JAC Recruitment(以下、JAC)にご相談いただく方の中には、「異業種への転職は、同業種への転職よりも難しい」と考える方が多くいらっしゃいます。実際には、どうなのでしょうか。
異業種への転職の可能性について、JAC Recruitmentのプリンシパルアナリスト黒澤敏浩が解説します。
目次/Index
異業種への転職を成し遂げた方は、どれほどいるのか
2023年にJACを利用して転職を実現した方のうち、異業種へ転職した方は約半数を占めています※。
また、大別すると同業種であっても、少し異なる分野に転職をしている方まで含めると70%程度に達しています。このように、異業種への転職は珍しくない環境です。
ただし、「異業種転職」といっても「未経験の仕事」への転職が容易にできるわけではありません。
成功している方の転職パターンの多くは「異業種・同職種」。これまでの職種経験や専門性が評価された方が、異業種へ転職されています。
※経験業種と転職先の業種が同業種ではない転職者数を集計。
異業種転職の傾向
異業種の方も積極的に採用している業種は、次のような特徴を持っています。
- ●市場が急拡大しており、同業種経験者だけでは採用計画を充足できない
- ●転換期・変革期を迎えており、異業種出身者の知見やスキルを導入したい
実際、異業種の方を多数採用している上位3つをご紹介しましょう。
コンサルティング業界
多くの企業が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「サステナビリティ施策」などの課題に取り組むなか、コンサルタントへのニーズが拡大。そのニーズに対応すべく、この何年かにわたりコンサルティングファーム各社は採用を継続しています。
クライアント企業の業種が多岐にわたるため、あらゆる業種の出身者が「業界知識・経験」を生かすことが可能です。
Web業界
業界が急成長しているため、異業種からも人材を呼び込むことで人材不足の解消を図っています。
特にエンジニアの採用が非常に多く、業界の垣根を越えた転職が活発です。
またWeb業界にはスタートアップ企業も多く、資金調達やIPOを目指し、経理・財務職をはじめとする管理部門の方を採用する企業が多数あります。経理・財務・人事・総務・法務といった管理部門系職種は、もともと業種をまたいだ転職がしやすい職種です。
SaaSモデルの企業などでは、「カスタマーサクセス」のように、これまでになかった新たな職種も登場。異業種でのカスタマーサービス・カスタマーサポートの経験者が採用に至っています。
流通業界
流通業界の企業には大きく2パターンがあります。「eコマース専業企業」と「実店舗を運営する従来型の流通企業」です。
eコマース専業企業は市場が急成長しているため、異業種出身者も対象とした採用に意欲的。一方、従来型の流通企業では「eコマース事業の立ち上げ」「デジタルを活用した店舗運営の効率化」といった新たな取り組みに際し、異業種からのノウハウを求めています。
異業種転職の事例が多い上位3業種をご紹介しましたが、当然ながら異業種の方を歓迎する業種は多数あります。
一例を挙げると「工業系商社」。知名度は低いものの高い業績を挙げている優良企業が多数あり、メーカー出身者をはじめ異業種から多様な職種の人材を迎えています。
異業種転職を実現しやすい職種
業種にかかわらず、総務・広報、経理・財務、人事・労務などのバックオフィス職の方々は、異業種転職を実現されています。JACの2022年度の実績では、異業種へ転職をされている方は全体で約半数ですが、上記の職種の方は80%弱と多いことが分かります。
中でも、下記のような経験をされている方の採用ニーズが高い傾向があります。
- 総務:株主総会関連、ファシリティでの実務経験
- 広報:メディアとのリレーション、ネットワーク構築
- 経理・財務:資金調達やIPOの経験
- 人事・労務:採用・人事制度整備の経験
- コンサルタント
上記の中でも「経験がなくても就ける職種」として異業種転職が多いのが、コンサルタント。
さまざまな職種からコンサルタントに転職する事例が見られますが、企画系(事業企画・経営企画など)やITエンジニアなど、課題分析・戦略策定・プロジェクトマネジメント経験を持つ方が採用されるケースが目立ちます。
若手の場合は前職問わず、論理的思考力や分析力などが評価された方が採用に至っています。
なお、コンサルティング業界は全般的に給与水準が高いため、コンサルタントへの転職により年収アップを果たす方が多いです。
年代による異業種転職傾向
即戦力ではなく、入社後の長期的なキャリア形成を期待し採用される若手の方は「未経験可」の選択肢も多いため、異業種転職を実現しやすい傾向があります。
一方で、JACの2022年の実績では、即戦力を期待される30代・40代でも50%前後の方が異業種転職を成功させています。特に、営業職、IT系プロジェクトマネージャーや社内SEなどのIT系職種、経営企画・事業企画ポジションや、人事・労務・財務・経理などのバックオフィス系で異業種転職が多い傾向です。
中小企業から異業種大手企業への転職
一昔前は、中小企業から大手企業に転職する事例はほとんど見られませんでした。しかし近年では、スタートアップの立ち上げ~拡大期を経験した方が異業種の大手企業に転職し、新規事業の立ち上げ~拡大を担うケースも見られます。
もちろん、大手企業での経験を生かし、異業種の中堅中小・スタートアップ企業に転職するケースも多数あります。
このように「企業規模」の観点からも、異業種転職の垣根は低くなっているといえるでしょう。
異業種転職を成し遂げた方の共通点
異業種転職に成功している方々の多くは、最初から「異業種を目指して」転職活動を始めたわけではありません。
自身のキャリアの棚卸しを行い、「今後も生かしていきたいスキル」「志向・価値観」「転職先で成し遂げたいこと」などを明確にしたうえで求人を探した結果、異業種に活躍の場を見いだされるケースが多いのです。
ただし、異業種では、経験したことがない手法やルールも当然ながら存在し、自身のやり方が通じないこともあります。そのため、業界研究・企業研究をしっかりと行って理解を深め、未経験のことにチャレンジする覚悟を持った方が異業種転職に成功しています。
異業種転職を成功させるポイント
異業種転職を成功させるためには、転職活動にあたり次のポイントを意識することをお勧めします。
以下に挙げるポイントは同業種転職にも共通しますが、異業種転職の場合は特に想定外の事態が起こりやすいため、注意してください。
転職の目的を明確にする
転職先の条件まで明確に決める必要はありませんが、「目的」は明確にしておきたいものです。求人を探しているとさまざまな選択肢が出てきます。目先の条件に魅力を感じて転職を決めた結果、入社後に「本当にやりたいことではなかった」などと気付くケースは少なくありません。大切にしたいことがブレないようにするためにも、目的を見据えておきましょう。
前職との共通点を探す
業種が異なっても前職と共通する点、前職経験が生かせる点に注目してください。
専門職種の経験だけでなく、たとえば「ターゲット顧客層」「コミュニケーション・折衝の相手」「マネジメントの対象層・マネジメント手法」「抱えている課題」などです。
成果につなげられる点を明確にする
キーワードは「再現性」です。
前職で成功体験を持っていても、業種や企業が変わると通用しないことも多々あります。前職での成功を転職先で「再現」できるかどうか、なるべく具体的にイメージすることが大切です。
早い段階から家族と相談する
異業種転職の場合、スタートアップなど知名度が低い企業、歴史が浅い企業が選択肢に入ることもあります。そうした企業で内定を得てから家族に相談すると、反対されたり不安を持たれたりするケースもあります。
なるべく、転職活動をスタートする段階から家族と対話し、転職の目的を共有しておくと理解を得られやすくなるでしょう。
異業種転職でJACを活用するメリット
前段で挙げた「異業種転職を成功させるポイント」のうち、「前職との共通点を探す」「成果につなげられる点を明確にする」については、コンサルタントと対話することで、スムーズに見えてくるでしょう。
自身では気付きにくいことも、コンサルタントが発見して、生かせる業種・企業をご提案しています。
また、異業界転職では、検討する対象業界をよく理解する必要があります。JACのコンサルタントは、転職を希望される方とお話する一方、求人企業側の経営陣やマネジメント層から直接、課題や求める人材像をお聴きしているため、正確かつリアルタイムな情報のご提供が可能です。
JACの強みは、専門分野ごとに170以上ものチームを擁し、それぞれの業界・職種に精通したコンサルタントが連携している点にあります。
転職を希望される方に対し、幅広い業種の選択肢を提示し、「もっとも目的を実現できる業種・企業」を見極めるお手伝いをいたします。
まだ転職する意思を固めていない段階であっても、お気軽にご相談ください。
各業界に特化した転職コンサルタントが、あなたの転職をサポート。
業界における市場価値や、レジュメ、面接対策、企業傾向など
JACのコンサルタントにご相談ください。
【この記事を監修した転職コンサルタント】黒澤 敏浩
プリンシパルアナリスト
ハイクラス・管理職の転職に強い人材紹介会社のジェイエイシーリクルートメント(JAC)でマーケット研究などを担当し、ホワイトカラー転職市場や給与の分析などで20年の経験を持つ。人材サービス産業協議会の「外部労働市場における賃金相場情報提供に関する研究会」委員や日本人材マネジメント協会執行役員「人事(HRM)の投資対効果(ROI)」担当も務める。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。国家資格キャリアコンサルタント。ISO30414(人的資本情報開示ガイドライン)リードコンサルタント。