採用企業インタビュー
B2Bマーケティングにおけるカスタマー・エンゲージメントを体系づける
アクセンチュア株式会社
アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 プリンシパル 片桐 英毅氏 (写真右)
2017年入社。B2Bデジタル・マーケティングを専門としたコンサルティングを担当。
これまで通信・メディア・ハイテク業界の業務に従事。
仕事と並行し大学院でマーケティング研究を行い、経営管理学、ビジネスサイエンス、国際経営学の修士号を取得。
2019年4月からは博士後期課程に進みB2B領域の理論学術研究に取り組んでいる。
デジタル領域におけるグローバルトッププレイヤーとして成長を続けているアクセンチュア。今回はアクセンチュア デジタルにてB2Bマーケティングを牽引する片桐氏に当社コンサルタント宮﨑次郎が伺いました。
――アクセンチュアに入社する前の経験について教えてください。
私は学生の頃から消費者行動に関心があり、大学では生活動線デザイン、今でいうカスタマー・エクスペリエンスデザインを学びました。大学卒業後は中堅の広告代理店に入社し、主に店頭プロモーションを担当。その後、大手Webコンサルティング系の企業を数社渡り歩き、コンサルタントとして大手企業のWebサイト戦略策定、カスタマー・エクスペリエンスデザイン、サイト構造設計、サービス・デザイン、業務設計などを担当しました。前職在籍時、マーケティング・オートメーションの導入サービスを立ち上げた事をきっかけに、マーケティングからセールスを横断したB2Bマーケティングに携わるようになりました。
――そして2017年にアクセンチュアに参画。片桐さんは、前職時代からアクセンチュアに対して思い入れがあったと聞きました。何がきっかけだったのでしょう?
10年ほど前ですが、当時勤務していた会社の研修として、ビジネススクール で学ぶ機会があり、そこで論理的に物事を整理することの面白さに興味が湧きました。会社の研修が終わったあともそのまま自費で通い続け、最後にマーケティング戦略講座を受講したのですが、その時の講師がアクセンチュアのコンサルタントでした。当時の私は、「コンサルティングファームのコンサルタントは、こんなにスマートに物事を整理できるのか」と、その講師に憧れの念を抱いていました。そして、その方が最終講義で話していた「意志の持ち方」に大変感銘を受け、これが私のキャリアの方向性に大きな影響を与えました。このような経緯がありましたので、アクセンチュアに対しては特別な思い入れをもっていました。
――ご入社後は、どのような活動をされていますか?
私の専門領域はB2Bデジタル・マーケティング、いわゆる法人を対象としたビジネスを行う事業会社様のデジタルマーケティングコンサルティングです。その中でも、商談化するまでの顧客育成であるリード・マネージメント、遠隔で営業活動を行うインサイドセールス等、営業領域にまたがる範囲での業務設計、システム導入、施策企画と実行支援を担当しています。
私はプリンシパルという肩書ですが、プリンシパルはプロジェクトの実行支援を担当するだけでなく、ソートリーダーとしての役割も求められます。ソートリーダーシップとは、特定の課題やテーマに対して、その解決策となりうる主張・思い・理念などを掲げ、社会や顧客からの共感と評判を生み出すこと。例えば、新しいマーケティング戦略・戦術の視点や、あるべきデジタル・マーケティング像についてイベントで講演しています。また、社内研修の講師も担当しています。
――入社前後でギャップはありましたか?
正直なところ、良いギャップしか感じていません(笑)。おそらく、一般的なコンサルティングファームの印象というのは、長時間労働が続き、お客様や社内からの重圧で疲弊し、短期間でどんどん人が入れ替わっていく世界を想像されているのではないかと思います。実際、私も入社前はそのようなイメージを持っていました。しかし、入社して早々にそのイメージは払しょくされました。
アクセンチュアでは「Project PRIDE」という独自の働き方改革を全社で取り組んでいます。一般的に働き方改革というと「労働生産性を向上すること」が主な目的だと思います。実際にアクセンチュアでも、より短い時間で、高品質の価値を生み出す働き方を定着させる取り組みを日々続けています。ただし、それが最終的な目的ではありません。アクセンチュアの働き方改革では、働くすべての人々が、プロフェッショナルとしてのあり方に、自信と誇りをもてる未来を創造すること。お客様や家族に対しても、アクセンチュアで働く事に誇りを持てるようになること、を目的としています。
――もう間もなく2年ですね。
入社前、コンサルティングファームは激務のイメージでしたので「2年も持てば良いかな」と思っていました。しかし、この2年間の勤務を通して、むしろ「可能な限り長く働きたい会社である」と強く思うようになりました。その理由はいろいろありますが、一番の理由は、職位や年齢関係なく、社員全員平等にチャレンジする機会が与えられる環境に魅力を感じているからです。
例えば、私が入社した翌月には会社を代表して海外のカンファレンスに参加させてもらい、また、B2Bのイベントでは約500人の聴衆の前でプレゼンテーションを担当しました。会社側からこのような機会を提供されることもあれば、自ら機会を創造し実行することもできます。アクセンチュアの日本法人は11,000人を超える大所帯ですが、多様性や個人の意志を尊重する文化があり、それらもチャレンジを促進する要因になっていると感じています。
――今、お話を聞いていると成功要因は環境の良さということですが、一方で、コンサルティングファーム未経験の片桐さんが活躍されている秘訣としてはどの辺りがポイントなのでしょうか?
活躍というにはまだ努力が足りてないですね(笑)。ポイントは、コンサルタントは自分自身が商品ですから、常に選ばれる状態になっている必要があります。そのために、自分自身をマーケティングしています。具体的には、B2Bというセグメントを自分の専門領域としてターゲティングし、その中で自分がどのようなポジションを取るかを常に意識しています。
自分のポジションを確立するために他人との差別化が重要ですが、差別化の例として、B2Bの専門性の深堀と、理論研究の経験を業務に活用しています。私はこれまで3つの大学院でマーケティングをテーマに研究をしたのですが、ひとつ目の大学院で指導教授から「マーケターは、実務と理論の両輪をバランスよく回し続けることが重要である」とご指導いただき大きな共感を得まして、それを実践し続けることを自身の差別化要素にしています。
――そのようにして学びを業務に活かされているわけですね。そもそもB2Bに絞っていこうとなったきっかけはなんだったのでしょうか?
元々、私はB2Cマーケティングを専門としていましたが、個人購買行動が組織購買行動に変わっても、マーケターとしての関心は「ヒトの意志決定メカニズム」ですので、B2CからB2Bへシフトすることにそれほど違和感はありませんでした。
B2Bマーケティングは、多面的な施策を検討できる面白さがあります。例えばB2Cの購買行動は、一人の人間が短時間で感情によって購買意思決定することもある、といった特徴がありますが、一方B2Bの場合は、複数の担当者が長い時間をかけて合理的に購買意思決定を進めていきます。この購買意思決定プロセスの各局面において購買担当者が変わり、意思決定に影響する要因も変わります。このような状況の変化に応じた施策を企画し、実行する上で様々な要素を検討することは非常に難しいのですが、そこに面白みを感じています。
――B2Bという領域で片桐さんはご自身のバリューを発揮されていると思いますが、アクセンチュアとしてこのデジタル・マーケティングの強みをお聞かせください。
今後の展望については、個人的な意見ですが、B2Bマーケティング・セールス領域の新たな重要経営指標として、カスタマー・エンゲージメントを指標化できればと考えています。近年、モノ売りからコト売りへと環境が変化し、購買する側の意識も所有から利用へと変化しています。このような環境変化により、顧客との関係性構築・維持がB2Bマーケティングの重要課題となっていますが、この関係性を測定し、将来的な収益の予測ができる指標としてカスタマー・エンゲージメントを活用できないかと考えています。まずは私が大学院で研究し理論的な定義と測定方法を開発、それをビジネスに応用し、最終的にはアクセンチュアとしてのB2Bにおけるカスタマー・エンゲージメント活用フレームワークを世に提示できればと考えております。あくまでも私個人的な夢、野望ではありますが、アクセンチュアという環境を活用すれば実現する可能性が高い夢だと思います。