任天堂、日本電産、京セラ、村田製作所、オムロン、ローム、島津製作所、SCREEN、ニチコン……といった電子電機系の名だたる企業の多くが京都市内に本社を設けています。京都市は内陸にあり、工業発展の力の源となる港湾がないにもかかわらず製造業が発展してきた土地柄です。
また京都エリアには、京都大学や京都工芸繊維大学など理工学系に強い大学が数多くあり、未来の技術者を育てる環境が充実している他、産学連携も盛んに行われてきました。
この項目では、多くの転職サポート実績を持つJAC Recruitment京都支店のコンサルタントがそのような京都における製造業界の転職市場動向を解説します。
目次/Index
京都の製造業動向
京都エリアの特色としてまず挙げられるのは、長年伝統産業で培われてきた技術を電子電機技術に生かしているというメーカーが多数見られるということです。例えば京セラや村田製作所は、陶器製造(焼き物)の技術から電子部品製造の技術を開発したことで知られています。
昨今の製造業全体では半導体供給が不安定になっていますが、その不足を補うための引き合い増という恩恵を大いに受けているのがこの京都エリアの電子部品メーカーです。
さらにここ数年「新しい生活様式」「新しい働き方」が推奨されるようになり、国内企業のIT化の加速による通信ネットワーク機器の需要増加に伴い、電子部品の需要がさらに増しています。
また、スマートフォンや家電の「小型化」「薄型化」といった要件に対応できる電子部品も求められています。
京都の製造業大手企業における求人動向
京都エリアの大手電子部品メーカーは、仕事量が右肩上がりで求人が活発です。さらにそこへ、中堅規模や中小企業からの求人も増えています。
また大手企業に転職される方の8割程度が同じく大手企業出身者であり、中小企業出身者の割合は低くなります。しかし、企業が求める人材の条件としてはあくまで求職者個々の経験やスキルによるところがあるため、中小企業の出身者であっても新規事業や最新技術への取り組みがうまくアピールできれば、採用のチャンスは大いに見込めます。ソフトウェア開発の経験も非常に評価されます。
大手企業の傾向
電子部品メーカーは、グローバル規模の競合において勢いある技術革新が行われるなか、自社だけで開発を完結せずパートナー企業や大学の研究機関などとの協業や連携を進めることでオープンイノベーションを推進し、スピード感ある開発を目指しています。
例えば、バックボーン技術者に実開発をしてもらうよりは、パートナー企業の選定や折衝のスキルがある人、業界団体での人脈がある人などを求める求人が増えています。自分たちが目指す事業のビジョンに向かって、どのような企業と要素技術を組み合わせればよいかを要素技術の将来展望まで見越し、正しく技術評価をしてビジネス戦略を具体的に描ける人が望まれています。
大手企業で求められる人材とは
社内の中だけで開発をしていた人よりは、外部のパートナー企業や大学との共同開発の経験を持っている人の方が評価されやすい傾向にあります。また、関係者やステークホルダーを巻き込む力やプロジェクト推進能力なども買われます。ベンチャーやスタートアップ企業、コンサルティングファームでの勤務経験がある技術者も求められています。
・京都の製造業界で求められている技術者
求人数は右肩上がりです。自動車業界や家電業界でも、モノ(製品)売りからコト(サービス)売りへシフトしてきていることから、ハードウェアありきの組み込みソフトウェアの他、クラウドやネットワーク、モバイル端末向けアプリケーション開発などに精通した技術者が求められています。技術の実務の他、サブスクリプションなどマーケティングの実践経験がある人のニーズも高いです。
電子部品メーカーが、従来の商社を通しての販売にとどまらず、EC通販サイトに進出してきていることから、自社のWebサイト強化を図るために、Web系技術者もよく募っています。
もちろん、従来の求人で多かった機械や電気系技術者についても、さらに求人数が増加しています。また、機械だけでなく電気回路・ソフトウェアなど複数の専門の設計がこなせる人を募る求人も増えています。
・京都の製造業界で求められている生産管理職
求人数が減少傾向です。受注予測や在庫管理、不良率低減といった、従来の生産管理担当の経験や勘に任されていたような業務領域のIT化や自動化が進み、省人化が進んできていることがその背景として考えられます。
・京都の製造業界における海外駐在の求人
こちらも減少しており、現在、ほぼ0に近い状況です。ここ数年、海外拠点に出向していた社員を国内に引き戻して拠点縮小する企業が増えています。その理由も、やはりIT化や遠隔監視システムなどの導入が進んできたことが考えられます。海外拠点での現地採用が増えていることも、理由として挙げられます。
京都の製造業中小企業における求人動向
中小企業に関しては、回路設計技術者の求人が、時代の流れにかかわらず常に多く出ています。また、上記のような大手企業の開発トレンドに合わせた新規の回路設計ができる人材も募集されています。
また、大手企業では海外駐在の求人案件数が減少傾向であった一方、中小企業に関しては、引き続き現担当の高齢化による世代交代や欠員補充などを目的とした求人が出ています。大手企業と違いIT化がそれほど進んでおらず、かつ現地採用などが難航する傾向であることがその理由として考えられます。
中小企業の海外駐在は高齢化が進んでおり人手不足になりがちであることから、求人は若手以外の50歳代以降のベテランやシニア世代でも採用されやすいため、例えば子育てがひと段落して海外で新しいチャレンジがしてみたい人などにも向いているでしょう。
京都の製造業におけるモデル年収
大手企業と中堅・中小企業では年収の差がありますので、ここでは分けて説明します。
大手企業
部長クラス | 1,000万~1,400万円 |
課長クラス | 1,000万~1,200万円 |
係長クラス | 700万~900万円 |
一般職 | 600万円以下 |
中堅・中小企業
部長クラス | 800万~1,000万円 |
課長クラス | 600万~700万円 |
一般職 | 500万円以下 |
京都の製造業への転職で求められるもの
電子部品メーカーでは、単一の専門分野だけではなく複数の専門分野に精通した人材が求められる傾向にあります。また自動化や産業ロボット導入が増えていることから、制御設計やPLCの知識、要件定義からの制御設計の経験なども求められています。
・機械設計者
設計製図などの作業を素早くこなすことだけではなく、設計初期段階の構想設計や企画など「どういうものを作るべきか」が検討できる、部品や装置の設計での問題発見や改善提案ができるなど、設計開発全体のQCDを把握して動ける人が求められます。
例えば、エンジン部品や機構の設計だけでなく、材料選定の最適化、原価の最適化、EVA(経営付加価値)などを視野に入れた検討ができるというような幅広い知見や経験も評価されます。
・回路設計者
アナログとデジタルの回路を両方把握していることと併せ、PythonやC言語などソフトウェア系のプログラミング言語の知識も求められます。
一方、ソフトウェア開発者は、ソフトウェアの知識と併せ、ラダーなど機械系の言語などハードウェア側も知識が求められる傾向があります。
JAC京都支店を利用するメリット
JAC京都支店のコンサルタントはベテラン層が厚く、製造業経験者も在籍しています。求人の内容そのものだけではなく、その仕事の価値を求職者に伝えたり、どのような優先順位で転職活動に取り組むべきかなど細やかなアドバイスもしています。
特に製造業経験者は、JACならではの両面営業の強みも生かしつつ、求人企業に対して求人内容の具体化について一緒に検討する、求人企業が今募集すべきポストを新たに作る、といったことまで行っています。 なおJAC京都支店でも製造業経験者のコンサルタントを募集しています。私どもコンサルタントの仕事にご関心がある方は、JAC京都支店もぜひ転職先の候補に入れてください。