首都圏に次ぐ経済規模を誇る近畿圏の中でも、大阪は西日本屈指の経済圏です。都道府県別の企業数で見ても、東京都が25万5000企業(全体の16.8%)と最も多く、次いで大阪府が11万企業(同7.3%)、愛知県が9万1千企業(同6.0%)となっており、東京都と大阪府で全国の企業の約4分の1(24.1%)を占めています(総務省統計局調べ)
そんな大阪府で近年求人が急増しているのがIT・デジタル関連のポジションです。ここ数年で関西に進出する大手企業も増えUターンの受入数も増加傾向にあります。今後も中長期的な成長が見込まれる大阪のIT・デジタル求人の動向について、JAC大阪支店のコンサルタントが解説します。
目次/Index
大阪エリアのIT・デジタル業界の動向
大阪ではデジタル化・DXの波を受けて、大手〜中堅事業会社やSIer、コンサルティングファームでのデジタル人材の採用が急増しています。また、中小企業における社内SEの採用も底堅く、SaaS系のベンチャー企業では関西市場を開拓する営業やカスタマーサクセスの採用が活況と、全方位的な売り手市場が続いています。
大手企業の採用動向
背景には大阪を中心とした関西地場の大手グローバル企業が、ここ数年でDX推進を本格化させたことが挙げられます。事業会社大手では内製化を進めるために社内にIT・デジタル人材を擁する採用方針にシフトしています。しかし、慢性的な人材不足から自社内のリソースだけではプロジェクトを立ち上げられないため、大手コンサルティングファームや全国区の大手SIerも並行して利用しています。
こうした経緯もあり、関西でもコンサルティングファームでの採用が活発です。そもそもコンサルティングファームは2020年より前から大阪に進出する流れが進んでいました。大手総合コンサルティングファームの中には、大阪拠点だけで既に数千人規模の組織にまで成長している企業もあります。2020年以降に大手各社が大阪支社設立を急いでおり、大企業のDX推進や事業変革を担える方々を絶えず募集している状況です。
そして、コンサルティングファームが受注した案件の開発リソースとして、大手SIerの業績も好調です。システムエンジニア(SE)やプログラマー、プロジェクトマネージャー(PM)に至るまで、あらゆるポジションで採用が活況です。
近年のSIerの傾向としては下請構造からの脱却を図るべく、自社にコンサルティング部門を設ける企業も増えており、コンサルティングファームから積極的に中途採用を行っています。
地場系ベンチャー企業・中小企業の採用動向
関西圏の大手メーカーを下支えする中小企業においても、デジタル化は急務です。
DX以前のデジタル化が十分に進んでいないこともあり、汎用機ベースのITインフラをリプレイスしたり、紙で管理している情報のデジタル化をしたりといった状況です。こうしたプロジェクトの即戦力となるのは、大手事業会社やSIerでそれらを経験した40代以降のSEです。経験豊富なミドル層を社内SEとして採用する企業が年々増えています。
さらには中小企業に特化したコンサルティングファームにおいても、パッケージ化したソリューションの提案・導入を強化しており、SIer出身の40〜50代を採用する傾向が目立ちます。
また、関西地場のベンチャー企業ではアジャイル開発に長けたエンジニアやプロダクトマネージャー(PdM)を、東京圏のベンチャー企業は関西圏に進出して営業やカスタマーサクセスを採用する傾向も目立ちます。採用を強化するベンチャー企業では主にSaaS系のソフトウェアを提供しており、スピーディーな開発と事業展開を志向しています。そのため、ウォーターフォールではなくアジャイルで開発できるエンジニアが歓迎されています。また、営業やカスタマーサクセスのポジションでは課題解決型の提案ができるソリューション営業の経験者が好まれる傾向にあります。
大手企業で活躍できる方とは
DXや新規事業に対する投資意欲の高い大手事業会社は、コンサルティングファーム出身の方を求めています。特にメーカーではモノづくりからコトづくりにシフトする過渡期にあり、新規事業の企画やAIやIoTの導入による事業改革など、コンサルティングファームが得意とする領域での採用が多いことが背景にあります。
事業を中から変革できるというメリットを感じて、コンサルティングファームから事業会社に転職する方もいる一方で、さらに上流のコンサルタントに進みたい方や、IT・デジタルから事業戦略に移りたいといったように、コンサルタントとしてのキャリアアップを目指してコンサルティングファーム間での転職を選ぶ方も多数います。
年収面でも事業会社と比べて、コンサルティングファームのほうが高い傾向にありますが、その時期のトレンドやニーズに沿った案件に携わり続けたいという方にとっては、コンサルティングファームでのキャリアを継続したほうが良いでしょう。
SIerは技術志向が高い方にとっては最適な環境だと言えます。新たな開発手法を身に着け、大手企業のDX推進やデジタルシフトに関するプロジェクトに反映するというサイクルを身につけることで、スペシャリストとしての道が拓けます。一方で年齢が40代以上になると、管理職に進むなどマネージメント経験を積むことも必要になります。
もし、技術者として最前線でのキャリアを継続されたい場合は後述するベンチャー企業への転職も視野にいれると良いでしょう。
中小企業・ベンチャーで活躍できる方とは
先にも述べたように、中小企業ではこれからデジタル化を進めていくため、ITインフラ刷新のフェーズにある企業が社内システム部門を担える方を募集しています。大手事業会社で中からITインフラを刷新してきた方や、SIerで顧客企業のデジタル化をサポートされてきた方であれば即戦力としての活躍が見込まれます。
技術トレンドの先端をキャッチアップし続けるよりも、これまでの経験を踏まえて事業会社のIT部門で管理職としてのキャリアを積みたい方にとっては良いキャリアチェンジになるでしょう。
一方でSaaS系のベンチャー企業はSIer以上に技術に対する志向が強い方が求められます。開発スピードだけでなく言語や開発フレームワークについても新しいものを積極的に取り入れる傾向にありますので、常に新しい情報をキャッチアップできる方が歓迎されます。
大阪エリアのIT・デジタル職の平均年収
関東圏と比較すると、地方都市の年収は相対的に低くなりがちですが、関西圏は東京と同じ水準の年収帯です。Uターン・Iターン・Jターンを検討している方にとっては、生活水準を維持したまま転職しやすい環境であるといえるでしょう。
事業会社の例
大手企業 システム部門課長 1000〜1200万円
中小企業 システム部門部長 700〜800万円
コンサルティングファームの例
マネージャー 1000〜1400万円(インセンティブ込)
シニアマネージャー 1200〜1700万円(インセンティブ込)
SIerの例
プロジェクトマネージャー(40代) 800〜1000万円
コンサルティング部門立ち上げ 1200〜1500万円
関西地場系Saas系ベンチャーの例
PdM(プロダクトマネージャー) 600〜800万円
CTO候補 800〜1000万円
※企業や個人によって異なりますので、あくまで目安としてください。
転職を成功させるためのポイント
これまで述べたようにIT・デジタル系の求人はどのレイヤーの企業・職種においても、圧倒的な売り手市場であるため、一カ月程度の転職活動で内定を4〜5社獲得することも珍しくありません。しかし、ここで気をつけておきたいのは、単純に年収アップできる転職先を選ぶのではなく、ご自身のキャリアにとってベストな転職先を選ぶことです。
最も高い年収をオファーした内定先に入社したものの、面接で聞いていた内容と仕事内容が全く異なっていた結果、入社三カ月目で再度転職活動を始めるというケースもあります。
こうした転職に至った要因としては、さまざまな要因が考えられます。
最も多いのは、企業からの説明や求人票に記載されている情報だけを鵜呑みにしてしまったケースです。実績があり、利用者満足度の高い転職エージェントを利用していれば、企業の内情や組織風土、配属先部門の情報などを照らし合わせた上で適切な転職先かをアドバイスできます。
転職を成功させるには
転職先を決める際には
「5年後、10年後に自分はどうありたいか」
「そこに到達するためには、足元の5年間でどういった経験を積むべきなのか」
「その経験が積める環境はどこにあるのか」
というように、順を追って整理すると、間違いのない転職がしやすくなります。
JACでは心から納得できる転職支援を第一に考えています。ベストな転職タイミングが今ではない場合は、現職に留まることをお勧めする場合もあります。どういった選択肢を選ぶにしても、「あのとき、JACに相談してよかった」とご登録者に仰って頂けるよう、個人個人のキャリアプランに寄り添ったコンサルティングでサポートしています。
関西圏同士の転職もUターン・Iターン・Jターン転職もお気軽にご相談を
現在の大阪はデジタル化の過渡期にあり、これからの変革に寄与していることを肌身で感じられる求人が多数あります。
関西地場の最大手企業であっても、解決するべき課題は山積しています。また、事業会社だけでなくIT/Web企業やコンサルティングファームという立場でも、企業から行政に至るまでデジタル改革が同時進行で進んでいます。デジタル人材の皆様が大阪で活躍できる機会は東京以上にあると自負しています。
Uターン・Iターン・Jターンで大阪への転職を検討されている方は、JAC大阪支店にお気軽にご相談ください。当社での面談だけでなく、最終選考に至るまでオンラインで完結する求人も多数ございます。また、情報収集段階の場合でも、大阪地場の企業と直接やり取りしているコンサルタントが最新の転職市場動向をお伝えすることも可能です。ぜひお問い合わせください。