタルは成長期。これが横河デジタルに入社した理由です。
澤氏:働いていると、「これしかない」という単一のスキルや経験しか持たない人はあまりいないと思います。ほとんどの人が複数の要素を持ち、自分で意図的に新しいものを加えることもできますし、日々の生活の中で注意深くチャンスを見つけ、それを取り入れることもできます。その結果、清水さんのように、それまでの経験やスキルを掛け合わせることで、非常にユニークな人材になる可能性があると思います。
清水氏:そうですね。私も、キャリアにおいてAND条件を増やすことは重要だと考えています。例えば、英語ができる人やプログラミングができる人は多いですが、両方できる人となると急激に少なくなります。このように、複数のスキルや経験を組み合わせることで、自分の市場価値を高められます。私も様々な資格を取得してきました。PMP、IT関連の資格に加え、特殊無線免許や車レースのライセンス、さらには化粧品検定まで。一見無関係に思える経験も、実はキャリア形成に大きな影響を与えることがあります。
澤氏:キャリアを作るうえで重要だと思います。実は私がマイクロソフトに入社できたのも、当時珍しかった資格を持っていたからです。どこでどのような資格やスキルが役立つかは分からないので、そうした点を意識することも大事だと思います。
3.親会社のノウハウを根幹に、魂あるソリューションを提供できる
澤氏:現在の仕事内容を教えてください。
清水氏:まずは横河デジタルについて説明します。横河デジタルは、親会社である横河電機から生まれた比較的新しいコンサルティング会社です。横河電機は創業100年以上の歴史を持つ製造業で、主に計測器や制御システムを製造しています。例えば、石油プラントや発電所、さらには原子力発電所の安全システムなど、社会インフラの根幹を支える製品を作っています。
横河電機は製造業としてDXの取り組みを進めてきましたが、さらなる成長を目指して2030年に売上1兆円という大きな目標を掲げました。その目標達成の一環として、これまで培ってきた製造業のノウハウを外部に提供するコンサルティング会社として横河デジタルが設立されました。他のコンサルティング会社と違い、私たちは実際の製造現場の経験を持っています。私自身もヘルメットを被り、安全靴を履いて工場の現場に入り、実際の改革に向けて取り組んでいます。こうした背景があるからこそ、横河デジタルでは机上の空論ではなく、現場の実態に即した具体的かつ魂あるソリューションを提供できるのだと思います。
澤氏:私から見ても、親会社の横河電機が持つ一次情報をもっていることは、大きな強みだと思います。横河電機がもつ専門性の高い領域のノウハウは、社会インフラに直接影響を与えるものですし、このノウハウを、そのまま使うだけでなく、少し抽象度を上げることで幅広い製造業に応用できている会社ではないでしょうか。
清水氏:おっしゃる通りで、こうしたバックグラウンドが私たちにとって大きなアドバンテージであり、まさにブルーオーシャンと言えます。私が横河デジタルに転職を決めたのも、このブルーオーシャンの可能性に魅力を感じたからです。
澤氏:入社してからのギャップはありましたか?
清水氏:まず驚いたのは、会社の雰囲気が大学の研究室のようだったことです。社員の中にはドクターの資格をもつ人もおり、非常にアカデミックな環境です。私自身、理系出身ですが、専門用語を交えた会話を楽しんでおり、日々刺激を受けています。
また、自分が知らないことがあまりにも多く、驚いたと同時に面白くてたまりません。製造業の奥深さを目の当たりにしました。例えば、最近は紙パルプの製造プロセスについて学んでいます。チップを砕いて薬品に入れ、繊維を取り出し、脱色して紙を作る。この過程をAIで改善できないかというプロジェクトに携わっています。まったく関わってこなかった領域の新しい知識を得て、知的欲求が満たされる。これこそ、現在の仕事の大きな魅力の一つです。
一方ネガティブなギャップで言うと、事業会社とコンサル会社のスピード感の違いは感じています。やはりディシジョンメイキングのスピードや、会議の進め方などは、前職とは異なる部分もあります。
澤氏:日本企業というキーワードも出てきましたが、そうした文化ならではのギャップもありそうですね。
4.大企業とベンチャー企業の良さを兼ね備えた環境
澤氏:横河デジタルに入社してから印象に残っているエピソードや働く面白さは何ですか?
清水氏:まずは立ち上げを経験したことです。私が横河デジタルを立ち上げてから1年半が経ちました。最初は1人でスタートしたこの会社が、今では50名を超える規模にまで成長しています。この急成長の過程を目の当たりにするのは、ワクワクするものです。もちろん会社が大きくなるにつれて、様々な課題も生まれましたし、異なる価値観を持つ人々が集まり、時には衝突することもあります。しかし、そういった摩擦から新しいものが生み出されていく過程は、大変でありながらも非常に楽しいです。
先ほどもお話しましたが、特に魅力的なのは、新しい知識が次々と入ってくる環境です。この知的欲求が満たされていく感覚は、本当に面白いです。
澤氏:老舗である横河電機に入社するのではなく横河デジタルであることで、ベンチャー的な挑戦ができることも特異な環境だと思います。
清水氏:まさにおっしゃる通りで、横河デジタルの良さは、ベンチャー企業と大企業の良さを両立している点にもあります。私はよく「潰れないベンチャー」と説明しています。親会社である横河電機がバックにいてくれるおかげで、一般的なベンチャー企業のCEOのように資金調達に奔走する必要がありません。その代わり、組織づくりやサービス開発、営業活動に集中できます。
一方で、横河デジタルは0から作り上げている会社でもあります。評価制度やレビュープロセスの構築など、ベンチャー企業ならではの会社を組み立てる面白さも経験できる。つまり、大企業の安定性とベンチャー企業の柔軟性・挑戦性を両立させているわけです。
5.質疑応答
Q. オールラウンドに働くことにやりがいを見出してきましたが、キャリアの整理に苦労しています。すべてを極めるべきか、どこかである一点に特化すべきか、お二人はどういったお考えで選択されてきましたか?
A.清水氏:例えば、コンサルタントの場合、ある特定の領域のスペシャリストになりつつ、ファシリテーションスキルやプレゼンテーションスキルなどのジェネラルスキルも磨いていくことが重要です。このようにT字型のスキルセットを持つことで、需要の変化にも柔軟に対応できるキャリアを築くことができると思います。
澤氏:私は、オールラウンドであることよりも、マーケットの需要を見ることがより重要だと思います。自分の中でスキルをスタックしていくだけでなく、興味の範囲を常に外に向けておき、その中で自分ができそうなこと、役に立ちそうなところに時間と体力を使っていくことをお勧めします。キャリアをまとめることにあまりこだわる必要はなく、その時点で世の中に役立つことができるという自己紹介で十分だと考えています。競争力を維持するためには、1つの専門性をもちつつ、それに関連するジェネラルスキルも身につけることが理想的です。
Q.定年後の働き方も見据えてどのようなキャリアの捉え方で今後を考えていけば自分なりの道が見えてくるでしょうか?
A.清水氏:私の意見では、定年という概念に捉われすぎないことが大切です。むしろ、自分の意思で仕事を終わらせる、つまり「やめたい時が定年」という考え方がいいかもしれません。例えば、現在の資格を生かして副業を始め、そちらが軌道に乗ってきたら会社を辞めて独立するという選択肢もあります。そうすれば定年の制限に縛られることなく、自分のペースで働き続けることができます。さらに、自分のマーケットバリューを知るために、転職活動をしてみることも有効です。エージェントを通じて自分の市場価値を知り、足りない部分を補うことで、より魅力的なキャリアを築くことができるはずです。
澤氏:定年は会社が決めているルールでしかありません。また、年齢で競争する必要はありません。自分に仕事が回ってくるような仕組みづくりや、信頼関係を築くことに注力すれば、年齢に関係なく仕事を得ることができるでしょう。
Q.キャリア醸成の過程でターニングポイントがあったと推察します。人生観の変化などキャリアの捉え方が変化したようなトピックやお持ちの軸などをお聞かせください。
A.清水氏:いくつかのターニングポイントがありました。最初は、義父の会社が危機に陥った時でした。初めて自分のためではなく、家族のために頑張らなければと思い、仕事に真剣に取り組むようになりました。そんな自分を周りが見てくれたことでチャンスが増え、キャリアが大きく前進しました。また、ミャンマーでの仕事経験も大きな転機となりました。世界最貧国の一つで働くことで、お金や物の価値について深く考えさせられました。特に、月収が1万円程度の人々が寄付をする姿を見て、他人のために働くことの大切さを実感しました。これをきっかけに、投資やドネーション、無料相談など、自分以外の人のために働くことに重点を置くようになりました。
澤氏:同感です。海外での経験や異なる文化との接触が、キャリアや人生観に大きな影響を与えることは大いにあります。違う世界を覗き見ることで価値観がシャッフルし、新しい視点を得るのに役立つと思います。
Q.現在製造業で、社内でデジタル化を進めています。楽しくはあるのですが社内でのキャリアパスが描けません。そのような場合は外に目を向けてキャリアを描くべきでしょうか?
A.清水氏:まず外を見てみることをお勧めします。例えば、エージェントに相談してみたり、転職市場での自分の価値を確認したりするといいかもしれません。これにより、現在の環境が実は恵まれているという気づきを得られることもあります。また私が若い頃実行していたのは、LinkedInなどの転職プラットフォームを活用して、同業他社に所属する人のキャリアパスを研究することです。他の人がどのようにキャリアを積み上げているか、どんな資格をもっているかなどを参考にすることで、自分のキャリアプランのヒントが得られるかもしれません。社外の友人、特に同級生などと飲みに行って情報交換するのも有益です。
澤氏:そうですね、近い立場の人々との対話から、新しい視点や可能性を見出せることも大いにあると思います。
Q.コンサルタント未経験者かつ初老から転身したい場合、何が難題になりますか?
A.清水氏:コンサルタントになることそのものが目的ではないと考えます。まず、あなたが本当に何をしたいのか、何を達成したいのかを明確にすることが重要です。例えば、お金持ちになりたいのか、承認欲求を満たしたいのかなど、根本的な欲求を理解することから始めましょう。コンサルタントの仕事は、ゴールを設定して、その目標を達成するための戦略や戦術をどう組み立てるか、ロジカルに考えることが求められます。それを実際にやってみると良いでしょう。守りに入る必要はなく、経験や背景はどうでもよく、実力があればチャンスは訪れます。力があるなら、心配する必要はありません。
澤氏:コンサルタントとして自分が何を提供できるか、その能力をどれだけ最大限に生かせるかが非常に重要です。未経験や年齢といった難しい問題に目を向けるのではなく、自分が活躍できる分野や貢献できる部分に、いかに早くフォーカスするかが鍵となると思います。
Q.面接対策としてキャリアの棚卸しをする上でのコツなどあればご教授いただけないでしょうか?
A.清水氏:まず経験してきたことや、キャリアのうえで楽しかったことや心動いたことなどを紙に書き出すことから始めることです。思いついたキーワードだけでもいいので、すべて紙に書き出してください。次に、それらをカテゴリー分けし、どういう順番で話すかを考えます。カテゴライズができたら、実際に話す練習をしていきます。この過程を繰り返すことで、徐々に上手くなっていきます。ポイントは、頭の中でモヤモヤと考えるのではなく、具体的に紙に書き出すことです。これにより、自分の経験を客観的に見ることができ、面接などでスムーズに話せるようになると思います。
この記事の筆者
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