国内上場企業の3月期決算の純利益が3期連続で過去最高を記録するなど、多くの大手企業が業績好調で事業を拡大。経理部門の増強を図るなかで20代経理のニーズが高まっており、転職のチャンスが広がっています。20代経理の採用動向、求められる経験・スキル・マインド、年収相場、キャリアパス、転職成功のポイント、転職成功事例などについて、JAC Recruitment(以下、JAC)の管理部門領域専任コンサルタントが解説します。
目次/Index
20代経理の転職の現状・求人の傾向について
経理の採用において、若い世代へのニーズが非常に高まっています。しかしニーズに対して転職希望者の数は少なく、20代後半から30代前半の転職希望者の方が複数企業から内定を獲得する傾向がここ数年続いています。
ニーズの高まりの背景には、企業の高業績があります。事業拡大を背景に新たな取り組みも進んでおり、各社、組織体制の増強を図っているのです。大手企業の場合、教育体制が整っているため、経験が浅い人でも2、3年かけてスペシャリストへ育成していくことを前提に迎えて入れています。
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20代経理で求められるスキルや経験・マインド
20代半ばから後半の経理を対象とする採用においては、少なくとも「制度会計」あるいは「管理会計」、いずれかの分野での一定レベル以上の経験が求められます。制度会計であれば、自身で決算業務まで手がけてきたこと、管理会計では自身で予算策定・分析・報告まで行ってきたことが重視されます。
加えて、選考では、どのような考えを持って転職活動に臨んでいるか、これからの自身のキャリア形成をどう描いているかも注目されています。中長期視点で目標を立て、その実現に向けてどのような経験を積んでいきたいと考えているのか、明確に語れる方が評価されるのです。経理としての経験・スキルが十分であっても、キャリアへの考えが浅いと思われると、採用を見送られるケースが見られます。
20代経理の年収相場について
20代半ばから30代前半の経理の年収相場は、以下の通りです。
企業規模 | 年収相場 |
---|---|
日系大手企業(5000人規模以上のプライム上場企業) | 650万から800万円(残業代・手当込) |
総合商社・不動産・製薬メーカー・銀行・保険 | 給与水準が高く800万円以上、場合によっては1000万円前半の事例もある |
外資系大手 | 900万から1000万円を提示される事例もある |
上場企業でも規模が小さい企業 | 500万円台後半から600万円前半 |
20代経理への転職を希望する人のキャリアパス
大手企業の経理としてキャリアを積む場合、「制度会計(財務会計)」「管理会計」いずれかのスタッフからスタートし、「グループ会社/海外子会社管理」「税務」「財務」「IR」「IPO業務」なども含めたジョブローテーションを経て、経理財務部門での管理職、あるいは専門性を磨きスペシャリストへ進むパターンがあります。管理職へと進むなら、「経理財務部長/CFO」がおおよそのゴールとなります。
また、経営企画として企業を統括するポジションへの異動も考えられます。経理は数字を通して企業全体のビジネスの推移を把握しており、その知見を次年度の経営計画の策定や社内の改善提案、新規事業の創出に役立てることができるからです。経営層に近いポジションのため、企業のかじ取りとして重要な役割の一端を担うことになります。
一方、実務経験を積みさらに転職を目指す場合は、「より成長性がある業界・企業へ」「非上場企業から上場企業へ」「より規模が大きい企業へ」「スタートアップのCFOへ」といった可能性があります。事業会社以外では、監査法人、会計系コンサルティングファーム、戦略コンサルティングファームといった選択肢もあるでしょう。
経理が20代で転職するメリット・デメリット
20代経理の方が転職によって得られるメリットと、反対にデメリットとなり得るポイントをお伝えします。
20代転職のメリット
より規模が大きい企業、ブランド力を持つ企業、多角的に展開している企業に移るチャンスがあります。規模や社格が上の企業に転職した場合、「安定感」という魅力はもちろんのこと、より高度で複雑な業務やグローバルな業務を経験できます。経理としてスキルアップし、市場価値アップにつなげられる可能性が高いといえます。
一般的に、非上場企業から上場企業など社格が高い企業に転職しようとすると、年齢が高くなればなるほどハードルが上がります。ある程度の年齢以上になると実務経験だけでなくマネジメント経験が求められるようになりますが、組織の規模が異なるとマネジメント経験が生かしにくいためです。給与額や全体の採用コストも高くなるため、企業は採用に慎重になります。
その点、20代での転職は経験が浅くても「育成」を前提として受け入れられるため、ポテンシャルをアピールすることでチャンスをつかめる可能性があります。特に経理はどんな企業にも必要な職種なので、他の職種よりも転職の機会は多いです。
20代転職のデメリット
転職そのものがデメリットということではなく、「安易な転職」が後々のデメリットにつながる可能性があります。上述した通り20代経理はニーズが高く「売り手市場」で、案件も多いため、転職活動をすると複数の内定を獲得できる可能性があります。しかし、そこで「給料が高いから」「有名な企業だから」と安易に判断してしまうと、後で「自分に合う環境ではなかった」「自分が望むキャリアの方向性と異なっていた」と気づき、望む条件を求めて転職を繰り返すことになるかもしれません。
日本の大手企業では採用において「経験社数」を重視する傾向があり、転職歴が多い人に対しては転職理由を問い、納得できる回答が得られなければ採用を見送るケースが多々あります。転職回数が増えることによって将来の転職の可能性を狭めないためにも、転職するかどうか、業務内容が自分の希望に合致しているかを慎重に検討する必要があります。
また、ひと口に経理といっても、大手企業の場合は業務が細分化されていて一部の業務しか担当しない、あるいはジョブローテーションのためひと通りの経験を積むのに何年もかかる場合があります。そのような企業は「できるだけ早期に幅広い経験を積みたい」という方にとっては望ましい環境とは言えず、場合によっては中小企業を選択する、あるいは現職にとどまることを選択した方がより良いキャリアを築けるかもしれません。
JACのコンサルタントは転職希望者の希望と企業のニーズを合わせ、転職希望者に寄り添いながら、中長期的な視点でのキャリアプランを踏まえたご提案をいたします。
20代で経理未経験だが、経理への転職は可能?
経理としての実務経験がない20代の方でも、経理への転職を果たしているケースはあります。例えば、次のような方であれば可能性があります。
関連資格の保有者
「日商簿記2級以上」「公認会計士」「米国公認会計士(USCPA)」「税理士」のほか、場合によっては「証券アナリスト」「アクチュアリー」の資格を持つ人が選考に進むケースは多々あります。加えて、英語力もあれば採用の可能性が高まります。
会計コンサルタント/金融関連の法人営業経験者
会計コンサルタントとして会計システムの導入や効率化の提案を行ってきた方であれば、事業会社の会計関連部署に採用される可能性があります。また、銀行など金融機関で法人営業を経験した方が、事業会社の財務部門に迎えられるケースも見られます。
国税庁出身者
国税庁で税務申告のチェックを行ってきた方は、税務の仕組みやルールを熟知しているので、その知見を生かして税務申告をする側である事業会社で活躍できる可能性があります。
未経験業界への転職の可能性について
一般的に管理部門職は業界をまたいで転職しやすい職種であり、それは経理も同様です。業界および日系・外資系を問わず転職できる可能性があります。
ただし、専門性が必要とされる業界もあります。例えば、金融業界では金融商品取引法によって決算の仕組みが一般事業会社と異なっています。また、製造業界では他の企業では見かけることのない複雑な原価計算があります。そのため、企業によってはそれらの知識・経験を求めることもあります。とはいえ、20代の方であればそうした壁も比較的越えやすく、非製造業から製造業への転職を実現しているケースもあります。
保有している方が有利な資格
中途採用においては、基本的に資格よりも実務経験が重視されますが、資格を保有していることが選考で有利にはたらく可能性もあります。前述しましたが、経理を目指すなら、最低でも「日商簿記2級以上」を取得しておきたいところです。ほか、「公認会計士」「USCPA(米国公認会計士)」「税理士」も評価されます。
英語力を持つ人も重宝されます。英語の読み書きが一定以上でき、英語へのアレルギーがないレベルとして「TOEIC700点程度以上」が目安とされます。大手企業の中でも上位の企業ですと、800点以上を求められるかもしれません。
20代経理が転職を成功させる3つのポイント
20代経理の方が転職を成功させるために意識しておきたいポイントを3つご紹介します。
では、それぞれ解説いたします。
業務への取り組み姿勢をアピールする
業務に対し、どれだけ能動的に取り組んできたかをアピールすることが大切です。例えば業務改善プロジェクトなどに関して、自ら主導することはなくても、PMやPLから任された役割範囲のなかで独自に考えて工夫したこと、指示されなくても行動を起こしたこと、自分だからこそ発揮できた価値などを、具体的なエピソードを交えて伝えられるようにしておくといいでしょう。
日々の業務においても、ただ指示に従って業務をこなしていただけでなく、主体的に考えて提案や行動をした経験、PMやPLをどのようにサポートをしてきたかを振り返って整理し、面接で語れるようにしておいてください。
キャリアに対するビジョンを語れるようにしておく
冒頭の「20代経理が求められるスキルや経験・マインド」でもお伝えしたとおり、選考では「キャリア形成への意識」にも注目されています。転職を決意した目的や志望動機が、本音では「年収アップ」や「ワークライフバランスの改善」などであったとしても、「今後、このようなキャリアを築いていきたい」「そのためにこれからこのような経験を積みたい/このスキルを身に付けたい」「それができる貴社を志望した」というように、キャリアに対するビジョンを転職の目的や志望動機に落とし込んで語れるようにしておきましょう。
自己研鑽意欲をアピールする
20代の採用においては「対応できる業務レベルを高めたい」「自身を成長させたい」という気概や意欲も重視されています。そこで、「向上心があります」「意欲的に取り組みます」と言葉でアピールするだけでなく、実際に行動を起こしていること示せるといいでしょう。例えば、「資格取得の勉強をしている」「○○の情報収集を続けている」といったことでも構いません。「困難にぶつかっても乗り越え、成長していく力がありそうだ」と、採用担当者に思ってもらえることが大切です。
20代経理の転職で多い質問と回答
経理として転職を目指す20代の方々からいただくことが多い質問にお答えします。
Q. 求人企業がどのようなビジネスをしているのか知りたいです。
A. 具体的な求人情報が提供されると、転職希望者の方は求人情報以外にIR資料を読み込み、「どんなビジネスをしているのか」だけでなく「業績はどうなのか」「市場における立ち位置はどこか」などを確認すると思います。
JACは一般には公開されていない企業の情報を持っており、転職先として検討・決定する際の重要なポイントを提供します。
Q. 転職で年収アップを目指すことは可能でしょうか。
A. 20代経理は求人市場でニーズが高まっていることから、転職によって50万から100万円の年収アップを果たす方が大多数を占めています。ただし、現職の給与水準にもよります。なかには世の中のマーケットの相場より年収が高い方もいますので、その場合、現職年収を維持またはアップを図るには苦戦するケースもあります。JACでは、転職希望者の方の経験内容と、世の中の年収相場を照らし合わせて、年収アップの可能性をアドバイスいたします。
Q. 残業が少ない企業、リモートワークができる企業はありますか。
A. 上場企業の場合、近年コンプライアンスが強化されていることから労働時間や休暇がしっかりと管理されています。そのため、1人あたりの業務負荷が過多になることは少ないでしょう。こうした環境であるため、長時間労働が抑制され、ワークライフバランスを充実させやすいといえます。
リモートワーク制度も、大手企業であればほぼ導入されています。「週2から3回出社/週2から3回リモートワーク」というハイブリッド型が導入形態の7割程度を占めますが、一部には「フルリモートOK」という企業もあります。なお、同じ企業でも部署によっても異なります。お金を取り扱う部署でいえば、財務は銀行や投資家と対面で協議する機会が多いため、出社比率が比較的高い傾向にあります。
Q. 人事制度はどうなっていますか。
A. 経団連の提言やコロナ禍の影響もあり、近年、人事制度は日本で長く主流で、業務内容を明確に定めず一括採用する終身雇用(メンバーシップ雇用)ではなく、欧米では主流であり、事前に業務内容を明確にする「ジョブ型雇用」を採用する企業が増加しています。ジョブ型雇用では実務経験や専門性が重視されるため、ジョブ型雇用を積極的に行っている企業への転職を検討しているのであれば、転職希望者自身が自らのキャリアパスを思い描いたうえでそれに沿う企業を選択しなければなりません。JACは中長期的な視野に立って、キャリアパス策定のお手伝いをいたします。お気軽にご相談ください。
20代経理職の転職成功事例
転職に成功した20代のお二人の事例をご紹介します。
20代経理職で中堅企業から超大手企業へ転職
業種 | 職種 | 年収 | |
---|---|---|---|
転職前 | 不動産関連会社 | 経理 | 800万円 |
転職後 | 大手金融会社 | 経理 | 950万円 |
Gさん(20代後半/男性)は大学卒業後システムインテグレーターのシステムエンジニアとしてキャリアをスタートしましたが、経理財務分野に興味を持ち、独学で日商簿記2級を取得。そこで経理財務職を目指して転職活動を行ったところ、ポテンシャルを評価されて社員数が数百名の不動産関連会社に採用されました。
決算業務や税務申告をはじめ幅広い経験を積む傍らで日商簿記1級とUSCPAも取得したGさんは、3年後、「より高度な業務を手がけたい」「グローバルな活躍がしたい」と2度目の転職活動を開始。企業を複数検討、応募した結果、社員数が数万名の大手金融会社に転職を果たし、年収は150万円アップとなりました。
転職成功の詳細は下記にてご確認いただけます。
【20代経理の転職事例】中堅企業から超大手企業への転職に成功
インフラ業界から金融業界に移り、年収250万円アップ
業種 | 職種 | 年収 | |
---|---|---|---|
転職前 | 大手インフラ系企業 | 管理会計 | 600万円 |
転職後 | 大手金融企業 | 管理会計 | 850万円 |
Bさん(20代後半/男性)は大手インフラ系企業に新卒入社し、経営企画部門で管理会計を手がけていました。しかし、その企業ではジョブローテーションにより管理部門以外も含む他部門に異動することが慣例で、スペシャリストとしてのキャリアが形成しにくい環境でした。経営企画部門の仕事にやりがいを感じていて管理会計分野でのキャリアを極めていきたいと考えたBさんは、これを機会に転職を決意。さまざまなビジネスに投資をしていて経営企画部門の強化を図っている大手金融企業に採用されました。
もともと一般的な相場より年収が高かったBさんですが、転職先企業はさらに年収水準が高く、250万円アップを果たしました。
20代経理転職ならJAC
JACでは、中長期視点でのキャリアのご提案を大切にしています。20代の方々は異業種・異職種への転職も含め、さまざまなチャンスや可能性があるといえます。だからこそ、JACのコンサルタントは転職希望者の現状とマーケットの状況を照らし合わせ、将来のキャリアに向けて今どのような選択をするのがベターなのかを考えます。そのため、ときには「今は現職にとどまる方が得策です」とお伝えすることもあります。
転職を決断された場合には、今後のキャリアプランを踏まえ、必要な経験を積める求人の選択肢をご提案します。JACのコンサルタントは、企業との対話を通じて募集の背景や求める人物像をつかんでいますので、その情報をもとに適切な面接対策のアドバイスもいたします。
今すぐ転職を考えていなくても、お気軽にご相談ください。
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