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関西を代表する企業に学ぶ 女性管理職の“育成”と“登用”について

積水化学工業株式会社 × ダイキン工業株式会社 × JAC Recruitment

※このイベントは2024年10月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
金子 美和子氏 今西 亜裕美 氏 岡村 裕之 氏

写真左から、金子 美和子(株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント 執行役員 CCO)・ 今西 亜裕美 氏(ダイキン工業株式会社 人事本部 ダイバーシティ推進グループ長)・ 岡村 裕之 氏(積水化学工業株式会社 人事部 人材マネジメントグループ 部長)

JAC Recruitmentでは、マネジメント適性や意欲、そして可能性のある女性社員が生き生きと強みを発揮できる多様性のある組織をつくる取り組みを推進する組織として「JAC Women’s Empowerment Committee」を運営しています。その活動の一環として、「JAC Women’s Empowerment Salon」を開催。女性活躍推進をはじめとするDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取り組みについて、推進担当者間で学びあい、交流と情報交換を行う場として活用いただいています。

2024年10月23日、「JAC Women’s Empowerment Salon」を大阪で開催。関西を代表する企業であり、ダイバーシティ推進に注力する積水化学工業、ダイキン工業の人事担当者の方をゲストにお招きし、女性管理職の育成・登用をテーマにプレゼンテーション、パネルディスカッション、交流会を実施しました。

パネルディスカッションで語られた内容の一部を抜粋し、ご紹介します。

<登壇者紹介>

  • 岡村 裕之 氏
    岡村 裕之 氏
    積水化学工業株式会社
    人事部
    人材マネジメントグループ 部長
    岡村 裕之 氏
    1997年に積水化学へ入社。入社後は住宅部門において、中部エリアにて住宅の営業を担当。その後、販売会社への出向などを経て、2012年より本社コーポレート人事部門へ異動し、健康経営や人的資本推進の取り組みを立ち上げ。現在は、大阪本社事業場人事責任者と兼任して、積水化学単体およびグループ全体の人材育成企画・運営と全社ダイバーシティ推進を担当。プライベートでは、世代が違う子育て(大学生2人と小学生1人)を共働きで進行中。自身も仕事と育児を両立しながら、多様な人材が挑戦して活躍し続ける組織を目指し、積水化学グループ全体の取り組みを先頭に立って推進。
  • 今西 亜裕美 氏
    今西 亜裕美 氏
    ダイキン工業株式会社
    人事本部
    ダイバーシティ推進グループ長
    今西 亜裕美 氏
    1997年ダイキン工業入社。入社後すぐに人事本部に所属し、人事グループ、採用・育成グループ、人事企画グループを経験。社内イベント企画・運営や社内報編集などをてがけ、出産後もプロジェクトベースで各種の新企画に挑戦。2015年に管理職に昇進し、ダイバーシティ推進グループ担当課長に着任。2023年に部長職となり、現職。ダイバーシティ推進の責任者として、女性社員の活躍を支援しつつ、自身も高校生の男の子と中学生の女の子をもつワーキングマザーとして、女性管理職のロールモデルとしても活躍中。

<ファシリテーター>

  • 金子 美和子
    金子 美和子
    株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメント
    執行役員 CCO(Chief Communications Officer)
    広報・IR部長
    Women’s Empowerment Committee  Team 4 Leader
    金子 美和子

1.DE&I推進の取り組みを、どのように社内に浸透させた?

金子:DE&I推進にあたり、社内に理解を浸透させるためにどのような取り組みをされたのでしょうか。

岡村 裕之 氏
岡村氏:2015年から、ダイバーシティ経営を進めるため「ダイバーシティマネジメント方針」を打ち出し、最初は経営幹部全員を集め、ダイバーシティを推進していく意味や価値を伝えました。多様な事業を展開する積水化学グループでは、さまざまな年代・性別・職歴・能力・価値観などをもつ人材が集い、協働することで新たな価値創出やイノベーションの醸成を目指しました。また、ダイバーシティが進んでいる大手企業の経営幹部をお招きし、講演もしていただきました。それから3年間、毎年、グループ内の管理職・約2000人全員を集めて研修を行い、ダイバーシティ推進について考えてもらう場を作りました。
集中的な取り組みを終えると、意識が薄れてしまう管理職も散見されるようになり、この施策は、やり続けることが重要だと実感しています。「継続」をテーマに、今後の計画を立てています。

今西氏:当社の場合は、グループ経営理念の中で掲げている「人を基軸におく経営」の考え方がDE&Iのベースになっています。「一人ひとりの成長の総和が企業の発展の基盤」であり、「人の持つ無限の可能性を信じる」という考えで、当社は創業以来100年、一人ひとりの活躍推進に本気で取り組んできました。社員がいきいきとやりがいをもって働き、成長・挑戦し続けられる環境づくりをしていくと経営トップ自らさまざまな場面で言い続けており、実際にその風土のある会社です。ですので、DE&Iのベースにある基本的な考え方は従来から浸透しています。ただ、頭で理解しているだけでなく実践へつなげるには、もう一段の工夫が必要です。グループ経営理念に関しては、「理念をどう実践するか」をテーマにワークショップを行うなど、一人ひとりが理念の実践、ダイバーシティを考える機会を設けています。

金子:前提として、トップから明確にメッセージを伝えることが大事なのですね。

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2.「ロールモデルがいない」「女性が管理職を志望しない」課題の解決策は?

金子:女性管理職を増やす取り組みにおける課題について、参加者の皆さまに事前にアンケート調査を実施したところ、「社内にロールモデルがいない」「管理職を志望する女性社員が少ない」というご回答が圧倒的多数を占めました。女性管理者候補の意識変革に効果がある取り組みはありますか。

今西氏:人事主催の「女性リーダー育成研修」など、選抜育成策に継続的に取り組んでいますが、研修だけでは足りません。実際の仕事場面でチャレンジングなテーマに挑戦し、リーダーシップを発揮して成長していくことが重要です。当社では、各部門長と女性の活躍について議論し、役割やポジションにおいて「コンフォートゾーンから出てもらう」経験を重ねるようにしてもらっています。職場で実践することで、具体的な活躍の実例が生まれる。それを作っていくことで、結果的に職場や女性社員自身の意識が変わったり、ロールモデルが増えることにつながるのではないかと思います。

金子:私が以前にいた会社では、「1週間だけマネジャーの仕事を体験する」という制度を設けていました。積水化学工業様ではいかがですか。

岡村氏:私もこの課題にはかなり悩みました。突出したロールモデルを作り出したとしても、「あの人にはなれないよね」と思われてしまい、結果的にはモデルになりにくいのです。一人ひとりケースは異なるので、色々なケースを増やし、一人ひとりがモデルになるというやり方の方が良いと考えています。

もう一つは、管理職の仕事の「見える化」です。管理職の業務がぼやけてしまいがちで、「大変なのでは」と不安に感じる方もいます。そこで、具体的にどのような業務を行い、どのような場面でどのように対応しているのかを示すことで、自らが目指す姿を描きやすくなります。当社も管理職については、役割型「適所適材」の制度に変換していきますが、その中で役割を明確に見せていこうと考えています。

すでに取り組んでいる施策として、一部のカンパニーでは、各部門の担当者がZoomを通じて自分たちの業務内容を紹介し、「管理職の仕事」について解説しています。このセッションには他の部署の業務に興味をもつスタッフも参加し、部門間の理解を深めています。

金子:「管理職とはこういうもの」、そして「一人ひとり違って良い」という理解を促進するのですね。

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3.女性管理職が働きやすい環境をどのように作る?

金子:女性が管理職を務めやすい環境をどのようにつくっていくか。参加者の皆さまへの事前アンケートでは、育児・介護の支援制度や休暇制度導入、男性育休の推進などが挙げられていました。それ以外での環境作りについてお聞かせください。

岡村氏:当社の「住宅営業」の仕事は、もともと土日出勤で休日は火・水曜ですが、休日勤務の交替制など、土日に休みやすいシフトを組むような施策を始めています。以前は、土日に展示場を訪れたお客さまに対応するのが主流でしたが、近年は営業のやり方も変わってきています。アポイントを取り、お客さまに分かりやすく説明するという丁寧な対応によって営業成績を挙げている女性は多い。まだエリアによって差がありますが、「土日に休める」という勤務体系が広がっていけばと思います。

金子:一般社員からは、管理職について「あんなにハードな働き方はできない」「しんどそう」「プライベートと両立できない」と見えているようで、「ああはなりたくない」という声も聞こえてきます。でも、実際の管理職がハードワークでしんどいと感じているかというと、実は結構楽しんでいることも多いです。一般社員からはしんどそうなところばかり目につくようです。

今西氏:「ああはなりたくない」という方には、私は、「上司と同じような働き方をする必要はないですよ。自分がやりにくいと思う働き方は変えて、自分のスタイルで成果をだせば良い」と伝えています。もちろん結果を出すことは求められますが、プロセスに関しては、リーダーの立場ですし、自分やチームが効率よく働けるやり方に自ら変えていけば良いのです。「後に続く人たちの可能性も広がるから、先駆者になってほしい。一緒に新しい道を切り拓いていきましょう」と伝えています。

4.女性を管理職に登用するプロセスは?

金子 美和子

金子: 女性管理職の登用の仕方についてお聞きしたいと思います。ダイキン工業様では、個人を指名して登用計画を立てていらっしゃるそうですね。希望者に手を挙げてもらうよりも、その方が効果的と捉えていらっしゃいますか?

今西氏:会社に所属していただいている以上、会社での活躍や成長の場を広げたいと思いますし、人材育成は上司の最大の役割であると考えています。当社では資格等級がある一定のレベルに昇格すれば自動的に管理職になるというわけではありません。組織・機構の観点での人事異動と合わせて管理職登用を行いますので、基本的には会社主導です。とはいえ、育成の場面では、本人に「何になりたいか」「どうありたいか」を考え、その実現のためにどうするかについて上司と部下間で考えてもらっています。自分自身の成長や挑戦、キャリアについて、男女ともに全員が会社のシステムに登録する仕組みがあり、一年中記入が可能です。最低でも年1回は内容をアップデートし、上司と必ず対話する仕組みです。

岡村氏:当社でもキャリア面談を行っています。上司と部下で、キャリアへの考え方や目標設定の基本姿勢を形成していけると良いと思っています。キャリアへの考え方はさまざまなので、一人ひとりをしっかりと見て、指名登用につなげていければ良いですね。

そのためには、上司側の学びも重要です。これまで自己流でマネジメントを行っている管理職がほとんどでしたが、自分のやり方が正しいかどうか不安を抱いている管理職も多い。そこで管理職同士の対話・交流の機会を設けたのですが、それは効果があったと思います。

金子:女性管理職が生まれるかどうかは、「育てる上司」の意識・姿勢にもかかってきますよね。上司同士がお互いの経験をシェアすることも大事だと感じました。

5.「女性管理職が増えるメリットとは?」「上司向けの研修内容とは?」

ここからは、参加者の皆さんからのご質問にお答えいただきます。

<質問-1>

女性活躍推進に向け、上司側の意識を変革するには、効果や価値を実感することが重要だと考えています。「女性管理職が増えたことで、このような良いことがあった。現場からこのような声が上がった」ということがあれば、お聞かせください。

岡村氏:経営指標のデータ上で明確な相関は残念ながら導き出せていません。一方で、D&Iに関する従業員アンケートでは、自組織に女性社員がいることが当たり前になってきた、管理職にも女性が増えてきた、といった声が多く寄せられました。現場において「特別でない状態」となることが、ひとつの効果であり、成果だと感じています。また、経営層との対話も重要だと感じております。経営層が人員の構成データを把握し議論をすると、取り組みがどう寄与しているか、経営の視点で意見をもらうこともできます。そこからヒントが見えるのではないかと思います。

今西氏:女性管理職が増えてきたとはいえ、まだ9%。マイノリティである状況は変わりませんから、「明確な効果は?」と聞かれるとお答えしづらいです。とはいえ、女性管理職が増えた部門では、ものの見方や考え方が多様化しているように感じます。女性管理職が増えたことだけが理由ではないと思いますが、多様な人材の活躍は良い仕事につながると感じます。また、女性管理職の半分以上は、仕事と育児を両立しています。時間に追われる中で、会議体の効率化や業務効率化が進むといった変化は感じられます。

また、以前は「この業務を女性に担わせるのはハードでかわいそうなのではないか」と言われていた仕事に女性マネジャーが就いたケースもあります。結果、「心配することはなかった」「女性には無理、なんてことはなかった」と、思い込みが取り払われたようです。

金子: 日本はまだ女性管理職比率が10%台にとどまっていますが、これから30%を超えてくるようになると、変化が感じられるようになることが期待できそうですね。考え方の多様化によって、会議での発言が活発化し、男女問わず自由になれるような気がします。


<質問-2>

上司向けの研修とは、具体的にどのような内容なのでしょうか?

岡村氏:2015年より「多様な人材を活躍させるために必要なスキルを身に付ける」というテーマで、「仕事の管理」「人の育成・組織のリード」という2つの側面に分けて研修を行いました。多面的な観察調査により、仕事の管理は得意だけど、人の育成面では弱い部分が浮き彫りとなったため、その強化を図ったのです。1年目はスキル研修、2~3年目にはワークショップ形式で、話し合いの場を設けました。

また、基幹職創出を目指す「女性キャリアディベロップメントプログラム(CDP)」において、上司向けに、「基幹職登用に向けて、上司であるあなたはどのようにフォローすべきか」 という研修を行いました。

今西氏:当社で現在力を入れているのは、女性の選抜研修対象者の上司に向けた研修です。上司同士のディスカッションや講師からのサジェスチョンによって、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)に気付き、「チャレンジングな仕事をいかに渡すか」「この育て方で良いのか」「優秀な部下の育成をいかに加速していくか」を考えてもらう場です。

上司によって意識も仕事の任せ方も異なるので、互いに共有することで新たな気付きが生まれます。参加者の中に、「自分の部下を将来の部門長に育てることを目標に、何歳でどのポジションに就けるために、今はこういう仕事を渡している」という上司がいて、ほかの上司たちに刺激を与えてくれました。

金子:ほかの上司のやり方を知り、気付きや刺激を与え合えるのは良いですね。
最後に、女性活躍推進に取り組む参加者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

岡村氏:このテーマには明確な回答やゴールがなく、ひたすらやり続けなくてはなりません。私自身、「終わりがない」と気付いたときは、壁を感じました。それでも目的を見据えてブレずにやり続けるマインドをもち、壁を壁と捉えずにポジティブに進めていくことができれば、会社にも世の中にも、大きく貢献できると思います。

今西氏:人事だからこそできることとして、「将来を見据えた人の育成」をリードし、部門の背中を押したい。一人ひとりの従業員に対しては、心に火を点けたい。変革を推進していくために、他企業の人事の皆さんとも情報交換ができれば嬉しいです。

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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