CLO(最高法務責任者)とはどんな役職?役割・必要な能力や導入事例を解説

公開日:2025/01/27 / 最終更新日: 2025/02/12

「CLO(最高法務責任者)ポジションに興味があるけど自分に適しているかわからない…」という方もいるのではないでしょうか。 本記事では、CLOポジションの役割・必要な能力・経験や導入事例などを解説します。

 

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本章では、CLOの役割と、混同されやすい顧問弁護士やインハウスローヤーとの違い、さらには「CLO」という略称が用いられるほかのCxO職について解説します。

CLOとは「Chief Legal Officer」の略称であり、日本語では「最高法務責任者」と訳されます。CLOは、企業における法務部門の最高責任者として、企業活動に関わる法務業務全般を統括します。
また、「GC(ゼネラル・カウンセル)」と称されることもあり、特に米国においては、企業内弁護士の最高責任者を指し、CLOとほぼ同義として扱われます。
CLO(GC)は、法律の専門家として、経営陣に法的観点からアドバイスを提供し、CEOの意思決定を支援します。

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CLOと混同されやすい存在として、顧問弁護士とインハウスローヤーが挙げられます。

一般的に顧問弁護士とは、外部の弁護士事務所に所属し、クライアント企業に対して法的助言を提供します。企業内部に常駐せず、必要に応じて案件ごとに助言や代理業務を行う点が特徴であり、企業内の法的なリスクの管理に携わるというよりも、外部の法的専門家として企業の事業活動を支援します。
一方、インハウスローヤーは、企業に雇用されている弁護士を指し、日常的に企業の法務業務に従事します。インハウスローヤーは、契約書の作成や法的リスクの評価、訴訟対応などを担当しますが、CLOのように経営戦略と連動した法務戦略を主導する立場ではありません。

その点CLOは、企業の経営陣の一員として法務部門全体を統括する立場にあるため、単なる法務業務の管理や法的助言の提供にとどまらず、経営者視点で企業の成長に寄与する法務戦略を推進します。

「CLO」という略称は、「最高法務責任者(Chief Legal Officer)」以外にも「Chief Learning Officer(最高人材育成責任者/最高学習責任者)」を指すことがあります。
Chief Learning Officer(最高人材育成責任者/最高学習責任者)とは、従業員の能力開発や人材育成を統括する役職であり、企業の競争力を高めることを目的に研修プログラムの開発・実施や人材育成制度の設計などを推進します。
市場環境が急速に移り変わる昨今において、自社の競争力を維持するために従業員のスキルアップや能力開発に注力する企業が増えています。このような背景から、Chief Learning Officer(最高人材育成責任者/最高学習責任者)への注目も高まりつつあるといわれています。


本章では、CLOが求められる背景について、次の2つの観点から解説します。

・コンプライアンス意識の高まり
・企業法務部門におけるミッションの変化

グローバル化やデジタル化の進展により、日本国内でもコンプライアンスに対する意識が高まりつつあります。コンプライアンス意識が高まる中、万が一不祥事が発生した場合、企業は社会的信用の失墜や株価の下落、訴訟リスクの増大など、甚大な損害を受けるでしょう。
そのため、企業はコンプライアンス違反が発生する前に法的な課題を特定し、リスクを最小化する施策を講じる体制構築が求められるようになりました。
このように、コンプライアンス意識の高まりにともない、法的リスク管理の重要性が注目されるようになったことを理由に、多くの企業がCLOを求めるようになったと考えられます。

企業の法務部門におけるミッションが変化している点も、CLOが企業に求められるようになった一因です。
かつての法務部門は、契約書の審査や法律相談など、事後的な対応が中心でした。しかし、グローバル経済の進展やビジネス環境の複雑化にともない、法的な知見を生かして事業革新を支援するなど、企業成長を支える部門へと求められるミッションが変化しつつあります。
この変化に追随するように、法務部門を統括するCLOの必要性も高まりました。


本章では、CLOが担う、次の5つの主な役割について解説します。

・経営戦略を法的に支援し企業価値を向上させる(戦略法務)
・コーポレートガバナンスの強化を経営者に提言
・法的リスクの予防・法的トラブルへの対応
・法規制・法改正への対応
・リーガルテックの導入・活用に向けた制度づくり

CLOは、経営戦略に法的観点を組み込むことで、企業の競争力を高める役割を担います。
例えば、新規事業の立ち上げやM&A、海外進出などの経営における重要な局面において、法的リスクを事前に分析し、適切な対応策を提案することで、事業の成功に貢献します。また、知的財産戦略や契約戦略、訴訟戦略など、法務に関連するさまざまな戦略の立案や実行を通して、企業価値の向上に寄与する取り組みを実施することもあるでしょう

コーポレートガバナンスの強化を経営者に提言し、企業の経営品質を高めるのもCLOの役割の一つです。
コーポレートガバナンスとは、企業が健全な経営を行うための仕組みであり、法令遵守や倫理観の確立、情報開示を通じた透明性の担保などが含まれます。
CLOは、法的観点からコーポレートガバナンスの現状を評価し、改善点があれば経営者に提言することで、企業の健全な経営を支えます。ときには、株主総会の運営や情報開示に関する法務アドバイスも行い、株主をはじめとするステークホルダーとの良好な関係構築に貢献することもあるでしょう。

CLOは、企業が直面する可能性のある法的リスクを予防し、万が一、法的トラブルが発生した場合には適切な対処を行います。法的リスクの予防にあたっては、契約書の作成・審査や従業員へのコンプライアンス研修の実施、社内ルールの整備などを通じて、法的トラブルの発生を未然に防ぎます。また、法的トラブルが発生した際には、弁護士と連携しながら訴訟対応や紛争解決、和解交渉などを主導し、企業への影響を最小限に抑えます。
近年、データプライバシーやサイバーセキュリティ、知的財産侵害など、新たな法的リスクが増加しており、CLOには新たに登場したリスクにも適切に対応できる知見や経験が求められています。

CLOは、常に変化する法規制や法改正にも即座に対応しなければなりません。
CLOは常に最新の法規制情報の把握に努め、法規制・法改正が施行された際には、まず事業運営に与える影響を分析します。その上で新たな法規制への対応策を立案し、社内周知や研修などを通じて、社内の法規制や法改正への対応を主導します。

リーガルテックの導入や活用を推進する制度づくりもCLOの重要な役割の一つです。
リーガルテックとは、AIやクラウドなどの最新技術を活用した法務関連のサービスやソフトウェアのことを指します。CLOは、リーガルテックを活用し、法務業務の効率化や精度向上を図ります。
また、導入したリーガルテックが効果的に活用されるよう、社内ルールの整備や研修を実施するのもCLOの役割に含まれます。リーガルテックの導入は、法務業務の効率化や企業のコンプライアンス体制の強化、生産性の向上にも寄与するでしょう。


本章では、CLOに求められる、次の4つの能力や経験について解説します。

・企業法務の経験・コーポレートガバナンスへの深い知見
・経営者や顧問弁護士の意見に服さない意思決定力
・主体的に成果を出していくリーダーシップ
・経営・事業・組織に対するビジネス理解力

CLOには、幅広い企業法務に関する実務経験と、コーポレートガバナンスに対する深い知見が求められます。
その理由として、法務部門を統括する役割を果たすには、企業活動全般に関する深い理解が不可欠だからです。具体的には、知的財産管理や訴訟対応、M&Aなどの企業法務に関する実務経験が求められるでしょう。ときには、コーポレートガバナンス・コードや会社法などの関連法規制に関する知見が必要になることもあります。
CLOは、これらの経験と知見を基盤に、経営陣に対して適切な助言を行い、法務面から企業の持続的な成長を支えます。

CLOには、経営者や顧問弁護士の意見に盲従するのではなく、自身の専門知識と経験に基づき、適切な意思決定を促す力も求められます。
なぜなら、CLOは法律の専門家として、経営陣に対して法的観点からのアドバイスを行う役割を担っており、ときには経営陣の意向とは異なる意見を述べなければならない場面もあるからです。法的リスクが高いと判断される場合には、経営陣に対して明確に反対意見を述べ、代替案を提示する必要があるでしょう。
また、顧問弁護士の意見が必ずしも企業の利益に合致するとは限らないため、複数の専門家の意見を比較検討し、最適な判断を下す能力も必要です。

主体的に成果を創出していくリーダーシップもCLOに必要な素養です。
CLOは法務部門の最高責任者として、法務部門のメンバーを鼓舞し、モチベーションを高めながら、目標達成や課題解決に向けてチームを率いていかなければなりません。また、法的観点から企業の競争力強化を高める存在として、ほかの部門と連携し施策を主導することもあるでしょう。
このように、CLOには、いち経営者として企業全体の成果創出を牽引する立場にあるため、優れたリーダーシップ力が求められることを理解しておきましょう。

CLOは単なる法律の専門家ではなく、経営陣の一員として経営戦略に法的視点を反映させる役割を担っています。そのため、法的知識に加えて、経営や事業、組織運営に対する深い理解も不可欠です。
経営・事業・組織に関するビジネス観点の知見を有していると、法的リスクが事業にどのような影響を与えるのかを的確に評価できるようになります。例えば、営業部門や製造部門など、異なる部門のニーズを汲むことで、それぞれの業務に適した法務支援が可能になるでしょう。


ここでは、CLOの導入事例として、次の3社の事例を紹介します。

・株式会社LIFULL
・ソフトバンクグループ株式会社
・Airbnb

株式会社LIFULLは、2023年12月に代表取締役社長執行役員の交代を行い、第2創業期に突入しました。第2創業期では、「チーム経営」を掲げており、幹部クラスに新たなポジションを設置。権限委譲を進めることで、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる環境を整備し、持続的な成長を目指しています。
本人事戦略は、同社が掲げる「チーム経営」を強化することを目的としており、2024年4月付でCLOを新設し、平島亜里沙氏が就任しました。

CLOに就任した平島氏には、コンプライアンス・ガバナンス体制の維持向上を図り、リスクを回避・低減することに加え、ビジネスの伴走者・牽引者として事業を加速させる役割が期待されています。平島氏自身も「攻め」と「守り」の法務機能をバランスよく高め、CLOとしてより高い視点から活動の範囲を広げていくと述べており、事業推進を法務面から積極的に支援していく意向を示しています。

平島氏は2017年にLIFULLに入社後、まもなく法務部門のマネージャーに就き、以降会社の成長に寄与してきました。

参考:株式会社LIFULL

ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)は、国内外で多岐にわたる事業を展開するグローバル企業であり、複雑な法的課題に直面する機会も多々あります。
SBGでは、複雑化する事業環境や多様な国際取引に対応するため、法務部門の重要性が急速に高まっていました。同時に、グループ全体でのコンプライアンスと倫理的な行動の統一が求められる中、グローバルベースでのコンプライアンス体制を強化するため、2020年9月付でティム・マキ氏をグループ・コンプライアンス・オフィサー(以下「GCO」)に任命しました。

マキ氏の就任は、法務およびコンプライアンス分野での豊富な経験を生かし、SBGの多岐にわたる国際事業を支える体制をさらに強化するための戦略的な決断だったと推察されます。

マキ氏は、2018年11月より法務副統括としてSBG東京本社に参画し、東京のコンプライアンス部の部長やSoftBank Group Internationalの日本・APAC・インド地域のRegional General Counselを歴任しました。また、SBG参画前は、Paul Hastings LLPやMilbank LLPを含むグローバルローファームの弁護士として13年以上の勤務経験を有しています。マキ氏の経歴からは、国際的な法務実務経験とグローバル企業におけるコンプライアンス体制構築の知見を豊富に有していることが理解できます。

参考:ソフトバンクグループ株式会社

Airbnbは、2023年11月、ロン・クレイン氏をCLOとして迎え入れることを発表しました。同氏は、政府と民間セクターの双方で豊富な経験を持つ著名なリーダーであり、Airbnbのグローバルな持続的な成長と法務戦略を支える役割を担うと期待されています。

AirbnbのCEOであるブライアン・チェスキー氏は、クレイン氏を「大局的な戦略思考者であり、非常に熟練した実行者」と評し、「これまで出会った中で最も賢い人物の1人」だと述べています。さらに、その知性以上に「優れた判断力と寛大な心」で知られていると強調しており、単なる法律の専門家ではなく、経営陣の一員として企業全体に貢献できる人物であることを示唆しています。クレイン氏のCLO就任は、グローバルな事業展開に伴う複雑な法的課題への対応、そして企業の持続的な成長を法務面から支える一助となるでしょう。

ロン・クレイン氏は、政府と民間部門の両方で卓越したキャリアを築いてきました。バイデン政権下ではホワイトハウス首席補佐官を務めたほか、アル・ゴア副大統領の首席補佐官として史上最年少での任命を受けた経験を持ちます。さらに、法律事務所O’Melveny & Myersのパートナーとして複雑な訴訟案件を担当し、AOLの創設者であるスティーブ・ケースが設立したRevolution社のCLOを務めた経歴も有しています。

参考:Airbnb


本章では、CLOの最新転職・求人情報を紹介します。

非公開:グローバルを舞台に活躍する法務キャリア人材

※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年1月最新)

本章で紹介しているCLO求人は、JACが取り扱う求人の一部です。CLOをはじめとするエグゼクティブポジションの採用では、競合他社に事業戦略などの機密情報が洩れることを懸念視し、非公開で採用を進めるケースが大半です。そのためCLOに関する求人の紹介を希望する方は、JACなどエグゼクティブポジションの求人を豊富に取り扱う転職エージェントの利用をおすすめします。

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CLOは、企業の法務部門を統括し、法的リスク管理とコンプライアンス体制の構築、さらには経営戦略への法的支援を通じて企業価値向上に貢献する重要なポジションです。そのため、未経験からいきなりCLOのポジションに就くことは難易度が高く、段階的なキャリア形成を通して、必要な知識や経験、スキルを身に付けていくことが不可欠です。

またCLOを目指すにあたっては、法務に関する豊富な専門知識と多岐にわたる実務経験が必須条件です。弁護士資格取得後はインハウスローヤーや企業法務を専門とする弁護士として実務経験を積みましょう。その後、管理職のポジションを経験し、マネジメント力を培います。さらに「リーガルヘッド」などの役職に就き、CLOに必要な経営視点を養っていきましょう。
転職でCLOを目指す場合は、まず現職で実績とスキルを十分に積み上げることが大切です。そして法務部長や法務担当役員など、CLOに近いポジションへの転職を目指しましょう。CLO関連のポジションは、企業の重要な戦略や機密情報に関わるため、非公開で採用が進められるケースが大半です。そのため、転職活動では、エグゼクティブ向けの求人を豊富に取り扱う転職エージェントを活用しましょう。

CLOを目指す場合、弁護士資格が必須になるケースが大半です。また、国際的な法務業務に携わる場合は、海外の弁護士資格や国際法に関する知識が強みとなるでしょう。

CLOとしての経験を積んだ後は、経営全般を統括するCOO(最高執行責任者)や企業全体の意思決定を担うCEO(最高経営責任者)への昇進、より規模の大きい企業のCLOに転職するなどのキャリアパス例があります。さらに、法務に関する専門知識や経験を生かして独立し、法務コンサルタントとして活躍する道も開けるでしょう。

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


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