あらゆる組織で課題となっている「女性活躍推進」「働き方改革」。
これらは、近年意識が高まりつつある「SDGs」の目標ともリンクしており、取り組みが加速しています。
SDGs/Sustainable Development Goalsとは、持続可能な開発目標。2015年9月、国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択された国際目標。2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す。
SDGsでは17のゴール・169のターゲットが設定されています。そのなかでも、日本において、あらゆる企業に関わるのが次のゴールです。
5・ジェンダー平等を実現しよう
8・働きがいも経済成長も
これらの施策がうまくいっている組織とうまくいっていない組織の差はどこにあるか。
それは、働きやすい制度・環境の整備を「福利厚生」と捉えるか「経営戦略」と捉えるかにある……と、業務改善のプロは指摘します。
本記事では、特に「リモートワーク」にフォーカスし、効果的に活用するための考え方・方法をお伝えします。
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「女性活躍」から「働き方改革へ」
日本では、第二次安倍内閣が経済成長戦略の一つに「女性活躍」を掲げました。背景には、少子高齢化にともなう労働人口減少問題があります。
2015年には、「女性活躍推進法」が施行され、企業では、女性が育児と仕事を両立しやすい制度・環境の整備に注力。その取り組みが、女性対象に限定しない「働き方改革」へと発展していきました。
「業務改善士」として、働き方改革・組織変革の支援、講演、執筆などを手がける沢渡あまね氏は「これからの時代、企業に求められるのは『女性支援』ではなく、『女性起点』の発想」と話します。
「女性起点とは、女性を優遇するものではありません。男女問わず、従来の統制型組織では力を発揮できなかった人たちが高い成果を挙げられるように、働き方や職場環境を変える。それにより、これからの時代に『勝てる組織』へ、健全にアップデートできます」(沢渡氏)
そこで、沢渡氏に、「女性活躍」から「さまざまな人の活躍」へ発展させる考え方、方法を語っていただきました。
リモートワーク活用は「福利厚生」ではなく「経営戦略」
「リモートワーク」「在宅勤務」など、従業員に柔軟な働き方を認めることに対し、いまだに「福利厚生」と捉えている経営者や管理職は少なくないようです。
女性に対しては、「育児で時間に制約がある女性たちを助けてあげる」、従業員全般に対しては「プライベートを尊重し、ワークライフバランスの充実を応援する」といったようにです。
しかし、先進的な企業はこう言います。
「リモートワークの活用は、『福利厚生』でも『人事制度』でもなく『経営戦略』である」と。
リモートワークは、生産性を向上するための選択肢の一つと考えているのです。
実際、「週に何日・何時間」といった制限なくリモートワークを認めている企業でも、リモートワークに切り替えてパフォーマンスが落ちたメンバーに対してはリモートワークを制限するケースもあります。
出社によって生産性が上がるなら出社。リモートワークで生産性が上がるならリモートワーク。企業として、選択肢と多様性を保証する――リモートワークが進んでいない企業ほど、このシンプルな発想に立ち返ってみてほしいと思います。
出社させることが本当に生産性を向上させ、企業の価値を高めているなら、それでもいいと思います。しかし、多様な働き方を提供した方がより生産性が上がり、いい人材が集まり、企業の価値を高めるとしたら、その方向に舵を切ったほうがいいでしょう。
テレワークを定着・進化させるメリットとは。効果を生み出す8つのスキルも紹介
「キャリア権」の考え方も、日本で広がりつつある
また、リモートワークを「キャリア権」の視点で考えてみます。
「キャリア権」とは、自分自身がどういうキャリアを確立していくのかを決められる、どこへ行っても主体的に自分のキャリアを形成できる権利です。その権利が個人には保障されているとする考え方です。
キャリア権の視点に立てば、人生100年時代、60歳を超えても70歳を超えても、自分のキャリアは自分で構築していける。もともとは欧米の考え方ですが、日本でも広がりつつあります。
女性の場合なら、子育て期間中のため、出勤してフルタイムで働けていない。しかし、オフィス以外での仕事が可能になれば、もっと活躍し、自身の思い描くキャリアを構築できる。そのような人は大勢いるはずです。
子育てをしながら働く女性が、仕事と両立はできるものの、昇進や昇給が難しくなる状況を「マミートラック」といいます。キャリア権の問題の一つです。
リモートワークが認められ、環境が整えば、さまざまな人たちのキャリアを保障することができます。
そして人材確保の問題に悩む企業は、女性が働きやすい環境を提供できれば、優秀な女性を採用できる可能性が広がるでしょう。
場所にこだわらない仕事環境が整備されれば、地方企業が都市部に住む人を採用する、あるいは遠距離の人とのコラボレーションが可能になります。
出会うことのできる人材の可能性と幅が広がるのです。
働き方を自由に選択できれば、生産性アップにつながる
企業が女性活躍推進の施策を検討するなかでは、このような案が持ち上がることもあります。
「子育て中の人が働きやすいように託児所を設けようか」
日本マイクロソフトでもこのアイデアが浮上し、該当する社員にヒアリングをしたそうです。すると、次のような声が聞かれたそうです。
「それはありがたい。でも、今でも子どもを預けて働きに来られている。むしろ、罪悪感なく子どもを迎えに行ける環境がほしい」
これを聞いて、改革担当者は問題の本質に気付いたといいます。
たとえば、子どもを保育園に迎えに行くために午後4時に会社を出ようとする際、どうしても周りに気を遣い、上司には「いいですか?」と尋ねなければならない。会議があっても、時間になれば退席しなければならず、申し訳ない気分になる。 託児所ができれば便利ではあるけれど、むしろ「いつ子どもを迎えに行ってもいい空気」が、社内にある方がずっとありがたいというわけです。
その気付きにより、日本マイクロソフトでは、コアタイムの規定、概念そのものを取っ払いました。
これと同様に、フレックスタイム制で「コアタイム」を撤廃し、「フルフレックス」を導入する企業が増えています。
労働時間に枠組みがなく、全員が自分の働き方を自由に選択する。
この考え方になると、「これがベースの労働時間」「これは逸脱した働き方」の区別はなくなります。
育児中で時間に制限がある女性に限らず、全員が自分の働き方を、自分で選ぶ。スケジュールを調整して、勉強会やセミナーに参加したり、病気を治療するために通院したりする時間の使い方も可能になります。
それぞれが自分に適した働き方により、パフォーマンスを発揮し、生産性を高められる。それによって企業の成長にも貢献できる――こうなれば、SDGsの目標「5・ジェンダー平等を実現しよう」「8・働きがいも経済成長も」の達成にもつながるといえるでしょう。
必要なのは、「制度」だけでなく「空気の醸成」
この実現のため、制度・ルール・しくみが不十分な企業や部署は、整備を進める必要があります。
しかし、制度・ルール・しくみがあっても、活用されていない職場も多く見られます。
適切に運用していくためには、社内の空気の醸成が必要です。
空気の醸成のために大切なのは、上司自身が制度を目いっぱい活用する姿勢。時短勤務にしろ、育児休業にしろ、リモートワークにしろ、上司が制度をどんどん使っていく。これが最も説得力があります。 制度は会社のメッセージです。そのメッセージを受け取り、体現していくのは、上司の重要な役割の一つです。
上司自身が実践できない場合は、「実践している人」「活用している人」に光を当てます。「○○さんのように、どんどん活用して、自分なりの働き方を実践してください」といったメッセージを頻繁に発していくのです。 自分の部署に実践・活用している人がいなければ、他部署の人のケースを取り上げます。
こうして、「これがいい働き方」を伝搬していけば、空気が醸成され、やがて文化となっていくのです。
※本稿は執筆者の個人的見解であり、ジェイエイシーリクルートメントの公式見解を示すものではありません。(2021年9月)