ビッグデータやデータドリブンマーケティングなど、ビジネス変革におけるデータ利活用の重要性が増しています。そのような背景を受け、今注目されている職種がデータサイエンティストです。データサイエンティストの業務内容やリアルな転職事情について、数多くのデータサイエンティストの転職を支援してきたコンサルタントが解説します。
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DX推進とともに、データサイエンティストの需要が本格化
現在、さまざまな業界・業態の企業でデータサイエンティストの人材需要は高まっています。データ利活用の有効性は古くから知られていましたが、以前は効率良くデータを取り扱える環境が整っていませんでした。しかし近年、大容量のデータを管理できるデータベースシステムが登場したことや、Webサイトへのアクセス情報など企業の課題解決に有用な多くのデータ取得が可能になったことなどのデータ利活用に適した条件が整ってきました。さらに、データ分析に特化したツール類も充実してきたことから企業における本格的なデータ活用が進み、これらを担うデータサイエンティストが注目を集めています。
年齢に関わらず、企業が求めている経験さえあれば引き合いが非常に多くあります。なかでも、特にDXという文脈で事業会社から募集がかかるケースが目立ちます。例を挙げると、以前は勘や経験則に頼っていたものをデータドリブンな手法を用いて判断したいというところからデータサイエンティストのニーズが高まっており、2018~2019年頃から企業のDX推進と共に人材需要が本格化してきています。
今、転職市場で求められるデータサイエンティストとは?
企業の経営上の課題や製品/サービスが持つ課題をデータ活用によって解決していく、ということがデータサイエンティストの主な業務です。ビジネス課題の検討や解決のための分析に優れた方や、データの取り扱いや分析作業に優れたエンジニア寄りの方など、様々なタイプが存在します。そのため、企業の求人も何を重視するかによって、求められる経験・スキルも異なります。したがって、転職を検討する際には、ご自身の経験と、企業が求めている人材に合うか合わないかを確認することが重要です。
データサイエンティストの業務は構造化データの分析と非構造化データの分析の2つに分けられます。前者はウェブサイトのアクセスログや金融相場の値動きなど、情報やデータが一定の規則に従って記述されたデータを指します。この領域をカバーするデータサイエンティストは比較的多く、汎用性の高いポジションともいえます。一方、後者はいわゆるビッグデータや画像データ、自然言語情報など、規則性のないデータの解析を指します。こちらは解析の難易度が高く、現時点ではデータサイエンティスト人口も求人も少ない状況です。
今後に目を向けると、非構造化データの解析が主流になっていくのは明確です。いち早く希少性の高い人材になることを目指して、非構造化データに強いデータサイエンティストにシフトすることをおすすめします。深層学習系のライブラリが駆使できると望ましく、特にTensorFlowやKeras、Pytorchなど深層学習(ディープラーニング)ライブラリを扱った実績があると、転職でも非常に有利になります。
それらを踏まえたうえで、今求められている人材を挙げるのであれば、客観的に評価する能力や社内外のステークホルダーとの意思疎通および交渉力などが求められるマネージャーです。こういった経験者は、まだ少ないため、貴重な人材といえます。
データサイエンティストの年収相場|1000万円以上も可能
主にビジネス視点でのデータの可視化やレポーティングを担う場合の年収は400万円~800万円程度が相場です。
実際にPythonなどを駆使してデータ分析作業を担当する場合は400~600万円程度から始まり、スキルや実績により1500万円程度まで増えることがあります。
もちろん高度な分析手法を扱える方は短期間で年収が増加します。また、需要の多いマネージャー職は経験者であれば1000万円以上が一般的で経験や現年収に合わせて調整するケースもあります。
データサイエンティストに求められるスキル
データサイエンティストに求められるスキルは、時代の流れとともに異なります。最近ではPythonとその周辺のライブラリやフレームワークの知識や経験があれば、市場価値が高いです。
使用頻度の高いライブラリではNumPyやPandas、scikit-learn、Keras、TensorFlowなどが挙げられます。
データサイエンティストでさらなるキャリアアップを目指す場合、まずはこれらの経験を積むことをおすすめいたします。
その他、分析結果を直接Webサイトへレコメンドシステムなどとして埋め込むためのWeb技術や、統計学を分析手法の1つとして適切に用いるための知識などが求められる場合があります。
さらに、自社や顧客企業のビジネスモデル、製品/ソリューションに関する課題解決能力も必要になります。目の前の分析結果だけを見て完結してしまうのではなく、その結果をしっかりとビジネスに反映するためのさまざまな知識や経験も重要になります。
データサイエンティストへの転職で有利になる5つの資格
データサイエンティストとしてのキャリアを築く上で、自身の専門性やスキルを明確にアピールするためには、資格が非常に有効です。資格は必ずしも必須要件ではありませんが、取得することで多くのメリットが得られます。以下、データサイエンティストとしての転職を有利に進めるためのおすすめの資格を紹介します。
資格1:情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格で、ITの専門性を証明するためのものです。試験内容は非常に幅広く、ITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験など、合計13種類の試験が存在します。
データサイエンティストとしての専門知識や技術を証明するために、この資格の取得は大変有効です。
資格2:統計士・データ解析士
統計士及びデータ解析士は、一般財団法人実務教育研究所が提供する講座を修了することで取得できる資格です。受験資格は特に必要なく、統計士は「現代統計実務講座」、データ解析士は「多変量解析実務講座」を修了することで取得が可能です。
データサイエンスの基礎となる統計学の知識を身につけるため、この資格は非常に価値があります。
資格3:統計検定2級
統計検定は、日本統計学会が公式に認定する資格で、データサイエンティストとしての基本的な統計学の知識を証明するものです。
データ分析のプロセスにおいて、統計学の知識は欠かせないため、この資格の取得は大変有意義です。
資格4:Python3エンジニア認定基礎試験
Pythonはデータサイエンスの分野で最も一般的に使用されるプログラミング言語の一つです。この試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施し、Pythonを使用したデータ分析の基礎知識を問うものです。
Pythonの基本的な知識や技術を証明するための資格として、転職市場での競争力を高める効果が期待できます。
資格5:G検定・E資格
G検定およびE資格は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する、AI技術に特化した資格です。これらの資格は、機械学習やディープラーニングの専門的な知識や技術を証明するもので、データサイエンティストとしての高度な専門性をアピールするために非常に有効です。
特にE資格は、エンジニアリングの専門性を証明するもので、高度な技術や知識が求められます。
データサイエンティストに向いている人の3つの特徴
ここからは、データサイエンティストに向いている人の特徴について紹介します。
・数学的・論理的思考に優れている
・プログラミングに興味関心がある
・コミュニケーション能力が高い
それぞれについて詳しくみていきましょう。
特徴1:数学的・論理的思考に優れている
数学的・論理的思考に優れている人は、データサイエンティストに向いています。なぜなら、データサイエンティストは、統計学や機械学習などの数学的手法により、データのパターンや相関性を見つけ出すスキルが求められるためです。
たとえば、ある製品の不良における原因を分析する場合、相関係数や回帰分析を用いて、各製造パラメーターとの因果関係を明らかにしなければなりません。さらに、データの結果から、論理的に仮説を立てて実証するようなアプローチも重要です。
特徴2:プログラミングに興味関心がある
プログラミングに興味関心があることも、データサイエンティストに向いている人の特徴といえます。なぜなら、データ解析や分析において、プログラミング言語を用いて、データを分析したり、モデルを構築したりするためです。
このように、プログラミングはデータの特徴やパターンを理解したり、大量のデータを処理したりする場合に、欠かせません。
しかし、プログラミングを理解するのは容易なことではなく、1つのミスによってプログラミングが正常に動作しないこともあるため、根気よく向き合う必要があります。そのため、プログラミングに興味関心があり、学び続けられるかが重要な要素になります。
特徴3:コミュニケーション能力が高い
データサイエンティストに向いている人の特徴として、コミュニケーション能力の高さが挙げられます。データサイエンティストとして、分析によって得られた結果は、当然誰かに伝える必要があります。
しかし、伝える相手は、統計学や機械学習などの数学的な知識がある人ばかりではありません。そのため、柔軟に分析結果を伝えるスキルが求められるのです。
また、分析結果をプレゼンテーションする場合、伝える相手の考えや感情を理解したり、結果の根拠や信頼性を示したりする必要があります。さらに、相手からの質問やフィードバックにも柔軟に対応できなければなりません。
データサイエンティストは各業界で需要が高い
データサイエンティストは、前述のとおり、各業界で人材需要が高いです。しかしながら、データ活用レベルによって求められるデータサイエンティストの傾向が異なりますので注意してください。
今までデータ活用にほとんど取り組んでこなかった企業の場合は、分析準備などを含めてすべてワンストップで対応できるような方か、実際の分析は外注する前提で要件定義などの上流工程が得意な方が求められるケースが多いです。一方、データ活用が一定以上進んでいる企業の場合は、より専門性を有した高レベルのデータサイエンティストが求められます。そういった企業では実際に、配送ルートの効率化やフードロス削減のための需給予測などでデータサイエンティストが活躍しています。
また、主な業界で求められるデータサイエンティストの役割は以下のようなものが挙げられます。
・不動産業界
不動産業界では、賃貸住宅のビッグデータを活用することによる賃料査定や、顧客データと突き合わせることによる最適な物件提案などのシステムが普及しつつあります。このようなシステムの構築にデータサイエンティストの需要が高まっているのが現状です。
・金融業界
金融業界はITとの親和性が高く、AIやビッグデータを活用したサービスが先進的に推進されてきました。また、ビッグデータ解析を利用した与信審査により、低金利・スピーディーな融資実行サービスが実現されています。
日本においても、AIを活用した投資サービスなどが普及しており、これらのシステム構築にはデータサイエンティストが欠かせません。
・製造業界
製造業界では、これまで品質管理を目視によって行うことが一般的でした。しかし、画像や動画を取り入れた品質管理が導入されるようになり、それにはAIの存在が欠かせません。これらの分析データを構築するためにデータサイエンティストの人材需要が高まっています。
・化学業界
化学業界では、化学プラントに起こる現象の解析や状況予測モデルを構築できる人材が求められています。
たとえば、製造ラインにおいて製品品質の予測ができる機械学習モデルが作れると、検査頻度を減らし、コスト削減が見込めます。この構築にデータサイエンティストが欠かせないため、人材需要が高まっています。
・広告業界
広告業界では、ユーザー情報やサイトへのアクセス履歴など、膨大なデータから分析する機会が多い傾向です。これらの分析から、マーケティング戦略の立案や売上向上を目的とした施策を検討しています。
この情報分析にはデータサイエンティストが欠かせないため、広告業界においても人材需要が高まっています。
・コンサルティング
コンサルティングにおいても、データサイエンティストの活用が推進されています。
クライアントをコンサルティングする際、アンケートや市場調査を実施し、あらゆるデータを分析しなければなりません。
また、ITやインターネットの普及により、これらのデータは膨大な量を収集できるようになり、ビッグデータとして分析できる環境が整っています。
データサイエンティストが、直接クライアントのコンサルティングをする場合もあります。しかし、データの解析や分析などの後方支援を担う人材として、データサイエンティストが求められている傾向にあります。
データサイエンティストのキャリアビジョン
データサイエンティストには大別して次の3つのキャリアパスが考えられます。1つ目がマネージャーに昇進し、さらにその上のCDOになり全社のデータ戦略を決定する立場になることを目指す道です。
2つ目が、データサイエンティストのプロフェッショナルとしてスペシャリストの道を進むことです。3つ目がビジネス寄りにシフトしてデータサイエンティストの知見を生かした経営戦略や事業企画を担う道に進むパスです。その他にも、メーカーや小売などの特に需要の高い企業にヘッドハンティングされ、そこで会社のデータ戦略を牽引していく立場になるというようなキャリアパスも考えられます。
また、入社後に感じる課題に関して実際の転職者にヒアリングしたところ、事業会社とコンサルティングファームなどの外部委託企業の場合では次のような差があることもわかっています。どちらの形態の企業を転職先に選択すべきなのかの判断材料にぜひご参照ください。
データサイエンティストへの転職で失敗しないためには、JACにご相談を
データサイエンティストは、しっかりと企業と求職者の方の意向を確認すればミスマッチは起こりにくい職種です。しかし、企業側のデータサイエンスに対する認識不足によって分析に必要なデータが揃っておらず、せっかく入社したにも関わらず活躍できる場が無かったというケースも発生しています。そのような事態を防ぐためには、企業側と転職希望者側の双方の意向や状況を的確にとらえることができる転職エージェントの活用が有効です。
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