採用企業インタビュー
公共特化型コンサルティングファーム、グラビス・アーキテクツは
2040年問題の危機に立ち向かう
グラビス・アーキテクツ株式会社
- グラビス・アーキテクツ株式会社 代表取締役 古見 彰里 氏
- グラビス・アーキテクツ株式会社は、公共領域に特化したコンサルティングファームとして2010年に設立。国内に4拠点を構え、官公庁や独立行政法人、地方自治体のデジタル化や人材育成などの事業を展開しています。
創業者で代表取締役の古見彰里氏は2040年に日本の高齢者人口がピークに達することで、公共サービスの危機的状況が訪れるかもしれないと警鐘を鳴らします。同社には古見氏のビジョンに共感する人が集まり、日本の中央官庁や各地の行政のデジタル化や人材育成に邁進しています。
同社の設立経緯や独自のカルチャー、公共領域に特化しているからこそ取り組めるプロジェクトについて伺いました。
「途中で投げ出したくない」という思いから、公共領域特化型ファームを設立
――古見様はコンサルティングファームを経て、グラビス・アーキテクツを創業されました。どのような経緯で公共領域特化型のコンサルティング事業を立ち上げたのでしょうか?
大きな転機となったのは、前職の外資系コンサルティングファームでガバメント領域のチームに配属になり、2001年から9年間従事した時のことです。当初は中央省庁の案件を担当していたのですが、2006年から地方自治体の案件を開拓することになりました。その頃北海道へ出張した際に、地元IT企業の経営者らとの交流も増える中で、下請けや孫請け案件が中心で単価が低く、エンジニアの給与も低いという課題を知りました。マージンで稼ぐのではなく、実際に手を動かしている人が報われる社会にしたいという思いは、この当時から今に至るまで変わりません。
私は当時の上司にかけあい、自社で獲得したERP案件を社内開発するとともに地元企業とのリエゾン(橋渡し)となる拠点を札幌に立ち上げました。それをきっかけに私自身も東京から札幌に転居し、4年間で50人規模の開発体制にまで拡大することができました。
しかし、リーマンショック後の2009年を機にメインの顧客だった製造業の開発案件がなくなり、札幌の開発拠点も閉じることが決まります。私は上長から3ヶ月間で50人を退職勧奨し、仕掛かり中の案件も他社に売却し、東京に帰任することを命じられました。しかし、途中で投げ出したくないという思いから「自分に引き継がせてほしい」と直談判し、2010年にグラビス・アーキテクツを創業します。
公共案件は入札参加資格が必要なので、一般的には設立したばかりの会社が引き継げるわけがありません。それにもかかわらず、当時担当していた独立行政法人は「あなたを信じます」と、契約を引き継いでいただきました。そうして引き継いだプロジェクトを完遂させた後に、公共領域のコンサルティング案件の開拓に着手しました。
当社は公共領域の中でも調達支援では大手に負けない実績がありますが、そのきっかけとなったのは2012年のことでした。当社が元請けとして、ある独立行政法人のインフラ基盤構築で4社のベンダーを束ねて6件のプロジェクトをマネジメントする案件を受注したのです。その際、顧客の業務とエンジニアの技術の話に大きな溝があることに気づきました。エンジニアが開発するITインフラ基盤は、顧客の働き方に直結します。だからこそ、日々の業務の進め方に対する理解が欠かせないのですが、そこまで話せるエンジニアはいませんでした。
一方で、コンサルタントはエンジニアほど技術に精通していないので、技術よりも業務や戦略に思考が向きがちです。この両者のギャップを埋めることに突破口があると気づき、他社に先んじてICT基盤や業務システムの調達支援に特化して案件獲得に注力しました。
インフラ基盤領域は、単なる技術要件の整理と実装だけでなく、顧客や顧客を取り巻く行政全体が将来どのような働き方をしていくべきかの理想とともに業務要件を考える必要があります。我々は常にクライアントの将来に向けた社会や組織、業務のありようと日々の目の前のプロジェクトをつないで考える努力をしてきました。その結果、中央省庁や独立行政法人、自治体の調達支援を突破口として、現在に至る礎を築くことができました。今では、インフラ基盤に限らず、組織のデジタル関連の戦略作りから様々な情報システムの調達に広く関わる立場に至っています。
――現在ではグラビス・アーキテクツの他に2社のグループ会社を持つ企業へと成長されていますね。
自治体・公共機関向けの電子請求サービス「Haratte」(ハラッテ)を手掛ける株式会社AmbiRiseと、行政DXや地域DXを推進する問題解決人材を育成するパブリックタレントモビリティ株式会社の2社です。
AmbiRiseの「Haratte」は、請求書に専用のQRコードを添付することで、自治体側の手入力作業から会計審査までの作業負担を軽減させるソリューションです。
パブリックタレントモビリティは行政の職員の人材育成を事業としています。書類手続きの処理が得意な方が中央省庁・自治体に多い中で、問題解決型の人材育成が後手に回っているという課題があります。パブリックタレントモビリティは行政の職員を出向で受け入れて、3年間で問題解決型人材に育成する事業を運営しています。
成功したら捨てる――規模をKPIにしない経営
――貴社は公共領域に特化しながらも多面的なアプローチを展開していますが、どのような点を重視しながら経営しているのでしょうか。
当社では規模をKPIに設定していません。規模拡大に転じると、質が下がってしまうからです。コンサルティングはコンサルタントの人数×単価で売上が決まる単純なビジネスモデルです。当社は社会問題を解決するためにコンサルティングという手法を採用しているので、闇雲に規模を追求するとコンサルティングの質が下がってしまいます。大規模な採用計画を立てる大手のコンサルティングファームもありますが、当社はそういった流れには迎合せず、社会に価値を提供したいと心から願う優秀な方だけを採用しています。そういった経営を通じて、後から振り返った時に「大きくなっていた」と思えるような成長を目指しています。
――質を重視した経営を進めるにあたって、個々の案件に対するポリシーはありますか?
可能な限り、同じ内容の案件は3年以上やらないように心がけています。3年以内に取引先の職員に知識とスキルを委譲して、別の内容の案件を提案するようにしようと社員には話しています。お客様としても、私たちに任せておいた方が楽になるかもしれませんが、「コア業務は丸投げせずに職員がコミットする」という意識を持たないと行政は良くなりません。
例えば、自治体の福祉関連の職員は任期付き職員が主に担当していて、正職員は契約手続きのみを行っているケースが散見されます。中央省庁も、政策づくりを外部のコンサルティングファームに委託して、正職員は契約手続きのみを担うといった現象が起きています。こうしたコア業務のアウトソーシングが続いていることに危機感を抱いています。
これは、前述の「実際に手を動かしている人が報われる社会にしたいという思い」と同じで、社会全体で、マージン価値ではなく、本業(コア)価値を大切にする社会が本来のあるべき姿だと思っているからです。
――「丸投げ体質」を生み出さないためにも、受注した仕事を3年以内に手放すようにされているのですね。
これは個人のキャリアにも同じことが言えると思います。コンフォートゾーンにしがみつかず、新しい領域を見つけて苦労して身につけるというサイクルを繰り返さないと成長が止まってしまいます。成功したら捨てるという考え方は組織・個人両方にとって大事だと思います。
「2040年のディストピア」を迎えないための事業
――さまざまな地域の問題解決に取り組まれていますが、重点的に取り組んでいるテーマはありますか?
総務省統計局の人口推計によれば、2040年には高齢者の絶対数がピークに達します。その時期の高齢者は就職氷河期世代で、非正規雇用など十分なキャリアを積めなかった層でもあるため、生活保護や孤独、医療や介護ニーズの増加などの福祉の需要が急激に高まる可能性があります。
一方で、日本は1960年代以降に核家族が都心の団地に移り住むようになったことで地域コミュニティが希薄化し、地域のセーフティネットが機能しなくなりました。時代が進むと、家族がいる中でも食事を一人で摂ったり自室で過ごす時間が増えたりして、家族のセーフティネットが機能しなくなりました。さらに最近は、インターネットやSNSを通じて匿名で発言できる社会になり、リアルな人間関係の一層の希薄化が懸念されています。このようにかつての社会にあったセーフティネットが次々となくなっていくと、最後は行政が受け皿にならざるを得ません。
しかし、労働力人口は減少していて、公務員の求人倍率も年々下がっています。例えば、かつては倍率15~20倍程度だった自治体が、現在では3倍にまで落ち込んでいるケースもあり、中央省庁も同様に応募者数の減少が懸念されています。
――行政に対する需要が2040年に向けて爆発的に増えることが予測されている一方で、公共サービスを提供する公務員の絶対数不足が推測される。その結果として公共サービスの質が著しく下がるリスクがあるということですね。
こうした状況を踏まえると公共サービスを行政に依存する時代を変える必要があります。例えば手続き処理的な業務を民間企業によるBPOやデジタル技術を活用して徹底して合理化し、行政の職員はコア業務を「身体性を持った福祉的アナログ業務」と「それを含めた問題解決・プロジェクトマネジメント業務」に変容させていくべきです。そのために職員のスキルセットを手続き処理型から問題解決型に変えていく――私はこういった構造改革が必要な時代が訪れると考えています。
ですから、私たちは2040年にディストピア(理想郷とは逆の暗黒社会)が訪れないよう、行政に対して人材開発を通じて問題解決型の人材を育成しています。デジタル技術では業務削減や効率化もありますが、その手前の段階で業務プロセス改革を提案しています。例えば市内にある区役所が個々に行っていた同じ作業を一カ所に集約するべく、BPOを前提とした行政事務センターを立ち上げるといったプロジェクトが進行中です。
このように公共サービスの職員を問題解決型人材に育成し、働く環境をデジタル技術で効率化しながら、ノンコア業務は民間と協働して合理化を図るといった取組に注力しています。
自分だけのテーマに取り組める組織
――2040年問題を見据えて事業を進めるにあたって、どういった方を採用したいとお考えでしょうか?
社会を良くするために働きたいと思う方に来てほしいですね。当社のキャリア採用は公務員の方からのエントリーが半数以上にも及びます。その背景には、国や地元、思い入れのある地域を良くしたいという動機から公務員採用試験をパスしたにも関わらず、書類手続きの業務に追われ、50代近くにならないと組織の中で発言権が得られないといった実情があります。当社に入れば、直接的な当事者にはなれなくても、年齢に関係なく行政の幹部の方とも対等に話ができる環境があります。
とはいえ、公務員になった時に抱いていた「どうやって国や地域を良くするか」という気持ちは当社に入社しても失わないでほしいと思います。当社で働いている中で、自分が取り組みたいテーマを見つけてほしいし、私自身も自分が取り組みたい社会問題に関するプロジェクトに取り組んでいます。当社には、国・各地域の社会問題に対する個々の社員の取り組みをサポートする体制もありますので、積極的に提案してほしいですね。
今のコンサルティング業界は規模を大きくすることに追われ、「何のために存在するか?働いているか?」が置き去りになっていると思います。「売上のため」「スキルアップのため」も大切ですが、それは手段であり目的ではないはずです。その手段の先にある「どのような社会を作りたいか」の目的を見据えて仕事をすることは、これからはとても大切です。
――古見様が取り組んでいるテーマについて詳しくお聞かせいただけますか?
私が取り組んでいるテーマは児童虐待です。札幌市の市政アドバイザーを務めているのですが、2019年に2歳の子供が児童虐待で亡くなるという痛ましい事件がありました。この事件を機に児童相談所における仕事のあり方が議論されるようになり、アドバイザーとしての私にご相談いただいたのが最初のきっかけでした。
そこで調査報告書や現場の状況を調査すると、さまざまな課題が浮かび上がりました。一点目はケースワーカーさんの頭の中で情報が処理されるといった、属人性に依存した業務プロセスです。二点目は個人情報保護法の制約から、個々の家庭の状況把握に時間を要する点です。後者の解決には法律の改正など時間を要するのですが、児童相談所の中だけでも膨大なデータが集約されています。ただ、すべて紙で記録されていることに大きな問題があります。
そこで母子手帳の配布先や検診時に記録する転居情報、相談所に来た時の相談記録など、そのような情報をすべてデータに置き換えて、児童相談所の職員が閲覧できるようにしました。並行して児童相談所の職員にお話を伺うと、「こういう条件で転居していたら危ない」といった現場ノウハウが無数にありました。そうした条件に該当する児童にフラグを立てるようにしたのです。
こうした改善によって業務効率化が進むだけでなく、職員が個々に判断を迫られる場面を減らすことで、現場の精神的な負担の軽減にもつながっています。私たちが得意とするデジタル技術や業務改善といった手法を使えば、虐待がゼロにはならないにしても、救える命が増える可能性があると信じています。当社は2024年7月に霞が関ビルディングに移転しましたが、どうしても霞が関の住所にしたかった。それは「もう一つの官庁」と言われるくらい公共にコミットしようと思ったからです。
偶然ですが、同じビルにはこども家庭庁が入居しています。
――さまざまなコンサルティングファームがありますが、貴社でしか取り組めない課題が多いと感じました。
現在のコンサルティング業界と児童虐待の予防には距離があるのですが、自分たちの仕事が社会にどういう影響を及ぼすかを結びつけて考えてほしいと思います。アサインされる仕事に真剣に取り組むのも大切ですが、そこで思考が止まってしまうと、何のために自分は仕事をしているのかを見失いかねません。
ただキャリアップしたい、高い報酬が欲しいというだけの動機であれば、当社は向いていないと思います。10年後、20年後の社会を見据えながら、足下の課題を一緒に考えて解決に向かって行動できる方こそ当社の門を叩いてほしいと思います。
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