東海エリアのIT業界・デジタル人材の転職市場動向

  1. 転職マーケット情報×名古屋(愛知)

公開日:2022/06/03 / 最終更新日: 2024/09/27

愛知、岐阜、三重の三県からなる東海エリアは自動車産業を中心とした製造業を基盤に発展してきました。その製造業のデジタル化を下支えする役割であるIT産業の規模も大きく、関東、関西に次ぐ経済圏として企業が集積しています。

現在、その東海圏では製造業のデジタル化・DX(デジタル・トランスフォーメーション)という大きな変革期の真っ只中にあり、慢性的なIT人材不足が課題となっています。しかし見方を変えれば、転職においては圧倒的な売り手市場であり、全国的に見ても東海圏はIT人材の転職がしやすい状況であるといえます。

そこで今回は、東海エリアの転職に強いJAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが、東海圏のIT・デジタル人材の転職動向について解説いたします。

東海圏のIT・デジタル業界の動向


東海圏は製造業が基幹産業であり、完成車メーカーであるトヨタ自動車、三菱自動車を頂点とする裾野産業の構造で知られています。両社に部品を納めるTier1、Tier2メーカーを中心としたサプライヤー企業群を中心に発展してきました。IT業界においても東海圏は製造業向けの色合いが強く、全国区の大手SIerやITベンダーだけでなく、大手メーカー子会社のITベンダーが多いことも特徴です。

外資系企業の進出も近年は著しく、コンサルティングファームやSaaSベンダーが東海圏の製造業マーケットを開拓するべく、この数年で続々と東海拠点を立ち上げています。

活況な背景にあるのは製造業のデジタル化の波です。自動車業界はカーボンニュートラルやEVシフトなど業界の変革期の真っ只中にあり、国際的な競争力向上も見据えたデジタル化を急いでいます。

DXによる構造改革を果たせない場合、2025年以降に日本全体で最大で年間12兆円の経済損失を生む可能性があると経済産業省が発表した「2025年の崖」の問題もあり、大企業から中小企業に至るまでDXやデジタル化への投資が加熱しています。

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東海圏のIT・デジタル人材採用動向


SIerやITベンダーでは製造業の顧客対応に向けたコンサルタントやPM、SE、プログラマーの採用を進める一方で、彼らにプロジェクトを発注するメーカーも内製化を進めており、独自に採用を進めています。

事業会社の社内エンジニア

・大手企業 

ITインフラ基盤が整っている状況でDXを推進できる人材を求めています。一例を挙げると、AIによる不良検知システムや工場の稼働状況をグローバルで一元管理するシステムなど工場のDX化といった求人が出ています。

また、生産ラインで集めたデータを扱うデータサイエンティストも慢性的に不足しており、近年東海エリアでも採用が活発化しています。

・中小企業 

一方でITへの投資が遅れている中小企業では、情報システム部門の立ち上げを担うマネージメント人材の採用が急務です。社内のデジタル化に向けて何から手をつけていいかわからない経営層に対して中長期的なプランを提案でき、社内の取りまとめができるミドル層のIT人材の需要が高まっています。SIerでリーダークラス以上のPMやSEとして活躍されていた方が歓迎されています。

中小企業での管理職はプレイングマネージャーとしての役割を求められます。社内を取りまとめながらも、外部のベンダーと協力しながら基幹システムや生産管理システムをご自身で実装できる方であったり、製造業のバックグラウンドがあったり。要件定義ができ社内外の折衝に長けた方が求められる傾向にあります。

・シニア層の転職も歓迎 

経験豊富なシニア層の方々の需要も、堅調です。役職定年を迎える方が後進育成を期待されて中小企業に転職する例も増えています。役職定年による年収の大幅ダウンを最小限に留め、生涯年収をアップするという観点でも、大企業から中小企業への転職は大いにメリットがあります。

SIer/ITベンダー

・SIer

全国区の大手から地場の中小に至るまでSIerは慢性的な人材不足です。その中でもミドル層のマネージャークラスの採用が最も活況です。背景にはメーカーがIT部門を内製化する流れにあって、SIerから30代後半から40代の人材が転職していることが挙げられます。

新卒採用で若手は採用できているものの、顧客折衝やプロジェクト管理などの経験が不足している組織をマネージメントできる人材の採用は急務です。二次請け、三次請けの中小ITベンダーから大手への転職も珍しくありません。

・外資系企業を中心としたITベンダー

セールスの求人が増えています。特に東海圏は関東・関西と比較して圧倒的に人材が不足している状況です。それに加えて、最初の取引にこぎつけるまでが他地域よりも難しいという、東海圏の製造業ならではの特性も求人増に拍車をかけています。東海圏での営業職の経験があり、顧客となりうる企業との人脈を持った方であれば、前職がITベンダーでない場合も採用に至る可能性があります。

・大手のSaaS系ベンダー

地域によって求人の要件を変えることは、ほぼありません。しかし、当社のコンサルタントが企業の採用担当者に伺うと「東海圏のみ営業経験者であれば、IT業界外の方でも選考対象とします」と話すケースもあるほど、各社とも採用に苦戦しています。

・ITコンサルタント

セールス同様に求人数が多く、採用のハードルが他地域よりも若干下がっている傾向にあります。コンサルタントは未経験からの転職も多い職種ですが、SIerで上流工程を担っているSEの方がITコンサルタントへキャリアチェンジすることも珍しくありません。また大規模案件の上流工程での経験を豊富に持つ50代、60代のSEの方がコンサルタントにキャリアチェンジするケースもあります。

予算が億単位のプロジェクトのプロジェクトを束ねてきた方の希少価値は高く、コンサルタントとして製造業企業の大規模案件など業界を問わず即戦力として活躍できるキャリアパスがあります。


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東海圏のIT・デジタル業界のモデル年収


地場の中小企業を除けば地方都市圏の中でも首都圏に近い給与水準だといえます。これは製造業の給与水準が高いことが影響しており、中小企業から大手への転職を機に、年収が1.5倍以上アップするケースもあります。

主な求人における年代ごとのモデル年収は以下の通りです。

30代
事業会社社内SE 主任・係長クラス550〜750万円
事業会社ソフトウェア開発550〜750万円
事業会社データサイエンティスト550〜800万円
中小SIer SE400〜500万円
40代
事業会社社内SE 部課長候補700〜1,000万円
外資系大手ITベンダー技術職700〜1,000万円
50代
ITコンサルタント1,000〜1,200万円
中小事業会社IT部門管理職700〜950万円

当然ながら企業や個人によって異なりますので、あくまで目安としてください。


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東海圏へのUターン・Iターン・Jターンの動向


東海圏のデジタル人材が全体的に不足していることもあり、いずれの企業でもUターン・Iターン・Jターンによる転職を歓迎する傾向にあります。それは受け入れ側の企業だけでなく、自治体も同様です。多くの自治体では東海圏外からの移住支援制度を設けており、首都圏から転入した世帯に対し、特定の条件を満たせば60万円〜100万円を支給しています。

また大手から中小にいたるまで過半数の企業が最終面接までオンラインで実施しており、働きながらUIJターンによる転職活動もしやすい環境へとシフトしています。

ライフステージの変化や家族の事情で東海圏での転職を検討される場合は、東海圏に拠点を構える転職エージェントや自治体の移住制度をうまく活用するようにしましょう。


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転職を成功させるポイント


転職を有利に、かつ効率よく進めるにはご自身のキャリアを棚卸しすることが何よりも重要です。これまでの職務経歴を基に得意な領域や強み、仕事に対する指向性を整理することで、次の転職で実現したいことが自ずと整理され、決断するスピードも早くなります。

その上で特に企業に向けたアピールポイントとなる点を2点ご紹介します。

自発的な行動や主体性

いずれの職種においてもご自身で主体的に業務を捉え、考えて行動されている方が評価されます。社内SEを例に挙げると、既にでき上がったITインフラの運用保守に長期間携わった経験よりも、新しいシステムの導入やインフラ入れ替えのプロジェクトの企画から携わった方を企業は高く評価します。

企業ニーズにマッチしたスキル

IT・デジタルのトレンドを見極め、企業が求めるスキルをキャッチアップすることも重要です。

一例を挙げると、製造業では海外からのサイバー攻撃に対するセキュリティ対策が喫緊の課題です。セキュリティ人材は非常に少なく、各社が東海圏以外からの採用にも力を入れているポジションです。もし、現職でセキュリティ関連のプロジェクトがあれば積極的に手を挙げたり、企画提案をしたりするなどして、キャリアアップにつながる経験を積むようにしましょう。

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キャリアチェンジするには絶好のタイミング


先に述べたように東海圏のIT・デジタル人材は慢性的に不足しているため、キャリアチェンジしやすい環境であるとも言えます。

SIerからコンサルティングファームや事業会社への転職、二次請け・三次請けのSIerから外資系ITベンダーのプリセールスエンジニアへの転職といった事例も、さまざまな年代の方が実現されています。

仮に直近の転職では理想のキャリアチェンジや大幅な年収アップは見込めない場合でも、中長期的な目標を定めるようにしましょう。その上で目標到達に足りない経験やスキルを補う方法を考え、実行してください。その手段として転職が考えられる場合には、転職エージェントに相談しましょう。

JAC Recruitment名古屋支店では、東海圏の大手から中小企業、ベンチャー企業に至るまで幅広い求人をご紹介しています。業界に特化したコンサルタントが各企業の採用担当者や部門長、経営層の方から募集背景や入社後に活躍する人物像などを直接ヒアリングしています。求人票だけではわからない各社の情報もご登録者の皆様に直接お伝えします。

面談はオンラインで実施していますので、日中のお仕事が忙しい方やUIJターンをご検討中の方もお気軽にご相談ください。


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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。




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