ベンチャー企業・大手企業に関わらず、新規事業への取り組みが活発化。大手企業においては、これまで築き上げた事業についても、時代の変化に合わせて刷新を図っています。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速するなか、事業企画職のニーズも高まっています。
昨今、事業企画職にはどんなスキルや経験が求められているのかをお伝えします。事業企画職の転職を検討されている方はぜひご覧ください。
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事業企画職とは?
企業が事業活動を進めるにあたり、経営トップが定めた方向性に基づいて具体的な目標を立て、実現に向けてプランニングを行うのが事業企画職です。 たとえば、次のような役割を担います。
- ●事業アイデアに対し、手法・進め方・組織体制・スケジュール・予算などを策定する
- ●競合他社や競合製品の動向など、マーケット状況を調査・分析する
- ●有望なアイデアが発案されたら、フィジビリティスタディ(実現可能性の検証)を実施する
- ●他企業とパートナーシップを組む場合、提携先や出資先となる候補企業のモニタリングを行う
新規事業を手がける事業企画職の場合、求人においては「新規事業開発」「新規事業プロデューサー」などと表記されるケースも多く見られます。
時代の変化が激しい昨今、事業の刷新や新規事業の開発においては、スピードが求められます。 そのため、自社だけで完結させるのではなく、その事業を得意とする他社とアライアンスを組む、つまり提携して取り組むケースが増えてきました。
そのような場合、「アライアンス」「アライアンスマネジャー」といった名称で募集されていることもあります。 アライアンスを超えて「M&A」を行うことを前提する場合、「M&A」「M&A企画」などの名称で募集が行われています。 なお、企業によっては経営企画職が事業企画職を兼務するケースも見られます。
事業企画職の最近の動向
最近では、Z世代を中心に消費スタイルが堅調になったとされています。「背伸びしなくても買える範囲で最良のものを選びたい」との意識が強く、口コミやSNSを調べてから、購入する消費者行動が増えているようです。
それに伴い、一般人でありながら強い影響力がある「インフルエンサー」が登場し、商品企画や広告・宣伝企画への「インフルエンサーマーケティング」が普及しています。さらに「所有」から「シェアする」という意識変化が見られ、サブスクリプションサービスやシェアリングエコノミーでの消費が高まっています。
企画職においても、これらに沿った事業モデルの構築を検討しなければならないといえるでしょう。
つまり、企画職へ転職希望者には、生活者・消費者と良好な関係を築ける手法やアイデアがある人材が求められています。
企画職の採用トレンド
近年、企画職においては、業界をまたいだ転職が増えています。
これは、転職市場の人材供給不足の影響やあらゆるニーズに応えるため、企業としても能力やポテンシャルを重視する傾向が高まっているようです。
そのため、異業種からの採用を積極的に行っています。
企画職には、戦略立案からマーケティング施策の策定、商品企画など業務の幅が広いため、経験者でも採用に前向きである場合が多いようです。
しかし、業界をまたいで転職をする場合、なぜこの業界を志望したのかを明確にし、企業側へ伝えるための自己分析が欠かせません。
事業企画職に向いている人、向いていない人
事業企画職として活躍している方には、共通して次のような特徴が見られます。
企画職に向いている人
- ●好奇心が旺盛で、常に新しい情報やトレンドにアンテナを張っている
- 事業企画とは、新たな価値を生み出す仕事です。未知のものに対する好奇心が強く、世の中の動きに常にアンテナを張り、トレンドをキャッチアップする姿勢が欠かせません。
- ●数字に強く、データの分析が得意
- 「企画」の仕事には、斬新な発想力やひらめきが重要だと思われがちです。しかし、アイデアを実行計画に落とし込んでいく際には、「数字」を正確に読み解く力が求められます。 マーケティングデータを見て、そのマーケットで勝負できるかどうかを見極める。収支を算出し、投資効果があるかどうかを判断する。そうした役割においては、数字に向き合うことが苦にならないことが重要です。
- ●「変化」を楽しめる
- 既存事業を刷新したり、新たな事業を立ち上げたりするにあたっては、既存のものを否定しなければならないこともあります。 これまで積み上げたものをいったんリセットし、「変化」を受け入れることも必要となりますので、それを楽しめる人が向いているといえるでしょう。
- ●「レジリエンス」が高い
- 「レジリエンス」とは、「回復力」「復元力」などの意。ビジネスシーンにおいては、困難な状況にもしなやかに適応できる力を指します。つまり、ストレス耐性があり、「簡単には心が折れない」ことです。 事業企画は、「正解」がないなか、手探り状態で進んでいかなければならない仕事。経営トップからは、利益に結び付く成果を求められ、多大なプレッシャーがかかります。 そして、アイデアを形にしていくプロセスでは、さまざまな壁にぶつかり、予期せぬアクシデントに見舞われます。それらを乗り越えていくレジリエンスは欠かせません。
- ●人を巻き込むことに長けている
- 事業を推進していくプロセスでは、さまざまな立場・職種の人々の協力が必要です。社内だけでなく、社外の人に協力を仰ぎ、パートナーシップを結ぶ必要があるケースもあります。 さまざまな人と対話・交渉し、協力を取り付けられる「巻き込み力」を備えた人は、円滑にプロジェクトを推進することができます。 上記に挙げた項目に一致しない人――たとえば次のようなタイプの人は、事業企画のポジションに就くとストレスを感じてしまうかもしれません。
企画職に向いていない人
一方、企画職に向いていない方の特徴には、以下のようなものが挙げられます。
●結果が見えにくい仕事が苦手
企画職は「企画立案・実行・検証・改善」のサイクルを回して、業務にあたります。
1サイクルあたりの期間は企画ごとに異なりますが、1〜2カ月で回すケースが多い、結果が出るまでの時間が長いです。
1つの仕事の結果が出るまでの時間が長いことに対して「結果が見えない……」とモチベーションを保てない方は、企画職にあまり向いていません。
●プレッシャーに弱い
企画職は、自社商品やサービスの礎となる「企画」を考えるため、社内でのプレッシャーは大きい傾向にあります。売上が上がらない原因は、企画職の問題とされることは日常茶飯事です。そのため、日夜プレッシャーと向き合わなければなりません。
そのため、プレッシャーに弱い人も企画職に向いていないといえるでしょう。
●コミュニケーションが苦手
企画職は、マーケティング・営業・開発など、他部署と連携しながら仕事を進めます。また、社外の方とコミュニケーションを図る機会も多いでしょう。
そのため、企画職はコミュニケーションを図らねばならない機会がたくさんあります。コミュニケーションが苦手な場合は、企画職にあまり向いていないといえるでしょう。
事業企画職への転職、未経験者は可能か
事業企画職は何らかの「企画」経験があれば、チャンスがある
事業企画職の中途採用においては、通常、事業企画の経験者が求められます。 しかしながら、事業企画未経験者にまったくチャンスがないわけではありません。 経営企画・営業企画・販促企画・サービス企画など、何らかの企画業務を経験しており、事業企画の素養があると判断されれば、受け入れられる可能性があります。 選考で注目される事業企画の素養としては、上記に挙げた「向いている人」、この後で紹介する「求められるスキル・経験」を参考にしてください。これらの「素養」を備えていることを、これまでの具体的な経験エピソードを交えてアピールすれば、チャンスをつかめるかもしれません。
事業企画職は、ベンチャー企業であれば、段階を踏んで目指すことも可能
未経験から一足飛びに事業企画職に就こうとするのは、非常にハードルが高いといえます。 しかし、段階を踏んで目指せば、いずれ事業企画職に就ける可能性があります。 狙い目は、スタートアップやベンチャー企業。営業やマーケティングなど、これまでの経験を生かして入社し、即戦力として業務を担当しながら、少しずつ事業企画に関わっていくのです。 拡大を目指し、さまざまな事業を生み出していく方針を掲げているベンチャー企業であれば、新規事業プロジェクトに携わるチャンスも得やすいでしょう。 もしくは「社内ベンチャー」「イントレプレイナー(社内起業家)」といった制度・風土がある企業に注目してみてください。 そこで事業の立ち上げ・推進に携わることで、次の転職では「事業企画経験者」として事業企画ポジションを狙えるかもしれません。
事業企画職の転職の実情
業界をまたいだ転職が増加
一昔前、事業企画職の中途採用においては、同業界での事業企画経験が求められました。 しかし近年は、異業界から事業企画職を迎え入れる採用が増えています。 その背景にあるのは「少子高齢化」「テクノロジーの進化」です。 日本のマーケットは少子高齢化に伴い、縮小していきます。大手企業といえども、既存事業だけでは組織を維持・成長させることはできません。 そこで、既存事業とは異なる領域へ進出し、新たな事業の柱を確立しようとしています。 また、テクノロジーの進化により、既存の商品・サービスが価値を失っていきます。そこで自社の持つリソース(技術力や顧客基盤など)を生かし、成長性のあるマーケットで勝負していこうとしています。
異分野に参入して新規事業を軌道に乗せた代表的事例として、富士フイルムがよく取り上げられます。 デジタルカメラ、さらにはスマートフォンのカメラ機能の進化により、写真フィルムの需要が激減。しかし、同社では素材の知見や光学技術などを生かして化粧品や医薬品分野へ参入し、成功を収めました。 このように、異分野の新規事業にチャレンジするケースでは、自社にその分野の知見を持つ社員がいないため、異業種出身者を採用するというわけです。 同様の動きはあらゆる業界で見られます。メーカーが「モノ作りだけ」から脱却し、「サービス」を拡充しようとする動きも顕著。新たなサービスを生み出す事業企画職を求めるケースも見られます。 こうした背景から、「異業界転職」の事例が多数生まれています。
「DX」関連の採用が主流に
最近の事業企画職の採用においては、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するポジションが主流となっています。 そのため、「DX推進担当」といった名称で募集されているケースも多く見られます。 DXへの取り組みは、2016年~2017年以降、大手企業の中でも先進的な企業が進めてきましたが、2020年以降にさまざまな企業へ広がりました。 テレワークが普及したり、対面での接客や営業活動に制限がかかったりするなか、多くの企業が新しい商品・サービスのあり方を模索しています。
「クラウド」「AI(人工知能)」「5G(第5世代移動通信システム)」など、これまでにない商品・サービスを実現させる技術や環境が整ってきているなかで、それらを活用した新事業の開発が急がれています。 その立ち上げ、推進を担う事業企画職が求められているのです。 DX推進を担う人材といえば、「データサイエンティスト」など、デジタルのスペシャリストがイメージされますが、採用対象となっているのはそのような人材だけではありません。 次のような要素を持ち合わせている人であれば歓迎されます。
- ●業界やマーケットに関する深い知見
- ●何らかの「改善・改革」のプロジェクトを推進した経験
- ●新たな価値を生み出すことへの強い意欲
もちろん、デジタルに苦手意識がなく、これから学んでキャッチアップしていく姿勢があることも前提となります DX推進の経験を積めば、事業企画職として、その先の転職にも有利となる強いキャリアを築くことができるでしょう。
事業企画職、大手→ベンチャー→大手の転職事例も多数
大手企業を退職してベンチャー企業に入社。ベンチャー企業で事業企画経験を積んだ後、再び大手企業に事業企画職として転職するケースもよく見られます。 先ほど述べた背景から、大手企業も新規事業の開発を強化しています。しかし、従来の大手企業の進め方ではスピードが遅い。そこで、ベンチャー企業のスピーディな事業環境の中で、変化に対する臨機応変な対応力を身に付けた人を迎えているのです。
ベンチャー企業勤務の経験しかない人と比べ、以前に大手企業勤務を経験している人であれば、大手ならではの組織事情や意思決定の流れを理解しています。 そのため、「大手もベンチャーも経験している」人材が重宝されるのです。
外資系事業企画職への転職を成功させるコツ
外資系企業での事業企画職の転職についても解説いたします。
異業界の経験をどのように生かせるかをアピールする
中途採用にあたり、「既存社員にはない視点を取り入れたい」「自社の固定観念を打ち破ってほしい」と考える企業は多く、あえて異業界出身者を求める企業が増えています。 しかし、相手企業にとって、異業界の経験が自社でどう役立つのかをイメージできなければ、採用の判断を下せません。 選考に臨む際には、相手企業をしっかりと研究して、何を求めているかをつかみましょう。それにマッチした 自身の経験を、具体的なエピソードを添えてアピールできるようにしておいてください。
自分にマッチするステージ(成長フェーズ)の企業を選ぶ
転職先候補企業を探す際には、業種や事業内容だけでなく、どのステージ(成長フェーズ)にあるかにも注目しましょう。たとえば、創業期・成長期・安定期・変革期……などです。 ステージによって企業が抱える課題や求める人物像は異なります。事業の根幹に関わる企画職だけに、この部分がマッチするかどうかは重要です。
相手企業における「新規事業」の位置付けを確認する
新規事業を担当する事業企画ポジションに応募する場合は、その会社全体において新規事業がどのような位置付けなのかを確認しましょう。 たとえば、「従来の本業に代わる事業柱として期待を寄せる」「本業を補う」「お試しでチャレンジしてみる」など。 経営陣がどの程度本気なのかによって、予算や人員がどれほど投入されるかが変わってきます。最悪の場合、早期撤退となる可能性もあります。 腰を据えて取り組める環境や体制があるかどうかを見極めましょう。
事業企画職の転職なら転職エージェントのご活用を
事業企画は、経営戦略を実行するポジションです。企業は他社、特に競合に自社の戦略を悟られないようにするため、事業企画職の採用を公にしないケースが多くあります。 つまり、自社サイトや転職サイトなどには求人情報を公開せず、転職エージェントだけに紹介を依頼するというわけです。 こうした「非公開求人」を入手するためにも、転職エージェントの活用をお勧めします。
事業企画に求められる役割は、企業によって大きく異なります。担当する業務や裁量範囲が異なることもあります。また、「既存事業とうまく融和させてほしい」というニーズもあれば「既存事業を壊すくらいの思い切った施策を打ってほしい」というニーズもあります。 それぞれの企業の内情や人材に求める要件を把握している転職エージェントを選ぶことで、より自身が活躍できるポジションに出会えるでしょう。
事業企画職の転職関連情報
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