同業他社(競合)への転職成功のコツと転職事例・競業避止義務の注意点を解説

公開日:2024/08/27 / 最終更新日: 2024/08/27

競業・同業他社への転職は、キャリアアップや新たな挑戦を求める転職希望者にとっては、魅力的な選択肢の1つです。しかし、「競業・同業他社への転職はしてもよいのだろうか?」と法律上の疑問が浮かぶことや、成功させるにはどのような注意点があるのかと迷う場合もあるでしょう。

こちらでは、競業・同業他社への転職に関わる競業避止義務、同業他社への転職のメリット・デメリット、成功するためのポイントについてハイクラス転職のJAC Recruitment (以下、JAC)が解説していきます。

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競業・同業他社への転職を検討する際に、まず気になるのは「違法ではないか」という点でしょう。
結論から申し上げると、競業・同業他社への転職は違法にはなりません。この点について、詳しくみていきます。

競業・同業他社への転職は、法律上「職業選択の自由」にもとづき禁止されることはありません。日本国憲法第22条では、職業選択の自由が保障されているからです。そのため、例えば、エンジニアが現在の職場を退職して、同じ業界の別の会社に就職することは可能です。実際、同じ業界での転職事例も多くみられます。
つまり、法律上においては、たとえ前職と同じ業界の他社へ転職をしたとしても、それを理由に罰することはできないということです。

競業・同業他社への転職において注意が必要なのが「競業避止義務」です。競業避止義務とは、従業員が退職後一定期間、前職と競合する業務や企業への就業を制限する取り決めです。
この義務は、企業が自社の秘密や顧客情報が同業他社に漏えいするのを防ぐために設けられています。競業避止義務で守られる内容は、従業員が前職で得た知識や経験、前職の顧客情報、企業の機密情報などです。具体的には、専門的な製品知識・営業ノウハウ・重要な取引契約の詳細・顧客リスト、技術情報などです。
在職中は労働契約にもとづき競業避止義務が適用され、社内情報を口外することは禁じられており、また違反の際は罰則が適用されます。しかし退職後は、情報に関して別途契約上の根拠が必要になり、個別の契約書や誓約書に記載があるかで対応が変わってきます。
そのため、転職を検討する際には、まず自身が競業避止義務の対象となっているかを確認することが大切です。

同業他社への転職を成功させるためには、競業避止義務に抵触しないことが重要なポイントといえます。競業避止義務の取り決めに同意をしていて違反した場合、損害賠償請求や転職先の企業への入社の差し止め請求などを起こされる可能性があるからです。競業避止義務に関する記載は、就業規則や雇用契約書、退職時の誓約書に記載される場合が多いです。すでに入社時に企業からの「競業避止義務」の誓約書へ署名している場合もありますし、退職する際に誓約書にサインを求められることもあります。
競業避止義務の範囲は企業や職種によって異なり、一律で「〇年間は競業・同業他社への転職は禁止」と定められているわけではありません。そのため、転職前に自身の雇用契約や就業規則、誓約書をしっかり確認し、競業避止義務の有無をチェックしましょう。

次にそのチェックについて詳しくみておきます。


前述のとおり、競業避止義務は、就業規則・雇用契約書・退職時の誓約書に多くの場合は記載されています。ただし、競業避止義務は、企業の正当な利益を守るための取り決めであり、従業員の職業選択の自由を過度に制限するものであってはなりません。
そのため、競業避止義務が認められるためには、一定の条件を満たす必要があります。競業避止義務の記載例や判例と共に、その条件についてご紹介します。

就業規則、雇用契約、誓約書で規定される競業避止義務の期間は通常6ヵ月から1年程度ですが、その効力は一般的に強くありません。
理由は、規定があっても、有効と判断される条件が揃っていなければ、競業避止義務の有効性は認められないからです。

【競業避止義務の有効性が判断される要素】
1. 守るべき企業の利益があるかどうか
2. 1を前提として競業避止義務契約の内容が合理的な範囲か
3. 従業員の地位が競業避止義務を課す必要性が認められる立場にあるか
4. 地域的な限定があるか
5. 競業避止義務の存続期間・禁止される行為の範囲に必要な制限があるか
6. 代替措置(賃金が高額など)があるか

出典:「平成24年 人材を通じた技術流出に関する調査研究に関する報告書」(経済産業省)
参考資料5「競業避止義務契約の有効性について」


競業避止義務の有効性は上記6つの要素を複合的に判断して、認められます。

競業避止義務の有効性を判断する上で特に重要な要素の一つが、その範囲が「合理的」であるかどうかです。競業避止義務の期間が6ヵ月~1年以内の場合は、競業避止義務を有効とする要素がある場合のみ、競業避止義務違反とみなされやすいです。

しかし、退職後2年間、同業他社への転職を一切禁止するといった広範な制限は、判例でも有効と認められていないケースが多いです。なぜなら、このような制限は、従業員の職業選択の自由を過度に制限し、再就職の機会を著しく狭める可能性があるからです。裁判例において、競業避止義務への違反は、職種や業界の特性・従業員が担当していた業務内容などを考慮して、個別に判断されています。
そのため、就業規則・雇用契約書・誓約書で競業避止義務の記載がある場合は、自身が有効となる条件に合致しているかを確認することが重要です。例えば、機密を抱える立場であったか、競業避止義務を守る代替措置(金銭など)を受けていないかなどが対象になります。

競業避止義務の内容に不明点があれば、企業の人事部や専門の弁護士、転職エージェントなどに相談し、法的なアドバイスを受けるとよいでしょう。

【就業避止義務違反となる行為】
1. 企業秘密の漏えい
2. 顧客リストの持ち出し
3. 前職の技術情報の利用
4. 競業事業の開始
5. 前職の顧客へのアプローチ
6. 従業員を引き抜いての転職


競業避止義務違反と認められる行為はどのような行為でしょうか?
一般的に、企業秘密の漏えい・顧客リストや前職のノウハウの持ち出し、利用・競業事業の開始・従業員の引き抜きは、競業避止義務違反と認められる行為です。過去の判例では、違反者に対して損害賠償が命じられたケースもあります。

具体的な例として、元従業員が競合企業に転職し、前職企業の技術情報を利用したことで訴訟に発展した事例があります。

参考:【競業避止義務違反に当たり損害賠償が発生した判例2つ】

1. 前職の技術情報の利用
(出典:大阪地裁判決 令和2年10月1日

概要:大手家電量販店の原告が、リフォーム事業に関する営業秘密を元従業員が不正取得し同業他社に開示・使用したとして、損害賠償を請求しました。元従業員は、退職前に原告の営業秘密を私物のパソコンや外付けハードディスクに保存し、新しい職場でその情報をもとにシステムを開発していました。

結果:大阪地裁は、営業秘密の不正取得と使用が認められるとして、被告に対し損害賠償を下しました。

こちらでは、標準構成明細情報や事業で使用しているHOPRシステムの関連情報が営業秘密として認められ、それらが競合他社で使用されたことが問題とされました。

2. 競業事業の開始
(出典:東京地裁判決 平成22年10月27日

概要:ヴォイストレーニング講師として雇用されていた元従業員が退職後、前職で得た技術情報を使用して競合する事業を開始したため、前職の企業が提訴しました。

結果:裁判所は、競業避止義務契約が有効であり、特に営業秘密の漏えいが認められると判断。
元従業員に対して損害賠償命令が下されました。

出典:「平成24年 人材を通じた技術流出に関する調査研究に関する報告書」(経済産業省)
参考資料5「競業避止義務契約の有効性について」

ヴォイストレーニングの指導方法・指導内容及び集客方法・生徒管理体制についてのノウハウは、長期間にわたって確立されたもので、独自性かつ有用性が高いと判断しています。そのため、退職後3年間の競業行為禁止期間も、原告が目的を達成するために必要な合理的制限であると判断されました。
また、注意すべき点は、誓約書などの記載がなくても競業避止義務違反となる可能性が高い例もあることです。競業・同業他社への転職の際に、従業員〇名を一緒に引き抜いて退職する、技術研究の書類を退職時に持ち出す行為などは、競業避止義務違反となる可能性が高いでしょう。

また、企業が退職者を競業避止義務違反で訴える一般的なケースは、退職者が競合他社に転職し、機密情報の漏えいによって前職の企業に損害を与えた場合です。言い換えると、退職者が競合他社に転職しても、前職の企業の営業利益が侵害されていなければ、訴訟に発展する可能性は低いといえます。そのため、競業・同業他社への転職の際は、競業避止義務規定があっても、道徳的観念を守っていれば裁判にまで発展するような事態なりにくいといえるでしょう。

では、取締役・役員の退職後の競業避止義務は他の社員とは違うのでしょうか?取締役・役員の退職後の競業避止義務についてもみておきます。

結論から申し上げると、取締役や役員であっても退職後に競業避止義務を負うことはありません。在職中は、取締役への競業避止義務が、会社法第356条・第365条によって規制されています。会社法第356条では、取締役が「競業取引」「利益相反取引」を行う場合は「株主総会」もしくは「取締役会」で承認を受けなければならないと定められていますが、退職後の取締役の競業避止義務については、会社法上の規定もありません。そのため、原則として職業選択の自由(憲法第22条)が優先されるため、競業避止義務を負うことはありません。

例外として、個別の契約で定められている、退職時に厳格な誓約書を交わしているなどの場合は、注意が必要です。契約内容に従う必要が出てくるでしょう。ただ、退職後も、取締役は在職中に知り得た会社の機密情報を第三者に漏えいすることは禁じられています。これは、競業避止義務とは別に、秘密保持義務として継続します。


【競業・同業他社に転職するメリット】
1. 豊富な経験と専門知識を即戦力として生かせる
2. 転職先が見つかりやすくキャリアアップしやすい
3. 年収アップや待遇改善をかなえやすい
4. 業界内での評価をさらに高められる


競業・同業他社への転職は、競業避止義務などの注意点がある一方で、多くのメリットがあります。
こちらでは、競業・同業他社に転職するメリットを4つご紹介します。

競業・同業他社に転職する場合、同業であるがゆえに業務での豊富な経験・スキル・専門知識に優位性があります。そのため、これらを活用して即戦力として活躍できる可能性が高いです。
転職先の条件にもよりますが、経営戦略の策定や重要顧客との折衝など、より高度な意思決定に関与できる可能性もあります。また、同じ業界の企業であれば、ビジネスモデルや業界の慣習などを熟知しているため、新しい環境でも、短期間で成果を上げやすいでしょう。

【転職の実態調査】企業から求められている「経験者」とは?

競業・同業他社への転職は、業界理解があるため、転職先が決まりやすい傾向にあります。特に厚生労働省の令和2年転職者実態調査にからは、企業の転職者採用理由として即戦力を重視している背景が読み取れます。
管理的仕事や専門的・技術的な仕事の企業では、転職者の採用理由が「経験を生かし即戦力になるから」が62.3%、「専門知識・能力があるから」が40.7%と高くなっています。また、転職者を採用する際の問題点として、「必要な職種に応募してくれる人が少ないこと」という理由が67.2%と、最も多くなっています。

つまり、同業界同業種での採用は、即戦力を求めている・必要な職種への応募者数が少ないという事情から、優先・歓迎される傾向にあるといえるでしょう。競業・同業他社からの転職は、採用側の企業も、即戦力を採用することで育成に書けるコストや時間を削減できます。
そのため、同業経験者は、その即戦力性によりキャリアアップや競業・同業他社での上位ポジションへの移行もしやすいともいえます。

出典:「令和2年転職者実態調査の概況」(厚生労働省)

競業・同業他社への転職は、年収アップと待遇改善の絶好の機会になるというメリットがあります。同業であれば、より転職希望者の専門性や実績を正確に評価ができます。業界知識などの専門性がすでにあり、業界経験豊富で実績があれば、転職先企業から高く評価され、より魅力的な条件提示につながりやすくなるでしょう。
また、福利厚生の充実や柔軟な勤務形態など、ライフスタイルに合わせた待遇改善も期待できます。

競業・同業他社であれば新しい環境への適応が比較的スムーズなため、異業種転職と比べて余裕が生まれやすいです。そのため、これまで実現できなかった仕事と私生活の両立など、快適なワークライフバランスも選択しやすいでしょう。

競業・同業他社で新たな成功を収めることで、業界内での評価や知名度が一層高められるというメリットもあります。例えば、競業・同業他社で大規模プロジェクトを成功に導く、前職では実現できなかった斬新なアイデアを、新しい環境で実行して成果を出すことができれば、業界内で注目を集めるでしょう。
また、異なる企業文化や業務プロセスを経験することで、視野が広がり、業界全体を客観的に見られるようになります。前職と異なる経営戦略や組織運営に身を置くことで、業界内のさまざまな手法や考え方を学ぶことができ、業界の市場動向やトレンドをより深く分析する能力も磨かれます。
その結果として、自身も幅広い業界知識と実践的なスキルを兼ね備えた、より付加価値の高いプロフェッショナルへと成長することで、業界内での評価をいっそう高めることにもつながるでしょう。


【競業・同業他社に転職するデメリット】
1. 競業避止義務に抵触するリスクがある
2. 期待値の高さからプレッシャーになる場合もある
3. 場合によっては前職との待遇差が想定以下になる可能性もある
4. 人脈に悪影響を及ぼす恐れもある


競業・同業他社への転職には、メリットも多くありますが、デメリットも存在します。
こちらでは、競業・同業他社に転職するデメリットを4つご紹介します。

先にも述べたとおり、競業・同業他社への転職は、競業避止義務に抵触するリスクがあります。異業界・異業種では、競業避止義務への影響はそれほど大きくないため、競業・同業他社ならではの特徴といえるでしょう。
競業避止義務に違反すると、損害賠償や転職先企業への入社の差し止め請求など法的なトラブルに発展する可能性もあります。そのため、転職活動を開始する前に、就業規則や雇用契約書を再度確認し、競業避止義務に関する内容をしっかりと把握しておくことが重要です。

デメリットの2つ目として、競業・同業他社からの転職者には、即戦力としての高い期待がかかりやすいということがあります。この期待に応えるプレッシャーは、時として大きな心理的負担となる可能性があります。
特に、前職よりも上位のポジションで転職した場合、短期間での成果が求められ、ストレス増大のリスクがあります。そのため、プレッシャーに負けないように、心と体のコンディションをしっかり整え、ストレスにうまく対処することも必要となるでしょう。

3つ目のデメリットとしては、競業・同業他社への転職が必ずしも給与アップや待遇改善につながるとは限らないことがあげられます。実際、競業・同業他社に転職しても、企業規模や業績、市場環境によっては、期待していたほどの収入アップが実現しない場合もあります。
理由は、それぞれの業界では一定の給与相場があり、スキルを認められることでの給与アップは考えられますが、業界が変わらない以上、大幅な収入変化にはならないためです。また、見かけ上の年収は上がっても、福利厚生や長期的なキャリア展望を含めた総合的な待遇が前職を下回るケースもあります。これは競業・同業他社での転職先を選ぶ際に、企業研究が不足していた、また自分の市場価値の評価を見誤っていたことなどが原因で起こりやすいです。
そのため、転職先に対しては、自分の市場価値を正確に把握し、企業研究をしっかりすることや、転職する際には条件交渉をしっかり行い、希望条件と即しているか確認することが大切です。

4つ目のデメリットは、競業・同業他社への転職は、前職の同僚や上司との関係に悪影響を及ぼす恐れもあるという点です。
特に、競業・同業他社でも競合関係にある企業への転職は、競業・同業他社への転職が知られることで信頼関係の維持が難しくなるケースがあります。同僚や上司などが、元の会社に不利益をもたらすのではないかと懸念したり、競業・同業他社への転職を裏切り行為と感じられる可能性もあります。
また、競業・同業他社であれば、業界内のネットワークも狭いため、長年築いてきた業界内のネットワークや人間関係に亀裂が入ることもありえます。ただし、その関係が親密で信頼関係が高い場合や、退職時に引継ぎをしっかり行えば、問題ないことも多いです。しかしながら、競業・同業他社への転職を機に、これまで築いてきた人脈や人間関係が大きくマイナスに変化する恐れがあることは念頭においておくとよいでしょう。ここまで競業・同業他社への転職のメリット・デメリットを見てきましたが、人によってどちらに利があるかは異なります。そのため、自身にとって、競業・同業他社のメリット・デメリットどちらが大きいかを判断した上で進めていくのが良いでしょう。


【競業・同業他社への転職を成功させるポイント6つ】
1. 長期的なキャリアビジョンにもとづいて転職先を選ぶ
2. 転職活動中や転職後もモラルを守る
3. 同業他社へ転職する場合:現職の人には転職先の情報を言わない
4. 同業他社へ転職する場合:特に円満退職ができるように気を配る
5. 同業他社へ転職する場合:退職時の誓約書をサイン前に確認する
6. 転職エージェントなど第三者に相談する


こちらでは、競業・同業他社への転職を成功させるポイント6つをご紹介します。

競業・同業他社への転職を成功させるためには、長期的なキャリアビジョンにもとづいて転職先を選ぶことが重要です。競業・同業他社がよいかどうかは、単に待遇やポジション、転職のしやすさだけでなく、自身のキャリアプランと照らし合わせて慎重に判断しましょう。その業界の将来性、企業の成長戦略、スキル向上の機会を総合的に考慮し、活躍する自分が描けるか、5年後・10年後の自分を想像してみましょう。
競業・同業他社に転職することで、人間関係も変わります。しかし、新規事業立ち上げや海外展開など、経験を生かしつつ新たな挑戦ができる環境を選ぶことで、キャリアの幅を広げられます。自身の描くキャリアビジョンの中で、いま競業・同業他社を選ぶことが良いと判断できる場合は、競業・同業他社でもより軸が明確で、後悔がない転職になりやすいでしょう。

競業・同業他社への転職の際は、特に、転職活動中も転職後もモラルを守ることが重要です。転職活動中は、応募や面接の際でも、現職での機密情報の取り扱いに細心の注意を払いましょう。転職後も、前職の企業や関係者を悪く言う、前職で得た機密情報を漏らす、前職の顧客や取引先を不適切に引き継ぐことは避けましょう。
同業であるからには、どこで縁があって前職の人と接触する機会があるかわかりません。また、業界内でのネットワークも意外に狭いため、どこで伝わるか予測がつきません。同業界でキャリアを重ねるためには、誠実な行動と信頼を維持する姿勢が、長期的なキャリア成功の鍵となります。
そのため、業界内での評判は、将来の機会にも大きく影響する点を常に留意して、モラルある行動を心掛けましょう。

競業・同業他社への転職の場合は、現職の人には転職先の情報を言わない方が賢明です。転職先が競業・同業他社であるだけで、情報漏えいを疑われる場合もあるため、会社名などは特に知らせない方が良いでしょう。在職中に知られることで、モラルを問われ、現職での立場が悪くなる場合もあります。
また、転職活動中に情報が漏れることで、強い引き留めにあって転職が進みにくくなる、円満退職が難しくなるなど、懸念事項も多くなりやすいです。そのため、競業・同業他社への就職活動をする場合、転職先については言わないようにすると良いでしょう。

競業・同業他社へ転職する際には、円満退職ができるように気を配っておくと、退職後もよい人間関係を保ちやすいです。退職交渉の際は、上司や人事部との信頼関係を保ちながら、誠意をもって行いましょう。転職先については伝えない方が得策です。
退職理由については、前職への感謝の気持ちを伝えた上で、現職での不満を伝えるようなネガティブな表現は避け、前向きな理由で説明するようにしましょう。また、取引先、顧客、社内の関係各所へも余裕をもって連絡・調整をしましょう。社内での引継ぎも丁寧に、退職までにしっかり終えられるようにスケジュールを立てて確実に行うようにします。
最後に、退職の際は、同僚や上司、後輩に対しても感謝の気持ちを伝え、良好な関係を維持したまま離れられるようにしておくとよいでしょう。

競業・同業他社への転職の際、退職時に提示される誓約書は、必ず内容を確認してからサインをするようにしましょう。退職時の誓約書には、先にも述べたとおり、秘密保持義務、競業避止義務などの条項を含んでいる場合があります。そのため、誓約書内に不当に厳しい競業避止義務が含まれていないかを慎重に確認することが大切です。
もし、不明点や納得できない点がある場合は、早めに企業側に質問し、解消しておきましょう。解消が難しい場合は、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。

競業・同業他社への転職は、複雑な判断を伴うため、転職エージェントなど第三者の専門家に相談するのも良いでしょう。
転職エージェントは、転職市場に関する豊富な知識や経験があります。転職活動のサポートだけでなく、競業避止義務に関するアドバイスや、企業との交渉なども行ってくれます。転職エージェントを通じて活動することで、状況に応じて、その都度相談もできるでしょう。
自身では判断しにくい点も、客観的なアドバイスを受けられるため、トラブルを回避しながら、自分の希望に沿った競業・同業他社の転職先も見つけやすくなります。

転職エージェントの選び方を解説


競業・同業他社へ転職を考える際、迷う場合もあるでしょう。
こちらでは、競業・同業他社の転職を成功させた方の事例と、その転職理由をご紹介します。

【転職成功事例】Mさん(40代男性)
大手メーカー(経営企画)→大手メーカー(経営企画)
年収850万円→920万円

Mさん(40代男性)は20年間大手メーカーに勤務し、経営企画部門で働いていました。もっとチャレンジングな環境を求め、コンサルティングファームや商社など幅広い業種の求人も検討しましたが、組織変革に積極的な大手メーカーに転職を決めました。同じ大手ではあるものの、前職よりは規模が小さいことから、変革に取り組むにしても小回りが利きやすく、社風や方針の違いに魅力を感じたのが入社の決め手でした。

【転職理由】
旧態依然とした社内体制に物足りなさを感じ、チャレンジングな環境で働きたいと考えたため。今の会社で再び子会社出向を願い出る道もあったが、この機会に社外でも可能性を探ってみたいと考えました。希望とする軸は「チャレンジングな環境」


結果的に同じ「メーカーの経営企画」となりましたが、転職活動を通じてさまざまな業種を見た上で、「やはり自分にはこのキャリアが最適」と判断されたそうです。最終的に、自身のキャリアプランに沿った道を選んでいるため、納得感を持って今後も歩んでいけそうです。

経営企画の転職成功事例|旧態依然の体制、もっとチャレンジングな環境で働きたい

【転職成功事例】Sさん(50代男性)
上場企業(CFO)→上場企業(CFO)
年収2,000万円→1,500万円

Sさん(50代男性)は、銀行・ベンチャーキャピタルを経て、上場ベンチャー企業のCFOとして働いていました。次の会社では成長フェーズを支えることを希望し、企業向けサービスを提供する上場企業のCFOとして転職しました。

【転職理由】
前職での業績悪化の対応に限界を感じ、成長を加速させる企業で自分の経験を生かしたいと考えたため。また、社長の考え方や価値観に共感できることが大切であると考えており、社長面談の結果、「この人となら一緒に仕事ができる」と判断できたのが入社の決め手でした。


転職時には現年収より下がる年収となりましたが、「経験・スキルを生かして成長に貢献すること」を重視し、また「貢献することでゆくゆく年収を上げられる」と考えていたため、そちらを受け入れて入社されたそうです。実際、転職から数年後には昇格され、年収も元の水準まで戻しています。

50代の転職成功事例|企業の成長フェーズを支えたい、上場企業のCFOに転職

【転職成功事例】Fさん(60代男性)
半導体メーカー(エンジニア)→半導体メーカー(エンジニア)
年収800万円→1,200万円

Fさん(60代男性)は、半導体メーカーでメモリ設計エンジニアとして勤務していましたが、役職定年後に年収が大幅に減少。年齢という条件だけでスキルの価値評価が下げられることに不信感を抱き、半導体メーカーA社に転職しました。その結果、年収が400万アップに。

【転職理由】
年齢による価値評価の低下に不信感を抱き、スキルを適正に評価される環境を求めたため。A社での面接で自分の経験が評価され、即採用となりました。


技術力を評価されて入社しているため、入社後にはメモリ設計の第一線で活躍しておられます。

半導体エンジニア転職成功事例|役職定年で年収大幅ダウンから一転、年収400万円アップで転職


こちらでは、競業・同業他社への転職に関するFAQをまとめています。

結論としては、必ずしもそうではありません。近年では、転職が一般化したことで、競業・同業他社への転職も珍しいことではなくなりました。そのため、キャリアアップのための選択として理解を示す方も多いです。ただ、前職で長年勤めて深い信頼関係を築いていた、重要なポジションに就いていた場合、競業・同業他社への転職を快く思わない人もいるかもしれません。
そのような場合は、円満退職を目指して、現職において誠実な対応と感謝の意を示すことで、理解を得られる可能性が高まります。

結論としては、誓約書の内容と状況によって異なります。誓約書の内容が、転職先の企業の業務内容と直接的に競合するものであり、転職活動が著しく制限される場合は、誓約書の提出を拒否できる可能性があるでしょう。

ただし、誓約書の内容が企業の正当な利益を守るために必要最低限のものであり、転職活動に与える影響が軽微である場合、拒否することが難しい場合もあります。誓約書を拒否する場合は、企業側にその理由を丁寧に説明し、理解を求めることが重要です。また、必要に応じて、弁護士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることも検討しましょう。


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JACには各業界や職種に特化した約1,400名のコンサルタントが所属しており、その一人ひとりが高い専門性を備えて転職希望者様の転職をサポートしています。
専門性が高いコンサルタントが、転職希望者様の経歴やスキルをヒアリングし、その価値を正しく判断できるため、これまで高めてきた能力を最大限に発揮できる最適な求人の紹介が可能です。

JACは、管理職やエグゼクティブ、専門職といったスペシャリストの領域に特化した転職支援サービスの提供が可能です。また、海外に拠点があることから、インターナショナルな領域で活躍する人材の転職支援も得意としています。

JACでは、企業と転職希望者様の双方をコンサルタントが担当する「コンサルタント型」を導入しています。コンサルタントは日頃から企業に直接訪問しているため、企業の文化や風土、事業戦略までも把握した上で、他では得られないリアルな情報を転職希望者様へお伝えすることも可能です。

競業・同業他社への転職は、競業避止義務への注意も必要で、慎重に行うべき側面もあります。しかし、即戦力としてさらなるキャリアアップがしやすいなどのメリットもあります。

1人で転職活動することも可能ですが、大変と感じる場合もあるでしょう。そのようなときは、ぜひお気軽にご相談ください。私たちがあなたの転職をサポートいたします。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。