


澤円氏が語る~転職のタイミングを見極めるヒント~
公開日:2025/01/22 / 最終更新日: 2025/01/22

今の仕事を続けるか、それとも新しい挑戦を選ぶべきか?――この問いを自問自答し続けている、キャリアに迷うビジネスパーソンは少なくないでしょう。特にDXや生成AIがもたらす第4次産業革命の時代では、働き方やキャリアの常識が大きく揺れ動いています。
このセミナーでは、澤円氏が豊富な知見と自身の経験をもとに、変化の時代を生き抜くキャリアデザインの考え方をシェア。未来に向けて自分自身の可能性を広げるためのヒントを探ります。
※本記事は2024年11月18日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。また、文章表現を統一するため言い回しも変更しておりますのでご留意ください。

JAC Digitalアドバイザー
株式会社圓窓 澤 円氏
元日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。
IT コンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。 幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。 2020 年 8 月末に退社。
2019 年 10 月 10 日より、(株)圓窓 代表取締役就任。2021年4月22日よりJAC Digital アドバイザー就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。 美容業界やファッション業界、自動車業界の第一人者たちとのコラボも、業界の枠を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。
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澤氏のキャリアから学ぶ「まず、動く」という思考
まずは私のキャリアからお話しします。私は1993年に第一生命情報サービス(現・第一生命情報システム)に入社しました。当時の日本はバブル崩壊直後。就職活動をはじめた1992年はかろうじて「氷河期」と呼ばれる状況には至っていませんでしたが、景気の不安定さは感じていました。
1995年、Windows 95の登場とともに、インターネットの時代が本格的に始まりました。この変化を目の当たりにし、「これは使わない手はないな」と直感的に感じた私は、清水の舞台から飛び降りたつもりでローンを組み、パソコンを購入しました。当時のフルタワー型のパソコンは、今では考えられないほど大きいものでした。同僚からは「家でもコンピューターを使うの?」と珍しがられましたが、私は「これは世の中を変える」と予感めいたものを感じたのです。
購入したパソコンを使ってしていたことは、ネットサーフィン。インターネットが誕生したばかりの当時は、ネットサーフィンをするだけで、どんどん新しい知見を吸収できました。同時に、積極的に外部のコミュニティやイベントにも参加するようになり、外の世界との接点も増やしていったのです。さらにグループウェア「ロータスノーツ」のコミュニティにも入って、ビジネス的な汎用的なスキルも身につけていきました。
そして、幕張メッセで開催されたITエキスポで転職エージェントの方と出会ったことが、1997年に日本マイクロソフトへ入社する扉を開いたのです。パソコンの購入をきっかけに広がった外部との接点や、ロータスノーツのスキルをもち合わせていたことが、転職のきっかけとなりました。
その後2010年ごろから外部での講演活動を開始し、2013年あたりから副業にも徐々に注力しはじめました。2019年には自身の会社「圓窓」を立ち上げました。設立後すぐにコロナ禍となったことで、必ずしも会社に所属する必要性はないと感じ、2020年にマイクロソフトを退職し、独立を果たしました。
この経験から私が感じたことは、「まず、動く」ということです。インターネットが普及する以前に自らパソコンに投資し、外部とのつながりを作るための行動を起こした結果、次のステージへの道が開けました。
転職のベストタイミングは「随時」――動きだすことで、チャンスが巡ってくる

「転職のベストタイミングはいつですか?」と聞かれることが多いのですが、私の答えはいつも同じ。「随時」です。魚や野菜のように「旬」の時期があるわけではなく、転職のタイミングを決めるのは外的な要因ではありません。大切なのは「自分がそのタイミングを作りだす」という意志です。
ここで私が好きなアインシュタインの言葉を紹介させてください。
“Nothing happens until something moves.”
「何かが動かなければ、何も起こらない」ということです。この言葉は転職だけでなく、人生全般においても当てはまります。動かない限り、ベストタイミングなど訪れるはずがありません。自ら動き、意思をもつことで、チャンスは向こうからやってくるのです。
私自身の経験を振り返ると、最初に動いたのは転職活動そのものではなく、小さな一歩でした。それは「パソコンを購入したこと」です。当時、興味があったパソコンを買い、インターネットに没頭し、外部との接点を増やす活動の一つとして転職イベントに足を運びました。この行動をきっかけに、私は自然と情報を集め、行動を起こし、結果として転職のチャンスが訪れたのです。そのときに「これがベストタイミングだ」と感じ、転職に至りました。
しかし、人はつい「〇〇してから動こう」と考えがちです。「英語が話せるようになったら留学しよう」「自信がついたら新しい挑戦をしよう」。でもそれでは、チャンスを逃してしまいます。ダイエットしてからジムに行くのではなく、まずジムに行くからこそ健康的な体を手に入れられるのと同じ。つまり順番が逆だということです。
「いつか動こう」と思っていても、「いつか」は来ません。でも「まさか」の出来事は訪れます。「いつか転職しよう」と思っていたときに、突然の人事異動やリストラがあるかもしれません。そうなる前に、自分から動きだすことが大切なのです。
自分に何かを起こすのは、ほかの誰でもなく「自分自身」です。だからこそ、今この瞬間、まずは動き出してみましょう。ベストタイミングは、あなた自身が作るものです。
好奇心ドリブンこそ、最強のビジネスマインド

私は、最強のビジネスマインドは「好奇心ドリブン」だと考えています。この考えの背景には、私が「デッサン思考」と呼んでいるアプローチがあります。これは、絵画のデッサンのように、手元だけに集中するのではなく、全体を取り巻く空間やバランスを捉える視野の広さを指します。
デッサンで最も大切なことは、対象物そのものだけではなく、その影や光が作り出す空間を見ることです。同じように、私たちのキャリアにおいても、現在の職場やスキルだけ見るのではなく、もっと外の世界に目を向けることが重要です。すると心のアンテナの精度が上がり、新しい可能性に気づけるようになります。
そのためには、まずは自分自身に問いかけてみることをおすすめします。「自分は何をしているときが幸せなのか」「どのようなときに心が躍るのか」「逆に、何をしているときにストレスを感じるのか」。このような自問自答を繰り返すことで、自分の内面にある本音を引き出すことができます。そして、その答えが見えてきたとき、それに関連する情報が自然と目に入ってくるようになるのです。これを「カラーバス効果」と呼びます。
カラーバス効果とは、特定のものに意識を向けると、その情報が急に増えたように感じる現象を指します。あるブランドの時計が欲しいと思った瞬間、街中でその時計をつけている人が急に目に留まるようになった、といった経験はありませんか? これは実際にその時計が増えたのではなく、自分の心がそれを捉えやすくなったのです。自分が興味をもつテーマや分野を明確にすると、それに関する情報が自然と集まりやすくなります。
私自身は好奇心が強く、興味の赴くままに新しいテクノロジーやトレンドに触れることが大好きです。そうした好奇心をきっかけに、これまで転職や顧問のオファーをいただくことができました。好奇心がドリブンとなり、次々と新しい機会を引き寄せてくれたのだと実感しています。
転職のベストタイミングに気が付くためには、自分自身の「興味」を見つけることが不可欠です。心のアンテナを高め、外の世界に目を向けながら、好奇心を原動力に行動することで、チャンスは自然と巡ってきます。そして、その瞬間が、まさにあなたの転職のベストタイミングといえるでしょう。
未来を作る意志をもって行動に移す

転職のベストタイミングを考えるうえでもう一つ重要なのが、「定数か変数かを見極めること」です。これは、転職活動を進めるうえで役立つ視点だと考えています。まず、定数とは自分でコントロールできないもの。例えば、他人の転職成功談に嫉妬したり、羨ましく思ったりしても、そこに変化を起こすことはできません。一方、変数とは自分の行動で変えられるものです。他人の成功例や失敗例から学び、自分のキャリアに生かすことならば可能だと思います。
この視点をもとに、転職活動で必要なことは、自分が何を変えられるかを冷静に見極めることです。転職エージェントに登録して情報を収集するのは変数にあたります。登録は手間がかからず、今の仕事を続けながらでもできる行動です。今すぐ動ける状態であるなら、迷わず面接を受けることをおすすめします。「どうなるかわからない」と迷っている時間はもったいないです。即行動に移すことが重要です。
逆に、一見コントロールできないように思えるものでも、観察を深めることで変数に変えられるケースもあります。例えば、「あの会社で働きたいけれど、自分には無理かもしれない」と感じている場合でも、その会社の出している求人情報を詳しく調べてみると、実は自分に適したポジションが見つかる可能性があります。このように、じっくり観察することが新たな可能性を引き出す第一歩となるのです。
そして、どの状況でも心に留めておきたいのが「未来を作る意志」です。転職のベストタイミングとは、自分で未来を作り出す行動を起こしたときがまさにその瞬間だと思います。
質疑応答
Q.転職先の企業や部署が、カルチャーフィットも含めて生き生きと働ける職場かどうか見極める方法はありますか?
まず、多くの会社にはミッションやビジョン、行動指針、企業理念といったものが必ずといっていいほど存在します。それらはたいてい会社のホームページに掲載されているので、その内容をしっかり確認することが大切です。そして、もしその内容にまったく賛同できないのであれば、その時点でカルチャーフィットしない可能性が高いといえます。
次に、面談や面接の場で具体的な質問をすることが重要です。例えば、「御社のビジョンにこういった内容が書かれていましたが、実際の業務ではどのように意識されていますか?」と聞いてみるのです。その答えを聞くことで、会社が掲げている理念や価値観が実際の職場でどれくらい浸透しているのかが分かります。日々の仕事にどの程度定着しているのかを知ることができるでしょう。
面接などでの対話を通じて、企業の文化が自分に合っているかを判断することができれば、入社後に感じるギャップや違和感を極力減らせる可能性が高いと思います。
Q.カルチャーマッチする企業を見つけるには、どのように転職活動を進めればよいですか?
まずは、自分が「行きたい」と思う企業の方向性を明確にすることが大切です。広く探すのではなく、どのような職場環境や企業文化を求めているのかを考えた上で、候補を絞り込むと効率的に進められます。また、転職フェアに参加するのもおすすめです。普段知らない企業と出会えるチャンスがあり、意外と自分に合った企業文化に出会えることもあります。
そして自分にとってマッチするカルチャーとは何かを言語化しておきましょう。「自分が大事にするポイントを定義しておくことで、自然と自分に適した企業を見つけやすくなります。
Q.転職について、身に付けるべきポータブルスキルはありますか?
正直にいえば、「このスキルがあれば絶対大丈夫」というものはありません。ただし、汎用的なスキルはもっておくことをお勧めします。例えば、適切な受け答えができる能力や共感性、管理職を目指すならマネジメントの基本的な理解などは重要だと思います。
しかし、それ以上に大切なのは「自分にしかできない強み」を作ることです。それも、単一のスキルではなく、複数の異なるスキルを掛け合わせることがポイントです。この組み合わせが、ほかの人との差別化につながります。
例えば私の場合、エンジニアとして突出していたわけではありませんが、少しだけ英語が使えたり、プレゼンテーションが得意だったりしました。この2つ3つを組み合わせるだけでも十分なバリューを発揮できた経験があります。今の時代でも、この考え方は有効だと思いますよ。
Q.面接のなかでこれだけは押さえておくべきという点はありますか?
まず、その会社のことをしっかり調べてください。そして、「私を雇うとこういう良いことがあります」という未来の話を用意しましょう。自分がその会社に入ったことで、具体的にどのような成果を生み出せるかを伝えるストーリーを考えるのです。
さらに、自分の失敗エピソードと、それをどう乗り越えたのか、何を学んだのかを準備しておきましょう。「過去の失敗について教えてください」と聞かれる可能性は高いので、堂々と語れる準備をしておくことが重要です。
これらを事前にしっかり考えておけば、自信をもって面接に臨むことができますよ。
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