ヘルスケア業界では「オムニチャネル戦略」を強化する動きが活発。新たなポジションの求人が出てきており、ヘルスケア業界経験者はもちろん、異業界からの採用事例も多数出ています。
オムニチャネル戦略関連の転職市場動向について、JAC Recruitment(以下、JAC)のヘルスケア業界専任のコンサルタントが解説します。
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オムニチャネル戦略が広がるヘルスケア業界
ヘルスケア業界各社ではオウンドサイトなどを中心にデジタルチャネルの活用を2000年代から行ってきましたが、ここ最近で急拡大。MRが病院を訪問できない環境下、3rdParty(サードパーティ)メディアやオンラインMRを通じた情報提供の重要性が高まり、急速にデジタル投資が進みました。
現在はMRによる従来型のプロモーションだけでなく、オウンドサイト、3rdPartyメディア、メルマガ、オンラインMRなど、さまざまなチャネルを活用。顧客のニーズに合う情報をタイムリーに届けて「CX(カスタマーエクスペリエンス)=顧客満足」を最大化することを目指し、事業への投資と採用が活発になっています。
MR活動にデータを活用
製薬メーカーが抱えるデータは、製品に関するデータ、ドクターや卸などの顧客データのみならず、患者のリアルワールドデータやデジタルチャネルから得られるデータなど多岐にわたります。MR数の適正化、活動効果の最大化を図るためにもデータが活用され、AIによってMRの行動計画を立てる企業も見られます。
未病・予防・予後の領域へもアプローチ
製薬メーカーでは、患者・健常者に直接アプローチし、情報提供やコミュニケーションを強化する動きが広がっています。睡眠改善のアプリや喫煙者向けのアプリなどが例に挙げられますが、「治療」にとどまらない「予防医療」の領域でのソリューション提供を目指し、ヘルステック企業のコラボレーションも活発化しています。消費財メーカーと同様、一般向けマーケティング活動の必要性が高まっていることからもオムニチャネル化が急務となっているのです。
ヘルスケア業界のオムニチャネル戦略にともなって増えている求人
最近はオムニチャネル戦略の企画・推進にあたり、新たなポジションの採用が活発化しています。
デジタル求人数は2020年以降4~5倍へ拡大。デジタル領域のみで年間100ポジション以上の求人がある状況でしたが、直近はややデジタル領域の求人は落ち着いている傾向にあります。
外資系企業では導入した3rd Partyやチャネルの費用対効果の検証や活用推進といったポジションのニーズが目立ち、営業推進/デジタル推進などのポジションも増えています。また、全社で推進していく為の経営企画やデジタル部署にて全社プロジェクトが推進されるようなフェーズに移っています。
アジャイルコーチと呼ばれるようなポジションも各社、年間1、2ポジションが新規ニーズとして出てきています。
日系企業でのデジタル化はまだまだ導入の余地があり、外資系企業から日系企業へのご転職事例も徐々に増えつつあります。
「オムニチャネル」、「カスタマーエクスペリエンス」というワードは各社において2025年以降もホットなワードになるといえるでしょう。
引き続き、「データサイエンティスト」「データエンジニア」「データアナリティクス」などのデータの利活用の為のポジションのニーズや営業体制の構築、データドリブンなマーケティング戦略の実行に向けたSFE(Sales Force Effectiveness)や営業企画・営業推進などのニーズも引き続き活発になりそうです。
これらのポジションでは、ヘルスケア業界でのデジタルマーケティング経験者はもちろん、異業界の方々の転職事例も豊富です。例えば、コンサルティングファーム出身の方、データ分析に強みを持つ方の転職事例が多数あります。
求められる人物像とミッション・業務内容
各採用ポジションで求められる人物像、ミッション・業務内容をご紹介します。
求められる人物像①オムニチャネル/マルチチャネル戦略担当/デジタルマーケティング
●オムニチャネルの戦略の全体像を描ける方
●オウンドサイト、3rdParty メディアを用い、MRも含めた全てのチャネルの最大化を図る戦略策定ができる方
製薬業界特有の規制やMRの動きに関する知識・理解がある方が求められますが、toC(患者/一般消費者)対象のCX向上を図るポジションについては、FMCGなどの経験者が歓迎されています。
求められる人物像②デジタルのプラットフォーム作り
●Webサイト構築、デジタルコンテンツ制作、デジタル広告運用の経験がある方
●デジタルマーケティングのPDCAを回せる方
デジタルの知識・経験が重視されるため、異業界の方が採用されるケースが多数。専門性が高いコンテンツを掲載する場合は、医療広告代理店などヘルスケア業界での上記経験が求められています。
求められる人物像③データサイエンティスト
●機械学習やAIなどを用いて、データの分析ができる方
ヘルスケア業界ほか、金融・保険など親和性がある業界での経験者が求められていますが、それ以外の業界から採用されるケースもあります。英語力が必要とされています。
求められる人物像④データアナリティクス/ビジネスインテリジェンス/ストラテジスト
●ビジネス側のニーズを踏まえてデータ分析のスペシャリストにつなぎ、分析から明らかになったインサイトをビジネス側にフィードバックする役割を担える方
●さまざまなデータから得たインサイトをもとに事業部長やマーケティング・営業部門などに提案を行い、プロモーションの最大化を図れる方
事業戦略や課題の理解、競合他社の情報収集などが重要であるため、ヘルスケア業界の経験者が採用されるケースが多く見られます。
オムニチャネル戦略が広がるヘルスケア業界で求められるスキル・経験・マインド
ヘルスケア業界のオムニチャネル戦略に関わるポジションで求められるのは、「データ分析スキル」「戦略立案できる思考力/ロジカルシンキング」「提案力」などです。
また、業界全体で「アジャイル」な仕事の進め方・組織作りを推進しているため、アジャイル=素早い・迅速に物事を進めていく為の、従来のやり方に固執しないマインドセットが望まれます。
人々の生命・健康にかかわる領域であるだけに「社会に貢献したい」というマインドも重視される傾向が高いです。
ポジションによっては英語力も必要とされます。外資系企業でグローバルとのやりとりをするマネジメントポジション、海外ベンダーとコミュニケーションをとるデータサイエンティストやデータアナリストなどは、英語面接に対応できるレベルの英語力が応募条件となります。
オムニチャネル戦略が広がるヘルスケア業界で働く魅力
ヘルスケア業界にはデジタルの知見を持つ方が少なく、自身の手で「0→1」を手がけられるチャンスが多いといえます。医療変革は社会課題であり、国も注力・支援しているため、予算規模も消費財業界を大きく上回ります。
「製薬メーカーはデータの宝庫」と語る方もいらっしゃいます。まだまだ手付かずの分析項目、得られていないインサイトが多く、それらを切り拓きたい方にとっては面白いステージです。
健康は自身や家族、周囲の人々にも関わる問題であることから、身近に感じられ、人や社会への貢献も実感できる方も多いと思われます。
求められている職種の年収相場
上記に挙げた採用ポジションの年収帯は、おおよそ800万円以上で、ボリュームゾーンは1000万円~1500万円です。
マネジメントポジション、あるいはコンサルティングファームで経験を積み戦略をリードする役割を担える方であれば、2000万円に達するケースもあります。
オムニチャネル戦略が広がるヘルスケア業界で求められている職種のキャリアパス
ヘルスケア業界のデジタル化、オムニチャネル戦略は拡大途上にあり、新しい組織やチームが創設されて間もない時期。「立ち上げ」に携わるチャンスが多く、その経験はキャリア構築においてプラスとなります。
先行している外資系企業で経験を積むことにより、これから日系企業でも同様の動きが広がっていくなかで転職の選択肢も増えると見込まれます。
「デジタル」「カスタマージャーニー」の知見・経験を生かし、ヘルステック企業など関連分野へのチャレンジも可能になります。
ヘルスケア業界への転職成功事例
ヘルスケア業界のオムニチャネル戦略に関わるポジションへ転職された方々の事例をご紹介します。
コンサルタントから製薬メーカーに転職し、年収アップ
Kさん(30代後半/男性)はコンサルティングファームで経験を積み、次のステップとして事業会社への転職を検討。年収を維持したいという希望から、給与水準が高い製薬業界を目指していました。
他エージェントを通じてデジタル・IT関連部署を中心に応募しましたが、思うように進まず、JACにご相談いただきました。
JACからは営業企画などビジネスサイド寄りのポジションも含めてご提案。事業戦略・課題、自身の経験や志向を踏まえて7社ほどに応募されました。Kさんのご経験は、「処方データを解析し、戦略に落とし込みたい」という外資系製薬メ―カーのニーズに合致し、オムニチャネル戦略を推進するスペシャリストとしてのポジションでご入社されました。
前職年収が1500万円を超えていたKさんは多少の年収ダウンを覚悟していたのですが、結果として年収アップで迎えられました。
>オムニチャネル戦略のスペシャリストとして転職成功したKさんの事例へ
複数業界を経て製薬メーカーに転職し、CX戦略を推進
Tさん(40代/男性)は、コンサルティング会社でのヘルスケア関連プロジェクトや通信会社でのプロジェクトマネジメントに携わってきた方。新たなキャリアを求めて転職活動を始めました。
Tさんのご経験・志向をおうかがいし、JACがご提案したのが、ある外資系製薬メーカーです。その企業からは経営企画の求人が出ていましたが、他のポジションでも活躍できる可能性を企業側に提案。Tさんには同社の事業戦略や課題などをお伝えしました。
結果、Tさんの経験を生かせるポジションでご入社に至り、CX戦略担当としてドクターや患者さんに行動変容を起こさせる取り組みを推進していらっしゃいます。年収も前職よりアップとなりました。
製薬メーカーでの経験を生かし、「やりたいことができる」企業へ転職
製薬メーカー複数社でデジタル化推進を手がけてきたEさん(50代前半/男性)。予算確保が進まず、やりたいこともできない環境に物足りなさを感じ、転職を決意されました。
JACからは、応募企業各社のデジタル化に対する本気度やその根拠となる組織体制、今後のビジョンなどの情報を提供。Eさんは面接を通じ、「現職では実現できないチャレンジができる」と確信を得た外資系製薬メーカーに転職を果たされました。
製薬業界のデジタル関連求人では50代の方の採用事例はほぼ見られなかったのですが、Eさんはその企業がまさにこれからやりたいと考えていた取り組みを含め、幅広い経験をお持ちだったことから、前職より年収アップで迎えられたのです。
オムニチャネル戦略が広がるヘルスケア業界の転職ならJACへ
ヘルスケア業界のオムニチャネル戦略に関わるポジションへの転職のお考えの方に、JACでは豊富な情報をご提供できます。大手から小規模ベンチャーまで業界の求人を網羅しており、新規立ち上げに関わる案件も多く保有していますので、転職に際してのご希望や志向に応じて多様な選択肢をご提案します。
状況によっては「今はまだ転職しない方がいい」といったアドバイスをすることもあります。目先の転職のサポートにとどまらず、中長期でのキャリア構築を支援したいと考えています。
転職するかどうかの意思が固まっていなくても、ぜひ一度ご相談ください。