CPO(最高製品責任者)とはどんな役職?役割・必要な能力や導入事例を解説

公開日:2025/01/28 / 最終更新日: 2025/02/12

「CPO(最高製品責任者)ポジションに興味があるけど自分に適しているかわからない…」という方もいるのではないでしょうか。本記事では、CPOポジションの役割・必要な能力・経験や導入事例などを解説します。

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本章では、CPOの特徴や役割、混同しやすい「VPoP」「CTO」との違い、CPOと略されるほかのCxO役職について解説します。

CPOは「Chief Product Officer」の略称であり、日本語では「最高製品責任者」または「最高プロダクト責任者」と訳されます。
企業における製品戦略の最高責任者として、製品の企画や開発、市場導入、さらには顧客体験の最適化などの業務や施策を推進・統括します。具体的には、市場調査や顧客ニーズの分析に基づいた製品戦略の策定、製品ロードマップの作成と管理、製品開発チームのマネジメント、製品のKPI設定と分析、そしてステークホルダーとのコミュニケーションなど、多岐にわたる業務を遂行します。

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CPOとVPoP(Vice President of Product)は、どちらも製品に関する責任者ですが、両者には役割と責任の範囲に大きな違いがあります。
VPoPは通常、特定の製品ラインや部門を管理し、CPOの指示のもと戦略的な製品開発やチーム運営を担います。一方、CPOは、企業全体の製品戦略を策定する最高責任者であり、全製品ラインにまたがるビジョンや方向性を設定します。

CPOと混同されやすい役職として、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)が挙げられます。どちらも製品開発に関わる点で共通していますが、職務の領域が異なります。
CTOは主に技術戦略に特化し、新技術の導入や研究開発(R&D)を通じて、製品の技術的な基盤を築きます。一方で、CPOは顧客ニーズや市場動向に基づき、製品の企画や戦略の立案を主導します。

CPOという略称は、「最高製品責任者(Chief Product Officer)」以外にも、以下の役職を指す場合があります。

■Chief Privacy Officer(最高個人情報保護責任者)
Chief Privacy Officer(最高個人情報保護責任者)とは、個人情報保護に関する最高責任者を指し、個人情報保護に関する戦略の策定や実施、監督などを担うポジションです。
具体的には、個人情報保護方針の策定や個人情報保護に関する法令・規制への対応、社内における個人情報保護教育の実施、個人情報漏えいなどのインシデント発生時の対応などを統括し、データガバナンスやコンプライアンスの徹底に努めます。


CPOという役職が求められるようになった背景には、次の3つの要因があると考えられます。

・企業が展開するプロダクトの多様化
・プロダクトライフサイクルの短期化
・ビジネスモデルの継続改善や事業転換の重要性向上

本章では、上記3つの要因について解説します。

CPOという役職が求められるようになった要因の一つとして、一企業が展開するプロダクトが多様化している点が挙げられます。顧客ニーズの多様化や技術革新の進展、そしてグローバル市場への進出などを背景に、多くの企業では複数のプロダクトやサービスを同時に展開する戦略を取るようになりました。

一方で、企業成長を実現するためには、各プロダクトが独立して事業を展開するのではなく、企業全体の戦略と整合性を保ちながら、互いにシナジーを生み出していくことが不可欠です。しかし、プロダクトの多様化が進むと、各プロダクトの責任者だけでは全体最適を見出しにくくなってしまいます。
そこで、全てのプロダクトを俯瞰し、全プロダクトの統一的なビジョンや戦略を立案・実行するCPOが求められるようになりました。

テクノロジーの進化や市場競争の激化により、製品のライフサイクルが短期化していることも、CPOが必要視されるようになった要因の一つといえるでしょう。技術革新のスピードが加速する現代において、企業は既存製品の迅速な改良や新製品の市場投入を求められるようになりました。

CPOは、そんな市場動向や技術トレンドを常に把握し、素早い意思決定を行うことで、短期化するプロダクトライフサイクルに対応します。また、市場投入までの期間を短縮するための開発プロセスの改善や市場投入後の敏速なフィードバック収集体制を確立することも、CPOの役割に含まれます。
このようにプロダクトライフサイクルが短期化する中、迅速な市場対応が求められるようになるのと同時に、その中心的な役割を担うCPOの重要性も高まることとなりました。

ビジネスモデルの継続改善や事業転換の重要性が向上したことも、CPOが求められるようになった一因だと考えられます。
CPOは、単に製品を開発するだけでなく、市場変化を的確に捉え、新しいビジネスモデルや事業機会を探索することで、企業の持続的な成長を実現します。また、既存のプロダクトを改善し、新しい市場ニーズに最適化する役割も担います。

市場環境の変化や技術革新の進展にともない、企業はビジネスモデルの継続的な改善や大胆な事業転換を迫られることも増えました。しかし、CPOが市場や技術動向を分析し、適切な戦略を立案・実行することで、企業はリスクを最小限に抑えながら、事業成長を促進できるようになるでしょう。


本章ではCPOが担う、次の4つの役割について解説します。

・経営戦略に基づくプロダクト戦略・ロードマップの策定
・マルチプロダクトのポートフォリオ管理
・プロダクトの企画・開発・収益化
・持続的なプロダクトの改善

CPOが担う役割として、経営戦略に基づくプロダクト戦略やロードマップの策定が挙げられます。
企業の成長を支える製品やサービスを市場に展開するためには、経営陣が描くビジョンを具体的なプロダクト戦略に落とし込むことが不可欠です。
具体的には、市場調査や顧客ニーズの分析を行い、競合状況や技術動向を把握した上で、企業の強みやリソースを最大限に活用できるプロダクト戦略を策定します。また、策定された戦略に基づき、製品開発計画であるロードマップを作成し、開発スケジュールの策定やリソース配分などにも取り組みます。
CPOが作成したロードマップは、開発チームだけでなく、マーケティングや営業、カスタマーサポートなど、関連する全ての部門と共有されるため、企業全体の方向性を一致させることに貢献し、連携を円滑に進めるための基盤となるでしょう。

複数のプロダクトを展開する企業では、CPOは各プロダクトが最大限のシナジーを生み出せるよう管理しなければなりません。
例えば、成長期にある製品に多くのリソースを投じる一方で、成熟期にある製品については効率性を重視した戦略を考案するなど、各製品のライフサイクルに応じた対応が求められます。また異なるプロダクト間でデータ連携を行い、顧客体験を向上させたり、複数のプロダクトを組み合わせた新しいサービスを開発したりして顧客のロイヤルティ向上や新規顧客の獲得につなげることも、CPOの役割に含まれます。

プロダクトの企画・開発・収益化も、CPOが担う役割の一つです。
企画段階では、現場調査や顧客からのフィードバックに基づき、新しいプロダクトのアイデアを創出します。その後、開発チームと連携しながら、顧客の期待を超える製品製造に努めます。また、製品が市場に投入された後は、販売戦略や価格設定、プロモーション活動を通じて収益の最大化や顧客満足度向上に取り組みます。
このように、CPOは製品のライフサイクル全体を通じて、顧客価値の最大化と企業収益の向上に貢献します。

CPOは、市場に投入されたプロダクトの持続的な改善にも関与します。
市場環境や顧客ニーズが常時変化する中、企業の競争優位性を保つためには製品を持続的に改良し続けることが不可欠です。そのため、CPOは顧客からのフィードバックや市場データの分析をもとに、既存製品の改良に取り組みます。
また、マーケティングや営業部門とも協力しながら、自社の製品やサービスが、市場での競争力を維持するための戦略を立案・実行することもあるでしょう。このように、CPOが持続的なプロダクトの改善を推進することで、企業は市場の変化に柔軟に対応し、競争力を高めながらも成長を維持することができます。


CPOには、主に次のような能力や経験が求められます。

・短期・中長期両軸での戦略立案力
・経営陣との折衝力・プレゼンテーション力
・PMF分析スキル
・PdMとして継続的に成果を出した経験

本章では、上記4つの能力・経験について、なぜCPOにその能力や経験が求められるのか解説します。

CPOには、短期的な視点と中長期的な視点の両方を持ち合わせた戦略立案力が求められます。
その理由として、企業の事業活動は、短期的な収益目標を達成しつつ、中長期的な成長基盤の構築を同時に推進する必要があるからです。
短期的な戦略においては、現在の市場ニーズや顧客の課題を的確に捉え、迅速に製品の改善や新機能の追加などを行う必要があるでしょう。一方、中長期的な戦略においては、次世代の技術や市場トレンドを見据えた製品戦略を策定しなければなりません。
短期と中長期の両軸の視点を持つことで、CPOは短期的な成果を上げながらも、企業の中長期的な競争優位性を確立できるでしょう。

経営陣に対して製品戦略を説明し、承認を得るための高い折衝力とプレゼンテーション力も、CPOにとって不可欠な能力です。なぜなら、製品戦略は企業の経営戦略と密接に関連しており、経営陣の理解と支持を得ることはCPO業務の推進において必須になるからです。
そのためCPOには、客観的なデータに基づき、論理的かつ明確に製品戦略を説明する能力や経営層の意見を柔軟に取り入れ、製品戦略に反映させるための調整力も求められるでしょう。

PMF(Product-Market Fit:製品と市場の適合性)達成の成否は、プロダクトの成功に大きな影響を与えるため、CPOは正しい知見のもと、正確にPMFを分析し、状況の把握に努めなければなりません。また、PMFが達成されていない場合は、製品の方向性を見直したり、ターゲットを変更したり、マーケティング戦略を修正したりするなど、必要に応じて適切な対応策を講じなければならないこともあるでしょう。

CPOには、PdM(Product Manager:プロダクトマネージャー)として継続的に成果を出してきた経験が求められます。なぜなら、CPOの役割は単に戦略を立案するだけでなく、実行責任も負っており、現場の状況を理解し、チームで成果を創出することも求められるからです。
「市場投入までの期間を短縮した」「開発コストを削減した」「顧客からの評価を大幅に向上させた」などの経験は、CPOに必要なスキルや経験を持ち合わせている旨を対外的に示せるでしょう。


ここでは、CPOの導入事例として、次の3社の事例を紹介します。

・株式会社タイミー
・株式会社メルカリ
・デジタル庁

株式会社タイミーは、サービスの急成長にともない、プロダクト開発体制の強化が急務となっていました。これまでCPOのポジションは不在であり、代表取締役の小川嶺氏が兼任していましたが、サービスの規模拡大にともない、テクノロジーへの深い理解を持ち、プロダクトの可能性を信じて描ける人物にCPOを託したいという思いから、山口徹氏をCPOに任命しました。

CPOに山口氏を登用した理由は、同氏が持つ深い技術的知見と豊富なプロダクト開発経験が、タイミーの目指すミッションの実現において不可欠と判断されたためです。CPOに就任した山口氏は、「タイミー」がスキマバイトの枠を越え、社会課題の解決に不可欠なサービスに進化する可能性を秘めていると捉えており、タイミーのミッション・ビジョンを実現していくには、多くのプロダクト課題に向き合い、最適なソリューションをタイムリーに市場に投入していくことが必要であると述べています。

山口氏は、2003年にエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、ガイアックス、サイボウズ・ラボ、ディー・エヌ・エーでの経験を経て、ベルフェイスでCTO兼CPO、取締役執行役員を歴任しました。
多岐にわたる経験から、山口氏はエンジニアとしてのバックグラウンドに加え、事業責任者としての経験も豊富であり、技術とビジネスの両方の視点からプロダクト戦略を立案・実行できる能力を有していることがわかります。

参考:株式会社タイミー

株式会社メルカリは、マーケットプレイスの顧客体験をアップデートすることを重要な経営課題と捉えており、顧客中心の革新を目指し、CPOとして篠原孝明氏を任命しました。
CPOの設置は、顧客体験を根本的に再構築し、単なる売買プラットフォームとしての価値を超えた「つながり」や「発見」の場を提供することを目的としています。また、数値目標だけでなく、「お客さまにこういう体験を提供する」といった定性的なゴールを3年先まで策定し、達成のために複数の施策も推進しています。

CPOを務める篠原氏は、マーケットプレイスの顧客体験をアップデートするために、大きく3つの顧客体験を掲げ、メルカリがユーザーにとって単なる取引の場ではなく、よりエンゲージメントの高いプラットフォームになることを目指しています。

篠原氏は、18歳でフリーランスのWebディレクターとしてキャリアを開始して以降、グリーやビズリーチでの経験を通じて多様なプロダクトでマネジメントスキルを磨きました。その後、2017年に株式会社メルカリに入社し、Director/Head of CREを務めた後、株式会社メルペイへの異動、株式会社ソウゾウの設立とHead of Product就任、執行役員不正対策日本統括などを経て、2022年7月にメルカリの執行役員CPOに就任しました。

参考:株式会社メルカリ

デジタル庁がCPOを設置した背景には、行政サービスのデジタル化の遅れと、デジタル化を加速するためのプロダクトマネジメントの重要性が示唆されていることにありました。これまで行政や地方自治体では、システム開発が「調達」という形で外部に依存し、サービス設計における一貫性やスピードに欠けるという課題が指摘されてきました。このような状況を打破し、日本の行政サービスをプロダクトとして再定義するため、デジタル庁はCPOポジションを新設し、初代CPOとして水島壮太氏を任命しました。

水島氏は、民間企業で培ってきたプロダクト開発の知見を行政に持ち込み、デジタル庁が掲げるスローガン「Government as a Startup」を実践していくことを目標に掲げています。特に、顧客の課題解決を重視するカルチャーの醸成や技術・データ・システムへの高い解像度を持った意思決定、アジャイル開発プロセスの導入などを通じて、行政サービスの質を向上させることを目指しています。

水島氏は、新卒で日本IBMに入社後、アーキテクトとして金融系システム開発などを経験しています。その後、DeNAに転職し、ソーシャルゲームプラットフォームのグローバル技術コンサルティング部門の立ち上げやBaaSの開発・展開に携わりました。さらに、買収した子会社では女性向けメディアのアプリ開発を主導するなど、幅広い分野で技術とプロダクト開発の経験を積んでいることがわかります。
また、2017年10月からは、ラクスル株式会社で上級執行役員CPOとして開発組織を指揮し、事業の成長に大きく貢献しました。日本CPO協会の理事も務めており、プロダクトマネジメントの普及にも尽力しています。

参考:デジタル庁


CPOは、企業の製品戦略を統括する重要なポジションであり、相応の経験と高度な能力が求められます。そのため、CPOとしての経験がない状態でいきなりCPOポジションに就くことは極めて難しいといえるでしょう。CPOを目指すには、製品開発や市場分析、ビジネス戦略など、幅広い分野の知識と経験を段階的に積み重ねていくことが不可欠です。

現職でCPOを目指す場合は、まずPdMに就き、製品開発に関する実践的な知識とスキルを習得しましょう。その後、シニアPdMやプロダクトディレクターなど、より上位のポジションに就き、複数のプロダクトやチームを統括する経験を積みます。そして経営戦略に基づいた製品戦略の立案や予算配分、リソース管理などを経験し、CPOに必要な経営感覚を身に付けましょう。

転職でCPOを目指す場合は、現職でPdMとしての実績を十分に積み上げ、自身の市場価値を高めることがポイントです。特に、担当した製品の市場シェア拡大や売上増加、顧客満足度向上などの成果創出に寄与した経験は、転職市場で評価されることもあるでしょう。一定の経験を積んだ後は、CPO候補、あるいはVP of Product(製品担当副社長)など、CPOに近いポジションへの転職を目指すことが現実的です。CPOをはじめとするエグゼクティブポジションは、企業の重要な経営戦略に関わるため、非公開で採用が進められるケースが大半です。そのため、転職活動では、エグゼクティブ向けの求人を豊富に取り扱う転職エージェントを活用することをお勧めします。

CPOになるにあたって必要な資格はありませんが、MBA(経営学修士)など経営に関する学位や、PMP(Project Management Professional)などのプロジェクトマネジメントに関する資格を取得していると、転職活動時に評価されることもあるでしょう。

CPOとしての経験を積んだ後は、より規模の大きい企業やグローバル企業のCPO、あるいはCEO(最高経営責任者)などの上位ポジションを目指すキャリアパスが考えられます。また、CPO時代に培ってきた知見を生かし、独立して起業したり、コンサルタントとして活躍したりする道もあります。

  • CEOとは?転職動向や転職事例、求められる実績などを解説

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。