DXのバズワード化やコロナ禍以降の事業再構築、生成系AIやweb3を始めとする新しいテクノロジーの台頭など、さまざまな産業変革が迫られる環境を追い風に、急成長を続けるコンサルティングファーム各社。
いずれの企業も従来通り積極採用を進めるなか、市場環境の変化とともに、求められる人材が多様化しています。ここではコンサルティング業界の採用トレンドを、コンサルティングファーム各社パートナーとのリレーションが深いJAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが解説します。
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コンサルティング業界の採用動向
日本のコンサルティング業界全体の売上高は2021年に1.5兆円に到達し、2025年には3兆円規模まで成長する見込みです。この背景には経営課題の複雑化によって、どの業界でも外部の専門家との連携が欠かせないことが挙げられます。
コンサルティング業界では業界(インダストリー)と、機能(ソリューション、コンピテンシーなど)ごとに部門が細分化されています。各業界とも共通してDXやAI・データ活用などテクノロジーに関連する案件の引き合いが旺盛であることから、中途採用が依然として活況です。昨年までは未経験者採用やポテンシャルを考慮した採用が目立ちましたが、昨今では即戦力で貢献できる経験者やミドル層の人材を採用する傾向が強まっています。
DXは検討フェーズから、効果重視の流れに
労働人口の減少から生産性・効率性の向上を目的にDXを推進する事業会社が増える中で、データサイエンスやIoT、AIの知見を持った人材のニーズは堅調です。コンサルティングファームでは各インダストリーとIT戦略系のコンサルタントが協働する形でDX関連のプロジェクトにアサインされることも珍しくありません。
2022年まではDX がバズワード化していて、「DXを通じて何ができるのか」を検討するフェーズにいる企業が大多数でした。しかし、2023年に入ると検討やトライアルを経て、有効性のあるDXプロジェクトのみに予算を投下する企業が急増。その結果、プロジェクトをリードするコンサルティングファームに対しても成果を重視する傾向が強まっています。この傾向は今後も継続すると予想されます。
一方で、近年ではDXに特化した新興のコンサルティングファームも増えており、DX人材の採用はコンサルティング業界でも激化しています。
コンサルティング業界で求められているのはデータサイエンティストではなく、データや先端技術を活用した業務改善や新規事業の立ち上げ経験など、DXによる事業開発・推進人材の色合いが強いといえます。また、エンジニアからコンサルティング業界に転職する際にも、技術に対する知見の豊かさだけでなく、技術を活用してどのような結果を残したかを採用時に重視する傾向があります。
したがって、「課題を解決するには、今の仕様でいいのか」と自ら考えて、進んで提案できるような方であれば、未経験でもコンサルティング業界で活躍できます。
人材不足により需要が拡大している会計監査法人
会計監査法人においては戦略系やIT系、総合コンサルティングファーム以上に人手不足の傾向が続いています。その背景には公認会計士を志す学生・若手人材の減少傾向や、ITやDXなど他のコンサルティング領域の需要拡大などが挙げられます。
しかし、会計監査法人の需要は衰えるどころか、今後ますます伸びることが予想されています。その大きな要因としては、2023年度からの非財務情報開示の義務化です。上場企業はこれまで売上や利益、負債などを財務諸表などで開示していましたが、環境への影響や雇用環境、社会貢献など非財務情報の開示が上場企業に義務付けられるようになったのです。
こうした将来の需要拡大に鑑みて、会計監査法人各社ともサステナビリティやESG関連業務の経験者の採用を進めていますが、市場全体に経験者が少ないため、ポテンシャルを重視した採用や財務情報開示業務の経験者を転換させるなどの対応を進めているのが実態です。
一方、メイン業務である会計監査においても、業務の一部をAIが代行する動きが進んでおり、AI関連のエンジニアやDX人材の採用を強化しています。しかし、他のコンサルティングファームとも競合するため、大手監査法人ではグループ傘下からの出向や企業横断型のバーチャル組織を作る動きも見られます。
人事系や会計業務系コンサルティングファームなど、特定の領域に特化した企業でも同様の動きは見られます。ホールディングス経営を進める上で基幹システムの刷新やデータ標準化は欠かせません。こうした業務をユーザー側の企業で経験したデジタル人材を、コンサルティング業界では求めています。
コンサルティング業界へ転職する上で注目したいキーワード
あらゆる産業においてテクノロジーを活かした改革が進んでいます。その道先を示すコンサルタントが担う役割は大きく、常に先見の明を持つ必要があります。
ここではコンサルティング業界に転職する前に理解しておきたいキーワードを紹介します。
IT戦略
事業戦略とIT戦略の整合性を図りながら、いかに効果的にテクノロジーを導入するかという課題を多くの企業が抱えており、現在のコンサルティング業界が解決するべき課題の一つでもあります。特に昨今はCIO(最高情報責任者)が多くの課題が集中しており、右腕としてサポートできるコンサルタント人材の需要は高まっています。
また、DXを進める上でIT部門の内製化を進める一方で、DX時代に即したIT部門のマネジメントや社員の評価方法についての知見がない企業も多く、人事や組織マネジメントを含めたコンサルティングが求められるケースも増えています。
データマネジメント
マーケティングのパーソナライズやサプライチェーンの効率化、製品開発力の強化、あらゆる資源の最適化など、企業におけるデータの存在価値は今まで以上に高まっています。
しかし、データは単に収集できればいいものではなく、適切な収集方法とフォーマット、格納方法で収集し、ビジネスに確実に貢献できる精度でアウトプットする必要があります。企業が抱える課題に対して、どのようなデータが必要であり、収集から分析、活用方法まで一貫して提案できるかが鍵となります。
リスク管理
DXやAIなどITへの投資には「攻め」のイメージが持たれがちですが、サイバーセキュリティーや顧客のデータ保護といった「守り」の投資も欠かせません。イノベーションの促進と情報漏洩対策のバランスを取ることは避けられない命題であり、顧客のデータ資産の攻めと守りをサポートするコンサルティングファームには、より高度な専門性が要求されます。
IT以外の領域でも自然災害やテロ攻撃、政治・軍事的な緊張の高まりといった外部要因に絡むリスクや、事業ポートフォリオの多様化から新たに発生する内部要因のリスクなど、さまざまなリスクが存在します。こうしたリスクを事前に把握し、その影響を最小限に留めるリスクコンサルティングは景気の左右されることなく、常にニーズの高い分野です。
中途採用においては、セキュリティやBCP、金融リスクなどの領域で経験を事業会社側で積んだ人材が求められる傾向があります。
グローバル×ドメスティック思考
企業の課題が高度・複雑化している中、市場はスピーディーに変化しています。こうした環境の変化をマクロとミクロの両面で捉え、今後の予測や自社の知見を肉付けして顧客に提案できるコンサルタントを業界各社は求めています。
加えて、グローバルの動向を理解した上で、日本市場ではどうあるべきかをロジカルに考えられる人材の市場ニーズは高い傾向にあります。
コンサルティング業界への転職を成功させるためには
慢性的な人手不足から多くのコンサルティングファームが通年で採用活動を行っています。その様子を見て「いつでも転職できる」と思われる方もいるかもしれませんが、企業側の採用基準は決して低くありません。とりわけ、2024年に入ってからは若手人材を束ねるミドルクラス人材や、コンサルティング業界未経験でも専門領域を持った即戦力人材が求められる傾向にあると予想されます。
こうした傾向を踏まえた上でコンサルティング業界での転職を成功させる3つのポイントを紹介します。
I型人材ではなく、T型人材を目指す
一般的な事業会社ではポジションごとに役割が定義され、これまでの経験を踏まえた上で担当業務が決まりますが、コンサルティングファームでは入社後にアサインされるプロジェクトによって担当する業務や求められるスキルや知識も変動します。
もちろん、個々の専門性やポテンシャルなどを考慮してアサイン先は決まりますが、コンサルタントとして成長するためには、特定の分野を極めながら、その他の幅広い領域にも知見を持てるような「T型人材」を目指すべきでしょう。
選択肢が多いときこそ、慎重に企業を選ぶ
テクノロジーに対する知見と豊かな経験があり、コンサルティング業界に挑戦するような優秀な方こそ慎重な転職活動をお勧めします。
転職先候補となる各社の方向性やカルチャーを理解した上で、自分のキャリアパスに合致する企業に進むのが転職の王道です。「なんとなく企業名を知っているから」「知り合いが働いていて、なんとなく楽しそうだから」といった、企業の具体的な情報を知らない中で転職活動を進めてしまうと、一貫性のないキャリアを積むことになり、その次の転職活動が不利になる可能性もあります。
出口を踏まえたキャリアパスを考える
コンサルティング業界は人材の流動性が高く、より好待遇を目指して入社から数年で転職される方や、同業他社からのヘッドハンティングを受けるケースが珍しくありません。一方でこれまでの経験を買われて事業会社に転職される方も多く、優秀な方ほど選択肢が豊かになります。ご自身にとって納得感のあるキャリアを歩むためにも、早い段階で中長期のキャリアパスの検討するようにしましょう。
まず、目標とする数年後の自分から逆算して、現在の自分に不足している経験やスキルを洗い出します。その後、希望するプロジェクトに手を挙げ、必要な経験を積むことで、現在と未来のギャップを埋めていくことで、次の転職に備えましょう。
コンサルティング業界への転職はJAC Recruitmentにお任せください
JAC Recruitmentではコンサルティング業界に特化した専任のコンサルタントが約50名在籍し、それぞれが異なる領域を担当しています。大手コンサルティングファームから、中堅ファームやブティック型ファームまで幅広い情報と収集し、常に最新のトレンドを登録者様に提供しています。
面談時には複数のコンサルタントが同席して、企業ごとの特色や入社後のキャリアパスを紹介しています。また、総合型転職エージェントの特性を生かし、コンサルティング業界以外の担当も同席して、あらゆる業界の情報を収集することも可能です。
コンサルティング業界は「入社後に何をしたいか」「仕事を通じて、世の中にどのような影響を及ぼしたいのか」といったイメージを持てる方こそが、納得のいくキャリアを積める業界です。将来のイメージやキャリアパスを自分一人で具体化するのは、骨の折れる作業です。JACではミドル・ハイクラスでの転職実績が豊富なコンサルタントが、今後のキャリアパスの壁打ちに対応します。
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