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テクノロジー業界における「ジェンダー多様」「インクルーシブネス」を体現するEYSC

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社

※このインタビューは2024年3月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。

田畑氏 ニコル氏 関根氏 築茂氏

写真左から

Technology Consulting 副リーダー マイクロソフト・プラクティスリーダー パートナー 田畑 紀和 氏
Technology Consulting ディレクター 関根 麻里子 氏            
Technology Consulting シニアコンサルタント 築茂 文奈 氏
Technology Consulting デジタル・プラットフォーム パートナー 二コル・トゥイフォード 氏



世界4大会計事務所(Big 4)の一つに数えられるEYのメンバーファームとして、2020年10月に発足したEYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下EYSC)。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっており、「インクルーシブネス」を重視した組織を築いています。

同社ではグローバルでのパーパス(存在意義)「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」の取り組みの一環として、「Women in Tech」の活動にも注力しています。

今回は、組織立ち上げから携わるパートナーの田畑 紀和氏とニコル・トゥイフォード氏、プライベートも大切にしながら働くディレクターとシニアコンサルタントにお話を伺いました。


多様な人が集まる組織だからこそ「インクルーシブネス」を大切にした

――まず、EYおよびEYSCの組織風土の特徴についてお聞かせください。

田畑氏:私はEYSCが発足したタイミングで、外資系コンサルティングファームから転職してきました。組織立ち上げにあたっては、Big 4や事業会社など多様な会社からバックグラウンドが異なるメンバーが一気に集まってきました。当初から重要なテーマとして認識されていたのが「インクルーシブネス(包摂性)」です。

ニコル氏:私はEYオーストラリアに在籍していましたが、急成長を遂げている日本のテックコンサルティングを支えるため、田畑さんの入社とほぼ同時期に来日しました。さまざまな企業・国の人たちが集まって一緒に働くにあたり、カルチャーを融合させる必要がありました。

田畑氏:コンサルは「人が全て」の業界。経営トップである近藤と吉川が、「働きやすい環境を整える」「人を育てる」ことを第一アジェンダとして、組織としての魅力を高めていくことを掲げました。
コンサルもITも、元々ハードワークで長時間労働が常態化している業界でした。20代~30代前半で無理して働き、30代後半~40代で体調を崩す人も多かった。今は、そんなことが許される時代ではありません。「新しい組織だからこそ、新しい考えのもとで組織作りをしていこう」と、全員が自然とそんな意識になっていました。

ニコル氏:まだ組織規模も小さかったので、「一人一人の声をしっかり拾って吸収していこう」という雰囲気がありましたね。お互いを受け入れたり、サポートし合ったりする姿勢があったと思います。

田畑氏もともとEYでは「コラボレーション」「協調」のカルチャーが大切にされていたので、新たに参加したメンバーも自然にその価値観が共有されていきました。それはやはり、元から「EYらしさ」が強くあり、カルチャーがしっかりと根付いていたからだと思います。EY Japanの貴田CEOという多様性・包摂性を体現した方がトップにいることはシンボリックだと思いますし、多くの人が勇気付けられているのではないでしょうか。

築茂氏:私も田畑さん、ニコルさんとほぼ同時期に、別のコンサルティングファームからEYに転職しました。入社前から「横の連携・協力が強い会社」という話を耳にしていたのですが、まさにその通りでした。親切な社員が多く、分からないことは社内の専門家に聞けばすぐに教えてくれます。「チームで動こう」「皆でやっていこう」という協力の文化が強いと感じました。

ニコル氏:立ち上げから間もなくコロナ禍に見舞われましたが、リモートで個人的なつながりを醸成していくことに、皆が努力しました。そうして築かれたつながりが、今も生かされていると思います。

公平な「評価」「育成」の仕組みが、組織間の連携強化につながる

――具体的には、どのような取り組みを推進されたのでしょうか。

田畑氏「ハラスメントのない組織を作ろう」と言い続けています。組織立ち上げ初期に行ったこととしては、毎月の全体ミーティングで「ハラスメントになるのはどういうものか」を話し合っていました。毎回担当を決め、パートナーが1人10分ずつ、ハラスメントの事例を発表します。「こういうことに気を付けなければならないよね」と。こうして、パートナー自身の啓発とコミットメントにつなげました。

現在は、Technology Consulting独自で、四半期に一度、「ハラスメントトレーニング」の研修を実施。毎回テーマを変えながら「よりインクルーシブネスな組織」を追求しています。そのコンテンツを他組織にも展開していますので、Technology Consultingは先駆けと言えますね。

関根氏 関根氏:私は16年にわたり、EY Japanに在籍しています。監査法人を経てTechnology Consultingにキャリアチェンジしました。EYSC立ち上げからの5年を振り返ると、立ち上げ期以上にパートナーやトップの方々がスタッフの目線になって考えてくれていると感じます。例えば、「指導・教育」と「ハラスメント」の区別など、パートナー自らが強い意識を持って全体に指導されています。

田畑氏もう一つ、こだわりを持って取り組んできたことがあります。公平な「評価」「育成」です。事業がいくら成長しても、評価や育成の仕組みが整っていなければ組織は崩壊してしまうでしょう。メンバーのバックグラウンドが多様な組織では、「論理的思考力」の捉え方一つとっても、「マネージャーに求められる要素」といった観点でも、認識にバラつきがあります。それらを言語化し、共通プロセス・ガイドラインとして整理し、評価会議では相互チェックし合いながら、「公平性」を維持する必要があります。そのような仕組み作りにも力を入れてきたので、立ち上げ当初の百数十名規模から現在の750名規模まで拡大しても、組織が維持できているのだと思います。

就職・転職のための情報プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが発表した『20代が選ぶ「成長環境への評価が上がった企業ランキング」』でEYSCが1位となりました。これも、仕組みの整備が功を奏したと言えるでしょう。

関根氏:先ほど、EYは元々「横の連携が強い」というお話が出ていました。それがEYSCではより強固になっている理由を考えていたのですが、今の田畑さんのお話を聞いて「仕組み作り」の効果だと思いました。

皆が公平に評価される仕組みがあるからこそ、他部署に協力した場合も、他部署の成果だけが評価されるのではなく、評価が平等に「分配」される。自分だけで抱えるより、皆で協力した方が、会社の業績と自身の評価が連動して上がっていく。その仕組みがうまく機能しているのだと思います。

ニコル氏:コンサルとは「人を通してサービスを提供する」こと。ビジネスを成功させるための自分の責任を、全員が理解しているのだと考えています。

多様な人が自分らしく活躍できる風土

――貴社ではさまざまなバックグラウンドの方が活躍できる取り組みをされていますね。

ニコル氏: EYは2013年にパーパスとして「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」を掲げました。これに伴い、EYのプロフェッショナルが自らの知識・スキル・経験を生かしてより良い社会構築に貢献していくプログラム「EY Ripples」も開始しました。このように、社会への貢献を意識した「パーパス経営」には、Big 4のなかでもEYがいち早く取り組んだのです。

そうした活動の一環として、2019年、「Women in Tech(WiT)」をグローバルで立ち上げました。テクノロジー領域における女性の活躍推進を目的として活動しています。

テクノロジー領域での女性の活躍、多様性は非常に重要です。コンサルティングにおいて、ビジネスの課題を解決し、ニーズに応えていく上では、ジェンダーやカルチャーへの理解が不可欠ですし世界共通の課題だと考えています。私がオーストラリアにいた時も同様の取り組みを行っていました。

EY Japanはリーダーたちがオープンマインドを持っているので、世界の取り組みを日本にも取り入れ、活用していこうという意識が高いと感じます。

田畑氏:私はWiT Japanの責任者を務めているのですが、「EYらしい」と思うのは、EYの女性社員の活躍を促進するだけでなく、社外の人々も含め「女性がテクノロジー領域の仕事に就くためにはどうすればいいか」という広い視野で考え、支援を行っているところです。例えば、教育プログラムの提供や、テクノロジーに関わる世界中の女性活躍推進・コラボレーション促進などの活動を行っています。

一方、社内では、「ちょっと誰かと話したい」という時にアクセスできる社内コミュニティ「育キャリ@TC」を2022年に発足しました。このコミュニティへの参加は、子育て中の女性に限定していません。パパ社員、子育て世代を部下に持つシニア社員、これからライフイベントを迎える若手社員まで、多様なメンバーが活発に意見交換をしています。

――築茂さんはWiTのリーダーであり、ご自身も育児中と伺っています。EYSCでの働きやすさの実情はいかがでしょうか。

築茂氏

築茂氏:シニアマネージャーの女性がリーダーなのですが、育休中ですので、私が代理でリーダーを務めています。私自身はEYSCに転職してから5年の間に、2回の産休・育休を取得しました。

前職もコンサルティング業界でしたが、当時は「この業界で働きながら子どもを育てるのは多分無理だろう」と半ば諦めていました。けれど、結婚して「子どもが欲しい」と思っていたタイミングで「インクルーシブな環境があるEYなら、実現できるのではないか」と期待を抱き、入社した経緯があります。実際、子どもを授かったと時は、皆さんから「おめでとう」とお声がけもあり、チームがスケジュールを立ててくれて、引き継ぎまでスムーズに進みました。誰からも嫌な顔をされることはありませんでした。

田畑氏「離脱されたら困る」という発想はなく、産休育休を「取る」のが当たり前。本人の都合や希望を満たすことを大前提に皆動いているのです。

築茂氏:今は2歳と4歳の娘を育てながらフルタイムで働いています。復職前は「すごく大変だろう」と覚悟していました。しかし、子どもが急に熱を出しても、チームメンバーがスケジュール変更に柔軟に応じてくださるといったサポートがあるので、想像したほどの苦労はありません。

とはいえ、2人の育児がほぼワンオペなので、時間・体力・精神力が日々ギリギリの状態。コンサルに必要な勉強・インプットの時間の確保も難しい。「仕事(自身のキャリア)」と「家庭・子育て」の優先順位付けに悩んだ時期がありました。
そんな時に、子育てを終えた上司、子育て中の先輩社員・同僚などから「子育て期は限られているから、今は家族・子どもを優先した方が良い」というアドバイスをいただき、心理的な負担が軽くなりました。ライフスタイルの変化を理解し、受け入れてくれる上司が多いEYSCの環境に感謝しています。

男女問わず、ライフステージに合わせてキャリアを選択・設計していける土壌を築く

――WiTの活動をはじめ、これから注力する課題や取り組みをお聞かせください。

築茂氏組織名こそ「Women in Tech」ですが、守るべきは女性だけではないし、つながるべき人は女性だけではないという考えのもと運営しています。私生活の話をできる人が周りにいるのは心強い環境だと思います。実際、イベントを開催してみると、「横のつながりができて良かった」「同じような境遇の人がいると分かって安心した」といったコメントが寄せられていますので、引き続きつながりの構築に注力しています。

また、WiTの活動では若手の独身女性の声も聞くのですが、「育児・介護といった明確な理由がなければ、自分のプライベートの時間は尊重されないのでは」と懸念を抱く声も耳にします。子育て世代の犠牲になっている、と感じることがないようにしたいですね。

関根氏:私の場合、結婚はしているけれど子どもはいません。ですが、「自分の時間を大事にしたい」と思う時期がありました。プロジェクトが終了するタイミングで「1カ月休みたい」と申し出たら、快く受け入れられました。明確な理由がなくても希望が尊重される文化がEYSCにはあります。それを今後、制度化していければいいと考えています。

田畑氏:育児や介護など、第三者に分かりやすい理由ではなくても、本人にとっては大きな事情を抱えることもありますよね。そんな時に一定期間、別の働き方を選択できることが、一段上のインクルーシブネスだと思います。中長期視点で、ライフステージに合わせて自分のキャリアを設計していける土壌を醸成したいし、制度としても充実させていきます。

ニコル氏:若い世代は、今働いている世代とは異なる期待を持っています。今後も成長を続けていくために、若い世代の期待も聞いて、オペレーションに反映していくことが、世界共通の課題です。EYSCには、「自分はこれを必要としている」と声を上げれば、いつでも聞き入れ、理解してもらえる環境があると思います。

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