SREエンジニアの転職事情|難易度や成功のポイントとは

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公開日:2023/12/08 / 最終更新日: 2024/10/21

信頼性の高い本番環境システムを構築・維持するSREエンジニア(サイト信頼性エンジニアリング・エンジニア)を採用する企業が近年増加しています。SREエンジニアはIT業界だけでなく、金融やエンターテイメント、製造業や小売など、デジタルが関わる業界であれば欠かせない存在となりつつあります。

転職市場でも注目が高まるSREエンジニアの転職市場動向について、JAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが解説します。

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SREエンジニアとは


SREとはSite Reliability Engineering(サイト信頼性エンジニアリング)を略した言葉で、サービスやプロダクトの信頼性を高めるとともに、運用の自動化・効率化を担うエンジニアを指します。

SREはGoogleが提唱したシステム運用の方法論で、サイトの信頼性向上のために、自動化や障害対応、パフォーマンス管理、可用性担保などを通じて、企業の収益やブランドを支える役割を担います。

DevOps(デブオプス※)エンジニアと混同するケースもありますが、DevOpsが開発エンジニアと運用エンジニアが連携することで開発からリリースまでのサイクルを短縮化することを目的としているのに対し、SREはDevOpsの目的を実現するための環境整備を目的としています。

※DevOps : 開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた造語

SREエンジニアの業務内容


SREの業務は主に4点に集約されますが、企業によって重点を置くポイントは異なります。また、中途採用者にすべての経験・スキルを求める企業もあれば、一部のみを求める企業もあります。

信頼性の保証

SLO評価・監視ツールの導入・運用

SLO(Service Level Objective : サービスレベル指標)とは、サーバーやネットワークのパフォーマンスに求められる数値目標です。

たとえば、DAU(Daily Active Users : 一日あたりのアクティブユーザー数)や、ユーザーが正常にアクセスした場合の結果表示にかかる時間などに一定の基準を設け、監視ツールを活用してモニタリングすることです。

コンテナの導入・運用によるサービス停止時間の短縮

コンテナとは、アプリケーションと実行環境(OS、ハードウェア、ミドルウェア)を集約した仮想化技術です。複数のアプリケーションを集約することで、メンテナンス作業時のサービス停止時間や影響範囲を最小限に抑えるメリットがあります。

事業が成長するに連れてサービスも複雑化するため、障害対応やデプロイ対応に要する時間を短縮するニーズも高まります。

作業の自動化

CI/CDの導入・運用によるリリースの自動化

CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery : 継続的インテグレーション/継続的デリバリー)とは、ソフトウエアの変更を常時検証し、本番環境に自動で適用できる状態にする開発手法を指します。

CI/CDの導入には、テストコスト削減や人的ミスの回避など、さまざまなメリットがあります。

多くの企業が市場の環境変化に素早く対応できるアジャイル型の開発体制を目指す中では欠かせない施策の一つです。

IaCの導入・運用によるインフラの高度化

IaC(Infrastructure as Code)とは、サーバーなどのインフラ環境をクラウドサービスに移行することで、オンプレミス運用ではエンジニアが手作業で行っていたインフラの設定や管理作業を、ツールやAPIを駆使してコードによって管理運用することです。

IaC導入のメリットとしては、デプロイの高速化やヒューマンエラーの削減、ドキュメンテーションの自動化があげられます。

SREエンジニアの転職市場動向


SREエンジニアの需要は、DXなどの変革と連動して高まる傾向にあります。

数年前、金融業界におけるフィンテックの波やオンライン化へシフトする時期や、ゲーム業界におけるオンライン決済やセキュリティ対策強化のタイミングなどの時期に、SREエンジニアの需要が急速に高まりました。

最近は、キャッシュレス決済や商品の需要予測、顧客ID・ポイント活用などのDXが進む小売業界や、生産ラインのIoT化や基幹システムの刷新が進む製造業、需給予測シミュレーションや設備運用のAI活用が進むエネルギー業界など、幅広い業界で採用が活発化しています。

SREエンジニアの需要が高い業界を大きく3つに分類すると、以下になります。

1. DXを推進する非IT業界
2. ウェブ系のプラットフォーマーやSaaS企業
3. 1と2を後方支援するSIer

今後もさまざまな業界でDXが進むことが想定されるため、SREエンジニアの需要は伸びると考えられます。求められるスキルや条件によっては異業界への転職も可能であり、デジタル化する社会基盤を支えるエンジニアとして活躍の場は広がっていくでしょう。


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SREエンジニアに求められるスキル


SREエンジニアとして転職するには、業界を問わずクラウドエンジニアとしての知識が求められます。

特にAWS(Amazon Web Service)、GCP(Google Cloud Platform)の設計から、構築、運用までの経験が必須となるケースが多いです。

その一方、オンプレミスの運用・構築経験はあまり重視されません。あくまでもインフラの高度化に対して、アプリケーションかインフラの運用・構築経験のどちらかで貢献したことを問われる傾向があります。

また、求人は、アーキテクチャの設計やWebアプリケーション開発における要件定義から運用までの経験と、クラウドインフラ上でのデータベースやアプリケーションの要件定義から運用までの経験に二極化しています。

加えて、業務で使用経験のあるツールが重視される点もSREエンジニアならではの特徴です。同じジャンルのツールであっても、募集企業が採用していないツールや、業界内でメジャーではないツールしか経験がない場合には、転職活動において不利になるケースもあります。

たとえば、クラウドサーバーの立ち上げ・運用ではAWS、GCPいずれかの経験が重視されますが、Azureは他のツールとの相性や親和性がやや低いことから評価につながらない場合もあります。

その上でこれまでの業務経験も問われるため、職務経歴書では使用経験のあるツールと対応業務を具体的に記載することをおすすめします。

以下に、SREエンジニアとして転職するうえで企業が高評価するツールや実務経験を業務別に記載します。

パブリッククラウド上でのWEBアプリケーションの構築・開発〜運用経験

・AWS(Amazon Web Services)、GCP(Google Cloud Platform)の使用経験
・Linuxサーバーの運用経験があり、シェルスクリプトが書けること
・ハードウェアの知見

SLO評価・ログ監視ツールの導入・運用

Zabbix, Terraformの使用経験

コンテナ導入・運用経験

・Kubernetes、Dockerの使用経験
※なかでもKubernetesの使用経験を必須としている企業も多く、GCPとの親和性も高いため、高度な経験をお持ちの方は企業からの評価も高くなります。

CI/CDの導入・運用によるリリースの自動化

Jenkins、GitLabの使用経験、 CI/CDの経験

IaCの導入・運用によるインフラの高度化

Terraform,Ansibleの使用経験

この他にセキュリティに関する知見を求められるケースもありますが、大半は入社後のキャッチアップからでもカバーできます。また、直接的な技術スキルではありませんが、PM(Project Manager)としての経験やステークホルダーとの折衝経験が重視される場合もあります。
事業会社であれば社内の事業部門、SIerなどの受託サイドでは顧客との折衝が日常的にあります。転職活動の際は、スキル面の整理だけでなく、どのようなステークホルダーとやりとりしていたかについても説明できるように準備しましょう。

SREエンジニアとして転職する際におすすめの資格


資格取得は特定の技術やスキルを証明できるため、転職においても効果的です。SREエンジニアに関連する資格としては以下があげられます。

●クラウドサービスの認定資格(AWS・GCP)
●Certified Kubernetes Administrator
●Cisco Certified DevNet Associate認定  
●EXIN DevOps Professional
●LinuC          

このなかでも、AWS・GCPはクラウドサービスの中でも市場占有率が高く、サービスに関する一定以上の知識や経験を問われる求人が多いです。そのため、AWS・GCP関連の資格はSREエンジニアとして必須ともいえます。これからSREエンジニアとして転職を目指す場合には、取得するようにしましょう。

その他の資格は業務との関連性によっては評価されるケースがあります。ご自分のキャリアの幅を広げたい場合には、資格を取得することも有効です。

 SREエンジニアのキャリアパス


SREエンジニアのキャリアパスは大きく3つに分類されます。

まず、スペシャリストとして専門性を突き詰めるコースがあげられます。エンジニアとしての経験を積み技術力を高めることで、リードSREエンジニアとして活躍することが考えられます。また、エバンジェリストとして対外的な活動にも幅を広げることができるでしょう。

また、マネジメントに進むコースとして、エンジニア組織のマネジメントと採用活動を担うEM(エンジニアリングマネージャー)や、技術部門全体のマネージメントを担うVPoEやCTOへとステップアップするケースもあります。それぞれ、組織マネジメントや経営、人事など、技術だけではない経験や能力が必要になりますので、少しずつでもそれ必要な考え方や見識を深めるとよいでしょう。

最後に、事業会社ではなくSIerやコンサルティングファームで、クライアントワークとしてさまざまなプロジェクトに携わるケースもあります。プロジェクトマネジメントやコンサルティングといった能力は、SREを組織に浸透させる上でも非常に有効なスキルです。組織をリードする能力を身につけてから、事業会社でマネジメント職に転職するケースもあります。

SREエンジニアの年収相場


SREエンジニアとしての実務経験がない状態からの転職の場合、初年度の年収は500〜800万円、実務経験がある場合には700〜1100万円が目安となります。

一方、以下のような経験をお持ちの場合は最大で1,500万円程度まで年収アップが見込めます。

●PM(プロジェクトマネージャー)
●アーキテクチャ設計や要件定義などの上流工程に関連する業務
●顧客との折衝経験
●ラインマネジメント

いずれの場合においても、入社後のパフォーマンスに応じて年収は上がります。不足している経験や技術は補い、常にスキルの向上に努めましょう。

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SREエンジニアとして転職する際は、企業がどのような人材を求めているのか、どのような経験を持つSREエンジニアが社内に不足しているのかをリサーチすることが重要です。JACではエンジニアの採用に特化したコンサルタントが、日々の情報収集を通じて、あなたにふさわしい求人のみをご紹介しています。転職をご検討の際には、ぜひJACにご相談ください。


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この記事を監修した転職コンサルタント

中野

中野

デジタルテクノロジーディビジョン先端DXチーム プリンシパルコンサルタント


2021年JACRecruitmentに入社し、DXを軸に非IT事業会社、WEB企業、SaaS企業、システムインテグレーター、コンサルティングファームを担当。「人生のドライバーとなる転職」をモットーに、業務にしばられないキャリア提案を行う。DXに関わる幅広い職種において30代から50代、メンバークラスから役員クラスのご支援まで幅広く実績あり。前職より一貫してIT職種の転職支援に従事しており、ご支援させていただいた方の総数は200名を超えます。