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ここ数年で大きく変化している医薬品業界のトレンド
従来の製薬業界は、ブロックバスターと呼ばれるような汎用的で数千億円レベルの売り上げが立つ新薬を開発し、販売することで主たる収益源としてきました。しかし一般的な疾患を対象とする医薬品はほぼ開発し尽くされ、大きな市場を見込める新薬の開発は頭打ちになったことで、製薬会社のビジネスモデル・収益構造は大きな転換期を迎えています。
そのような潮流の中で、かつては医薬品の主流だった化学合成による医薬品だけでなく、バイオ医薬品や遺伝子治療、再生医療など、モダリティ(治療手段)の幅が広がっています。そこで各社は、特定の疾患領域やモダリティなど、ニッチかつ患者からのニーズが強い領域に的を絞る、いわゆる「選択と集中」が加速しています。
また、良い薬を作って売るだけではなく、疾患の啓蒙や啓発を行い、予防医療の拡大、デジタルヘルスの領域に参入する製薬企業も増えています。
近年の製薬業界における合併・買収の狙いも、そうした戦略に則って、弱みを補い、強みを盤石なものにするところにあります。製薬会社においての合併・買収は昔からよくある動きですが、外資企業はもちろん、日系企業もそれに追随する大胆な動きを見せつつあります。
また、中小規模の製薬会社はリソースが限られているため、自社の強みの見極めた上で、CSO企業を用いたプロモーションの活用や、大手製薬ではnonMRプロモーションで売り上げを作るなど、開発に投資していくようなビジネスモデルも増加しています。
業界の変化の大きい部分にいかに対応していくかが重要になっていおり、「自社開発」に力を入れていく企業、「販売」に特化をする企業、更には他社製剤の「製造」を新たな事業戦略に加える企業など、各社特色ある戦略を打ち出しています。
デジタル化の加速+人材流動性の高まり
この数年コロナ禍を経て、各社のデジタル戦略には大きく差が生まれました。今後、他国や他産業と比べてデジタル活用が遅れていると指摘されてきた日本の製薬業界でも、さらに動きが活発化しそうです。
具体例を挙げると、
例えばドクターへの情報収集方法についてはデジタル媒体を経由しての医師への情報提供が当たり前になり、実際に訪問をする施設をAIやデータ分析を用いターゲティングし、MR活動によって情報提供をする施設を明確化にしている企業なども多く出てきています。
また、コマーシャル部門だけでなく、各バリューチェーンごとにもデジタル化が加速しております。開発部門ではAI解析やリアルワールドデータの活用や工場周りでは工場のオートメーション化などをはじめとするDX化などが進んでいる状況で、社内のDX化も各社に変化の差が生じてきている状況です。
さらにもう1つ、業界に大きな影響を及ぼす要素として、薬価制度の改革があります。これまで薬価改定は2年に1度でしたが、2021年度からは「毎年度改定」となりました。これにより、長期収載品と後発医薬品は特に影響を受けることになります。各社の薬価戦略のみならず、開発戦略、ひいては事業戦略にも大きく影響を及ぼすことになってきます。これはデータの利活用をすることで先のマーケットを見立て、それに対しての打ち手を先手先手で打っていくことが求められます。
今後、薬価改定による減収が見込まれる企業は、医薬品開発のスピードアップが当然求められますが、企業規模の大小、外資・日系に関わらず、自社のリソースと強み・弱みを見極めた上で、「どの領域に注力していくか」「どの事業に注力していくか」においての戦略的な判断と舵取りが今後より重要になります。
データの利活用については外資系企業の方が進んでいる印象もありますが、直近だと日系企業でも外部からの採用が進み、データドリブンな意思決定を進めている企業も増えております。日系・外資問わず如何に優秀なデータ人材、デジタル人材の採用、活用が今後のビジネスの加速に繋がることは間違いなしです。
求人数は増加傾向、経験した領域の専門性が問われる転職市場に変化
製薬業界はもともと経済状況に左右されにくい業界ではあります。製薬業界の転職市場において外資・日系を問わず求人数はここ数年増加傾向です。ただ、その中身はというと、ここまで説明してきたような業界を取り巻く大きな変化に伴って、求められる人材像にも変化が見て取れます。
本社ポジションにおいても、製品上市に伴う製品マーケティングやMSLのポジションは活況です。各社のパイプラインの動向が伺えますが、バイオベンチャー、スペシャリティファーマ、大手の製薬会社まで広くニーズが出ています。
各社、開発力がある企業については臨床開発に関わるポジションのニーズも多く発生しているタイミングです。
また、プロモーション戦略の多様化=オムニチャネル戦略が加速する中でデジタル関連ポジション・データ分析関連のポジションも増化傾向です。
この数年、大きな変化ではありますが従来は業界内での転職が一般的ではあったものの、異業界からの人材獲得も増化傾向です。(例えば、データサイエンティストやデータエンジニア、to Cに向けたマーケティングの経験者など)
各社、アジャイルに物事を進めていく考えが外資系製薬会社を中心に浸透していますが、コンサルティングファームやIT企業の出身者を中心に採用するなども近年のトレンドです。
また、今までのセールスサイドのポジションでは、いかに足繁く医師を訪問して良好な関係性を構築できるかという、アナログのコミュニケーション力を重要視しての採用が主流でした。
ですがこの数年で、「オンコロジー」「免疫」「希少疾患」といった、特定の領域に関連するより専門的な経験が求められ、いわゆる専門医に対してより深い知識を用いてディスカッションが出来るレベルの高いMRが求められるようになってきています。
研究・開発職も同様で、開発の進め方やモダリティの変化に伴って、特定領域の経験や専門的な知識・スキルがピンポイントに求められる傾向が強まっています。
デジタル人材、変化への適応力がある人材のニーズが高まる
DXに伴う採用ニーズは、製薬業界全般で職種問わず今後さらに広がっていくでしょう。 製薬業界はアナログなオペレーションがまだ多く、DXについては「これから」の部分が大きい業界です。
その上で、ビジネスを加速していく為には“データの利活用”がキーワードになります。
製薬会社は多くのデータを抱えています。それらをどのように活用し、事業に活かしていくのかが企業の事業戦略の重要なポイントです。
プロダクト、モダリティ、ビジネスモデル、オペレーションの全てにおいて変化が非常に激しい今、固定観念にとらわれず変化をキャッチアップしていける人材が、求められていくことになるでしょう。その資質があるかどうかを、選考の過程でも採用企業は見極めようとしています。
したがって面接では、求められるスキルや経験があることを伝えるだけでなく、「自分が主体となってオペレーションを改善した事例」など、過去に得た成功体験を通じて、変化への適応力をアピールしていくとよいでしょう。 これはデジタルというキーワードにだけ当てはまることではなく、職種全般的に求められることです。成功体験は小さなものでも構いません。変化に強い人間として、市場や環境の変化に対して常にアンテナを張り、仮説を立てて新しいことをトライしてきたかどうか、それを転職先でも再現可能なことを示す必要があるでしょう。
(2023/12/15)
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