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米国最大級のエネルギー企業インベナジー、「やりきる力」こそが未来を創造する

インベナジー・ジャパン合同会社

※このインタビューは2024年9月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
大屋 昌之氏
インベナジー・ジャパン合同会社 上級副社長 日本統括 大屋 昌之 氏

インベナジーは創業して約23年の米国最大級の独立系電力発電企業です。陸上・洋上風力発電、太陽光発電などクリーンエネルギーを活用した発電技術は、発電量32ギガワット以上。送電インフラ、蓄電技術なども加えると世界で200ヵ所以上のプロジェクトが稼働しています。

日本国内では、2024年5月、北海道虻田郡留寿都村で同社の陸上風力発電所が商業運転を開始しました。インベナジーの日本法人を率いる大屋 昌之 氏に、インベナジーの事業で大事にしている考え方、職場の雰囲気、大屋氏自身のキャリア観などについて伺いました。

日本におけるインベナジーのあり方

――インベナジーという企業について教えてください

「インベナジー(Invenergy)」という社名には、「エネルギー(energy)における革新者(Innovator)であれ」という精神が込められています。換言すれば「新しいことにチャレンジし、確実に実行する」という考え方です。そうした考え方と実績により、インベナジーはステークスホルダーの皆さまからの信頼を獲得し、米国でここまでの規模に成長してこられたのかと思います。

日本法人が設立されたのは、インベナジーが創業して11年目の2013年で、10年ほどで3つの太陽光発電のプロジェクトを開発から完工まで手掛けました。そして、2024年3月には、日本における当社初の陸上風力発電所である「留寿都風力発電所」(北海道虻田郡留寿都村)が商業運転を開始しています。1基当たりの出力が4.2メガワットであるGE Vernova製大型風車15基で構成された総出力63メガワットの風力発電所であり、年間6万4,000トンの炭素排出を削減するとともに、北海道の一般家庭約3万5,000世帯分の電力を賄うことが可能です。

日本法人は、これから大きく伸びていく過程にあります。少数精鋭の経験豊富な専門家集団がこうした大きな成果を出せていることは、素晴らしいことであると思います。

大屋 昌之氏

――米国本社にとって、日本市場はどのような位置づけになっているのでしょうか

米国本社は、「日本市場は国の運営も政治も安定している」といった印象を抱いています。昨今の欧州の政治が比較的不安定な状況であることを考えても、政治的な安定はビジネスにおける重要なファクターであるわけです。次に、日本政府が再生可能エネルギーの導入に積極的であり、2050年までにネットゼロを目指すという高い目標設定(「2050年カーボンニュートラルの実現」)をしていることから、ビジネス環境として魅力的であるとも考えています。



――日本法人として、特に注力する分野を教えてください。

現在、日本市場におけるストラテジーのコアは陸上風力発電所の開発です。もちろん今後はそこだけに取り組むのではなく、蓄電池などほかの技術も推進し、新たなコアを創出できる体制を整えていくことを目指しています。地域としては、再生可能エネルギーの適地とされる北海道や東北など日本北部を中心にビジネスを展開しています。また、これまでは開発部員を中心とした人員増用を図ってきましたが、今後はそれ以外の、例えば管理部門系職種の人員なども強化していく必要があります。

これまでインベナジーとして戦略を立てて投資するプロジェクトに対して必要な人員をとにかく集めていくといった形をとってきています。2019年には10人ほどしか社員がいませんでしたが、現在は50人程度になり、5年間で約5倍に増えています。今後もさらに、ビジネスの成長に合わせて、組織規模を拡大していこうとしています。「10人の組織」から「50人の組織」へステップが上がり、組織の在り方も大きく変わりました。これからさらに組織が成長していくため、その基盤を再構築して固める重要なフェーズが今であり、社員1人1人のスキル強化やトレーニングも重要であると考えています

――北海道などを中心にビジネスを展開するということですが、地元の住民の皆さんとの共生や共創も重要なテーマになるのかと思います。特に「外資企業」ということに警戒心を覚える方もいらっしゃるのではないかと思います。

まさしく、そこが重要なポイントです。インベナジーは、地元住民の方々にとってはあまりなじみのない名前なのではないかと思います。だからこそ、関係者の皆さまには真摯で丁寧な対応を心がけています。

一般的に、ビジネスとしては、プロジェクトを早く成就することが望ましいです。しかし、それ以前に地元の皆さまの理解と信頼を獲得することが大切です。それは一朝一夕では成し得ないことで、一足飛びにしてはならないことです。そういうことに誠心誠意を込め、地道に取り組んでいます。社員全員がそういう共通認識を持っています。

――大屋様も北海道をよく訪ねるのですか?

はい、でも、もっと現場に行きたいですね。私も含めて多くの社員が、プロジェクトを展開する地域に伺いし、地域の皆さんとコミュニケーションを取らせていただきたいと思っています。「顔が見える会社でありたい」というのが、私の強い思いです。

実は、2024年11月中に札幌市に新しいオフィスを開設する予定です。プロジェクト現地の住民の皆さまと、より密接なコミュニケーションを図ることが目的です。立ち上げを通じて、私たちの開発やビジネスをさらに加速させたいと考えています。また、地域の方からの理解が得られるような体制を整備することが当社の責任とも考えています。

多様性のある環境で、120%の力を出す

――大屋様が、インベナジーへ転職される前のことを教えてください

大学で資源工学について学んだ後に、天然ガスやオイルなどの地下資源を探査をする業務を展開するシュルンベルジェ社(仏)にフィールドエンジニアとして就職しました。シュルンベルジェで過ごした数年間で、過酷な環境でのフィールドワークにかかわりながら、プロジェクトの段取りやチームワークの在り方などプロフェッショナルとしての働き方を叩き込まれたことが、私のキャリア観のコアになりました。その後は、原子力関係のIT企業をしばらく経験した後に、GE Powerに転職。そこでは、シックスシグマのブラックベルトとして改善活動に取り組んだり、国内やアジアにおいて発電機器のサービス営業の責任者を務めたりといったキャリアを積みました。その後はさらに、GE HealthCareへ移り、医療産業というそれまでとは違う分野に関わることになりました。弊社が納入した機器を保守・管理するサービス部門ということでは共通していましたが、何もかもが電力業界とは異なる分野でしたので私にとって大きなチャレンジでした。

私は若手のころから多様性にあふれるビジネス環境の中で育てられてきました。組織の中では上下関係がなくフラットで、実力主義です。どこの国籍であろうが、年齢、性別、学歴などで社員のパフォーマンスを評価するのではなく、その社員の貢献によって評価される組織文化が私の性に合っていると思っています。

私が就職した当時、1980年後半のバブル期で、学生たちは皆、安定したポジションを求めて国内企業に就職していったような時代です。「海外企業への就職なんてリスキーだ」と皆が考えていました。私は周りから相当な変わり者だと思われていたようです。私は栃木出身で、とにかく家からできるだけ遠いところへ、地元の外へと出ていきたかった。でも、皆と同じように東京を目指すのでは何だか面白くない。常に新しいことを見てみたい・体験してみたい思いが高じて、海外企業へ飛びこんでいくモチベーションになったわけです。

私にとって「海外」という世界は本当に魅力的で、学生時代から海外各地を放浪するバックパッカーをやっていました。「見たことがない新しい景色を見る」「異文化や多様性に触れる」「色々な価値観を持つ人とフラットに議論する」「新しい体験をする」といった刺激が好きな性分なわけです。転職や異動も「新しい体験」です。そのたびに自分の頭がものすごくフル回転することが、非常に面白く、楽しいことなのです。もちろん、大変な思いをしたことも多くありますが、仲間と一緒に力を合わせ、苦難を乗り越えてきた思い出や経験が、私のキャリアの中で大きな部分を占めています

――過去、転職の際、大屋様はどのようなことを考えてきたのでしょうか

キャリアの一般論では、「自分自身の5年後、10年後のキャリアを見据えて勉強しよう」という考え方がよく語られますし、私もそれは正しいことだと思います。しかし、私自身はそういうビジョンがあまりなくて、ほぼ自分の足元しか見てこなかったですね。ただし、ご縁を通じて、与えられた場所で与えられた仕事を120%以上の力でやるようにしてきた。そういう自分の姿を見てくれていた人が私を信じて、「次はこれはどうか」と新しいミッションを与えてくれる。これまで、そういうことを繰り返してきたと思います

また、新しいステップへ移行するタイミングはたいてい、仕事が一区切りついたタイミングが多かったのかなと思います。また自分が別の新しい場所へ移る時には、私がもともといた場所に来ることを望む人がそこに来られるのですから、それも有意義なことだと思うのです。

――大屋様がインベナジーへ転職されたのも、新たなステージへの移行なのかと思いますが、なぜ再生可能エネルギーというテーマを選んだのでしょうか

それも、やはり「たまたま縁があった」ということになるのかと思います。「エネルギー」というテーマには長くかかわってきましたけれども、「再生可能エネルギー」は別世界です。これまでのキャリアとは関係なく、頭をフル回転させる、新たなチャレンジだと捉えています

――大屋様がインベナジーにジョインした前後で、会社に抱いていた印象のギャップはありましたか?

国内ではインベナジーという会社名や業務内容などが、自分が思っていたより知られていなかったというのが実態ですね。そこで、プレスリリースを発信したりメディアの取材を受けたりなども積極的に行っていますが、国内におけるインベナジーについての認知度を向上させる活動をさらに強化しようと計画しています

Webサイトのリニューアルも計画しています。情報発信による認知度向上は、地域住民の方の信頼性を高めることにもつながっていくと思います。インベナジーのことをより多くの人に知っていただき、その想いに共鳴してくれる人が多く集まって来てくれたら嬉しいですね。

やりきるマインドセットを持った人が活躍する環境

――インベナジーという職場は、どのような雰囲気ですか

関係性がとにかくフラットですよね。上級の役職がある人を部下が呼ぶときも「さん」付けで、そのような関係性の中で、確かな実力がある人たちで高度な議論をしていると思います。また、困難なことにも立ち向かえる強靭な精神を持つ人も多いと感じています。開発初期の段階から大きなプロジェクトを、建設から運営まで自分自身が直接手掛ける経験をするので、「やりきる」マインドセットを持った人が多いかと思います。裁量が大きく、自分で能動的にプロジェクトを進めていけることに大きなやりがいを感じる情熱的な人が結構います。当然、責任の大きさというプレッシャーはあるでしょうが、それをポジティブにとらえていますよね。私としても非常に嬉しいことです。ですから、さらにみんなが働きやすい環境を整えることが、私のミッションだと捉えています。

小さな組織ということもあり、私自身はリーダーとして、日ごろから皆で声をかけあえるオープンな雰囲気を作っていくことも重要であると考えており、自らコミュニケーションの量を増やすようにしています。私たちの仕事は一人の力では絶対なし得ないですし、一人でできることは非常に限られていますから。

――キャリア採用では、どのような方を求めていますか?

再生可能エネルギーを世の中に広めていくことに対して熱い思いを持っていらっしゃる方、パーパスを持っている方ですね。そして、そのために必要な専門性を、たとえ現時点で備えていなくても、これから学んでいこうという気概のある方。新しく学ぶべきことを自ら見つけ、それを学んで、応用することをいとわない方。さらに、チームワークを大事に、かかわる人たちにリスペクトを持ったコミュニケーションができる人ですね。画面に向かって黙々と業務に取り組むよりは、周囲の方と積極的に会話をして、互いを問題解決に巻き込むことで、「1+1=3」になるようなチームワークを育むことができると信じています。

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