SCMの転職事情|難易度や成功のポイントとは

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製造業の企業において、必要な部品や資材を調達するポジションがSCM(サプライチェーンマネジメント/調達購買)です。近年はデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の影響を受け、ソフトウェア分野にも調達の幅が広がっています。加えて、半導体などの電子部品不足が深刻化するなかで、あらゆる企業が優秀なSCM人材を求めています。

SCMの転職動向について、ハイクラス転職のJAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが解説します。

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SCMの転職市場動向


SCMにもDXの影響、高まるソフトウェアの比重

SCMとは自動車メーカーや電機メーカー、半導体メーカーなど、製造業において「調達購買」と呼ばれている職種ですが、主にソーシングを受け持つ「開発購買」と、パーチェスを担当する「量産購買」について触れていきます。

SCM自体は、製造業では数十年前から変わらずにある職種ですが、近年ではモノの調達に加えてソフトウェアの調達が、新しい要素として求められています。日系の製造業ではこれまで生産管理、製造、生産技術などの各部門で、独自のシステムを部分最適しながら開発・導入してきた企業が大半です。しかし最近では、DXスマートファクトリー構想が大手企業を中心に現実化している影響がうかがえます。

DXによって、製品開発において数十年間メカトロで制御していたプロセスが、ソフトウェアによる制御へと変わりつつあるわけです。こうした変化に対応するためのSCM職の社内リソースが不足しており、補強するために外部から人材を採用しようという動きがSCMの求人として表れています。

製造業のSCMを締め付ける深刻な半導体不足

現在、モノの調達に重大な影響を及ぼしているのが、世界的な半導体不足です。半導体デバイスを調達してモノ作りをしている自動車を始めとした各種製造業で、半導体不足によって受注が止まってしまうという事態が起きています。生産装置や複合機関連、ロボット関連など生産を下方修正する企業も増えています。クリスマス商戦を控えたアメリカでも、「店に出せば売れるのに、そもそも商品が作れない」という事態が起きているほどです。

こうした状況下で、必要なデバイスを調達しなければならないソーシングチームのSCMは困難を強いられています。経営層からも強烈なプレッシャーを受けつつ、足の長くなっている部品の納期をどれだけ縮められるのか、購買担当であるSCMには今までの購買実績とインセンティブを含めた価格交渉力が求められており、営業力と交渉力がものをいう状況にあると言えるでしょう。

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SCMのハイクラス転職事情


10年ほど前から、ヨーロッパが主導する形でRoHS指令など環境保全のための法規制が進められてきました。日本でもSDGs(持続可能な開発目標)が注目され、製造業においても、モノを作って捨てていくという消費型から、再生利用する循環型への変化が求められています。自社が地球環境に配慮するだけでなく、配慮している企業を選定して、その企業から調達をするといったことも求められています。ひいては、製造過程に携わる労働者への配慮、格差を生まないための対策なども、考慮の範囲です。

このような背景から、日系大手製造業の購買戦略では、環境問題や政治的な絡みも含めた、さまざまな要素を考慮したうえで、モノを調達するのがトレンドになってきています。

企業経営に近い調達戦略

実務担当者であれば、高い営業力という一言で売り込めますが、購買企画、調達企画といった立場になると、こうした世の中のトレンドに合わせた調達戦略が必要になります。安い部品を大量に買ってきて在庫するのではなく、必要な部材は調達するが、在庫を抱えすぎないよう、事業戦略に近い目線で調達戦略を考える。全体を俯瞰して見られる人、グランドデザインが描けるSCM人材が求められています。

ハイクラスのSCMの調達職としては、企業経営に近い戦略思考をもち、例えば一度コンサルを経験したうえで、再び事業会社に戻るという場合など、こうした戦略的購買のポジションは魅力的なものだと思います。

他職種からSCMのキャリアチェンジも可能

これまでのキャリアにおいて購買としての経験が無くとも、営業職として強くお客様と交渉してきた経験や、特定の技術分野に詳しい、あるいはサプライヤの役職者とつながるパイプがあるといったことがあれば、SCMの調達購買としての適性があると言えるでしょう。たとえば、海外営業や生産計画などの職種として需給管理や物流業務に携わっていた方にはチャンスがあります。
JAC Recruitmentの転職成功事例の内訳としては、調達購買の経験者が7割程度、営業サイドからのキャリアチェンジが3割程度となっています。


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SCMに求められるスキル


前述の通り、急速に変革が起きている現状において、従来とは異なるスキルを持つSCM人材が求められています。

危機を乗り切る高い交渉力と営業力

調達は製造業においてオーソドックスな職種だと言えますが、世界的な半導体供給の逼迫にあっては、コストや納期という単純な話はもはや通用しないと言えるでしょう。本来、SCMの購買というポジションはコストダウンに紐づいていますが、この状況下では安く仕入れることよりも、安定して調達できることが重要視されます。

日系メーカーの多くは、「安いが、いつ納品されるか分からない部品を買って在庫にする」よりも、「少し高くても、確実に必要な数を仕入れる」という調達に変わりつつあります。取引に際しても、相手企業に自社と組むことによる技術的なメリットを示すなど、より相手の懐に入り込んだソーシングができるSCM人材が求められているという印象があります。

SCM求人でも、単に購買経験者というより、対象分野の技術に精通している、前職で築いたサプライヤとの太いパイプを使って確実にモノを買える、といった人材を求めている案件が見受けられます。

グローバルな調達先に対応する語学力

SCMの購買担当にとって、語学力は絶対に必要なスキルです。

今の世の中では、日系メーカー・日本に拠点を置く外資メーカー問わず、調達先は日本国内のみと言う事はほぼ無く、世界中から購買する事になります。
また購入部品によって、中国が良いのか、台湾が良いのか、マレーシアが良いのか、そうした目利きができるかどうかがSCM職には重要です。IT関係なら、オフショアとして中国とインドが強く、さらにアメリカ、イスラエル、台湾あたりが交渉相手になりますので、SCM職にはビジネスレベルの英語力は必須になります。

また、化学業界では危険物を取り扱うことも多く、法規制に関する知識や海外との折衝が必要となります。たとえば、「化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)」、EU(欧州連合)における化学品規則である「REACH」や「RoHS(特定有害物質使用制限)指令」などの知識・経験があればプラス評価につながります。

営業力、グリッピングの強さ

喫緊の安定調達のために、高い交渉力を持ち、相手と駆け引きができる力があるリーダークラスが欲しいというSCMの求人が増えています。管理職経験の有無を気にされる応募者もいますが、マネジメント経験よりも、開発購買として設計者としっかり話ができる方のSCM求人が増えている傾向があります。30歳台後半から40歳台前半であれば、知識・経験・スキル次第ですが、日系企業では主にリーダーとして入社後、2年後に管理職というキャリアパスが多いようです。「スペシャリスト」と「マネジメント」、いずれにもキャリアを展開していけます。


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SCMにおける転職を成功させるためのポイント


最後に、SCMのなかでも職種別に、転職成功に向けて準備しておきたいポイントをまとめます。

開発購買

行きたい業界、携わってみたい製品に関しての技術的なノウハウを深める必要があります。若手ならば入社してから身につけることもできますが、戦略的なポジションであれば、その領域の知見者にほぼ絞られるでしょう。むしろ営業や開発といった違う職種からキャリアチェンジするほうが、求人との適合性が高い場合もあるでしょう。

ソフトウェア関連のIT購買

語学力はほぼ不要です。需要と供給のバランスが取れていない職種であり、DXによってクラウド連携やネットワークを使ったサブスクタイプのビジネスを開発するため、全くの異業種からマッチングする場合も多いです。圧倒的に人材不足で、自身の知見を生かせるとあってコンサルタント、プログラマー、SEといったエンジニアからの転職事例もあります。

半導体デバイスメーカーの購買

製造業の中でも特に半導体デバイスメーカーは、他とは異なる特徴があります。材料の確保に加えてインフラを整えるという2つの軸があるという点で、例えばウェハーの購買、半導体製造設備の購買といった調達担当から、自社で生産しないデバイスをどこのパートナーと組んで開発し、物流を確保するのかという戦略的な購買が主流になりつつあります。

納品先の設計工数を減らして自分たちの価値を高めるという視点に立つと、従来のような半導体チップ単体ではなく、例えばチップを乗せたボードにエッジAI機能を搭載するデバイスを売るという発想が生まれます。半導体デバイスにソフトウェアを組み込んで売るというビジネスモデルを作ることで、顧客企業との関係が強くなり、競合よりも優位に立てるチャンスが広がります。

半導体メーカーへの転職時に押さえておきたいポイント

世界的な半導体不足で受注が立て込んでいるため、原材料の調達が課題になっています。特にレアメタルでは中国が最大のソーシング先になっていますが、昨今の米中関係もあり、世界情勢を見ながらどこから何を調達するのか、リードタイムを見ながら適切なボリュームで購買を進めていくところに難しさがあります。難易度の高い今だからこそチャレンジしたいという意欲ある方が歓迎される状況です。


Q.語学力はどの程度必要でしょうか?

A. ビジネスレベル以上の語学力があることが望ましいです。ただし、企業が求めているのは語学力ではなく、専門性を生かした語学力です。
購買職の場合、重要なのはTOEICのスコアではなく、技術の目利きができ、QCDを守って国内外のサプライチェーンから調達できる能力が必要であり、英語はその手段の一つに過ぎません。実際の業務に英語をどのように活かしているかを、採用企業側は見ています。

Q.マネージメント経験は必要でしょうか?

A. 30代後半以上であればマネージメント経験があると望ましいですが、基本的には管理職ではなく購買職での採用なので必須条件ではありません。その代わりに何かしらのプロジェクトリーダーの経験があったり、将来的には管理職に進みたいと思っていたりする場合は、その旨を面接で伝えると良いでしょう。

Q.転職に有利な時期はあるのでしょうか? また、平均的な転職活動期間があれば教えてください。

A. 転職は思い立ったら吉日です。有利な時期はありませんので、すぐに行動しましょう。
一般的に書類応募から2〜3度の面接を経て内定まで1カ月半、そこから退職交渉や引き継ぎ、有給消化に1カ月半を要することを踏まえると、3カ月程度が転職活動に必要な期間といえるでしょう。

Q.転職回数が多いと不利でしょうか?

A. 転職理由に一定の合理性があれば問題ありません。複数回の転職を経て、キャリアアップを実現し、深い専門性が備わっていれば、むしろ評価されます。
また、20代に複数回転職した後に現職では3年以上続いているケースでも問題にはならないでしょう。逆に直近の数年でジョブホッパーになっているとマイナス評価になることもあります。


ここでは、JACを通じてSCMが転職に成功した方の事例を紹介します。転職のきっかけ・応募した企業・採用に至った決め手など、実例を元にお伝えします。

業種職種年収
転職前エネルギー商社営業600万円
転職後大手化学メーカーSCM800万円

Mさん(男性/30代前半)はエネルギー商社で営業を勤めていましたが、外部環境の変動に業績を左右されやすいことにストレスを感じ、安定感を求めて転職を決意。JACのコンサルタントと面談を行い、需給管理や物流手配の経験が生かせる「SCM」を提案され、可能性を感じてキャリアチェンジ。大手化学メーカーのSCMに年収200万円アップで転職を成功されました。

SCMの職務経歴書の書き方


転職に役立つ、SCMの職務経歴書の書き方も合わせてご確認ください。

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SCMの転職を有利に進めるためには、JACにご相談を


SCMの購買という仕事は、どこに専門性を持つのかがポイントになります。転職市場で求められているのは一部に関する知見というよりも俯瞰的視野を持つ事で戦略的な視点を養い、また多様な領域の知見/経験を得ることでご自身の価値を高めることができます。

JACでは、業界や職種に精通したコンサルタントが、求人企業と日々コミュニケーションを取っており、SCM職の最新の転職市場動向を把握しています。また、転職ご希望者様に対しては、選考通過しやすい職務経歴書の準備や面接の取り組み方についてのアドバイスはもちろん、ご自身がうまく気付けないような強みや特技を発見するお手伝いもしています。

SCMへのご転職を考えている方は、JACのコンサルタントに、ぜひご相談ください。


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この記事を監修した転職コンサルタント

渡邊

渡邊

製造業界専門 リクルートメントコンサルタント


2011年JAC Recruitment入社。一貫して製造業マーケットを担当し、ミドルクラスエンジニアを中心に転職をサポート。担当領域は、日系・外資含め、半導体・半導体製造装置、自動車、精密機器、電子部品、工作機械、プラント装置と多岐に渡る。
2019年よりDX領域に特化し、IoT/AI/Digital/Data Businessをキーワードにデジタルトランスフォーメーションを支援。延べ転職支援者は200名以上、内7割はエンジニア職(2021年12月現在)。
キャリアコンサルタント(国家資格)・JCDA認定CDAおよび衛生管理者資格保有。