近年の日本企業におけるCIOの需要増加の背景には、デジタル化やAI活用の進展にともなうIT戦略の重要性の高まりがあります。多くの企業がIT人材不足に直面するなか、CIOには経営戦略とIT戦略の融合や、IT投資の価値を経営陣に示す役割が期待されている状況です。しかし、現状では多くの日本企業でCIOの設置が遅れており、IT部門の価値を十分に示せていないという課題があります。
ここではJAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが、CIOとはどのような役割なのか、役員やCEO、CTOなどとの違い、注目されている背景も踏まえつつ、転職成功のポイントや平均年収、事例などを解説します。
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CIO(最高情報責任者)とは
CIO(Chief Information Officer)は、企業や組織において情報戦略を統括し、情報システムや情報管理を担当する最高責任者のことを指します。
CIOとは、最高情報責任者のこと
CIOは、企業の情報技術(IT)に関連する戦略の立案と実行を担当します。主な役割は以下のとおりです。
- ・経営理念に沿った情報戦略の立案と実行
- ・ITリソースの最適化
- ・業務プロセスの改革
CIOは単なる技術責任者ではなく、経営陣の一員として企業の競争力向上に貢献することが求められます。
CIOと役員の違い
CIO | 役員 |
---|---|
情報戦略に特化 | 各部門や全社の経営に関与 |
IT技術と経営の両方の知識が必要 | 担当分野の専門知識が中心 |
情報システム部門を統括 | 各自の担当部門を統括 |
CIOはほかの役員と比べて、より専門的なIT知識と経営の両面の理解が求められます。一般的な役員が自部門の運営に注力することに対し、CIOは全社的な情報戦略を担当する点が違いです。
-
役員の転職は難しい?役員の転職事例や成功のポイントを解説
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CIOとCEOの違い
CIO | CEO |
---|---|
情報戦略の責任者 | 企業全体の最高経営責任者 |
IT関連の意思決定を主導 | 企業全体の意思決定を主導 |
CEOに報告することが多い | 取締役会に報告 |
CEOとは最高経営責任者(Chief Executive Officer)で、企業全体の経営戦略の立案と実行、最終的な意思決定を行う最高責任者の役職です。
CIOはCEOのもとで働くことが多く、情報戦略の観点から企業の意思決定をサポートします。一方、CEOは企業全体の方向性を決定し、最終的な責任を負うのが特徴です。
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CEOとは?転職動向や転職事例、求められる実績などを解説
これまで経営に携わってきた経験をお持ちの方のなかには、より関心の強い分野やご自身の能力を発揮できる企業でCEOとして会社を牽引していきたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。 CEOへの転職は簡単なことではあり… 続きを読む CEOとは?転職動向や転職事例、求められる実績などを解説
CIOとCTOの違い
CIO | CTO |
---|---|
情報戦略全般を担当 | 技術開発や研究開発を担当 |
既存システムの改善や運用に注力 | 新技術の導入や製品開発に注力 |
業務効率化やコスト削減に重点 | 技術革新や製品競争力向上に重点 |
CTOとは最高技術責任者(Chief Technology Officer)で、企業の技術戦略の立案と実行、研究開発の指揮を行う役職です。
CIOが社内のIT戦略や既存システムの最適化に注力するのに対し、CTOは新技術の開発や製品への応用に重点を置きます。両者は協力して企業の技術戦略を推進することが求められます。
CIOとCISOの違い
CIO | CISO |
---|---|
情報戦略全般を担当 | 情報セキュリティに特化 |
システム運用や業務改善に注力 | セキュリティポリシーの策定と実施に注力 |
幅広いIT戦略を立案 | セキュリティリスク管理に特化 |
CISOは最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer)で、企業の情報セキュリティ戦略の立案と実行、セキュリティリスク管理を担当する役職です。
CISOはCIOの部下として働くことが多く、情報セキュリティに特化した役割を担います。CIOが全体的なIT戦略を立案するなかで、CISOはセキュリティの観点からアドバイスを行い、具体的な対策を実施することが違いです。
CIOとCDOの違い
CIO | CDO |
---|---|
ITシステムの保守や運用が中心 | デジタル戦略全般を統括 |
既存の業務プロセス改善に注力 | 新たな事業モデルの創出やDXを推進 |
ITセキュリティや業務効率化を重視 | データ分析やデジタルマーケティングを重視 |
CDOとは最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)で、企業のデジタル戦略の立案と実行、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担当する役職です。
CIOが主に既存のITシステムの最適化や業務プロセスの改善を担当するのに対し、CDOはより広範なデジタル戦略を統括し、組織全体のデジタル変革を推進する役割を担います。CDOの役割は比較的新しく、デジタル技術を活用した新規事業の創出やビジネスモデルの変革に重点を置いているのが特徴です。
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CDOとは?役割や求められるスキル、転職事例などを解説
近年、データ活用が企業の競争力を左右する時代となり、企業の経営環境は大きく変化しています。そのため、データ戦略の立案や実行、データ人材の統括ができるCDOへの需要が高まっています。CDOは単なるデータ管理者ではなく、企業… 続きを読む CDOとは?役割や求められるスキル、転職事例などを解説
CIOが注目されている背景
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と情報技術の戦略的活用の必要性などの理由によって、日本におけるCIOへの注目は高まっています。JUAS(一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会)の調査によると、2023年度時点でCIOを設置している日本企業は全体の16%程度でした。
CIOが注目されている主な理由としては、DX推進の必要性、デジタル競争力の低下、そして人材不足の課題が挙げられます。経済産業省は2018年の「DXレポート」で2025年までのデジタル企業への変革を促しており、IMDの調査では日本のデジタル競争力が63カ国中29位と低迷している状況です。また、総務省の2022年調査では、日本企業の67.6%が「人材不足」をデジタル化の障壁として挙げています。
CIOの概念は2000年代初頭から日本で注目され始めましたが、近年のDXの加速により重要性が再認識されています。e-Japan戦略の推進、2018年の「DXレポート」公開、2020年のコロナ禍によるデジタル化の遅れの顕在化、2021年のデジタル庁設立など、さまざまな出来事がCIOの重要性を高めてきました。
CIOの役割は単なる情報技術の管理から、ビジネス戦略との連携を図りDXを推進する重要な存在へと変化しています。日本企業や行政機関のグローバル競争力維持・向上のため、CIOの戦略的活用が不可欠となっており、今後さらにその重要性が高まることが予想されます。
さらに「DXレポート2.2」では、日本企業のDX推進における課題と、CIOの重要性が強調されています。CIOの役割が、戦略的デジタル投資の推進、全社的な変革の主導、そしてエコシステムの構築へと拡大したためです。
特に「デジタル産業宣言」の策定を通じて、CIOは自社のDX戦略を明確化し、社内変革の加速と外部パートナーとの協業促進が期待されている状況です。CIOは技術管理者から企業の戦略的変革を主導する経営層の一員へと進化し、その重要性が一層高まっているといえます。
参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
CIOの平均年収は1,700万円前後
企業規模や業種によりますが、JACが転職を支援した事例では、CIOの平均年収は1,700万円程度です。CIOの年収のボリュームゾーンは1,500万円から2,000万円です。ただし、ご経験や実績、スキルなどによって年収は前後するものです。そのため、年収約2,500万円以上で転職し、CIOに就任した事例もあります
※当社実績(2024年1月~2024年11月)より
セグメントごとの年収相場は、以下のとおりです。
企業規模別
大企業(従業員1,000人以上) | 2,000万円~3.000万円程度 |
中堅企業(従業員300人~999人) | 1,500万円~2,500万円程度 |
中小企業(従業員300人未満) | 1,000万円~2,000万円程度 |
業界別
銀行・証券・投信のCIO | 3,000万円~5,000万円程度 |
その他の金融サービスのCIO | 2,200万円~3,200万円程度 |
ベンチャーや未上場企業のCIO | 800万円~1,500万円程度 |
CIOの最新転職・求人情報
ここからはCIOの最新の求人情報をご紹介します。CIOに求められる経験やスキル、年収条件などをご確認いただけます。
CIOへの転職市場動向
近年、CIOの転職市場はどのような状況なのでしょうか。ここでは、CIOの需要がある企業の特徴と、求められるスキル・経験などをご紹介します。
CIOの需要が高い企業の特徴
CIOの需要が高い企業には以下のような特徴があります。
- ・DX推進に注力している大手企業
- ・IT戦略の立案・実行が必要なグローバル企業
- ・急成長中のベンチャー企業・スタートアップ
- ・金融、製造、小売など幅広い業界の企業
これらの企業でCIOの需要が高まっている理由は、デジタル化の加速やIT戦略の重要性の上昇です。特に、DX推進やグローバル展開を進める企業では、経営とITの両方を理解するCIOの役割が重要になっています。
CIOとして求められるスキル・経験
CIOとして求められるスキルや経験は、企業や業界によって異なる場合があります。以下に一般的に求められるスキルと経験を説明します。
- ・IT戦略の立案・実行経験
- ・大規模プロジェクトのマネジメント経験
- ・デジタル領域での戦略策定から実行支援までの経験
- ・経営視点でのIT活用能力
- ・グローバルビジネスの経験
- ・変革をリードするリーダーシップ
- ・最新技術トレンドへの理解
これらのスキルや経験が求められる理由は、CIOに期待される役割が「ITの管理者」から「ビジネス変革の推進者」へと進化しているためです。技術だけでなく経営戦略を理解し、組織全体のデジタル変革をリードできる方が求められています。
また、構造的な人手不足を背景に、40代〜50代以上のミドル・シニア層のCIO需要が高まっている状況です。経験豊富な方々がCIOとして活躍できる機会が増えているといえます。
CIOへの転職成功のポイント
CIOへの転職成功のポイントは以下のとおりです。
- ・経営的視点とIT戦略の融合
- ・幅広いIT知識とトレンドの把握
- ・プロジェクトマネジメントとリーダーシップ
- ・コスト管理と投資判断能力
- ・セキュリティとリスク管理
ここからは、それぞれの内容と年代別のアプローチ、経験や実績の獲得方法をご紹介します。
経営的視点とIT戦略の融合
CIOの役割は単なるIT管理者ではなく、経営戦略とITを結びつける重要な職種です。転職成功のためには、以下の点をアピールしましょう。
- ・ビジネスモデルの理解と、ITがそれをどのように支えるかの説明能力
- ・過去のプロジェクトで、IT戦略が企業の利益にどのように貢献したかの具体例
- ・経営層とのコミュニケーション能力と、技術的内容を非技術者にも分かりやすく説明できる能力
これらの能力を証明するために、面接では具体的な事例を用意し、数値で成果を示すことが効果的です。
幅広いIT知識とトレンドの把握
CIOには最新のIT技術とトレンドに関する深い理解が求められます。例えば、以下の点をアピールしましょう。
- ・クラウド、AI、IoTなどの最新技術の理解と実装経験
- ・デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の実績
- ・新技術の導入による業務効率化やコスト削減の成功事例
職務経歴書では、これらの技術を用いたプロジェクトの詳細と、その結果もたらされた具体的な成果を示すことが重要です。
プロジェクトマネジメントとリーダーシップ
CIOには大規模なIT関連プロジェクトを統括する能力も欠かせません。以下の点をアピールしましょう。
- ・大規模ITプロジェクトのマネジメント経験
- ・チームリーダーとしての実績
- ・複数部門を横断するプロジェクトの調整・推進能力
面接では、困難なプロジェクトを成功に導いた経験や、チーム管理の具体的な方法論について語ることが効果的です。
コスト管理と投資判断能力
CIOには適切なIT投資判断とコスト管理能力も求められます。以下のような経験がある場合、具体的に説明しましょう。
- ・IT予算の最適化実績
- ・ROIを考慮したIT投資の成功事例
- ・コスト削減と業務効率化の両立
職務経歴書では、具体的な数字を用いてコスト削減額や効率化の程度を示すことが重要です。
セキュリティとリスク管理
情報セキュリティの確保はCIOの重要な責務です。そのため、以下のようなポイントをアピールすると効果的です。
- ・セキュリティポリシーの策定と実装経験
- ・インシデント対応の実績
- ・リスクアセスメントとその対策の経験
面接では、具体的なセキュリティ対策の事例や、インシデント発生時の対応について詳細に説明しましょう。
年代別のアプローチと経験・実績の獲得方法
CIOの転職を成功させるには、年代によって異なるアプローチが必要です。
40代は、これまでの豊富な経験を生かすことが転職成功のポイントです。大規模プロジェクトの管理能力や戦略的思考を前面に出すことで、組織全体のIT戦略を立案し実行できる人材であることをアピールできます。この年代では、具体的な成功事例を交えながら、自身の経験がいかに組織に貢献できるかについて説得力を持って説明することが重要です。
50代以上のCIO候補者は、長年の経験に基づく確かな判断力と、経営層との円滑なコミュニケーション能力をアピールすることが効果的です。技術的な側面だけでなく、ビジネス全体を俯瞰する視点と、経営陣と協調してIT戦略を推進できる能力が求められます。過去の経験から得た洞察力と、組織のさまざまなステークホルダーとの調整能力を強調することで、CIOとしての適性をアピールできるでしょう。
なお、将来CIOを目指す方は、以下のアプローチを試み、経験や実績を積んでいくとよいでしょう。
- ・現職でのスキルアップ:社内でのIT戦略立案や大規模プロジェクトへ積極的に参加
- ・副業や兼業:スタートアップ企業のアドバイザーやコンサルタントとして経験を積む
- ・キャリアアップ:IT部門のマネージャーやディレクターとしての経験を積む
- ・資格取得:PMP、ITIL、CISAなどの関連資格を取得し、専門性を証明
- ・ネットワーキング:業界セミナーやカンファレンスに積極的に参加し、人脈を広げる
CIOの転職事例
ここからは、CIOの転職成功事例をご紹介します。
Kさん(男性/40代半ば)
業種 | 職種 | 年収 | |
---|---|---|---|
転職前 | 数万人規模の大手サービス企業 | DX部門幹部 | 1,800万円 |
転職後 | 数千人規模のインフラ関連企業 | CIO | 2,000万円 |
Kさんは数万人規模の大手企業でCDO補佐を務め、将来はグループ企業の役員や社長に就任する可能性がありましたが、「既存の仕組みで経営に携わる面白さ」への疑問を抱いていました。JACのコンサルタントと出会い、デジタル領域のエグゼクティブマーケットに関心をもちつつ、求人情報の収集を開始。
そのなかで、規模が現職の10分の1以下ながら、上場企業で事業転換期を迎えDX推進に注力するインフラ関連企業・X社のCIO求人に興味を持ちました。経営陣との対話を通じ、自身の経験を生かして貢献できると判断して転職を決意。組織の変革に挑む環境とともに、年収200万円のアップも実現しました。
転職成功の詳細は下記にてご確認いただけます。
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40代の転職成功事例|自社の外に目を向け、年収2,000万円のCIOに
Kさん(男性/40代半ば) 業 種 数万人規模の大手サービス企業 数千人規模のインフラ関連企業 職種 DX部門幹部 CIO 年 収 1,800万円 2,000万円 「グループ企業の経営幹部」となる未来に、もやもや感を抱く… 続きを読む 40代の転職成功事例|自社の外に目を向け、年収2,000万円のCIOに
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