リスキリングは本当に仕事に生かせるのか?
VUCA時代、可能性を広げるためのキャリアの育て方

公開日:2023/12/26 / 最終更新日: 2024/08/22

リスキリングとは、技術革新やDX推進などが叫ばれる現代社会において、ビジネスモデルの変化に対応すべく仕事に必要な知識やスキルを習得することを言います。

VUCAの時代とも言われる今、キャリアの形成も常にアップデートすることが求められます。そのため、「これまで成果を出してきた仕事内容でこのまま働き続けられるのだろうか」「社会の変化に順応するには、どのようなスキルを身に付けるのがよいだろうか」といった不安や悩みを持ちながら日々仕事をされている方も非常に多いのではないでしょうか。

本セミナーでは、JAC Digitalアドバイザーでもあり、元日本マイクロソフト業務執行役員として外資系企業でご活躍されたご経験を持つ澤円氏にご登壇いただき、変化の激しい時代にキャリアの可能性を広げるためのリスキングおよびマインドセットについてお話しいただきます。

*本記事は2023年11月9日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。

澤 円氏
講師
株式会社圓窓 澤 円氏
元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。 現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。

目次/Index


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個人にとってリスキリングはなぜ必要か?


これまで日本では、年齢が上がるにつれて地位や肩書き・給与が自動的に上がる時代があり、昭和から平成前半まではこれがうまく機能していました。しかし、ただ年を取ればいいという時代は終わり、現在では地位や給与をアップしていくためには自ら行動を起こしていかなければいけない時代に突入しています。それにもかかわらず、中には「なんだ、あいつは自分より上に行きやがって」「なんであいつは俺より若いくせに同じポジションにいるんだ」ということを平気で言う人もいて、そこに嫉妬が生まれます。

それまで何もしてこなかったのに、自分が地位や給与で抜かれたから文句を言うなんてナンセンスもはなはだしいのですが、そういう人に何が足りないのかといえば「外のものさし」です。彼らは、世の中にさまざまな「単位」があることを知りません。ここでいう単位とは、学びによって知る何かを推し量ることを意味しますが、会社の外に多くの基準や自分の価値の出し方・見せ方があるのにもかかわらず、会社の中のルールだけが全てだと思い込んでいることが問題です。

そこで必要なのが「リスキリング」です。リスキリングは多くの単位を知る手段です。学ぶことによってたくさんの単位を知ることができますし、多くの単位を知れば知るほど解釈の方法も多岐に渡ります。いろいろな選択肢がある中、「こういう考え方もあるかも?」「こういうことがもしかしたらあったのではないか?」と、瞬時に思いつくようになることができるのです。

キャリアの可能性を広げるためのマインドセットについて


現在のように変化の激しい時代、自身のキャリアを広げるためにはマインドセットも変えていかなければなりません。

人は「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を持っています。アンコンシャス・バイアスを生んでいるのは本人が「常識」として認識しているさまざまな事象なのですが、これを持つことにいいも悪いもなく、誰しも持っているものなので、「アンコンシャスバイアスは自分にもある」と思って対応していくしかありません。予測困難なVUCAの時代では、いろいろなものが曖昧です。はっきりしない隙間だらけの情報が提供されることは、仕事をしていれば毎日のように遭遇します。その中で正解のない問いに対し向き合わなければならないのです。

では、正解のない問いにどのように向き合っていくのがよいのでしょう?それには「広い視野」「高い視座」を持つことです。それらを持っていないとアンコンシャス・バイアスに振り回され短絡的な考えに落ち入り、大きな間違いに繋がってしまう可能性が高くなってしまいます。自身のキャリアの可能性を広げるためには、学びこそがリスクを減らす重要なカギとなるのです。

日本には階層的な組織構造のなかで、官僚的・法権的な管理手法が横行している現実があります。そのような管理下では、「言うことを聞いたら褒められる」「必要な何かを与えられる」といった感じのマインドセットになりがちです。そうなると「教えてくれないからできない」という言い訳をする人間が出てきます。「会社で活躍してほしいなら教えてくれないと困る」と言い出す人もいますが、これではただの子供の言い訳です。「自分のために学ぶ」というのがリスキリングにおいてはすごく大事ですから、「まず自発的であれ」と心に言い聞かせましょう。

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学ぶために最も効果的な方法とは?


「学び」は皆さんの未来を作ります。学ぶために最も効果が高いアプローチ方法について、ピーター・ドラッカーは「学ぶためにもっとも効果的な方法は人に教えること」だと言っています。自分が知ったことを人に教えることで自分の学びにつながりますし、教える際に改めて自分の足りないところがさらに発見できます。お子さんがいらっしゃる方であれば、お子さんに教えるのも効果的です。

学びにおいて、仕事に直結する何かのスキルを身に付けることこそがリスキリングだと思っている人もいるのですが、僕はそうは思いません。一見仕事に全然関係ないことでも、のちにつながってくるものがあり、それが布石になると考えています。

たとえば、僕がマイクロソフトに入社できた理由のひとつに「茶道の師範」を持っていたことがあります。師範であったことが目を引き、「日本を知っている」というタグをつけられ、いい仕事をするのでは?という期待感を持ってもらえたことが採用につながったようです。全く違う分野やレアなことをやっていると「この人面白そう」と思われるかもしれません。

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リスキリングにおすすめの必要スキルについて


リスキリングにおいて、習得しておくとよい学びやスキルには以下のようなものがあります。

プログラミング

「プログラミング」は非常に学ぶことが多く、世の中の仕組みが全て条件分岐でできていることがわかるようになります。だからといってプログラマーを目指そうというのではなく、概念さえ学んでおくといろいろな形で応用が可能です。なお、学ぶプログラミング言語は問いません。ご自身で興味のあるプログラミング言語を学ぶのが良いと思いますので、ぜひトライしてみてください。

ChatGPT

テクノロジーについて学びたいのであれば、「ChatGPT」がおすすめです。これは課金する価値があるツールだと思います。例えば、プログラミングについて人に教わろうとすれば「同じ質問を何回も申し訳ないな」「馬鹿だと思われないかな」と思ってしまうものでも、ChatGPTであれば嫌な顔せずいくらでも辛抱強く回答してくれます。

英語

英語は流暢に話すレベルまで目指す必要はありません。ただし英語でのコミュニケーションを身につける、英語アレルギーを取り除くだけでも多くのメリットがあります。アクセスできる文献・記事が格段に増えますので、学ぶ対象としておすすめです。

学ぶ方法ですが、僕は映画を字幕なしで観て英語を学びました。ストーリーが頭に入っている映画を観ながら、「この場面ではこんな言い回しをするんだ」と理解し、併せて語彙力も増強させていきました。また文章を書く方におすすめしたいのが「Grammarly」、翻訳ツールとしては「DeepL」というサービスが仕事で使う上ではとても便利で、僕は両方使っています。

デザイン

デザインを学ぶと人を動かす思考が身に付きます。何らかの意図を持って人に行動させたり導いたりするのに効果があるので学んでおくとよいでしょう。デザインの基礎については「デザインの教科書(柏木博著)」が、デザイン全般を学ぶのには「Adobe Creative Cloud」が少々高いですが課金する価値があります。僕は「Photoshop」を最近使っていますが、スライド作りの背景写真をいじるのに重宝しています。


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質疑応答


リスキリングにおいて、習得しておくとよい学びやスキルには以下のようなものがあります。

Q.異業界への転職かつ高収入・高ポジションを狙っていますが正直苦戦しています。この状況を乗り越えるアドバイスがあればいただきたいです。

A.高収入・高ポジションを狙うには、あなたにそれに見合あうだけのスキルや人脈があるかどうかが重要です。お金となる課題解決能力があることを証明することが大事です。現代は課題が細かくパーソナライズされているので、お金になる課題を開発してそれを教えに行く。そのような意図をもって転職活動を行うとかなり勝率が上がると思います。

Q.一社を勤め上げるのと転職するのはどちらがよいと考えますか?

A.転職する方の置かれている状況によって大きく変わるため、どちらがいいか悪いかというのは全くありません。ただ、一社を勤め上げようとしても定年までその会社が存続しない可能性が高まってきていることも事実です。大企業であってもいつ潰れたり買収されたりするとも限りません。ですから、現在転職をしようと思っていなくても転職エージェントとは縁を作っておいた方がよいです。転職関連の有益情報を教えてもらえますし、いざという時にすぐ行動に移すことができます。

Q.人間関係上のトラブルを起こしてしまい転職を複数回しています。今後転職を繰り返さないために良い方法があったら教えてください。

A.もし、人間関係で転職することに不安を感じるのであれば、お一人で仕事することをおすすめします。僕は会社を一人でやっていますが、一人でも仕事はできます。ただしクライアントを怒らせたら仕事はなくなるので、そこで嫌でも学ばざるを得なくなるでしょう。

もしくは、残りの人生会社に雇ってもらえる間は、ずっと転職し続けるでもいいのではないでしょうか。

Q.なぜ今ここまでリスキリングが流行していると思いますか?

A.リスキリングがなぜ必要かというと、ただ、会社に居続けて給料をもらっている人たちに会社側が耐えきれなくなってきたからだと思います。会社は本来社会貢献するためにあるわけで、スキルアップもせずに会社にそのまま居続けるだけで年齢が上がれば給料が上がる仕組み自体がおかしいわけです。終身雇用は終わりだが、社会に貢献する力を身につけるなら活躍の場を用意するよ、と会社側が生き残りをかけた戦略の一環として、リスキリングを声高に叫んでいるのだと感じます。

Q.みんながリスキリングした場合、どのような人が周りとの差別化を図って頭一つ抜け出ると思いますか?

A.頭一つ抜けるというよりは横並びの競争がもはや機能しない世の中になっていくでしょう。リンダ・グラットンの「LIFE SHIFT」という本の中に、横並びで競争する時代ではなく複数の会社に同時にジョインして仕事をしていく働き方が今後一般的になると書かれています。そのような考え方を持って仕事をしていくのが当たり前になってくるのではないかと思います。


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Q.35歳から独学でプログラミングを学んだ場合、転職市場における人材価値はあると思いますか?また企業からの良いポジションは望めるでしょうか?

A.プログラミングはあくまでも道具にすぎません。独学で学んだかどうかではなく、学んだ結果どのレベルに到達したかによって人材価値が問われると考えましょう。その道具と今自分の持っているスキルとどう組み合わせていくか、それ次第で人材価値は大きく跳ね上がります。ただし、プログラマーとしてだけで勝負するとなれば、35歳からキャリアの長い人やセンスのある人に勝つのは至難の業だと思います。

Q.英語とプログラミングを勉強中です。日本だけでなく海外への転職も考えた場合、40代で留学・海外勤務経験なしだと可能性は低いでしょうか?

A.わざわざ自分にハンデを課す必要はありません。40代で留学・海外勤務なしでも自分に可能性があると思っているならそれでいいと思います。確率論ではなく、自分がやるかやらないかによって将来の方向性は決まっていくものです。

Q.澤さんはどれくらい先にリスキリングが一般化する時代が来ると思いますか?

A.いつリスキリングが一般化するかどうかについては正直わかりませんが、僕自身は学ぶことが当たり前だと考える人間なので、学ばない人より学ぶ人のほうが絶対に有利だと考えます。学んで損することはひとつもないですし、いざという時の保険になることもあるかもしれませんよ。

Q.40代でマネジメント経験がありません。求人数が減っていると感じてとても焦っています。どうやったら人生やり直せますか?

A.人間は追いつめられると方法論に目が行きます。しかし、方法論に目が行くと空回りが加速します。本当に見なければいけないのは自分のほうで、自分を観察することが重要です。まずは「自分が何をしたいのか?」「何を幸せと感じるのか?」を落ち着いて考えてみましょう。なお、本当に求人がないなら起業してみるのも手です。マネジメント経験もそこで身に付きます。


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この記事の著者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


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