現在、多くの企業が「管理職」の採用や「社外取締役」の招聘において、経験豊富な女性を強く求めています。
JACにも、「女性管理職、女性社外取締役の候補者がいれば紹介してほしい」というご依頼を多数いただいています。部長クラス以上の管理職経験を持つ女性、女性経営者には、多くの企業からオファーが寄せられている状況です。
この背景には、2022年4月より改正された「女性活躍推進法」、さらに、SDGsやESGへの意識の高まりというものがあります。一方で、帝国データバンクが2021年7月に実施した調査によると、「女性管理職が30%以上」の企業はわずか8.6%、「女性管理職ゼロ」の企業は45.2%というのが現状です。
では、女性がより能力を発揮し、キャリアを築ける職場をつくるために、今、どのようなことが重視されているのでしょうか。上司が意識したいポイントや、あなたも意外と持っているアンコンシャスバイアスに触れながら、ご紹介します。
「女性活躍推進法」「SDGs」「ESG」を背景に、女性管理職へのニーズが急増
「働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会」の実現を目的とする女性活躍推進法が、2022年4月1日に改正され、労働者数101人以上300人以下の企業にも行動計画の策定・届出が義務付けられるようになりました。
これにより女性管理職のニーズが急増していると思われる方が多いようですが、実は、女性管理職のニーズが増えている背景にあるのは、これだけではありません。むしろ、グローバルでの「SDGs(持続可能な開発目標)」「ESG(※)」への意識の高まりが色濃く反映されています。
※ESG/環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)
従来の投資は、財務状況や事業の成長性によって判断されていましたが、近年は「ESG」への取り組み・達成状況が投資判断材料とされるようになっています。ESGのうち、社会(Social)のテーマの一つが「人的資本」であり、その中には「ダイバーシティ(多様性)」が含まれ、「女性活躍」もこの指標に該当します。
こうした潮流を受け、2021年6月、東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードを改訂。補充原則として、下記が追加されています。
「上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである」
女性活躍推進は、単に法律を守るだけでなく、投資の獲得のためにも取り組まなければならない課題となっているわけです。
「女性が働きやすい制度」を導入するだけでは不足
では、女性活躍推進の先進企業は、どのような施策を実践しているのでしょうか。
主には次のような取り組みが見られます。
●人事評価制度の刷新
●柔軟な働き方の制度整備(在宅勤務/フレックスタイム制/時短勤務など)
●有給休暇の取得推進(子どもの病気や行事の際、有休を取得しやすい環境を整える)
●女性従業員対象のキャリア開発プログラムの導入
●「ロールモデル」となる女性の登用・採用(女性従業員が管理職になるイメージを描きやすくする)
●管理職を対象に、女性活躍推進のための研修を強化。イクボス(育児を支援する上司)を養成
テレワークが普及したことで、「在宅勤務」+「出社」を組み合わせたハイブリッド型の勤務体系の導入が進み、より育児と仕事を両立しやすい環境が整いつつあります。
職場環境における課題
しかし、制度を整えても、女性活躍がいっこうに進まない職場が多数あります。
その要因の一つに、「男性上司の思い込みや偏見」という課題が挙げられています。
「責任が重い役割や重要なプロジェクトは女性には任せられない」という意識から、自ずと男性を任命する慣習が根付いているのです。
また、男性管理職の「気配り」「思いやり」が、実は女性の活躍を阻んでいるケースも多々あります。
育児をしながら仕事をする女性に対し、「大変そうだから、負担がかからない業務を担当してもらおう」という配慮が、逆効果を生んでいるのです。
育児中であっても「責任ある役割を担い、価値あるキャリアを築きたい」「ビジネスパーソンとして成長し続けたい」と考えている女性は多数。「負担を減らすため、簡単な業務を」という上司の配慮に対し、もどかしさを感じています。
だからといって、自分から「責任ある業務を任せてほしい」とは言い出せません。「子どもの急病などで遅刻・早退などすれば、職場に迷惑をかけてしまう」といった不安があるからです。
ワーキングマザーに限らず、女性には自身の能力を過小評価する傾向があると言われています。十分なスキルを備えているにも関わらず、「私には大きな責務は担えない」「役割を果たせず、迷惑をかけたくない」という思いから、前へ踏み出せない女性が多いのです。
こうした女性たちに対し、上司が意識したいポイントは次のとおりです。
●チャレンジする機会を提供し、背中を押す
●「困ったときにはフォローする」ことを伝え、安心感を持たせる
アンコンシャスバイアスがない組織風土づくりを
女性活躍推進のため、業務の任せ方を工夫したり、柔軟な働き方ができる環境・仕組みを整えたりすることは大切ですが、同時に「ジェンダーギャップ(男女の違いにより生じる格差)」を生み出す風土を改善する必要があります。
そのために、「普段何気なく発している言葉」を見直そうとする動きがあります。アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)がかかった言葉の投げかけが、気付かないうちに女性を委縮させたり、モチベーションを低下させたりしている。そのことに気付き、改めていこうとするものです。
2021年6月、日経新聞・日経BPによる「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」の一環として、1冊の書籍が発売されました。『早く絶版になってほしい #駄言辞典』です。
ここでいう「駄言」の定義は次のとおり。
「『女はビジネスに向かない』のような思い込みによる発言。特に性別に基づくものが多い。相手の能力や個性を考えないステレオタイプな発言だが、言った当人には悪気がないことも多い」
この書籍では、「実際に聞いた、言われた、あるいは言ってしまった」という「駄言」をWebやSNSの投稿フォームで募集。寄せられた1200件のうち、約400の駄言をカテゴリー別に収録しています。
この中から、男性上司が女性部下に何気なく言いがちな言葉の一例を挙げてみましょう。
「華を添えに来て」(得意先との飲み会への誘い)
「女の子がいれたほうがお茶がうまい」
「女の子だから整理整頓、得意でしょ?」
「こういうのは女性じゃないとダメでしょ」
「君は女性なのに理論的で、できる人だね」
「おまえが男やったらよかったのに」
「子育て最優先だから、これ以上仕事しなくていいよ」
「ママが早く帰ってあげなくて、お子さん大丈夫?」
これらを見て納得する方もいれば、意外に感じる方もいるのではないでしょうか。
ジェンダーギャップへの意識は大きく変わりつつあります。管理職は時代の変化をつかみ、組織風土を見直していく必要があるといえるでしょう。
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