日本政府が資産運用立国を宣言し、海外の資産運用会社の日本市場参入を促すため「資産運用特区」を設ける方針を発表するなど、資産運用を巡る動きが国内で活発化しています。こうした状況下で、採用に積極的な企業が増加。業界外からの中途入社の割合も多いです。
アセットマネジメント業界の転職市場動向や求められるスキル・経験について、JAC Recruitment(以下、JAC)のアセットマネジメント業界専任コンサルタントが解説します。
目次/Index
アセットマネジメント会社とは?業界の動向と現状
ここでは、アセットマネジメント業界の特徴と代表的な企業例、業界内で注目されているキーワードについてご紹介します。
アセットマネジメント会社とは?特徴と代表的な企業例
広義のアセットマネジメント会社とは、投資家から預かった資産の運用を主な事業とし、受託残高に応じて報酬を受け取ることを収益としています(ヘッジファンド等、例外あり)。
その中でも本記事で紹介するアセットマネジメント会社は以下のライセンスを保有する企業を指します。
- ●第二種金融商品取引業
- ●投資運用業
- ●投資顧問業
- ●投資助言業
代表的な企業例
日系企業
- ●野村アセットマネジメント
- ●日興アセットマネジメント
- ●東京海上アセットマネジメント
- ●ニッセイアセットマネジメント
外資系企業
- ●J.P.モルガン・アセットマネジメント
- ●ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント
- ●UBSアセットマネジメント
- ●フィデリティ投信
なお、JACでは銀行や保険、年金基金など、アセットオーナーサイド(機関投資家)の求人も取り扱っていますが、本記事では主にアセットマネジメント業界の動向についてご紹介します。
アセットマネジメント業界の市場動向と注目キーワード
2023年12月に日本政府が「資産運用立国実現プラン」を発表しました。これは国内の家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資に移すことで、企業価値向上の恩恵を家計に還元し、更なる投資や消費を促すことを意図としています。
その取り組みの一環として2024年1月から個人向け投資税制優遇制度NISAを大きく拡充し、恒久化する新制度(新NISA)が開始。また資産運用業をなりわいとする企業に対する施策として金融・資産運用特区の創設やオルタナティブ投資やサステナブル投資などを含めた運用対象の多様化、運用力向上やガバナンス改善・体制強化に向けたプランの策定などが発表されています。一方で海外の投資家からの需要に沿い、国内の資産運用業への参入障壁是正を進めるための「資産運用フォーラム」を立ち上げるなど、外資系企業の参入を促す姿勢も表明しています。
こうした政府の方針はアセットマネジメント業界においては追い風となる可能性があり、国内でも今後採用が安定的に伸張することが見込まれます。
新NISAによって運用会社各社の競争が過熱化する一方で、信託報酬の引き下げ競争による収益率の低下といった動きもあります。国内の法律上の問題で運用と資産管理を別々に保有することによる二重の管理コストの是正など、課題解消に向けた規制緩和の方針を金融庁が発表しており、市場の拡大に向けた変化は今後も続くと予想されます。
アセットマネジメント業界の転職トレンド
大手の日系企業では複数のポジションで継続的に中途採用をしていますが、中堅以下の日系企業では1社につき3〜4件の求人があるといった状況です。昨今では新NISAの影響から営業力強化を目的に投信RMの採用を強化する企業が増えています。また、新たな投資を呼び込むべくアクティブ運用担当者や、オルタナティブ運用担当者の採用活動も活発です。
一方で外資系企業は少数精鋭主義のため、求人数も日系企業と比較すると少ないのが特徴です。日系企業と比べて年収が1.5〜2倍と待遇も良いことから、中途採用のハードルは非常に高いといえます。また外資系企業は、プロダクトスペシャリストを通年で採用する傾向がありますが、日本拠点に運用担当者やリサーチ担当者を置くケースは少なく、求人が出ることも稀です。しかし、昨今の日本国内の新NISA需要から今後は営業部門での採用が増える可能性があります。
アセットマネジメント業界未経験からの転職は可能?
アセットマネジメント業界は業界外からの中途入社の割合が多く、業界未経験での転職も可能です。採用枠としては経験者採用とポテンシャル採用に大別されますが、後者は20代の金融業界出身者が主な対象となります。
業界未経験で応募する際には、現職での経験やスキルがどのように生かせるかをアピールする必要があります。直接的に生かせるスキルや経験が無い場合には、資格や語学力、業界に対する理解度などをアピール材料にしましょう。
アセットマネジメント業界未経験者が知っておくべき職種と、求められる経験・スキル
日系のアセットマネジメント会社では、「運用フロント」「ミドル」「バック」「営業フロント」「管理部門」に職種が分類されます。この記事では管理部門以外の4カテゴリの職種について求められるポイントを紹介します。
運用フロント
運用フロントには、大きく分けて3つの職種「ファンドマネージャー」「アナリスト」「プロダクトスペシャリスト」があり、それぞれ求められるスキル経験が異なります。
<ファンドマネージャー>
同業他社からの転職が中心ですが、証券会社でのリサーチ経験や、アセットオーナーサイドでの市場業務経験者もファンドマネージャーに転職可能です。
ファンドマネージャーは、投資信託の運用方針のもと、社内のアナリストやエコノミスト、ストラテジスト等、リサーチ部隊と連携しながら、市場や銘柄の分析から選定、ポートフォリオの組み替えなど決め、トレーダーに発注する一連の業務を行うチームの責任者です。そのため、リサーチ経験や分析能力に加え、機関投資家に対するコミュニケーション能力が求められます。
<アナリスト>
主に経験者採用が中心で、証券会社でリサーチ業務やエコノミストの業務に就いていた方やアセットオーナーサイドでの市場業務経験者が対象となります。
若手未経験者の場合は、金融業界出身者でリサーチ業務に対する知見を持った方が採用されやすい傾向があります。
アナリストは、ファンド運用の基盤となる情報を収集・分析するエキスパートです。国内外の企業・市場動向を収集し、定性・定量の両面から分析した結果をファンドマネージャーと共有し、ファンド運用に反映します。また、投資理論に基づいた計量的手法や、定量分析ツールを利用した分析を活用するポジションもあります。
物事を分析・仮説立てをして将来どのようなことが起こり得るかを予測できる方や、そのようなことを考えるのが好きな方には向いている職種です。
<プロダクトスペシャリスト>
ファンドマネージャー業務を一定期間以上こなした方がプロダクトスペシャリストに転職するケースが中心ですが、証券会社でのプロダクト周辺の業務を経験された方も中途採用では評価されることもあります。
プロダクトスペシャリストは、金融市場に関わる幅広い知識をもとに、営業と共に新規案件獲得や既存顧客の対応をサポートしたり、ファンドマネージャーと密にやり取りしたりしながら、市況に大きな変化が起きた際には対外的な説明を担います。
ミドル
ミドルの中には、「トレーダー」「リスク」などの職種があります。
<トレーダー>
証券会社でのディーラー業務もしくは、銀行でのトレーダー業務の経験者、リスク関連業務のいずれかの経験と、正確かつ高度な事務タスク処理能力とPCスキルの両方を持った方が採用されやすい傾向です。また、PythonやRなどのプログラミング言語に対する知見・経験をお持ちの方は選考において有利に働きます。
トレーダーは、ファンドマネージャーからの指示を受けて金融市場に対して売買を執行するほか、会社によっては、発生先の証券会社の評価・選定や、発注取引に係る運用ルールの制定・運用を担います。
<リスク>
金融機関でリスク性のある商品を取り扱う業務や、証券・銀行・生損保でリスク関連の業務に携わった経験を持つ方が採用されやすい傾向です。
リスクは、投資信託や投資一任契約に対して、法令や運用ガイドラインが遵守されているかをチェックするほか、法令改正時のモニタリング、新たな運用手法を採用する際のリスク管理体制の構築などを担います。加えて、投資後のファンドのパフォーマンス分析や評価を行うチームも存在し、リスクの業務範囲は多岐にわたります。
バック(各種オペレーション業務及びレポーティングなど)
投資信託関連のバック業務経験者が優遇されますが、少なくとも金融機関でのバック業務経験は必須として求められます。
バックは、約定処理やキャッシュ・残高管理、権利保全、社内外で関連するデータの照合業務や、契約書のチェック、レポーティング資料の作成など非常に多岐にわたる業務を担います。コツコツと業務に向き合うことが得意な方に向いています。
営業フロント
営業フロントで求人が多い職種は、投信RM(リレーションシップマネージメント)と、機関投資家営業です。
いずれも共通して金融業界での法人営業経験があればベストですが、投信RMの場合は、リテール営業経験からの転職も可能な場合があります。金融以外からの転職のハードルは高く、証券会社など金融業界から転職する方が大半です。
投信RMと比較して機関投資家営業は中途採用のハードルが高く、証券会社での法人向け営業経験や投資銀行部門のカバレッジ担当などの経験があると評価が高い傾向にあります。金融業界での個人向け営業の経験しか無い場合には資格の保有はもちろんのこと、全社でトップの営業成績など強いアピール要素が必要になります。
投信RMは銀行や証券など投資信託の販売会社を対象に、機関投資家営業は文字通り公的・私的年金や金融機関も含めた機関投資家を対象とした営業活動が主な業務です。商品提案やリレーションシップの強化、マーケティング施策の企画や販売サポートなどを行います。
アセットマネジメント業界の年収相場
アセットマネジメント業界の年収相場は、金融業界とほぼ同水準です。以下は日系企業の事例ですが、外資系企業の場合にはそれぞれ1.5倍から2倍程度アップします。
※会社の規模によっても、給与水準は大きくことなるので、以下の水準はあくまで目安です。上振れする可能性も十分にございます。応募時に企業ごとの年収レンジをJACのコンサルタントにご確認ください。
運用フロント | ミドル | バック | 営業フロント | |
20代 | ~1,100万円 | ~800万円 | ~600万円 | ~1,000万円 |
30代 | ~1,300万円 | ~1,100万円 | ~800万円 | ~1,300万円 |
40代 | ~1,500万円 | ~1,300万円 | ~1,000万円 | ~1,500万円 |
アセットマネジメント業界への転職で有利な資格・経験
アセットマネジメント業界への転職で有利となる資格について、それぞれ紹介します。
TOEIC 800点以上相当の語学力
全てのポジションで必ずしも英語を使うわけではありませんが、TOEIC800点相当の語学力をお持ちの方は応募できる求人数も増え、選考でも有利に働きます。
アセットマネジメント業界で働く上で必要な経験・スキルを持った上で、語学力も兼ね揃えた方は非常に少なく、ポテンシャル採用においては特に有効です。
証券アナリスト資格
証券アナリスト(日本証券アナリスト協会認定アナリスト)は、証券投資分野のプロフェッショナルとしての知識やスキルを証明する民間資格です。30代以上の場合にはそもそも保有している方が大半を占める他、面接では実務ベースの経験値をチェックされるので、評価には大きく影響しませんが、若手未経験者の方の場合には、選考で有利に働きます。
アセットマネジメント業界のキャリアパス
アセットマネジメント業界に転職する方の多くは業界内でキャリアを全うするケースが大半です。
アセットマネジメント業界内のキャリアパスとしては日系中堅企業から日系大手企業を経て、外資系企業へ進む流れが王道です。日系企業でも十分に専門性は身につけられますし、待遇も金融機関の平均水準と同等ですので、日系企業に留まる方も多数います。
一方で昇進によってプレイヤーからマネジメントに移った後、再びプレイヤーに戻りたいという理由から転職するケースや、ファンドマネージャーとして長く勤められた方が業界内で異なる仕事をしたいという動機からプロダクトスペシャリストとして他社に移るケースもあります。
安定的に働ける環境で自分の専門性を磨きながら、必要に応じてキャリアパスを軌道修正するために転職される方が多く、頻繁に転職を繰り返す方はほとんどいないのが実情です。
業界外でのキャリアパスとして、年収アップの選択肢として証券会社などのセルサイドに転職する選択肢もありますが、ワークライフバランスを実現しやすく専門性を高められるアセットマネジメント業界から、ハードなワークスタイルとジョブローテーションのあるセルサイドに転職する方は稀です。
アセットマネジメント業界の転職アドバイスQ&A
Q. リモートワークで働くことは可能でしょうか。
A. 大半の企業がリモートワークを採用していますが、オフィスへの出社頻度は企業や部門によって異なります。
Q. ワークライフバランスについて教えてください。
A. 四半期毎の繁忙期はあるものの、残業時間は月平均で10〜20時間と比較的少ないことから、証券業界と比較しても働きやすい環境です。ワークライフバランスを理由に証券会社から転職を希望される方も多数いらっしゃいます。
アセットマネジメント業界業界の転職成功事例
ここでは、JACを通じてアセットマネジメント業界への転職に成功した方の事例を紹介します。転職のきっかけ・応募した企業・採用に至った決め手・年収アップ金額など、実例を元にお伝えします。
長期的なキャリア戦略で証券業界からアセットマネジメント業界へ
Sさん(30代前半/男性)は日系証券会社でリテール営業を3年経験。ジョブローテーション制度のため専門性が身につかず、転勤も多いことからアセットマネジメント業界への転職を志望し、JACに登録しました。
それまでのスキル・経験では直接アセットマネジメント業界への転職は難しいとJACのコンサルタントがお伝えした上で、アセットマネジメント業界に転職するための経験が積めるファンド評価機関の会社をご紹介。この会社でアナリストの経験を3年間積んだ後に、再度JACを介して転職活動を進めた結果、日系の大手アセットマネジメント会社に内定。現在はアナリストとして活躍されています。
短期的な判断で転職活動を進めるのではなく、業界が求める人材像から逆算したプランをJACのコンサルタントがご提案し、中長期的なサポートをご提供したことで、念願だった業界への転職を実現されました。
転職成功の詳細は下記にてご確認いただけます。
【アセットマネジメント業界の転職事例】中長期でのキャリア提案、念願の業界へ転職成功
アセットマネジメント業界への転職ならJAC
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金融プロフェッショナルの転職ならJAC Recruitment
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